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世の中には勝ち組もいれば当然負け組もいる。普段注目されない負け組の日常にスポットを当てた話題作。「負けヒロインが多すぎる!」

前回、最近のラブコメ作品が必ずしも主人公・ヒロインのどちらもそこそこの美男美女同士でないパターンが登場していることを書きました。好きになる相手の容姿の良さが先行してではなく、内面的な優しさやその人物の尊敬できる考え方や行動に美男美女側が相手に感化されて結ばれるというストーリーが割と出ています。外見の良さは観ていて魅力的な要素ですが、現実味のある登場人物像だとさらに共感を持って観てもらえるような気もします。

この夏に放送された青春&ラブコメジャンルのアニメの中で今までとは一味違った切り口の作品がありました。普段は女子ともほとんど会話をしないクラスの中でも地味で目立たない草食系の男子高校生が、ふとしたことがきっかけで振られ女子と次々に関わりを持つようになり、穏やかだった彼の日常が様なトラブルも含めて一気に騒がしくなっていくさまを取り上げた作品です。

パッとしない主人公の男子と3人の振られヒロインたちの日常にスポットを当てた、通常の青春・ラブコメ路線からはかなり外れた設定の作品です。一見、そんな作品に見どころはあるの?という気持ちがよぎりますが、見る角度が違うだけで恋愛に敗れた負け組女子にも勝ち組女子とはまた違った日常が存在していて、恋愛+αなそれぞれの青春を垣間見ることが出来ます。

青春・ラブコメ作品の中では勝ち組の話がメインでその陰に埋もれがちな負けヒロインですが、そうしたヒロインたちの恋愛エピソードはもちろんのこと、それぞれのヒロインたちが恋愛以外にも前向きに何かにチャレンジする姿勢もお話として盛り込まれています。恋愛では負け組であっても青春のすべてが恋愛ばかりではないのでそこから立ち上がるヒロインたちの青春がスカッと明るめに描かれた気持ちの良い作品です。

タイトルは「負けヒロインが多すぎる!」という作品です。

第15回小学館ライトノベル大賞ガガガ賞を受賞したライトノベル作家”雨森 たきび”さんによる同タイトル小説が原作です。”小学館・ガガガ文庫”より既刊8巻。

コミカライズされ2022年4月に小学館の漫画が読める総合WEBコミックサイト「マンガワン」に連載、同じく2022年5月に小学館のWEBコミック配信サイト「裏サンデー」にも連載中です。そして2024年にアニメ化され7月~9月に全12話が”BS11”他で全国放送されました。インターネットでは”ABEMA”、”U-NEXT”、”Amazon Prime Video”、”dアニメストア”、”Netflix”、”Hulu”、”バンダイチャンネル”、”DMM TV”、”FOD”他で配信中です。

負けヒロインが多すぎる!2 (2)

高校生のカップルは1年以内に7割が破局するという。卒業まで含めたらほとんどが別れるにもかかわらず、誰もが恋愛に振り回されて泣いたり、笑ったり、そんな仮初のつながりに心揺らすほどオレは現実と自分に期待してはいない。だけど、たまに考えることがある。もしオレにそんな青春があるのなら、涙に暮れるヒロインを目の前にしたのなら、俺がラノベの主人公なら、そんな時何を想うのだろうか。

高校1年生である温水 和彦はファミレスで大好きなラノベ小説を読みながらその世界に浸っていた。ラノベシリーズ恒例のお約束シーンまで差し掛かり、一息つけようとドリンクバーに席を立ち戻ろうとすると、痴話ケンカっぽい会話が耳に飛び込んできた。声のする方へ目をやると、なんと同じクラスの八奈見 杏菜と袴田 草介だった。

草介が好きな女子・姫宮 華恋が外国へ行ってしまうらしく、草介にさよならを告げたらしい。杏菜は自分が草介のことが好きだから華恋の気持ちが良くわかると。彼女は草介のことを好きだから草介にも好きだと言ってほしいんだと。だから彼女のことを追いかけてと、自分の自転車のカギを彼の前に差し出した。杏菜と華恋は親友らしい。草介は杏菜に一言、すまない、と告げながら自転車のカギをつかんで飛び出して行った。杏菜は見事に振られてしまったらしい。

飛んだ場面に出くわしてしまったと思う温水だが、自分の席から再び杏菜に視線を向けると、驚いたことに杏菜は草介の飲みかけのジュースのストローを加えジュースを飲み始めた。温水が彼女の見てはいけない行動を見てしまったと思った瞬間、杏菜と目が合ってしまった。次の瞬間、杏菜はむせて思わずジュースをおもいっきり噴き出してしまう。何も見てなかったように温水は視線をそらして平然を装った。

すると杏菜が温水のテーブルに来て、座ったかと思うと聞いてもいないのに勝手に自分のことを話し始めた。「華恋ちゃんは大切な親友だけど私と草介が12年間幼馴染やってきたのに転校してきたばかりの彼女を好きになるってどういう事?」とか、「彼に幼稚園の頃にお嫁さんにしてあげると言われたこともあるのに華恋ちゃんの事を好きになったのは浮気じゃないか?」とか、「あの乳牛女(おっぱ○が大きいらしい)が出てこなかったらきっとうまくいってたはず・・・」とか、「わかっているんだけどもっと早く勇気を出していたら違った結果になってたかも・・・」って言いながら、情緒不安定に彼女は泣いた。

その間、山盛りポテトフライやしゃぶしゃぶ肉のサラダやパンケーキなど結構な数のメニューをいつの間にか頼んではひとつ残らず食べ尽く、彼女はそう毒ついたのだ。温水はふと想った。八奈見 杏菜のような豪快な振られ女子、こいつこそが世間でいう”負けヒロイン”だと。

後日、学校で温水は杏菜に先週のファミレスで立て替えたお金を返してほしいと話した。すると、杏菜から昼休みに旧校舎の非常階段に来てほしいと言われる。昼休みになり早速その場所へ行き、杏菜にお金の話をした。すると、「付き合い始めた華恋と草介から一緒にカラオケに行こうと誘われて、二人のイチャイチャぶりを見せつけられるのは勘弁してほしい。」という話や、「草介のお姉さんが草介に電話したけど繋がらなくて、私と会っているかと思って私に電話来たけどその間二人は電話に出られないようなことしてたのかな?」など、温水に愚痴り出した。

温水はそんな話を聞かされながらもファミレスのレシートを彼女に渡した。3千6百円ちょっとと結構な額のレシートを見た彼女は、「この金額に見合う分だけの弁当を毎日作ってくるというのはどうかな?」と提案してきた。仕方なく彼はその提案を受け入れた。

負けヒロインが多すぎる!5

教室に戻ると温水は小鞠 知花という女子から声をかけられた。彼女は文芸部員であり、生徒会から幽霊部員の存在はダメと言われたらしく、文芸部に所属している者は一度部に顔を出してほしいとのこと。確かに入学当初の部活勧誘時期の際に文芸部に名前だけ書いたことを彼は思い出し、文芸部へ行ってみた。さすがは文芸部、たくさんの本があった。

夜になり彼はネットで読みたい本をリストアップしていた。読みたい未読の本が文芸部にもあったことを彼は思い出した。当面は本を買わずに文芸部で本も読めるし弁当も一定期間は作ってもらえるので買わずに済む。充実した学校生活が送れそうだと彼は思った。

いつの間にか妹の佳樹(かじゅ)が彼の部屋にいた。「お兄様、学校でお友達はできましたか?安心してくださいお兄様。佳樹がお兄様にお供出しを作って差し上げますの。先ずはキャラ弁でみんなの心をつかみ会話のきっかけにするのです。」そう言って自分が作ったキャラ弁を兄に披露した。彼はこれから弁当を作ってもらえることになったことを話すと佳樹からは、「お付き合いをしている女性がいるのですか?」との驚きの反応が。そうではなくて、お金を払って作ってもらえる人がいることを話すと、「業者さんですか?」と解釈されてしまう。素直でできる、とても兄想いの妹である。

翌日の昼に旧校舎の非常階段に行くと彼女から弁当箱を渡された。中を見ると268円の値段が貼られたコンビニのサンドイッチが入っていた。彼女曰く、二人分の弁当を作ろうとしたらお母さんから草介君喜んでくれるじゃないの、言われたので作る気になれなかったためコンビニのサンドイッチになったらしい。杏菜の唐揚げと卵焼きもつき、温水は350円の値をつけた

学校の授業が終わった後、温水はクラスメイトの綾野 光希(あやの みつき)から声をかけられた。読みたい本があって今度文芸部に行きたいとのことだった。そこへ 光希と同じ塾に通う朝雲 千早(あさぐも ちはや)がやってきて、二人は一緒に下校した。 光希と温水の会話を観ていた焼塩 檸檬(やきしお れもん)から温水は声をかけられた。「光希とは友達なの?」と。友達というほどではなく前に同じ塾に通っていたことがあった程度だと話を返した。

「光希のやつ、やっぱり頭のいい子が好きなのかな?」そう独り言をつぶやいているとそこへ「檸檬ちゃん、彼とはどうゆう・・・」杏菜が現れ質問してきた。小学校の時クラスが同じなだけだと檸檬は答えた。「幼馴染という事は・・・あっちが泥棒猫。」杏菜は答えた。大胆な分類だと温水は言った。「温水君、女はね、幼馴か泥棒猫に分けられるの。」再び杏菜が言った。「あの二人、どういう関係かな?」檸檬が杏菜に聞いた。「たぶん、仲の良い友達じゃないかな?」と杏菜はそう答えた。それを聞いた檸檬は杏菜と手を取り合って喜んだ。檸檬は光希のことが好きなのか?

翌日の弁当は一人分の弁当箱に二人分のご飯がめいいっぱい詰め込まれたものだった。フタの裏側にそのご飯が乗せられと今日の弁当はいくらか?と温水は杏菜から聞かれた。今日の弁当は400円だと温水は答えた。

次の日、温水が旧校舎の非常階段に行くと杏菜の荷物があるが彼女はいなかった。屋上へ行ってみると校庭を走っている檸檬を観ている杏菜がいた。「檸檬ちゃんの走っているところを見ていたら私、振られたんだなって想った。頭ではわかっていたんだけど体がわかっていなかったみたい。」そう言い放つ彼女の目からは涙が溢れていた。

高校生のカップルは1年以内に7割が破局するという。卒業まで含めたらほとんどが別れるにもかかわらず、誰もが恋愛に振り回されて泣いたり、笑ったり、そんな仮初のつながりに心揺らすほどオレは現実と自分に期待してはいない。だけど、たまに考えることがある。もしオレにそんな青春があるのなら、涙に暮れるヒロインを目の前にしたのなら、俺がラノベの主人公なら、そんな時何を想うのだろうか。(第1話)

負けヒロインが多すぎる!4

今回の作品のおすすめポイントは、先ず定番でない目新しいストーリーであること。

また個性的なキャラがたくさん登場するところにあります。3人のそれぞれのヒロインは各々違ったタイプのヒロインで様々なお話に彩を付けてくれています。そのヒロイン3人と一見無個性に見えて内面は以外に面白い主人公男子の個性派同士の支え合う関係性がベースで物語は進行して行きます。この4人を取り巻く他の友人や家族も魅力的なキャラがたくさん出てきますのでお楽しみに!

そしてそれぞれの個性的なキャラを支える声優さんがまた上手い方たちばかりでキャラの個性をさらに引き出してくれています。キャスティングが実に素晴らしいと思わせてくれる作品です。

その他に、作品を情緒的に魅せための演出や作画も良いのでそうしたところにも目を向けてみるのも良いかもしれません。

プラス、物語に関連する歌・音楽が用意されているのもこの作品の特徴で、3人のヒロインがそれぞれメインとなっている回のエンディングテーマはそのメインキャラの映像と歌が流れる演出になっています。楽曲は2000年以降にヒットしたラブソングが使われていて3人のヒロインがその曲をカバーして歌っていますので、どんな曲が当てられているかにも注目してながら観ていただきたいですね。

3人のヒロインたちですがそれぞれに振られる要因があります。好きな相手の幸せを優先し過ぎて自らをアピールしないで相手が好きな子との関係を橋渡ししてしまい振られてしまう子もいれば、両片思いであったにもかかわらず幼馴染みの関係を打破できないうちに相手が別の女子を好きになってしまい振られてしまう子もいたり、好きな先輩に告白するもそれがきっかけとなり先輩と同じ部の先輩女子の二人のモヤっとした関係性をハッキリさせる方向にアシストしてしまう子もいたりと、様々な振られ女子の恋愛事情を観察することになります。それぞれが妥当な振られ方どうかは観てのご判断を。

主人公の温水君は成り行き上この3人と接点が出来て、気が付くとそれぞれの恋愛事情に巻き込まれてしまうのですが、面倒見の良い彼の人柄が手伝ってか彼との関わりでヒロインたちは徐々に失恋から立ち直っていきます。決して彼は振られたことがないモテ男子ではなく、単に女子との接点が今までなかったために振られたことすらなかったわけですが。融通の利かない性分もあって時折、杏菜ちゃんから「そういうとこだよ、温水君。」と自分の事を棚に上げる彼女からお約束のそのフレーズでのツッコミシーンが何度か出てきますが、そんなところも非常に面白く見どころポイントとの一つと言えます。

好きな男子に振られた負けヒロイン3人と振られた事すらない恋愛ベタな主人公男子による個性と個性が織りなす青春物語をどうぞご覧ください!

負けヒロインが多すぎる!8

ジャンル/”青春”・”ラブコメ”、監督/”北野 翔太郎”さん、シリーズ構成/”横谷 昌宏”さん(「はたらく魔王さま!」「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」「女子高生の無駄づかい」のシリーズ構成も担当)、キャラクターデザイン/”川上 哲也”さん(「86-エイティシックス-」のキャラデザも担当)、アニメーション制作/”A-1Pictures

<主な出演声優さん>
温水 和彦:”梅田 修一朗”さん、八奈見 杏菜:”遠野 ひかる”さん、焼塩 檸檬:”若山 詩音”さん、小鞠 知花:”寺澤 百花”さん

最後はオープニングテーマとエンディングテーマの紹介です。OPはポップでノリの良い元気な曲調で、EDは3曲ありますが3人のヒロインがそれぞれ2000年以降のラブソングをカバーしています。キャラのイメージにマッチした曲かどうか自身で確かめてくださいね。どれもリピート必至の時代の名曲ぞろいですのでどうぞお楽しみください!!

オープニングテーマ「つよがるガールfeat.もっさ(ネクライト―キー/ぼっちぼろまる」
エンディングテーマ「LOVE2000(by hitomi)/八奈見 杏菜」2000年
          「CRAZY FOR YOU(by Kylee)/焼塩 檸檬」2011年
          「feel my soul(by YUI)/小鞠 知花」2005年

人それぞれ多少の痛い性格・行動があってもそれが個性。完璧でない部分が見え隠れしてこそ人間味があって親しみが持てるんじゃないかな。恋愛も含めてさまざまなことでトライ&エラーを繰り返して人間も日々成長していくってもんじゃないだろうか?そういうとこだよ、温水君。 by 八奈見 杏菜

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目の前に映る世界が180度変わるくらいに衝撃的な出会いって、人それぞれ一度ぐらいはあるんじゃないかな?「僕の心のヤバイやつ」

私は割といろんなジャンルのアニメを観ますが、結果とし一番観ているジャンルは年甲斐もなくラブコメだったりします。面白くてそれでいて心がキュンとするようなアニメが好きだからかもしれませんね。おっさんとラブコメという非常に似つかわしくない関係性にはあまりツッコミを入れずにどうか温かい目で見ていただけましたら幸いですが(;^_^A。

ラブコメはコメディとシリアスの割合がほど良く、適度に楽しい部分と主人公とヒロインの繊細な心のやり取りを魅せるシリアス部分の両方があって、気がつけば自然とサクサク観進めて行けるジャンルかと思います。二人の関係性が深まって徐々に距離が近くなっていく過程の互いの心の描写が細かに映し出されているラブコメが好きですね。

ラブコメと言えば大抵はそこそこの美男美女同士の恋愛事情なわけですが、最近のラブコメは主人公が見た目ではパッとしないのですが、相手の性格の良さや優しさ、あるいは尊敬できる内面の魅力に相手側の美男か美女が引き寄せられてラブに発展していく、という作品がそれなりに出てきております。

美男美女のラブコメは理想や憧れの部分で見入ってしまいますが、片側が見た目普通でも内面的な魅力でつながるようなラブコメ作品はより現実的で親近感もあり、共感も得やすいのではないかと思います。

最近観た「僕の心のヤバイやつ」というアニメもそう言った方向性の作品です。

登場する主人公は中学2年生の男子で、クラスの誰とも群れないで一人で過ごすのが日常的な地味で目立たない内向的な男子。ヒロイン女子の方は明るく活発的でクラスの中でも人気がある、学校以外ではファッション雑誌のモデルもこなすスタイル抜群な美少女系モテ女子です。何故この二人が惹かれ合うようになってしまうのか?気になりますよね。では、第1話だけ物語をご紹介いたします。

僕の心のヤバイやつ5

主人公の”市川 京太郎”は重度の中二病である。妄想の中でクラスで一番の美少女”山田 杏奈”を殺したいと思っている。彼女の美しい死体を想像し彼女が自分の物になることを。これはあくまで妄想である。昼休みに教室で一人、ホラー系の本を眺めながら彼はそんないけない妄想を抱きながら常々自己嫌悪に陥っている。

昼休みは教室が騒がしくなるため彼は自分の聖域である図書室で一人本を読むのが日課である。そんな彼がいつものように図書室へ行きドアを開けると、そこには思いっきり大口を開けて大きなおにぎりをほおばっているクラスの人気者女子”山田 杏奈”がいた。彼女と思わず目が合ってしまったが、彼は予期せぬ光景に出くわし、戸惑いながら何事もなかったように通り過ぎようとした。すると彼女は口にものが入ったまま京太郎に何か話しかけて来た。しかし何を言っているのかよく聞き取れなかった京太郎は彼女に無難な返事をしながらその場を通り過ぎた。

その後彼は本棚の隙間から彼女の行動を観察しはじめた。今度は彼女はカバンからパーティサイズの大きなポテトチップスの袋を取り出し、おもむろにそれを食べ始めたのだ。ご機嫌に鼻歌まで歌いながら。給食を先程食べたばかりなのに大きなおにぎりをたいらげ、さらにポテチまで食べるとは。「おいおい山田、それは食べすぎだろ」思わず彼は心の中でそうツッコミを入れてしまった。

次に山田は社会の時間に班ごとに発表するための研究資料を机に広げ、下書きもなしでいきなりマジックで書き始めた。案の定、タイトルの文字のバランスがひどい。しかし山田は一人うなづき、自分を納得させていた。「いやいや、いきなり下書きなしで書いたらそうなっちゃうだろ」彼はそう思った。

さらに山田は紙を切るために筆入れからカッターを取り出そうとするがカッターが見当たらない。京太郎は自分が持っていたカッターを差し出そうと思ったが、いつもカッターを持ち歩いている行動をキモイと呼ばれるだろうと想像して躊躇した。しかしさすがに手で紙を破き始めた山田を見かねて「良かったら・・・」と彼はカッターを彼女に差し出した。以外にも、「ありがとう。」という山田の笑顔と言葉が返ってきて安堵する彼だった。

やがて昼休み終了のチャイムが鳴ると山田はカッターを借りていることをすっかり忘れ、自分の筆入れにしまって図書室を後にした。そこへちょうど山田の親友女子が彼女を探しにやって来た。ポテチの袋を持っていた山田を見ると親友は「一人でお菓子食ってたんだろう?」と山田にツッコミを入れた。すると彼女は「食べてないよ。」と言ってポテチの袋を口に当て残りをすべて平らげるとその袋を京太郎に「はい!」と渡して親友の女子と一緒に教室に帰ってしまった。

僕の心のヤバイやつ6

空のポテチの袋を渡された京太郎はその意味不明な彼女の行動に戸惑ってしまう。そして彼は普段みんなが見ている美少女とは違った新たな彼女の一面を図書室で目の当りにすることになった。

学校の帰りに彼が本屋へ立ち寄ると、そこへ伊達メガネをかけた私服の山田が現れた。自分がモデルとして掲載されているファッション雑誌を見に来たようだ。その雑誌を見ている女子学生を目にした山田はメガネを取り、”私に気づいて”アピールをするがまったく気づかれず、その二人に割り込んで雑誌を探すフリをするが、むしろ迷惑な客に映り二人は雑誌も買わずに店を出て行ってしまう。

山田はおもむろに自身が載っているその雑誌を隣の雑誌の上に載せてフェイスを広げてみた。さらに壁に貼られたサイン色紙を目にした山田はカバンからペンを取り出し、サインの要望に応えられるよう備えてみた。するとそこへ店員がやって来たが一向に雑誌モデル・山田の存在には気付かずに雑誌のフェイスをもとに戻していなくなった。山田は我に返ってその後店を出た。

京太郎はその雑誌に興味を示し、先程の逃した雑誌客の代わりと言いながら理由付けしてその雑誌を買って帰った。家に戻りその雑誌を見るとあらためて彼女が雑誌モデルをしている現実と自分とは違う世界で彼女は生きているんだということを知って空虚な気持ちになった。

翌日の朝、通学途中で京太郎は親し気に男子に話しかけられている山田を見かけた。後ろから二人の様子をうかがってみるとどうやら彼氏ではなさそうな雰囲気である。相手は上級生の男子のようで粘り強く山田にライン交換をお願い中だが山田が適当にそれを受け流しているようだ。しかし相手に根負けしてついにラインを伝えそうな展開に。

なぜだか京太郎はいたたまれない気持ちになり押してきた自転車を二人の脇道へと勢いよく押して走らせた。自転車はガードレールにぶつかり勢い余ってフェンスを乗り越え川へと落ちて行った。突飛なその行動に周りの通学生徒もあっけにとられ、そのどさくさで二人のライン交換はうやむやとなった。それを目撃した山田は京太郎に尋ねた。「なんで投げたの?」「アクセルとブレーキを間違えて・・・」とっさにそう答えてしまった京太郎。すると彼女は涙を流しながら笑ってこう言った。「市川って面白いね。」

今までまったく話したことすらない山田から誉め言葉をもらった京太郎は彼女を意識し始めている自分に気が付く。遠目から観ていた女子とここ数日でいきなり急接近してしまった展開に驚く京太郎。自分とは違う世界の住人だと思っていた彼女だが必ずしもそうではなかった。これから先、二人にはどんな展開が待ち受けているのだろうか?(第1話)

僕の心のヤバイやつ7

この作品の魅力は、中学生同士の淡い恋心、相手に対しての純粋な好きという気持ちが素直な行動となって主人公・ヒロインを突き動かしているストーリー性にあります。ただのクラスメイトからとあることでつながりができ、少しずつ親しくなり、相手を意識し始め、やがてその気持ちが好きなんだと気づき毎日が特別なイベントに変わっていく。二人がそれぞれ持っていた世界が新しい世界へと変わって行く様がゆっくりとした時間経過の中で丁寧に描かれています。

クラスメイト→友人→両片思い→両想い?となっていく過程で様々な素敵なエピソードがたくさん出てきます。ヒロインが冬休みの時期に主人公に学校で会えなくなるためクリスマスの日に彼に会うために口実をつくる話や、雨の日に相合傘で帰りたいためのヒロインの行動回は必見です。そして主人公が先輩方の卒業式に在校生代表の送辞に抜擢された際にヒロインに支えられながら一念発起して大役を果たすエピソードもグッときます。

外見の良し悪しにの比重で好きかどうかの判断に囚われそうに見える中学生ですが、本質である内面をしっかりと観ていて互いが惹かれ合い、そして尊敬の念をもって真摯に接しているところがとても素敵だなって思えるストーリーになっています。だからこそ観ていて心がキュンとさせられるのだと思います。

ストーリーの良さはもちろん、主人公・ヒロインのキャラ設定が良いですね。主人公は陰キャな性格の中二病男子ですが、実は地頭は良く大人びた思考を持っていてヒロインからの投げかけに理路整然と最適解で答えるキャラです。また外見からのイメージに反して肝心な時に逃げ出さないで決めるときは決められる男だといったところも素敵ポイントです。

対するヒロインの方は、天真爛漫な美少女でありながら美少女らしからぬ行動をとってしまうあけっぴろげで天然な性格がギャップとなっています。しかし学校以外では芸能関係の世界でプロ意識をもってしっかりと仕事に打ち込むといった二面性を併せ持つ設定になっていて、そこもまたギャップとなってヒロインの魅力を押し上げています。

主人公・ヒロインのそれぞれの役柄にピッタリな声優さんがキャスティングされ、唯一無二のキャラ性を感じました。主人公・市川 京太郎/”堀江 瞬”さん、ヒロイン・山田 杏奈/”羊宮 妃那”(ようみや ひな)さんのお二人が演じていますが、それぞれが最高なキャラを作り上げてくれています。

僕の心のヤバイやつ1

この作品は漫画家”桜井のりお”さんによる同タイトル漫画が原作です。「週刊少年チャンピオン」2018年15号~18号に登場し、その後ウエブコミックサイト「チャンピオンクロス」2018年4月~6月掲載→「マンガクロス」2018年7月~掲載となっており、その後アニメ化され2023年4月6月に第1期全12話、2024年1月~3月に第2期全13話が”テレビ朝日”系全24局で放送されました。インターネットは”Amazon Prime Video”で独身配信後、現在”dアニメストア”でも配信中です。

ジャンル/”ラブコメ”、監督/”赤城 博昭”さん(からかい上手の高木さんの監督)、

シリーズ構成・脚本/”脚本家・ライトノベル作家の花田十輝”さん(STEINS;GATE、中二病でも恋がしたい!、境界の彼方、ノーゲームノーライフ、響け!ユーフォニアム、宇宙より遠い場所、ラブライブ、ラブライブ!サンシャイン!!、ラブライブ!スーパースター!!のシリーズ構成も担当)、

キャラクターデザイン/”勝又 聖人”さん(五等分の花嫁のキャラデザも担当)、

アニメーション制作/”シンエイ動画”(からかい上手の高木さんの制作会社)。

<主な出演声優さん>
市川 京太郎:”堀江 瞬”さん、山田 杏奈:”羊宮 妃那””(ようみや ひな)さん、友人・小林 ちひろ:”朝井 彩加”さん、友人・関根 萌子:”潘 めぐみ”さん、友人・吉田 芹那:”種﨑 敦美”さん、友人・原 穂乃香:”豊崎 愛生”さん、友人・足立 翔:”岡本信彦”さん、友人・神崎 健太:”佐藤 元”さん、先輩・南条 ハルヤ:”島﨑 信長”さん、京太郎の姉・市川 香菜:”田村 ゆかり”さん

最後はオープニングテーマとエンディングテーマの紹介です。何度でも聞きたくなる2曲をどうぞお楽しみください!

第2期オープニングテーマ「僕は・・・/あたらよ」
第2期エンディングテーマ「恋してる自分すら愛せるんだ/こはならむ」


10月29日は私の57歳の誕生日でした。
それに合わせてブログで交流のある、絵師の風月時雨様(私は時雨お嬢様と呼んでおります)が
私の好きなアニメキャラをオリジナルイラストで描いてくださいました。
イラストは「鬼滅の刃」に登場する鬼殺隊の水柱”冨岡 義勇”さんです。

kimetu241003.png

「鬼滅の刃~柱稽古編~」皆さんも観てくださいね。冨岡さんの鬼殺隊士になるまでの生い立ちがわかります。
言葉少なく一見クールに見えて実のところ思慮深く優しい富岡さんの内面が伝わってくるイラストです。
平面に描かれたイラストですが、立体感があって今にも動きそうな躍動感のあるタッチで描かれていて素晴らしいですね。

冨岡さんのトレードマークと言えば左右が違う羽織です。
右半分の無地が姉の形見で左半分の亀甲柄が仲が良かった鬼殺隊士を目指していた錆兎の形見であり、自戒の証として忘れ形見を身にまといながら彼は鬼と戦っています。
それを知ってでしょうか、時雨お嬢様のとても気持ちがこもったイラストの羽織も丁寧にかつ柄まで細かく奇麗に再現されていまして驚きです。

そして義勇さんの隊服姿ももちろんカッコ良く描かれていますが、水柱ならではの特徴的な濃い水色の刀・日輪刀も細部まできめ細やかに描かれております。
素敵なイラストを今年も描いていただきうれしいですね。ありがとうございました!

時雨お嬢様の大好きなものがたくさん紹介されていますブログはこちらです。五月時雨日記<仮の宿>
せひ、お嬢様の素敵な世界をみなさんも一度覗いてみてくださいね!

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今の自分を越えたいならば今以上に努力を重ねるしかない。諦めも継続も最後に決めるのは、やはり自分自身である。「忘却バッテリー」

私が好きなスポーツはサッカー。小学4年から6年までは少年野球団で野球をやってましたが手を使う球技がいまいち自分にはフィットせず野球はそこで終了。中学・高校では足クセの悪さが功を奏して?サッカーをやっていました。観る方もどちらかと言うと野球よりはサッカーを観ます。だけど、なぜか漫画やアニメにおいては圧倒的に野球をテーマとした作品に惹かれてしまいます。

「巨人の星」「ドカベン」「タッチ」「MAJOR(メジャー)」あたりが私が通過してきた野球アニメです。どの作品も基本的には野球+努力+友情あたりが主なテーマとして取り上げられています。ただし、「タッチ」だと家族・恋などのテーマもさらに加わりますし、「MAJOR(メジャー)」だと家族・逆境などがテーマに盛り込まれています。野球だけじゃない、プラス・アルファの要素がそれなりにどの作品にも入っていて、とてもドラマチックに観ることができた作品だったという印象です。

これらの作品は野球と一緒に扱うテーマの多少の違いがありますが、どれも魅力ある素晴らしい作品であることに間違いはありません。その中で「タッチ」が個人的には一番共感できた作品です。私の青春期にやっていた作品であることが一番の理由になるかと思いますが。南ちゃんという可愛いらしいヒロインが登場し、野球とは別に双子の主人公たちとの男の子との恋の行方も気になるエピソードがあったりして自分の中では大いに盛り上がりましたね。

そして「タッチ」に関してはコメディとシリアスのバランスの良さがとても魅力的に映りました。南ちゃんを好きな主人公が彼女が望む甲子園出場を果たすという大きな目標があり、それに向かって努力する主人公の姿が積み重なって物語は進んで行きますが、さらに全国の頂点を極めるというサプライズ的な展開も用意されていて、その最高潮の記憶が私の脳裏に深く刻まれる事となり、生涯その記憶は私の中から消える事はないかと思います。

良い作品・愛される作品はベースとなるテーマに向かって複数のテーマも巧みに関連付けられていて、より厚みのあるお話になるよう構成付けされているんじゃないでしょうか。主人公のバックボーンが徐々に浮かび上がり、人間臭さのあるスト-リー展開で進んで行くような作品こそが多くの読者・視聴者に共感・支持されるのでしょう。
それは決して野球漫画や野球アニメに限ったことではなく、他のスポーツ作品でも同様なことが言えるのではないでしょうか。

最近観たスポーツアニメで一番面白かったのは「忘却バッテリー」という野球がテーマの作品です。

忘却バッテリー1

中学野球界で屈指の天才バッテリー(ピッチャーとキャッチャーのこと)と謳われた二人が、何故か野球では無名の高校に入学。二人のバッテリーの卓越したすごさを知る同級生に誘われ再び野球をやることになるわけですが・・・。

チーム全体を束ねる野球の頭脳と呼ばれるポジションのキャッチャーとして、まわりからは”智将”と呼ばれる存在だった主人公が記憶喪失となっていて、その存在を微塵も感じさせないくらいにとてつもないおバカなふるまいをする人物に変わってしまっています。片やのピッチャーであるもう一人の主人公は、バッターボックスに立つ対戦相手をことごとく自信喪失に追いやってしまうほどの豪速球で相手を粉砕します。

この二人のバッテリーと対戦して自信喪失に追い込まれ野球を引退してしまった野球部員は数知れず。そんな元野球少年二人が主人公たちと同じ高校に入学していて、ひょんなことからこのバッテリ-二人との運命的な再会を果たすのでした。一度は諦めた野球ですが、二人の存在が彼らを刺激して再び野球の世界に戻されるわけですが・・・。このバッテリーの求心力で周りには野球経験者も次第に集まり徐々にチームはまとまり強くなっていく、といったストーリーです。

全13話のお話ですが、この1期だけでは物語は完結しません。はじめから2期続投が前提の作品なんだと思います。なぜ記憶喪失になったのかは1期の中では明らかにされていませんが、やはりそのあたりは気になるので2期を心待ちにしたくなるわけです。
記憶喪失なるという事は事故、あるいは過度の様々なストレスから逃れたいなどの理由とかがあるのかもしれません。今までの野球漫画・アニメと一味違ったテイストを感じるこの作品、いずれ明らかになる理由という伏線が備わったあらたな野球漫画・アニメが新境地を切り開きます。

忘却バッテリー3

”清峰 葉琉火(はるか)”と”要 圭”は最強のバッテリーである。最強がゆえにすべての球児たちの夢を打ち砕く。絶対に忘れることのできない悪夢のようなバッテリーだ。試合終了後に要圭は言う。「相手のことは気にするな。」「でも・・・」「大丈夫だ。負けた相手のことをいちいち考えるな。お前には未来があるんだから全部忘れろ。」「うん。」

剛腕ピッチャーの葉琉火とチームの司令塔で強肩キャッチャーの圭、二人は宝谷シニアのバッテリーで中学野球界においては無敵の存在である。ここは病院の一室。圭は頭に包帯を巻いてベットの中でバナナをむいて食べていた。そこへ葉琉火が見舞いにやって来た。葉琉火を見た圭が答える。「あれ、君、誰だったっけ?」彼らに何が起こったのか?

親父に冗談でつけられたような名前の”山田 太郎”は勉強もスポーツもごく普通の都立小手指高等学校へ入学を果たした。葉琉火との対戦で身の程を知った太郎は野球とは無縁の高校へ入り自由な学校生活を送ろうとしていた。登校初日、校門近くにイケメンがいるとのうわさに耳を傾けた太郎の視線の先に、なんと清瀬 葉琉火と要 圭の姿があった。まさかこんな野球部もない学校に名門への特別推薦枠が山ほど入る二人がいるわけがない、といい聞かせながら再び視線を向けると間違いなく要 圭本人であり、なぜかこっちを見ているではないか。

そして要 圭は近づいて来て山田 太郎に話しかけてきた。「助かった~、女子が誰一人オレに話しかけてくれね~んだもん、存在感なかったわ。良かった、友達いて。」すると太郎は答える。「えっ、友達?ボクは友達ではないと思うけど、話すの初めてですし。」「えっ、そうだっけ?OK、OK、じゃ今から友達な。マブダチ記念にオレの一発芸を特別大公開!パイ毛~!!」目の前には冷静沈着で智将と呼ばれた憧れの存在の要 圭がいるはずなのだが、めちゃくちゃ頭が悪そうだった。気がつけば山田は二人と同じクラスになっていた。

下校時間、外では部活の勧誘が行われていた。野球部が無いはずの学校だったのに今年から愛好会のような野球部が発足されていた。野球部員に声をかけられた葉琉火だが、まさか入るわけがないと思っていた山田をよそに入部届けにしっかりと名前を書いている葉琉火の姿が。「山、お前も入れ。」まさかの憧れの存在で自分よりも上手な人に逆らえない山田は名前を書いてしまう。「圭も・・・」「やりま千円。野球とかあり得ナイツ。キャッチャーとか誰でもいいじゃん。オレ、ルールとかも全部忘れたから無理よ。」「だめだ。圭じゃなきゃオレの球は取れない。」「買いかぶり過ぎだって。若いんだから視野を広く持とうぜ。」「でも・・・」

忘却バッテリー8

そこへいかにもクズな先輩野球部員がやって来た。葉琉火にどのポジション希望なのかと尋ね、葉琉火がピッチャーと答えると早速対戦しようと言う話になる。野球グランドに行き山田がキャッチャーのプロテクターを付け葉琉火の球を受けることになった。正規捕手でない山田に対して葉琉火は100キロ程の速さの球しか投げない。当然、先輩はバッティングセンターのようだと言いながらバカすか葉琉火の球を撃ち返した。「もうそろそろやめてやろうか?これ以上おもちゃにしたらかわいそうだもんな。」

本来の葉琉火の球なら打たれるはずがないのにと悔しい想いがこみ上げた山田は立ち上がり、「清峰君、全力で投げていいから。今まで手加減させてゴメンね。絶対とめてみせるよ。」とそう伝えた。「あのピッチャーホントしょぼいな。本気出してなかったみたいな。」もう一人の先輩がそう言いながら笑うのを見た圭はいたたまれなくなって答える。「山ちゃん、ゴメンな。オレと代わって。オレ、ラブ&ピースで行きたいからさ。こういう状況ってどうにも気に入らねえから。」山田と代わってプロテクターとマスクをかぶった圭は臭いだのかゆいだのを連発しだした。本当に以前にキャッチャーをやっていた記憶がないのだ。

山田はしゃがみこんだ圭にボールをキャッチするための構え方を教えた。キャッチャーが圭に代わると葉琉火の意識は変わり、肩をぐるぐる回し体制を整えはじめた。ついに二人のバッテリー復活の瞬間が訪れる。「バッチ来い!」圭の掛け声のあと、圭のキャッチャーミットど真ん中めがけて葉琉火のすさまじい速さのボールが投げ込まれた。バッターボックスに立っていた先輩は身じろぎ1つせず驚きおののきその場から退散した。彼女と会わなければいけないことを理由に先輩たちはいなくなった。葉琉火の全力の一球を受け止めた圭は手のひらを眺めていた。

「とれたね。」山田の言葉に圭が答える。「うん。ジンジンする。」それに対し葉琉火が答える。「オレの球で思い出させてやるよ。野球の楽しさ。」感動の瞬間かと思いきや、我に返った圭は「いやいや、無理無理、イイっす。ノーサンキュー。本当に本気で投げるやつがあるか!二度と野球なんかやらないから。葉琉ちゃんのバカ!~、山ちゃんのうんこ!~。」そう言ってグランドから逃げ出す圭であった。今、二人の野球人生が再び動き出し始めた。無名の高校野球部で最強バッテリーの復活はいかに!?(第1話)

忘却バッテリー13

この作品の面白さは一番にありきたりでない物語性にあります。絶対的な無双の強さを誇る二人のバッテリーでありながら、片方が記憶喪失に見舞われます。一旦築いたものが崩れ、再び二人がその糸口を辿り再構築していくお話です。記憶喪失なので野球のやり方も一から覚えるわけですが、体が記憶していることが多少の救いにはなっています。親友と再び野球がしたいという想い。自分が何者かを忘れてはいるけれど親友の気持ちにも応えたいという想い。

徐々に野球の面白さに気づきはじめ、親友と再び勝利を目指していく。それと同時に過去に二人と対戦したがために野球に挫折してしまった男が二人、同じ高校で偶然の再会を果たします。そして彼らも共に野球部のメンバーとして復活するのですが、彼らの野球に対する情熱の復活群像劇にも注目です。野球+努力+友情+逆境?の青春物語を堪能していただければ幸いです。スポーツとくればやはり努力、そして友情ですよね。これらのメンバーで高校野球のどこまで昇り詰めていくのかが楽しみな作品です。

また、コメディとシリアス展開の程よいバランスが絶妙で視聴者を飽きさせない作品でもあります。鋭いギャグと熱いシーンが本作品の特徴であり、こちらには声優さんの力も大いに関係しておりまして、主人公・要 圭の二面性を演じる宮野 守さんと山田 太郎兼物語のナレーション担当も演じる梶 裕貴さんの上手さが光っております。そのあたりの声優さんの作品に対する貢献度合いも併せて観ていただければ嬉しいですね。

物語性と声優さんの力量が相まって場面場面でいつの間にか作品に引き込まれてしまいます。2期以降の制作にも期待しつつ小手指高校野球部の躍進を一緒に見守っていきましょう。

この作品は漫画家”みかわ 絵子”さんによるウエブコミックサイト「ジャンプ+」に2018年4月26日より隔週木曜日に連載中の同タイトル漫画が原作です。既刊19巻。アニメ化され2024年4月より”テレビ東京”系全6局で全12話が放送となりました。

インターネットは”Amazon Prime Video”、”dアニメストア”、”Netflix”、”Hulu”、”ABEMA”、”U-NEXT”、”バンダイチャンネル”、”ニコニコチャンネル”、”FOD”他で配信中です。

ジャンル/”スポーツ”・”青春”、監督/”中園 真登”さん、シリーズ構成/”横手 美智子”さん(SHIROBAKO、ツルネ-風舞高校弓道部-、からかい上手の高木さんのシリーズ構成も担当)、キャラクターデザイン/”長谷川 ひとみ”さん、アニメーション制作/”MAPPA”。

<主な出演声優さん>
清峰 葉琉火:”増田 俊樹”さん、要 圭:”宮野 守”さん、山田 太郎:”梶裕 貴”さん、藤堂 葵:”阿座上 洋平”さん、千早 瞬平:”島﨑 信長”さん

疾走感のあるオープニングテーマとどこか懐かしい気持ちにさせてくれるエンディングテーマもとても耳に残ります。こちらの青春ソングもぜひ、ご堪能下さい。
オープニングテーマ「ライラック/Mrs.GREEN APLLE」
エンディングテーマ「忘レナ唄/マカロニえんぴつ」


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順風満帆に歩んでいる人はむしろ稀である。過去に囚われ一人で前に進めないでいる人も、出会いがきっかけで解き放たれることもある。「夜のクラゲは泳げない」

これから先の人生が真っ白で、何色にでも染まることが出来る伸びしろしかない10代の若者たち。片や何色かに染まってしまって伸びしろなんかもう1ミリぐらいしか残されていないんじゃないかと思う50代の私。

「憧れるのはやめましょう。」大谷翔平さんは言いました。彼の意図することは自分たちと戦う相手は同等と考え臆せずプレーしよう!という意味でしょう。普通日本代表のおじさんである私は別な意味でそろそろいろんな事に憧れるのをやめなければいけない歳かなって思ってしまいます。目の前の家族の幸せが第一なのは言うまでもありません。決して自分のやりたいことをすべて諦めるという事ではないのですが、家族ファーストかつ自分が今後実現したいことをきちんと精査して、より計画的に推し進めていく事が大事かなと思っています。

おじさんとは違って多くの若者世代の方たちは自分が何者かになれることを夢見ていろんな事に挑戦し、悩み、努力しながら我が道を切り開いて行きます。未知の可能性に邁進して行くその姿はとても愛おしく映り、自分事のように応援したくなりますよね。そんな憧れる未来が待っている若者たちでも早い段階で何かしらの障害や挫折を経験し思い悩んでいる方々も片や存在していることでしょう。

日の当たるところを真っ直ぐすんなりと歩んで来れた人、そうでない人。悲喜こもごもな様々な事情をみんな抱えて生きているのだと思います。決して順風満帆に歩んでいない若者たち、でもどこかでそこから抜け出したいと考えているけど一人ではどうにもならないと諦めきっている若者たち。

本日紹介します「夜のクラゲは泳げない」というアニメは、そんな状況下に置かれているつまづきがちな10代の女子たちが、ふとしたことがきっかけで出会い、互いに触発されてそこから再び新たな一歩を踏み出すという青春群像劇です。暗闇から日の当たる場所を見つけ出そうと共通の目標に向かって一緒に奮闘していく彼女たちの毎日にスポットを当てた青春グラフティ、なんていうのもたまにはいかがでしょうか。

おじさんには一生懸命な若者たちの姿はとてもまぶしく映りますが、何かに挑戦する姿勢は年齢に関係なくいつまでも無くさないようにしたいものですよね。そんなちょっとしたカンフル剤的若者アニメを今回はお勧めいたします。

夜のクラゲは泳げない2

かつて小学生の頃、街の壁画を描くコンテストで原案が選ばれ、クラゲの壁画を描いたことがある輝かしい過去を持つ女子高生の”光月 まひる”。しかし、今はごくごく普通の量産型高校生になっていた。

渋谷へハロウィンコスプレで出かけようと友達から誘われたまひるは、そのコスプレ衣装を買いに夜の渋谷に出かけた。お店でコスプレ衣装を探していると派手めな衣装に目が留まった。まひるはそれを手に取ろうとしたがタッチの差で派手めな格好の女の子が先にその商品を手にした。仕方なくまひるはその隣のやや控えめな衣装を買って店を出た。

その後まひるは、かつて自分が描いたクラゲの壁画を眺めようと渋谷のその場所を訪れた。そしてまひるは絵にまつわる昔の記憶を思い出していた。壁画を描いたその当時、自分が描いたその絵を友達に見せようと一緒に壁画前にやって来たまひる。しかし、壁画を見るなり友達二人は変なクラゲの絵だと話し始めた。その絵を描いたのは自分なんだと本当は言いたかったまひるだが、へんな絵だと否定されてしまい思わず壁画に描かれた自分の名前を隠しながら友達の会話に同意してしまう。まひるはそのことがトラウマとなってその後は一切絵を描かなくなり、目立つことは極力しない、ごく普通の高校生になってしまったのだ。現在のクラゲの壁画にはところどころ落書きがされていた。

店先で見たカワイイ靴下を買っての帰り道、再びまひるがその壁画前に差し掛かると、その壁画に自身のライブ配信の案内ポスターを貼りながらライブパフォーマンスを披露している地下アイドルらしき女子がいた。

「やめて!これ以上私の絵を汚さないで!」とそう叫びたかったまひるをよそに、隣から「おい!私の好きな絵を汚してんじゃねえ!」と大声で叫ぶ女の子が現れた。自分の思いを代弁してくれたその女の子が気になったまひるはそこから立ち去ったその子の後を追った。しかし、途中で尾行していることに気付かれてしまったまひるは何故尾行をしてきたのかその子から理由を問いただされてしまう。自分が描いた壁画をかばってくれたこと、その絵を描いたのが自分であることを彼女に伝え、それを証明するためにまひるは自分のスマホのアカウントを彼女に見せる。そこには”海月ヨル”と書かれた名前とクラゲの壁画が貼られていた。

まひるは彼女にどうして絵をかばってくれたのかを尋ねた。彼女は中学の時に初めてまひるのクラゲの壁画に出会い、一目ぼれしてそれからずっとその絵を好きでいてくれていることがわかった。彼女は”山ノ 内 花音(かの)”、高校2年生。もとアイドルとのこと。かつてアイドル時代に炎上するような事件を起こして今はアイドルはやめ、ネットに自作の曲をアップする匿名シンガーをやっているのだと。彼女が目指すのはフォロワー10万人で、かつての自分をバカにした人たちを見返し、自分を嫌った人たちも自身の歌で感動させたいらしい。

夜のクラゲは泳げない3

彼女の匿名シンガーとしてのアカウントを見せてもらうとその中にJELEE(ジェリー)という名のアーティスト名とクラゲとは似つかない自称クラゲの自作イラストが貼られていた。彼女いわく、クラゲは英語でゼリーフィッシュ(jellyfish)という事からアーティスト名をジェリーにしていると(スペルは間違っているが)。花音は自分の曲をまひるに聴いてもらおうとスマホのイヤホンを差し出した。まひるはその曲を聴いた。カッコいい曲だとまひるは花音に曲の感想を伝えた。すると花音は、クラゲのイラストは本当の自分を表現しているのだと言い始めた。

すべてはクラゲの壁画が自分に影響を与えていることを花音はまひるに伝える。知らなところで自分の絵が誰かに影響を与えていたことを初めて知ったまひるは恥ずかしそうにありがとう、と花音に気持ちを伝える。花音はまひるに本物のクラゲの絵を描いてほしいとお願いする。しかし、ごく普通の高校生に成り下がってしまったまひるは”特別な存在”の花音に気後れしてその提案を断ってしまう。それを聞いた花音は、「まひるは普通の人間だったんだね。」と残念そうに思う気持ちを返した。モヤモヤした気持ちを抱えながらまひるは家路についた。

お風呂に入りながら花音の過去記事をネットで調べるまひる。彼女はアイドルグループ「サンフラワードールズ」のリーダー兼センターの”橘 ののか”として活躍していた。しかし、とある暴力事件を起こしてグループを脱退との記事が出てきた。詳しい事はわからないが、それでも再起をかけて音楽活動をしようとしている花音の強い意志を感じるまひるだった。

ハロウィンコスプレ衣装で友達と渋谷に繰り出したまひる。すると、自分が買おうとしたコスプレ衣装を身に着けた子をまひるは渋谷の街中で見つけた。まひるはその子を追いかけた。着いた先はまひるの描いた壁画がある場所だった。その壁画の前では先日の地下アイドルがまた路上ライブをしていた。偶然なのか、その子は花音のオリジナル曲をコピーして歌っていた。それを聴いたまひるは「私の好きな歌を汚してんじゃねえ!」と思わず小声でつぶやいてしまう。すると隣から「私の好きな歌を汚してんじゃねえ!」と大声で叫ぶ花音の姿があった。まひるが買い損ねたコスプレ衣装をまとった花音だった。

「誰の好きな曲だって?」花音はまひるをいじる。そしてまひるの耳元で「ヨルのクラゲの絵の前で歌いたい!」そうつぶやきながら路上のギターリストからギターを借りてギター片手に自分のオリジナルソングを歌い出した。まひるはその行動に揺り動かされ、クラゲの絵の上に貼られた地下アイドルのポスターを引きちぎり、花音のリクエストに応えて持っていた口紅でクラゲの壁画に顔を描いた。それは二人のコラボが初めて実現した瞬間だった。

歌い終わった花音はまひるの手を取り夜の渋谷の街へと走り出す。「花音ちゃん、クラゲってさ、一人では泳げないし輝くこともできないけど、外から光を貯め込んだら自分でも輝けるようになるの。だから、私も、私も花音ちゃんのそばにいたら輝けるかな?」花音は答える。「もちろん!だから私のために描いてよ!」二匹のクラゲたちは新たな光を貯め込み、輝き始めた。(第1話)

夜のクラゲは泳げない1

自分だけの問題だとそもそもが他人には関係ない事なので自分が変わりたいと思っていても、自らが動かない限りは状況は何も変わりません。しかし、他人との関りの中で人のために動かないといけない、あるいは人のために動いてみようと心が動かされた時、人は新た行動を起こすことが出来るのかもしれませんね。私たちは日々の生活の中で何気に他人との接触・関りが自分の行動エネルギーに大きく作用することを学習していて、その経験をいつの間にか実践しているといった具合なんじゃないかと思います。

人との関り、自分以外の存在が自身に与えるてくれる影響・パワーは計り知れないものがあるかもしれません。今年の5月、千葉にいる親友からラストメッセージのような電話が入りました。もともと難病を背負っていた彼ですが、さらに別な病気も併発していて治療が思わしくなく、食事も満足に摂れずに体重が激減して今は40kgを下回っているとの事でした。自分ばかりがどうしてこんな状況に置かれてしまったのかという理不尽さも手伝って生きる希望を無くして自暴自棄になっており、彼曰く、自分が生きているうちに千葉に一度会いに来てほしいと懇願されました。

私は妻にその事を話し、彼に会いに行く了承を得て彼にその旨を伝えました。するとしばらくして彼から電話があり、どうせ来てくれるなら秋までに自分なりにリハビリして体力をつけて外出先で一緒に食事を楽しみたいので秋になったら来てほしい、とのことでした。私が会いに行くことがどうやら彼の生きる希望の一つになったようです。その後2~3週間に1度ぐらい電話をくれるようになり、ちまたの世間話をかわすぐらい明るい雰囲気を感じることが出来るようになりました。治療薬も適合し始めているようで何よりです。

万人が皆平等ではないので、人それぞれの与えられた環境下で自分なりのポテンシャルで自分なりに人生を進めていくしかない、ということですね。自分と他者との繋がり・作用を上手く用いて悔いのない生き方をしていきたいものです。自分だけではどうしようもない事、あるいは動けない事、そして堀固まって変えられない考え方も”他者との繋がりを通しで変わることもある”、という事がこの作品から得られることでしょうか。

それとこの作品、最近のネット時代の良し悪しにも物語上で触れていますので、各々がSNSも含めたネット社会にどう関わっていくかの指標にもなるかもしれません。溢れるネット情報の収集と自身からの発進も人それぞれの時代。法整備が立ち遅れているSNS全盛のネット時代の副作用で、昔よりも他人の目を気にしながら生活しないといけない、ある意味自由度合いが低くなったような生きにくい世の中にもなってきていると思います。他人からの誹謗・中傷もかなり問題視されている今、互いにそういったものに晒されない生き方を自身としても気をつけていかないといけませんよね。

夜のクラゲは泳げない4

この作品は、「推しの子」「ちいかわ」を制作しているアニメーション制作会社”動画工房”による原作を”JELEE”とするオリジナルアニメです。ジャンルは青春。
監督/「エロマンガ先生」を監督した”竹下 良平”さん、シリーズ構成・脚本/”屋久 ユウキ”さん、キャラクターデザイン/「魔法少女まどか☆マギカ」総作画監督、「月刊少女野崎くん」「多田君は恋をしない」のキャラクターデザインを担当した”谷口 淳一郎”さんです。

TVアニメ化され2024年4月~6月に”BS11”で全12話が全国放送されました。インターネットでは”dアニメストア”、”U-NEXT”、”Netflix”、”ABEMA”、”Amazon Prime Video”、”バンダイチャンネル”、”Hulu”、”ニコニコチャンネル”、”FOD”他で配信されています。

コミカライズ・ノベライズもされてまして2024年4月より”藤居 にこ”さん作画による同タイトル漫画が講談社コミックより2巻 発売となりました。また2024年5月より”屋久 ユウキ”さん著作で同タイトル小説もガガガ文庫(小学館)より3巻 発売されております。

出演されている声優さんですが、メインヒロインは4人です。
◆光月 まひる役:”伊藤 美来”さんで「五等分の花嫁」中野 美玖役、「白い砂のアクアトープ」海咲野 くくる役などを演じた方です。
◆山ノ内 花音(かの)役:”高橋 李依”さんで「この素晴らしい世界に祝福を!」めぐみん役、「からかい上手の高木さん」高木さん役を演じた方です。
◆渡瀬 キウイ役:”富田 美憂”さんで「メイドインアビス」リコ役、「機動戦士ガンダム~水星の魔女~」チュチュ役を演じた方です。
◆高梨・キム・アヌーク・めい役:”島袋 美由利”さんで「さよなら私のクラマー」恩田 希役を演じた方です。

4人の声優さんがそれぞれの役割どころで4人の個性を引き出して物語を上手く構成づけております。青春群像劇ですので、それぞれの自身のパート部分では多少目立ちながらも音楽グループとして一緒に共通の目標に向かって行く様では調和がとれていて、スムーズに物語を観て行けます。特に4人の中でも物語上ツートップの伊藤さんと高橋さんはお二人の掛け合いも多く、多くの見どころを作っていらっしゃるので二人のやり取りにも注目して観てくださいね。

最後はオープニングテーマとエンディングテーマの紹介です。

どちらもリズミカルでノリが良く、一生懸命に前向きに毎日を送ろうとする多感な青春時代を謳歌する若者世代のメッセージ曲となっています。とても良い曲なので実際のオープニング・エンディングテーマではなく、長めに聴ける各アーティストさんのPVを貼ってみましたのでご堪能くださいませ!

オープニングテーマ「イロドリ/カノエラナ」
エンディングテーマ「1日25時間。/ツルシマアンナ」


いつか輝こうと未来に向かって前に進む青春真っただ中の方々には何事にも代えがたい一生懸命さと尊さを感じます。そんな刺激を受けながら私たちもいつまでも輝きを失わないようにして前向きに行けたらいいですよね。

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仕事とプライベートのオンオフをしっかり分ける悪の組織の幹部に働き方改革の一端を観て、今の自分を鑑みる。「休日のわるものさん」

常識と非常識。常識は、社会的に当たり前と思われる行為、その他物事のこと。社会通念ともいわれています。その逆で、当たり前だと思われていない行為が非常識にあたります。 ただしこれらは普遍的なものではなく、時代と共に絶えず変化しています。今まで常識とされていたことがある日を境に非常識に!なんてことも無きにしも非ず、でしょうか。

「自分の常識は他人の非常識」なんて言葉も耳にします。誰しも自分の事は肯定しますので、もしかしたら自分の考えや行為が他人には非常識に映っていることもあるかもしれません。

今までの自分の堀固まった考え方に固執せずに、広い視野で状況に応じた物事の判断を行う柔軟性を持つことがこれからの社会に適応して行く上で必要じゃないかとハッと気が付き、我に返りました。パソコンやスマホ同様、私自身も新しい知識や考え方を日々インストールしてアップデートをしていかないといけないですね。(;^_^A

「休日のわるものさん」というアニメ作品。”悪の組織”が宇宙より地球に飛来し、自分たちの母星の支配下に置くために地球防衛組織である”レンジャー”と日々戦いを繰り広げている世界。その悪の組織の幹部である”わるものさん”にも週末にはしっかりと休日があり、その休日には戦いは一切行わず癒しの日として過ごす事にしているらしい。そんな”わるものさん”の休日の過ごし方が物語のメインになっている癒し系のコメディ・アニメです。

休日のわるものさん2

悪の組織といえば残酷極まりない、容赦なく非道な行いをする一団と相場は決まっていますが、こちらの組織は地球を支配下に置くために目下経過観察中といったところか地球に悪の組織のタワービルを作り、組織全体で地球を攻略しようと綿密な調査をしながらその時を伺っています。

その悪の組織の幹部である”わるものさん”。
平日は地球を支配下に置くために地球のあらゆるデータを集めたり、街中でレンジャーと遭遇すれば戦いを挑んだり挑まれたりと大忙しです。残業をすれば組織にちゃんと申請を出して溜まった分を代休消化いたします。また、有給休暇もきちんと取ります。週末の休日はリフレッシュするために好きな白黒の毛玉(パンダ)を観に上野動物園へとせっせと足を運びます。休日は街中で同僚と会っても他人の振りをします。もちろん、レンジャーと遭遇しても休日は決して戦いません。

平日は仕事に専念し、休日はリフレッシュを心がける徹底した自己管理が組織の幹部には必要だと彼は考えているようです。日本の社会を調査した上での新たな戦略なのか?それとも郷に入っては郷に従えというやつなのか?あるいは新しい悪の組織のスタイルなのか? 会社組織の悪の組織は今までの私たちの思うところの悪の組織の常識を越えてきます。

物語と言えども悪の組織の中にもきちんと休日が設定されていて、働き過ぎは良くない現代。有給休暇をしっかりと消化することも当然の権利であってそれが当たり前だと言える時代である事を、悪の組織の幹部の方から教えられました。恐るべし!”わるものさん”。すでに私は支配下に置かれているかもしれませんね。私の長きに渡って積み重ねられた常識はやはり非常識になりつつあるのかも。新しい常識よ、今こそ私のところへcome on!

「私は人類を殲滅し、この地球を我が母星のものとするため日々戦いを繰り広げている悪の組織の幹部である。が、今日は休日だ。休日は先ず美味い食事を摂り、かつ目にも栄養を与える。ふわふわしているものが特に有効である。」そう思っている悪の組織の幹部・”わるものさん”は上野動物園に来ていた。目の前にいるパンダをスマホで尋常じゃないくらいの回数で連写しまくっていると、周りの子どもがそれに気が付き、おじさん撮り過ぎだとか連写スゲ~だのと言われてしまう。人類を殲滅したらパンダを増やそうとたくらむわるものさんであった。

「だが、今日はレンジャー達と決して争いはしない。そう、なぜなら今日は休日なのだから。」と思いながら園内を歩いていると、後ろから肩に手をかけられ呼び止められてしまう。レ「あの~、そこの方。悪の組織の方ですよね。あなたから邪悪な宇宙エネルギーを感じました。パトロール中の私に遭遇するなんてあなたも運が悪い。このレンジャー、アカツキレッドが相手に・・・」わ「今日のところは休戦にしようじゃないか、レンジャー君。」レ「なに。」わ「私はパンダが好きでね。こんなところで争って怯えさせたら可哀そうだろうがよ。」レ「オレも好きです。」

休日のわるものさん10

わ「良い趣味だ、レンジャー君。ところでその手に持っているチケット、水族館のチケットか?」わるものさんはそう言いながら”アカツキレッド”が水族館をパトロールしに行くところを間違って動物園に来てしまったのではないか、と指摘した。図星のアカツキレッドは反論できずにいた。すると、わるものさんは彼に水族館への行き方を教えてその場を去ろうとした。しかし、彼は最寄り駅までの戻り方を知らないらしい。どうやら極度の方向音痴のようだ。見かねたわるものさんは彼を最寄りの駅まで連れて行き、そこから水族館までの行き方を丁寧に教えてあげた。

わるものさんはコンビニも利用している。生活用品はもちろんだが嗜好品も買っている。いつも買っているアイスコーナーを覗くとあるはずの紅芋ソフトがない。その場所には苺もちバーが置いてあった。がっかりしながらさんざん悩んで苺もちバーをかごに入れレジ会計に差し出すと、店員の女の子が「苺もちバーお勧めですよ!あたたかい部屋で食べるととてもおいしいんですよね。」と教えてくれた。わるものさんはアイスは解けないように寒いところでいつも食べていたらしい。うちに帰りエアコンをつけた暖かな部屋でアイスを堪能するわるものさん。近い将来、この星から人類を消し去っても最後まであのコンビニは残しておこうと思うわるものさんであった。

休日のわるものさんはEMONに買い物に行ったりもする。フードコートで迷子になっている知らない子どもたち二人にアイスをおねだりされてしまうわるものさん。「知らないおじさんにお菓子とかを買ってもらっちゃダメって親に教わらなかったのか?」日本人の常識を何故か知っているわるものさんであった。仕方なしにその子たちにアイスを買ってあげると「知らないおじちゃん、アイスを買ってくれてありがとう!」と元気にその子たちはお礼を言う。それを聞いていた店員の顔は引きつっていた。

迷子センターへたどり着くとわるもさんはその子たちを預けて別れた。その後、その迷子センターからアカツキレッドが出てきた。レッドとその子たちはどうやら顔見知りでむしろ二人が迷子になっているアカツキレッドを探していたようだ。わるものさんが案外悪い人ではないと分析するこの子たち二人ももしかしたらレンジャーなのだろうか?

わるものさんは夕飯にカレーライスを作ろうとしていた。穏やかな休日で締めくくるはずが、なぜか激怒。いつもの甘口のカレールーを買ったつもりが食べられない辛口のカレールーを買ってしまったらしい。地球を殲滅する気持ちが一気に高まってしまったが、TVで赤ちゃんパンダが生まれた情報が流れ、それを観たわるものさんの気持ちは穏やかさを取り戻す。この日、カワイイは世界を救った。(第1話)

休日のわるものさん6

この作品がお勧めなのはまず第一に王道の正義対悪の図式のヒーローものではなく、ヒーローなのに抜けている、悪なのに優しいという外した設定の妙が新鮮で面白いストーリーになっている点にあります。そしてそれゆえに作品全体に和みのあるほんわかした雰囲気を醸し出していて癒しにも繋がっています。まさに休日に観るにはうってつけのアニメかと思います。

作品自体はコメディなのでクスッと思わず笑ってしまうところが随所に散りばめられていますが、この作品はコメディだけではなくシリアスなお話も併せ持っておりまして、コメディ:シリアスが7:3ぐらいの作品です。シリアスパートでは日本人なら刺さる春と七夕にまつわる内容も盛り込まれた心の琴線をくすぐる作品でもあります。涙腺が緩くなっている方には泣けるエピソードになるかもしれません。

主役は悪の組織の幹部である「わるものさん」ですが、この作品では敵対する地球防衛組織の「レンジャー」の個々人にもスポットが当てられ深掘りされています。レンジャーの生い立ちにも触れていてその宿命と彼らを支える影のチームの存在も語られる1本筋の通った作品であります。

作画は普通ではあるものの、登場する遊園地の”浅草花やしき”はしっかりとロケハンされた印象で、遊園地の楽しさが表現されていて懐かしさを感じながら観ることが出来ました。花やしきといえばパンダカーですが、シンボリックなパンダカーが今でも健在なのをアニメを通じて知り得ました。愛される存在が今も続いているという事はそこに多くの方の思い出が同時に続いているという事なのでとても良い事ですよね。

個人的にはこの作品のキャラデザが私好みで気に入っています。登場するキャラがカワイイ、あるいはカッコいい感じである事は作品の視聴を完遂するにあたり何気に重要な要素となり得ます。

声優さんもメジャーな方が割とたくさん登場してるのも嬉しいですね。”中村 悠一”さん、”江口 拓也”さん、”坂本 真綾”さん、”東山 奈央”さんなど。メジャーな方はやはり伊達じゃなく、コメディであれば間の取り方が絶妙であったり、シリアスでは感情の入れ方が上手いと感じさせてくれます。要所要所をしっかりと魅せてくれる声優さんの力は偉大です。

休日のわるものさん1

この作品はウエブ配信サイト「ガンガンpixiv」で2018年12月より連載の漫画家・イラストレーターの”森川 侑”さんによる同名漫画が原作です。既刊6巻。アニメ化され、2024年1~3月に”テレビ東京”(関東広域圏)と”BS日テレ”で全12話が全国放送されました。インターネットでは”dアニメストア”、”U-NEXT”、”ABEMA”、”Amazon Prime Video”、”Hulu”、”FOD”、”ニコニコ動画”、”バンダイチャンネル”他で配信されております。

ジャンルは”コメディ”。 監督/”小高 義規”さん、シリーズ構成/”後藤 みどり”さん、キャラクターデザイン/”島崎 知美”さん。アニメーション制作は「からかい上手の高木さん」「僕の心のヤバイやつ」を手掛けている”シンエイ動画”とシンエイ動画子会社の”SynergySP”。

最後はしっとりとしたオープニング曲と軽快なエンディング曲の紹介です。
しっとりとしたオープニングテーマがメインにくるアニメは数少ないのですが、癒し系アニメなのでこのパターンがしっくりくる感じですね。
全12話ですが、2~3話分の中でOPとEDが入れ替わる構成になっています。

オープニングテーマ「游歩/いゔどっと」
エンディングテーマ「休息充電/GLASGOW」

普段は仕事で全力投球のみなさま、くれぐれも頑張り過ぎには要注意ですよ♪擦り減らないように自分なりの癒しや息抜き方法を見つけてリフレッシュしちゃいましょう!!

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プロフィール

takapon46

Author:takapon46
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
マジンガーZにパイルダ~オン!ヤマトと999の主人公達と一緒に旅していたアニメ世代の私も今は40歳。嘘です。年齢だけは立派な50歳になりました、てへぺろ。40歳を過ぎた頃から再び、アニメの世界へ戻って来まして、今は専ら深夜帯アニメに夢中です。私なりに選りすぐりだと思うアニメを紹介しておりますので、良かったら覗いていって下さいね。

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