世の中には勝ち組もいれば当然負け組もいる。普段注目されない負け組の日常にスポットを当てた話題作。「負けヒロインが多すぎる!」
前回、最近のラブコメ作品が必ずしも主人公・ヒロインのどちらもそこそこの美男美女同士でないパターンが登場していることを書きました。好きになる相手の容姿の良さが先行してではなく、内面的な優しさやその人物の尊敬できる考え方や行動に美男美女側が相手に感化されて結ばれるというストーリーが割と出ています。外見の良さは観ていて魅力的な要素ですが、現実味のある登場人物像だとさらに共感を持って観てもらえるような気もします。
この夏に放送された青春&ラブコメジャンルのアニメの中で今までとは一味違った切り口の作品がありました。普段は女子ともほとんど会話をしないクラスの中でも地味で目立たない草食系の男子高校生が、ふとしたことがきっかけで振られ女子と次々に関わりを持つようになり、穏やかだった彼の日常が様なトラブルも含めて一気に騒がしくなっていくさまを取り上げた作品です。
パッとしない主人公の男子と3人の振られヒロインたちの日常にスポットを当てた、通常の青春・ラブコメ路線からはかなり外れた設定の作品です。一見、そんな作品に見どころはあるの?という気持ちがよぎりますが、見る角度が違うだけで恋愛に敗れた負け組女子にも勝ち組女子とはまた違った日常が存在していて、恋愛+αなそれぞれの青春を垣間見ることが出来ます。
青春・ラブコメ作品の中では勝ち組の話がメインでその陰に埋もれがちな負けヒロインですが、そうしたヒロインたちの恋愛エピソードはもちろんのこと、それぞれのヒロインたちが恋愛以外にも前向きに何かにチャレンジする姿勢もお話として盛り込まれています。恋愛では負け組であっても青春のすべてが恋愛ばかりではないのでそこから立ち上がるヒロインたちの青春がスカッと明るめに描かれた気持ちの良い作品です。
タイトルは「負けヒロインが多すぎる!」という作品です。
第15回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞を受賞したライトノベル作家”雨森 たきび”さんによる同タイトル小説が原作です。”小学館・ガガガ文庫”より既刊8巻。
コミカライズされ2022年4月に小学館の漫画が読める総合WEBコミックサイト「マンガワン」に連載、同じく2022年5月に小学館のWEBコミック配信サイト「裏サンデー」にも連載中です。そして2024年にアニメ化され7月~9月に全12話が”BS11”他で全国放送されました。インターネットでは”ABEMA”、”U-NEXT”、”Amazon Prime Video”、”dアニメストア”、”Netflix”、”Hulu”、”バンダイチャンネル”、”DMM TV”、”FOD”他で配信中です。
高校生のカップルは1年以内に7割が破局するという。卒業まで含めたらほとんどが別れるにもかかわらず、誰もが恋愛に振り回されて泣いたり、笑ったり、そんな仮初のつながりに心揺らすほどオレは現実と自分に期待してはいない。だけど、たまに考えることがある。もしオレにそんな青春があるのなら、涙に暮れるヒロインを目の前にしたのなら、俺がラノベの主人公なら、そんな時何を想うのだろうか。
高校1年生である温水 和彦はファミレスで大好きなラノベ小説を読みながらその世界に浸っていた。ラノベシリーズ恒例のお約束シーンまで差し掛かり、一息つけようとドリンクバーに席を立ち戻ろうとすると、痴話ケンカっぽい会話が耳に飛び込んできた。声のする方へ目をやると、なんと同じクラスの八奈見 杏菜と袴田 草介だった。
草介が好きな女子・姫宮 華恋が外国へ行ってしまうらしく、草介にさよならを告げたらしい。杏菜は自分が草介のことが好きだから華恋の気持ちが良くわかると。彼女は草介のことを好きだから草介にも好きだと言ってほしいんだと。だから彼女のことを追いかけてと、自分の自転車のカギを彼の前に差し出した。杏菜と華恋は親友らしい。草介は杏菜に一言、すまない、と告げながら自転車のカギをつかんで飛び出して行った。杏菜は見事に振られてしまったらしい。
飛んだ場面に出くわしてしまったと思う温水だが、自分の席から再び杏菜に視線を向けると、驚いたことに杏菜は草介の飲みかけのジュースのストローを加えジュースを飲み始めた。温水が彼女の見てはいけない行動を見てしまったと思った瞬間、杏菜と目が合ってしまった。次の瞬間、杏菜はむせて思わずジュースをおもいっきり噴き出してしまう。何も見てなかったように温水は視線をそらして平然を装った。
すると杏菜が温水のテーブルに来て、座ったかと思うと聞いてもいないのに勝手に自分のことを話し始めた。「華恋ちゃんは大切な親友だけど私と草介が12年間幼馴染やってきたのに転校してきたばかりの彼女を好きになるってどういう事?」とか、「彼に幼稚園の頃にお嫁さんにしてあげると言われたこともあるのに華恋ちゃんの事を好きになったのは浮気じゃないか?」とか、「あの乳牛女(おっぱ○が大きいらしい)が出てこなかったらきっとうまくいってたはず・・・」とか、「わかっているんだけどもっと早く勇気を出していたら違った結果になってたかも・・・」って言いながら、情緒不安定に彼女は泣いた。
その間、山盛りポテトフライやしゃぶしゃぶ肉のサラダやパンケーキなど結構な数のメニューをいつの間にか頼んではひとつ残らず食べ尽く、彼女はそう毒ついたのだ。温水はふと想った。八奈見 杏菜のような豪快な振られ女子、こいつこそが世間でいう”負けヒロイン”だと。
後日、学校で温水は杏菜に先週のファミレスで立て替えたお金を返してほしいと話した。すると、杏菜から昼休みに旧校舎の非常階段に来てほしいと言われる。昼休みになり早速その場所へ行き、杏菜にお金の話をした。すると、「付き合い始めた華恋と草介から一緒にカラオケに行こうと誘われて、二人のイチャイチャぶりを見せつけられるのは勘弁してほしい。」という話や、「草介のお姉さんが草介に電話したけど繋がらなくて、私と会っているかと思って私に電話来たけどその間二人は電話に出られないようなことしてたのかな?」など、温水に愚痴り出した。
温水はそんな話を聞かされながらもファミレスのレシートを彼女に渡した。3千6百円ちょっとと結構な額のレシートを見た彼女は、「この金額に見合う分だけの弁当を毎日作ってくるというのはどうかな?」と提案してきた。仕方なく彼はその提案を受け入れた。
教室に戻ると温水は小鞠 知花という女子から声をかけられた。彼女は文芸部員であり、生徒会から幽霊部員の存在はダメと言われたらしく、文芸部に所属している者は一度部に顔を出してほしいとのこと。確かに入学当初の部活勧誘時期の際に文芸部に名前だけ書いたことを彼は思い出し、文芸部へ行ってみた。さすがは文芸部、たくさんの本があった。
夜になり彼はネットで読みたい本をリストアップしていた。読みたい未読の本が文芸部にもあったことを彼は思い出した。当面は本を買わずに文芸部で本も読めるし弁当も一定期間は作ってもらえるので買わずに済む。充実した学校生活が送れそうだと彼は思った。
いつの間にか妹の佳樹(かじゅ)が彼の部屋にいた。「お兄様、学校でお友達はできましたか?安心してくださいお兄様。佳樹がお兄様にお供出しを作って差し上げますの。先ずはキャラ弁でみんなの心をつかみ会話のきっかけにするのです。」そう言って自分が作ったキャラ弁を兄に披露した。彼はこれから弁当を作ってもらえることになったことを話すと佳樹からは、「お付き合いをしている女性がいるのですか?」との驚きの反応が。そうではなくて、お金を払って作ってもらえる人がいることを話すと、「業者さんですか?」と解釈されてしまう。素直でできる、とても兄想いの妹である。
翌日の昼に旧校舎の非常階段に行くと彼女から弁当箱を渡された。中を見ると268円の値段が貼られたコンビニのサンドイッチが入っていた。彼女曰く、二人分の弁当を作ろうとしたらお母さんから草介君喜んでくれるじゃないの、言われたので作る気になれなかったためコンビニのサンドイッチになったらしい。杏菜の唐揚げと卵焼きもつき、温水は350円の値をつけた
学校の授業が終わった後、温水はクラスメイトの綾野 光希(あやの みつき)から声をかけられた。読みたい本があって今度文芸部に行きたいとのことだった。そこへ 光希と同じ塾に通う朝雲 千早(あさぐも ちはや)がやってきて、二人は一緒に下校した。 光希と温水の会話を観ていた焼塩 檸檬(やきしお れもん)から温水は声をかけられた。「光希とは友達なの?」と。友達というほどではなく前に同じ塾に通っていたことがあった程度だと話を返した。
「光希のやつ、やっぱり頭のいい子が好きなのかな?」そう独り言をつぶやいているとそこへ「檸檬ちゃん、彼とはどうゆう・・・」杏菜が現れ質問してきた。小学校の時クラスが同じなだけだと檸檬は答えた。「幼馴染という事は・・・あっちが泥棒猫。」杏菜は答えた。大胆な分類だと温水は言った。「温水君、女はね、幼馴か泥棒猫に分けられるの。」再び杏菜が言った。「あの二人、どういう関係かな?」檸檬が杏菜に聞いた。「たぶん、仲の良い友達じゃないかな?」と杏菜はそう答えた。それを聞いた檸檬は杏菜と手を取り合って喜んだ。檸檬は光希のことが好きなのか?
翌日の弁当は一人分の弁当箱に二人分のご飯がめいいっぱい詰め込まれたものだった。フタの裏側にそのご飯が乗せられと今日の弁当はいくらか?と温水は杏菜から聞かれた。今日の弁当は400円だと温水は答えた。
次の日、温水が旧校舎の非常階段に行くと杏菜の荷物があるが彼女はいなかった。屋上へ行ってみると校庭を走っている檸檬を観ている杏菜がいた。「檸檬ちゃんの走っているところを見ていたら私、振られたんだなって想った。頭ではわかっていたんだけど体がわかっていなかったみたい。」そう言い放つ彼女の目からは涙が溢れていた。
高校生のカップルは1年以内に7割が破局するという。卒業まで含めたらほとんどが別れるにもかかわらず、誰もが恋愛に振り回されて泣いたり、笑ったり、そんな仮初のつながりに心揺らすほどオレは現実と自分に期待してはいない。だけど、たまに考えることがある。もしオレにそんな青春があるのなら、涙に暮れるヒロインを目の前にしたのなら、俺がラノベの主人公なら、そんな時何を想うのだろうか。(第1話)
今回の作品のおすすめポイントは、先ず定番でない目新しいストーリーであること。
また個性的なキャラがたくさん登場するところにあります。3人のそれぞれのヒロインは各々違ったタイプのヒロインで様々なお話に彩を付けてくれています。そのヒロイン3人と一見無個性に見えて内面は以外に面白い主人公男子の個性派同士の支え合う関係性がベースで物語は進行して行きます。この4人を取り巻く他の友人や家族も魅力的なキャラがたくさん出てきますのでお楽しみに!
そしてそれぞれの個性的なキャラを支える声優さんがまた上手い方たちばかりでキャラの個性をさらに引き出してくれています。キャスティングが実に素晴らしいと思わせてくれる作品です。
その他に、作品を情緒的に魅せための演出や作画も良いのでそうしたところにも目を向けてみるのも良いかもしれません。
プラス、物語に関連する歌・音楽が用意されているのもこの作品の特徴で、3人のヒロインがそれぞれメインとなっている回のエンディングテーマはそのメインキャラの映像と歌が流れる演出になっています。楽曲は2000年以降にヒットしたラブソングが使われていて3人のヒロインがその曲をカバーして歌っていますので、どんな曲が当てられているかにも注目してながら観ていただきたいですね。
3人のヒロインたちですがそれぞれに振られる要因があります。好きな相手の幸せを優先し過ぎて自らをアピールしないで相手が好きな子との関係を橋渡ししてしまい振られてしまう子もいれば、両片思いであったにもかかわらず幼馴染みの関係を打破できないうちに相手が別の女子を好きになってしまい振られてしまう子もいたり、好きな先輩に告白するもそれがきっかけとなり先輩と同じ部の先輩女子の二人のモヤっとした関係性をハッキリさせる方向にアシストしてしまう子もいたりと、様々な振られ女子の恋愛事情を観察することになります。それぞれが妥当な振られ方どうかは観てのご判断を。
主人公の温水君は成り行き上この3人と接点が出来て、気が付くとそれぞれの恋愛事情に巻き込まれてしまうのですが、面倒見の良い彼の人柄が手伝ってか彼との関わりでヒロインたちは徐々に失恋から立ち直っていきます。決して彼は振られたことがないモテ男子ではなく、単に女子との接点が今までなかったために振られたことすらなかったわけですが。融通の利かない性分もあって時折、杏菜ちゃんから「そういうとこだよ、温水君。」と自分の事を棚に上げる彼女からお約束のそのフレーズでのツッコミシーンが何度か出てきますが、そんなところも非常に面白く見どころポイントとの一つと言えます。
好きな男子に振られた負けヒロイン3人と振られた事すらない恋愛ベタな主人公男子による個性と個性が織りなす青春物語をどうぞご覧ください!
ジャンル/”青春”・”ラブコメ”、監督/”北野 翔太郎”さん、シリーズ構成/”横谷 昌宏”さん(「はたらく魔王さま!」「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」「女子高生の無駄づかい」のシリーズ構成も担当)、キャラクターデザイン/”川上 哲也”さん(「86-エイティシックス-」のキャラデザも担当)、アニメーション制作/”A-1Pictures”
<主な出演声優さん>
温水 和彦:”梅田 修一朗”さん、八奈見 杏菜:”遠野 ひかる”さん、焼塩 檸檬:”若山 詩音”さん、小鞠 知花:”寺澤 百花”さん
最後はオープニングテーマとエンディングテーマの紹介です。OPはポップでノリの良い元気な曲調で、EDは3曲ありますが3人のヒロインがそれぞれ2000年以降のラブソングをカバーしています。キャラのイメージにマッチした曲かどうか自身で確かめてくださいね。どれもリピート必至の時代の名曲ぞろいですのでどうぞお楽しみください!!
オープニングテーマ「つよがるガールfeat.もっさ(ネクライト―キー/ぼっちぼろまる」
エンディングテーマ「LOVE2000(by hitomi)/八奈見 杏菜」2000年
「CRAZY FOR YOU(by Kylee)/焼塩 檸檬」2011年
「feel my soul(by YUI)/小鞠 知花」2005年
人それぞれ多少の痛い性格・行動があってもそれが個性。完璧でない部分が見え隠れしてこそ人間味があって親しみが持てるんじゃないかな。恋愛も含めてさまざまなことでトライ&エラーを繰り返して人間も日々成長していくってもんじゃないだろうか?そういうとこだよ、温水君。 by 八奈見 杏菜
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この夏に放送された青春&ラブコメジャンルのアニメの中で今までとは一味違った切り口の作品がありました。普段は女子ともほとんど会話をしないクラスの中でも地味で目立たない草食系の男子高校生が、ふとしたことがきっかけで振られ女子と次々に関わりを持つようになり、穏やかだった彼の日常が様なトラブルも含めて一気に騒がしくなっていくさまを取り上げた作品です。
パッとしない主人公の男子と3人の振られヒロインたちの日常にスポットを当てた、通常の青春・ラブコメ路線からはかなり外れた設定の作品です。一見、そんな作品に見どころはあるの?という気持ちがよぎりますが、見る角度が違うだけで恋愛に敗れた負け組女子にも勝ち組女子とはまた違った日常が存在していて、恋愛+αなそれぞれの青春を垣間見ることが出来ます。
青春・ラブコメ作品の中では勝ち組の話がメインでその陰に埋もれがちな負けヒロインですが、そうしたヒロインたちの恋愛エピソードはもちろんのこと、それぞれのヒロインたちが恋愛以外にも前向きに何かにチャレンジする姿勢もお話として盛り込まれています。恋愛では負け組であっても青春のすべてが恋愛ばかりではないのでそこから立ち上がるヒロインたちの青春がスカッと明るめに描かれた気持ちの良い作品です。
タイトルは「負けヒロインが多すぎる!」という作品です。
第15回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞を受賞したライトノベル作家”雨森 たきび”さんによる同タイトル小説が原作です。”小学館・ガガガ文庫”より既刊8巻。
コミカライズされ2022年4月に小学館の漫画が読める総合WEBコミックサイト「マンガワン」に連載、同じく2022年5月に小学館のWEBコミック配信サイト「裏サンデー」にも連載中です。そして2024年にアニメ化され7月~9月に全12話が”BS11”他で全国放送されました。インターネットでは”ABEMA”、”U-NEXT”、”Amazon Prime Video”、”dアニメストア”、”Netflix”、”Hulu”、”バンダイチャンネル”、”DMM TV”、”FOD”他で配信中です。
高校生のカップルは1年以内に7割が破局するという。卒業まで含めたらほとんどが別れるにもかかわらず、誰もが恋愛に振り回されて泣いたり、笑ったり、そんな仮初のつながりに心揺らすほどオレは現実と自分に期待してはいない。だけど、たまに考えることがある。もしオレにそんな青春があるのなら、涙に暮れるヒロインを目の前にしたのなら、俺がラノベの主人公なら、そんな時何を想うのだろうか。
高校1年生である温水 和彦はファミレスで大好きなラノベ小説を読みながらその世界に浸っていた。ラノベシリーズ恒例のお約束シーンまで差し掛かり、一息つけようとドリンクバーに席を立ち戻ろうとすると、痴話ケンカっぽい会話が耳に飛び込んできた。声のする方へ目をやると、なんと同じクラスの八奈見 杏菜と袴田 草介だった。
草介が好きな女子・姫宮 華恋が外国へ行ってしまうらしく、草介にさよならを告げたらしい。杏菜は自分が草介のことが好きだから華恋の気持ちが良くわかると。彼女は草介のことを好きだから草介にも好きだと言ってほしいんだと。だから彼女のことを追いかけてと、自分の自転車のカギを彼の前に差し出した。杏菜と華恋は親友らしい。草介は杏菜に一言、すまない、と告げながら自転車のカギをつかんで飛び出して行った。杏菜は見事に振られてしまったらしい。
飛んだ場面に出くわしてしまったと思う温水だが、自分の席から再び杏菜に視線を向けると、驚いたことに杏菜は草介の飲みかけのジュースのストローを加えジュースを飲み始めた。温水が彼女の見てはいけない行動を見てしまったと思った瞬間、杏菜と目が合ってしまった。次の瞬間、杏菜はむせて思わずジュースをおもいっきり噴き出してしまう。何も見てなかったように温水は視線をそらして平然を装った。
すると杏菜が温水のテーブルに来て、座ったかと思うと聞いてもいないのに勝手に自分のことを話し始めた。「華恋ちゃんは大切な親友だけど私と草介が12年間幼馴染やってきたのに転校してきたばかりの彼女を好きになるってどういう事?」とか、「彼に幼稚園の頃にお嫁さんにしてあげると言われたこともあるのに華恋ちゃんの事を好きになったのは浮気じゃないか?」とか、「あの乳牛女(おっぱ○が大きいらしい)が出てこなかったらきっとうまくいってたはず・・・」とか、「わかっているんだけどもっと早く勇気を出していたら違った結果になってたかも・・・」って言いながら、情緒不安定に彼女は泣いた。
その間、山盛りポテトフライやしゃぶしゃぶ肉のサラダやパンケーキなど結構な数のメニューをいつの間にか頼んではひとつ残らず食べ尽く、彼女はそう毒ついたのだ。温水はふと想った。八奈見 杏菜のような豪快な振られ女子、こいつこそが世間でいう”負けヒロイン”だと。
後日、学校で温水は杏菜に先週のファミレスで立て替えたお金を返してほしいと話した。すると、杏菜から昼休みに旧校舎の非常階段に来てほしいと言われる。昼休みになり早速その場所へ行き、杏菜にお金の話をした。すると、「付き合い始めた華恋と草介から一緒にカラオケに行こうと誘われて、二人のイチャイチャぶりを見せつけられるのは勘弁してほしい。」という話や、「草介のお姉さんが草介に電話したけど繋がらなくて、私と会っているかと思って私に電話来たけどその間二人は電話に出られないようなことしてたのかな?」など、温水に愚痴り出した。
温水はそんな話を聞かされながらもファミレスのレシートを彼女に渡した。3千6百円ちょっとと結構な額のレシートを見た彼女は、「この金額に見合う分だけの弁当を毎日作ってくるというのはどうかな?」と提案してきた。仕方なく彼はその提案を受け入れた。
教室に戻ると温水は小鞠 知花という女子から声をかけられた。彼女は文芸部員であり、生徒会から幽霊部員の存在はダメと言われたらしく、文芸部に所属している者は一度部に顔を出してほしいとのこと。確かに入学当初の部活勧誘時期の際に文芸部に名前だけ書いたことを彼は思い出し、文芸部へ行ってみた。さすがは文芸部、たくさんの本があった。
夜になり彼はネットで読みたい本をリストアップしていた。読みたい未読の本が文芸部にもあったことを彼は思い出した。当面は本を買わずに文芸部で本も読めるし弁当も一定期間は作ってもらえるので買わずに済む。充実した学校生活が送れそうだと彼は思った。
いつの間にか妹の佳樹(かじゅ)が彼の部屋にいた。「お兄様、学校でお友達はできましたか?安心してくださいお兄様。佳樹がお兄様にお供出しを作って差し上げますの。先ずはキャラ弁でみんなの心をつかみ会話のきっかけにするのです。」そう言って自分が作ったキャラ弁を兄に披露した。彼はこれから弁当を作ってもらえることになったことを話すと佳樹からは、「お付き合いをしている女性がいるのですか?」との驚きの反応が。そうではなくて、お金を払って作ってもらえる人がいることを話すと、「業者さんですか?」と解釈されてしまう。素直でできる、とても兄想いの妹である。
翌日の昼に旧校舎の非常階段に行くと彼女から弁当箱を渡された。中を見ると268円の値段が貼られたコンビニのサンドイッチが入っていた。彼女曰く、二人分の弁当を作ろうとしたらお母さんから草介君喜んでくれるじゃないの、言われたので作る気になれなかったためコンビニのサンドイッチになったらしい。杏菜の唐揚げと卵焼きもつき、温水は350円の値をつけた
学校の授業が終わった後、温水はクラスメイトの綾野 光希(あやの みつき)から声をかけられた。読みたい本があって今度文芸部に行きたいとのことだった。そこへ 光希と同じ塾に通う朝雲 千早(あさぐも ちはや)がやってきて、二人は一緒に下校した。 光希と温水の会話を観ていた焼塩 檸檬(やきしお れもん)から温水は声をかけられた。「光希とは友達なの?」と。友達というほどではなく前に同じ塾に通っていたことがあった程度だと話を返した。
「光希のやつ、やっぱり頭のいい子が好きなのかな?」そう独り言をつぶやいているとそこへ「檸檬ちゃん、彼とはどうゆう・・・」杏菜が現れ質問してきた。小学校の時クラスが同じなだけだと檸檬は答えた。「幼馴染という事は・・・あっちが泥棒猫。」杏菜は答えた。大胆な分類だと温水は言った。「温水君、女はね、幼馴か泥棒猫に分けられるの。」再び杏菜が言った。「あの二人、どういう関係かな?」檸檬が杏菜に聞いた。「たぶん、仲の良い友達じゃないかな?」と杏菜はそう答えた。それを聞いた檸檬は杏菜と手を取り合って喜んだ。檸檬は光希のことが好きなのか?
翌日の弁当は一人分の弁当箱に二人分のご飯がめいいっぱい詰め込まれたものだった。フタの裏側にそのご飯が乗せられと今日の弁当はいくらか?と温水は杏菜から聞かれた。今日の弁当は400円だと温水は答えた。
次の日、温水が旧校舎の非常階段に行くと杏菜の荷物があるが彼女はいなかった。屋上へ行ってみると校庭を走っている檸檬を観ている杏菜がいた。「檸檬ちゃんの走っているところを見ていたら私、振られたんだなって想った。頭ではわかっていたんだけど体がわかっていなかったみたい。」そう言い放つ彼女の目からは涙が溢れていた。
高校生のカップルは1年以内に7割が破局するという。卒業まで含めたらほとんどが別れるにもかかわらず、誰もが恋愛に振り回されて泣いたり、笑ったり、そんな仮初のつながりに心揺らすほどオレは現実と自分に期待してはいない。だけど、たまに考えることがある。もしオレにそんな青春があるのなら、涙に暮れるヒロインを目の前にしたのなら、俺がラノベの主人公なら、そんな時何を想うのだろうか。(第1話)
今回の作品のおすすめポイントは、先ず定番でない目新しいストーリーであること。
また個性的なキャラがたくさん登場するところにあります。3人のそれぞれのヒロインは各々違ったタイプのヒロインで様々なお話に彩を付けてくれています。そのヒロイン3人と一見無個性に見えて内面は以外に面白い主人公男子の個性派同士の支え合う関係性がベースで物語は進行して行きます。この4人を取り巻く他の友人や家族も魅力的なキャラがたくさん出てきますのでお楽しみに!
そしてそれぞれの個性的なキャラを支える声優さんがまた上手い方たちばかりでキャラの個性をさらに引き出してくれています。キャスティングが実に素晴らしいと思わせてくれる作品です。
その他に、作品を情緒的に魅せための演出や作画も良いのでそうしたところにも目を向けてみるのも良いかもしれません。
プラス、物語に関連する歌・音楽が用意されているのもこの作品の特徴で、3人のヒロインがそれぞれメインとなっている回のエンディングテーマはそのメインキャラの映像と歌が流れる演出になっています。楽曲は2000年以降にヒットしたラブソングが使われていて3人のヒロインがその曲をカバーして歌っていますので、どんな曲が当てられているかにも注目してながら観ていただきたいですね。
3人のヒロインたちですがそれぞれに振られる要因があります。好きな相手の幸せを優先し過ぎて自らをアピールしないで相手が好きな子との関係を橋渡ししてしまい振られてしまう子もいれば、両片思いであったにもかかわらず幼馴染みの関係を打破できないうちに相手が別の女子を好きになってしまい振られてしまう子もいたり、好きな先輩に告白するもそれがきっかけとなり先輩と同じ部の先輩女子の二人のモヤっとした関係性をハッキリさせる方向にアシストしてしまう子もいたりと、様々な振られ女子の恋愛事情を観察することになります。それぞれが妥当な振られ方どうかは観てのご判断を。
主人公の温水君は成り行き上この3人と接点が出来て、気が付くとそれぞれの恋愛事情に巻き込まれてしまうのですが、面倒見の良い彼の人柄が手伝ってか彼との関わりでヒロインたちは徐々に失恋から立ち直っていきます。決して彼は振られたことがないモテ男子ではなく、単に女子との接点が今までなかったために振られたことすらなかったわけですが。融通の利かない性分もあって時折、杏菜ちゃんから「そういうとこだよ、温水君。」と自分の事を棚に上げる彼女からお約束のそのフレーズでのツッコミシーンが何度か出てきますが、そんなところも非常に面白く見どころポイントとの一つと言えます。
好きな男子に振られた負けヒロイン3人と振られた事すらない恋愛ベタな主人公男子による個性と個性が織りなす青春物語をどうぞご覧ください!
ジャンル/”青春”・”ラブコメ”、監督/”北野 翔太郎”さん、シリーズ構成/”横谷 昌宏”さん(「はたらく魔王さま!」「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」「女子高生の無駄づかい」のシリーズ構成も担当)、キャラクターデザイン/”川上 哲也”さん(「86-エイティシックス-」のキャラデザも担当)、アニメーション制作/”A-1Pictures”
<主な出演声優さん>
温水 和彦:”梅田 修一朗”さん、八奈見 杏菜:”遠野 ひかる”さん、焼塩 檸檬:”若山 詩音”さん、小鞠 知花:”寺澤 百花”さん
最後はオープニングテーマとエンディングテーマの紹介です。OPはポップでノリの良い元気な曲調で、EDは3曲ありますが3人のヒロインがそれぞれ2000年以降のラブソングをカバーしています。キャラのイメージにマッチした曲かどうか自身で確かめてくださいね。どれもリピート必至の時代の名曲ぞろいですのでどうぞお楽しみください!!
オープニングテーマ「つよがるガールfeat.もっさ(ネクライト―キー/ぼっちぼろまる」
エンディングテーマ「LOVE2000(by hitomi)/八奈見 杏菜」2000年
「CRAZY FOR YOU(by Kylee)/焼塩 檸檬」2011年
「feel my soul(by YUI)/小鞠 知花」2005年
人それぞれ多少の痛い性格・行動があってもそれが個性。完璧でない部分が見え隠れしてこそ人間味があって親しみが持てるんじゃないかな。恋愛も含めてさまざまなことでトライ&エラーを繰り返して人間も日々成長していくってもんじゃないだろうか?そういうとこだよ、温水君。 by 八奈見 杏菜
見る参考になったよ、という方はぽっちいただけるとうれしいです。
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