順風満帆に歩んでいる人はむしろ稀である。過去に囚われ一人で前に進めないでいる人も、出会いがきっかけで解き放たれることもある。「夜のクラゲは泳げない」
これから先の人生が真っ白で、何色にでも染まることが出来る伸びしろしかない10代の若者たち。片や何色かに染まってしまって伸びしろなんかもう1ミリぐらいしか残されていないんじゃないかと思う50代の私。
「憧れるのはやめましょう。」大谷翔平さんは言いました。彼の意図することは自分たちと戦う相手は同等と考え臆せずプレーしよう!という意味でしょう。普通日本代表のおじさんである私は別な意味でそろそろいろんな事に憧れるのをやめなければいけない歳かなって思ってしまいます。目の前の家族の幸せが第一なのは言うまでもありません。決して自分のやりたいことをすべて諦めるという事ではないのですが、家族ファーストかつ自分が今後実現したいことをきちんと精査して、より計画的に推し進めていく事が大事かなと思っています。
おじさんとは違って多くの若者世代の方たちは自分が何者かになれることを夢見ていろんな事に挑戦し、悩み、努力しながら我が道を切り開いて行きます。未知の可能性に邁進して行くその姿はとても愛おしく映り、自分事のように応援したくなりますよね。そんな憧れる未来が待っている若者たちでも早い段階で何かしらの障害や挫折を経験し思い悩んでいる方々も片や存在していることでしょう。
日の当たるところを真っ直ぐすんなりと歩んで来れた人、そうでない人。悲喜こもごもな様々な事情をみんな抱えて生きているのだと思います。決して順風満帆に歩んでいない若者たち、でもどこかでそこから抜け出したいと考えているけど一人ではどうにもならないと諦めきっている若者たち。
本日紹介します「夜のクラゲは泳げない」というアニメは、そんな状況下に置かれているつまづきがちな10代の女子たちが、ふとしたことがきっかけで出会い、互いに触発されてそこから再び新たな一歩を踏み出すという青春群像劇です。暗闇から日の当たる場所を見つけ出そうと共通の目標に向かって一緒に奮闘していく彼女たちの毎日にスポットを当てた青春グラフティ、なんていうのもたまにはいかがでしょうか。
おじさんには一生懸命な若者たちの姿はとてもまぶしく映りますが、何かに挑戦する姿勢は年齢に関係なくいつまでも無くさないようにしたいものですよね。そんなちょっとしたカンフル剤的若者アニメを今回はお勧めいたします。

かつて小学生の頃、街の壁画を描くコンテストで原案が選ばれ、クラゲの壁画を描いたことがある輝かしい過去を持つ女子高生の”光月 まひる”。しかし、今はごくごく普通の量産型高校生になっていた。
渋谷へハロウィンコスプレで出かけようと友達から誘われたまひるは、そのコスプレ衣装を買いに夜の渋谷に出かけた。お店でコスプレ衣装を探していると派手めな衣装に目が留まった。まひるはそれを手に取ろうとしたがタッチの差で派手めな格好の女の子が先にその商品を手にした。仕方なくまひるはその隣のやや控えめな衣装を買って店を出た。
その後まひるは、かつて自分が描いたクラゲの壁画を眺めようと渋谷のその場所を訪れた。そしてまひるは絵にまつわる昔の記憶を思い出していた。壁画を描いたその当時、自分が描いたその絵を友達に見せようと一緒に壁画前にやって来たまひる。しかし、壁画を見るなり友達二人は変なクラゲの絵だと話し始めた。その絵を描いたのは自分なんだと本当は言いたかったまひるだが、へんな絵だと否定されてしまい思わず壁画に描かれた自分の名前を隠しながら友達の会話に同意してしまう。まひるはそのことがトラウマとなってその後は一切絵を描かなくなり、目立つことは極力しない、ごく普通の高校生になってしまったのだ。現在のクラゲの壁画にはところどころ落書きがされていた。
店先で見たカワイイ靴下を買っての帰り道、再びまひるがその壁画前に差し掛かると、その壁画に自身のライブ配信の案内ポスターを貼りながらライブパフォーマンスを披露している地下アイドルらしき女子がいた。
「やめて!これ以上私の絵を汚さないで!」とそう叫びたかったまひるをよそに、隣から「おい!私の好きな絵を汚してんじゃねえ!」と大声で叫ぶ女の子が現れた。自分の思いを代弁してくれたその女の子が気になったまひるはそこから立ち去ったその子の後を追った。しかし、途中で尾行していることに気付かれてしまったまひるは何故尾行をしてきたのかその子から理由を問いただされてしまう。自分が描いた壁画をかばってくれたこと、その絵を描いたのが自分であることを彼女に伝え、それを証明するためにまひるは自分のスマホのアカウントを彼女に見せる。そこには”海月ヨル”と書かれた名前とクラゲの壁画が貼られていた。
まひるは彼女にどうして絵をかばってくれたのかを尋ねた。彼女は中学の時に初めてまひるのクラゲの壁画に出会い、一目ぼれしてそれからずっとその絵を好きでいてくれていることがわかった。彼女は”山ノ 内 花音(かの)”、高校2年生。もとアイドルとのこと。かつてアイドル時代に炎上するような事件を起こして今はアイドルはやめ、ネットに自作の曲をアップする匿名シンガーをやっているのだと。彼女が目指すのはフォロワー10万人で、かつての自分をバカにした人たちを見返し、自分を嫌った人たちも自身の歌で感動させたいらしい。

彼女の匿名シンガーとしてのアカウントを見せてもらうとその中にJELEE(ジェリー)という名のアーティスト名とクラゲとは似つかない自称クラゲの自作イラストが貼られていた。彼女いわく、クラゲは英語でゼリーフィッシュ(jellyfish)という事からアーティスト名をジェリーにしていると(スペルは間違っているが)。花音は自分の曲をまひるに聴いてもらおうとスマホのイヤホンを差し出した。まひるはその曲を聴いた。カッコいい曲だとまひるは花音に曲の感想を伝えた。すると花音は、クラゲのイラストは本当の自分を表現しているのだと言い始めた。
すべてはクラゲの壁画が自分に影響を与えていることを花音はまひるに伝える。知らなところで自分の絵が誰かに影響を与えていたことを初めて知ったまひるは恥ずかしそうにありがとう、と花音に気持ちを伝える。花音はまひるに本物のクラゲの絵を描いてほしいとお願いする。しかし、ごく普通の高校生に成り下がってしまったまひるは”特別な存在”の花音に気後れしてその提案を断ってしまう。それを聞いた花音は、「まひるは普通の人間だったんだね。」と残念そうに思う気持ちを返した。モヤモヤした気持ちを抱えながらまひるは家路についた。
お風呂に入りながら花音の過去記事をネットで調べるまひる。彼女はアイドルグループ「サンフラワードールズ」のリーダー兼センターの”橘 ののか”として活躍していた。しかし、とある暴力事件を起こしてグループを脱退との記事が出てきた。詳しい事はわからないが、それでも再起をかけて音楽活動をしようとしている花音の強い意志を感じるまひるだった。
ハロウィンコスプレ衣装で友達と渋谷に繰り出したまひる。すると、自分が買おうとしたコスプレ衣装を身に着けた子をまひるは渋谷の街中で見つけた。まひるはその子を追いかけた。着いた先はまひるの描いた壁画がある場所だった。その壁画の前では先日の地下アイドルがまた路上ライブをしていた。偶然なのか、その子は花音のオリジナル曲をコピーして歌っていた。それを聴いたまひるは「私の好きな歌を汚してんじゃねえ!」と思わず小声でつぶやいてしまう。すると隣から「私の好きな歌を汚してんじゃねえ!」と大声で叫ぶ花音の姿があった。まひるが買い損ねたコスプレ衣装をまとった花音だった。
「誰の好きな曲だって?」花音はまひるをいじる。そしてまひるの耳元で「ヨルのクラゲの絵の前で歌いたい!」そうつぶやきながら路上のギターリストからギターを借りてギター片手に自分のオリジナルソングを歌い出した。まひるはその行動に揺り動かされ、クラゲの絵の上に貼られた地下アイドルのポスターを引きちぎり、花音のリクエストに応えて持っていた口紅でクラゲの壁画に顔を描いた。それは二人のコラボが初めて実現した瞬間だった。
歌い終わった花音はまひるの手を取り夜の渋谷の街へと走り出す。「花音ちゃん、クラゲってさ、一人では泳げないし輝くこともできないけど、外から光を貯め込んだら自分でも輝けるようになるの。だから、私も、私も花音ちゃんのそばにいたら輝けるかな?」花音は答える。「もちろん!だから私のために描いてよ!」二匹のクラゲたちは新たな光を貯め込み、輝き始めた。(第1話)

自分だけの問題だとそもそもが他人には関係ない事なので自分が変わりたいと思っていても、自らが動かない限りは状況は何も変わりません。しかし、他人との関りの中で人のために動かないといけない、あるいは人のために動いてみようと心が動かされた時、人は新た行動を起こすことが出来るのかもしれませんね。私たちは日々の生活の中で何気に他人との接触・関りが自分の行動エネルギーに大きく作用することを学習していて、その経験をいつの間にか実践しているといった具合なんじゃないかと思います。
人との関り、自分以外の存在が自身に与えるてくれる影響・パワーは計り知れないものがあるかもしれません。今年の5月、千葉にいる親友からラストメッセージのような電話が入りました。もともと難病を背負っていた彼ですが、さらに別な病気も併発していて治療が思わしくなく、食事も満足に摂れずに体重が激減して今は40kgを下回っているとの事でした。自分ばかりがどうしてこんな状況に置かれてしまったのかという理不尽さも手伝って生きる希望を無くして自暴自棄になっており、彼曰く、自分が生きているうちに千葉に一度会いに来てほしいと懇願されました。
私は妻にその事を話し、彼に会いに行く了承を得て彼にその旨を伝えました。するとしばらくして彼から電話があり、どうせ来てくれるなら秋までに自分なりにリハビリして体力をつけて外出先で一緒に食事を楽しみたいので秋になったら来てほしい、とのことでした。私が会いに行くことがどうやら彼の生きる希望の一つになったようです。その後2~3週間に1度ぐらい電話をくれるようになり、ちまたの世間話をかわすぐらい明るい雰囲気を感じることが出来るようになりました。治療薬も適合し始めているようで何よりです。
万人が皆平等ではないので、人それぞれの与えられた環境下で自分なりのポテンシャルで自分なりに人生を進めていくしかない、ということですね。自分と他者との繋がり・作用を上手く用いて悔いのない生き方をしていきたいものです。自分だけではどうしようもない事、あるいは動けない事、そして堀固まって変えられない考え方も”他者との繋がりを通しで変わることもある”、という事がこの作品から得られることでしょうか。
それとこの作品、最近のネット時代の良し悪しにも物語上で触れていますので、各々がSNSも含めたネット社会にどう関わっていくかの指標にもなるかもしれません。溢れるネット情報の収集と自身からの発進も人それぞれの時代。法整備が立ち遅れているSNS全盛のネット時代の副作用で、昔よりも他人の目を気にしながら生活しないといけない、ある意味自由度合いが低くなったような生きにくい世の中にもなってきていると思います。他人からの誹謗・中傷もかなり問題視されている今、互いにそういったものに晒されない生き方を自身としても気をつけていかないといけませんよね。

この作品は、「推しの子」「ちいかわ」を制作しているアニメーション制作会社”動画工房”による原作を”JELEE”とするオリジナルアニメです。ジャンルは青春。
監督/「エロマンガ先生」を監督した”竹下 良平”さん、シリーズ構成・脚本/”屋久 ユウキ”さん、キャラクターデザイン/「魔法少女まどか☆マギカ」総作画監督、「月刊少女野崎くん」「多田君は恋をしない」のキャラクターデザインを担当した”谷口 淳一郎”さんです。
TVアニメ化され2024年4月~6月に”BS11”で全12話が全国放送されました。インターネットでは”dアニメストア”、”U-NEXT”、”Netflix”、”ABEMA”、”Amazon Prime Video”、”バンダイチャンネル”、”Hulu”、”ニコニコチャンネル”、”FOD”他で配信されています。
コミカライズ・ノベライズもされてまして2024年4月より”藤居 にこ”さん作画による同タイトル漫画が講談社コミックより2巻 発売となりました。また2024年5月より”屋久 ユウキ”さん著作で同タイトル小説もガガガ文庫(小学館)より3巻 発売されております。
出演されている声優さんですが、メインヒロインは4人です。
◆光月 まひる役:”伊藤 美来”さんで「五等分の花嫁」中野 美玖役、「白い砂のアクアトープ」海咲野 くくる役などを演じた方です。
◆山ノ内 花音(かの)役:”高橋 李依”さんで「この素晴らしい世界に祝福を!」めぐみん役、「からかい上手の高木さん」高木さん役を演じた方です。
◆渡瀬 キウイ役:”富田 美憂”さんで「メイドインアビス」リコ役、「機動戦士ガンダム~水星の魔女~」チュチュ役を演じた方です。
◆高梨・キム・アヌーク・めい役:”島袋 美由利”さんで「さよなら私のクラマー」恩田 希役を演じた方です。
4人の声優さんがそれぞれの役割どころで4人の個性を引き出して物語を上手く構成づけております。青春群像劇ですので、それぞれの自身のパート部分では多少目立ちながらも音楽グループとして一緒に共通の目標に向かって行く様では調和がとれていて、スムーズに物語を観て行けます。特に4人の中でも物語上ツートップの伊藤さんと高橋さんはお二人の掛け合いも多く、多くの見どころを作っていらっしゃるので二人のやり取りにも注目して観てくださいね。
最後はオープニングテーマとエンディングテーマの紹介です。
どちらもリズミカルでノリが良く、一生懸命に前向きに毎日を送ろうとする多感な青春時代を謳歌する若者世代のメッセージ曲となっています。とても良い曲なので実際のオープニング・エンディングテーマではなく、長めに聴ける各アーティストさんのPVを貼ってみましたのでご堪能くださいませ!
オープニングテーマ「イロドリ/カノエラナ」
エンディングテーマ「1日25時間。/ツルシマアンナ」
いつか輝こうと未来に向かって前に進む青春真っただ中の方々には何事にも代えがたい一生懸命さと尊さを感じます。そんな刺激を受けながら私たちもいつまでも輝きを失わないようにして前向きに行けたらいいですよね。
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「憧れるのはやめましょう。」大谷翔平さんは言いました。彼の意図することは自分たちと戦う相手は同等と考え臆せずプレーしよう!という意味でしょう。普通日本代表のおじさんである私は別な意味でそろそろいろんな事に憧れるのをやめなければいけない歳かなって思ってしまいます。目の前の家族の幸せが第一なのは言うまでもありません。決して自分のやりたいことをすべて諦めるという事ではないのですが、家族ファーストかつ自分が今後実現したいことをきちんと精査して、より計画的に推し進めていく事が大事かなと思っています。
おじさんとは違って多くの若者世代の方たちは自分が何者かになれることを夢見ていろんな事に挑戦し、悩み、努力しながら我が道を切り開いて行きます。未知の可能性に邁進して行くその姿はとても愛おしく映り、自分事のように応援したくなりますよね。そんな憧れる未来が待っている若者たちでも早い段階で何かしらの障害や挫折を経験し思い悩んでいる方々も片や存在していることでしょう。
日の当たるところを真っ直ぐすんなりと歩んで来れた人、そうでない人。悲喜こもごもな様々な事情をみんな抱えて生きているのだと思います。決して順風満帆に歩んでいない若者たち、でもどこかでそこから抜け出したいと考えているけど一人ではどうにもならないと諦めきっている若者たち。
本日紹介します「夜のクラゲは泳げない」というアニメは、そんな状況下に置かれているつまづきがちな10代の女子たちが、ふとしたことがきっかけで出会い、互いに触発されてそこから再び新たな一歩を踏み出すという青春群像劇です。暗闇から日の当たる場所を見つけ出そうと共通の目標に向かって一緒に奮闘していく彼女たちの毎日にスポットを当てた青春グラフティ、なんていうのもたまにはいかがでしょうか。
おじさんには一生懸命な若者たちの姿はとてもまぶしく映りますが、何かに挑戦する姿勢は年齢に関係なくいつまでも無くさないようにしたいものですよね。そんなちょっとしたカンフル剤的若者アニメを今回はお勧めいたします。

かつて小学生の頃、街の壁画を描くコンテストで原案が選ばれ、クラゲの壁画を描いたことがある輝かしい過去を持つ女子高生の”光月 まひる”。しかし、今はごくごく普通の量産型高校生になっていた。
渋谷へハロウィンコスプレで出かけようと友達から誘われたまひるは、そのコスプレ衣装を買いに夜の渋谷に出かけた。お店でコスプレ衣装を探していると派手めな衣装に目が留まった。まひるはそれを手に取ろうとしたがタッチの差で派手めな格好の女の子が先にその商品を手にした。仕方なくまひるはその隣のやや控えめな衣装を買って店を出た。
その後まひるは、かつて自分が描いたクラゲの壁画を眺めようと渋谷のその場所を訪れた。そしてまひるは絵にまつわる昔の記憶を思い出していた。壁画を描いたその当時、自分が描いたその絵を友達に見せようと一緒に壁画前にやって来たまひる。しかし、壁画を見るなり友達二人は変なクラゲの絵だと話し始めた。その絵を描いたのは自分なんだと本当は言いたかったまひるだが、へんな絵だと否定されてしまい思わず壁画に描かれた自分の名前を隠しながら友達の会話に同意してしまう。まひるはそのことがトラウマとなってその後は一切絵を描かなくなり、目立つことは極力しない、ごく普通の高校生になってしまったのだ。現在のクラゲの壁画にはところどころ落書きがされていた。
店先で見たカワイイ靴下を買っての帰り道、再びまひるがその壁画前に差し掛かると、その壁画に自身のライブ配信の案内ポスターを貼りながらライブパフォーマンスを披露している地下アイドルらしき女子がいた。
「やめて!これ以上私の絵を汚さないで!」とそう叫びたかったまひるをよそに、隣から「おい!私の好きな絵を汚してんじゃねえ!」と大声で叫ぶ女の子が現れた。自分の思いを代弁してくれたその女の子が気になったまひるはそこから立ち去ったその子の後を追った。しかし、途中で尾行していることに気付かれてしまったまひるは何故尾行をしてきたのかその子から理由を問いただされてしまう。自分が描いた壁画をかばってくれたこと、その絵を描いたのが自分であることを彼女に伝え、それを証明するためにまひるは自分のスマホのアカウントを彼女に見せる。そこには”海月ヨル”と書かれた名前とクラゲの壁画が貼られていた。
まひるは彼女にどうして絵をかばってくれたのかを尋ねた。彼女は中学の時に初めてまひるのクラゲの壁画に出会い、一目ぼれしてそれからずっとその絵を好きでいてくれていることがわかった。彼女は”山ノ 内 花音(かの)”、高校2年生。もとアイドルとのこと。かつてアイドル時代に炎上するような事件を起こして今はアイドルはやめ、ネットに自作の曲をアップする匿名シンガーをやっているのだと。彼女が目指すのはフォロワー10万人で、かつての自分をバカにした人たちを見返し、自分を嫌った人たちも自身の歌で感動させたいらしい。

彼女の匿名シンガーとしてのアカウントを見せてもらうとその中にJELEE(ジェリー)という名のアーティスト名とクラゲとは似つかない自称クラゲの自作イラストが貼られていた。彼女いわく、クラゲは英語でゼリーフィッシュ(jellyfish)という事からアーティスト名をジェリーにしていると(スペルは間違っているが)。花音は自分の曲をまひるに聴いてもらおうとスマホのイヤホンを差し出した。まひるはその曲を聴いた。カッコいい曲だとまひるは花音に曲の感想を伝えた。すると花音は、クラゲのイラストは本当の自分を表現しているのだと言い始めた。
すべてはクラゲの壁画が自分に影響を与えていることを花音はまひるに伝える。知らなところで自分の絵が誰かに影響を与えていたことを初めて知ったまひるは恥ずかしそうにありがとう、と花音に気持ちを伝える。花音はまひるに本物のクラゲの絵を描いてほしいとお願いする。しかし、ごく普通の高校生に成り下がってしまったまひるは”特別な存在”の花音に気後れしてその提案を断ってしまう。それを聞いた花音は、「まひるは普通の人間だったんだね。」と残念そうに思う気持ちを返した。モヤモヤした気持ちを抱えながらまひるは家路についた。
お風呂に入りながら花音の過去記事をネットで調べるまひる。彼女はアイドルグループ「サンフラワードールズ」のリーダー兼センターの”橘 ののか”として活躍していた。しかし、とある暴力事件を起こしてグループを脱退との記事が出てきた。詳しい事はわからないが、それでも再起をかけて音楽活動をしようとしている花音の強い意志を感じるまひるだった。
ハロウィンコスプレ衣装で友達と渋谷に繰り出したまひる。すると、自分が買おうとしたコスプレ衣装を身に着けた子をまひるは渋谷の街中で見つけた。まひるはその子を追いかけた。着いた先はまひるの描いた壁画がある場所だった。その壁画の前では先日の地下アイドルがまた路上ライブをしていた。偶然なのか、その子は花音のオリジナル曲をコピーして歌っていた。それを聴いたまひるは「私の好きな歌を汚してんじゃねえ!」と思わず小声でつぶやいてしまう。すると隣から「私の好きな歌を汚してんじゃねえ!」と大声で叫ぶ花音の姿があった。まひるが買い損ねたコスプレ衣装をまとった花音だった。
「誰の好きな曲だって?」花音はまひるをいじる。そしてまひるの耳元で「ヨルのクラゲの絵の前で歌いたい!」そうつぶやきながら路上のギターリストからギターを借りてギター片手に自分のオリジナルソングを歌い出した。まひるはその行動に揺り動かされ、クラゲの絵の上に貼られた地下アイドルのポスターを引きちぎり、花音のリクエストに応えて持っていた口紅でクラゲの壁画に顔を描いた。それは二人のコラボが初めて実現した瞬間だった。
歌い終わった花音はまひるの手を取り夜の渋谷の街へと走り出す。「花音ちゃん、クラゲってさ、一人では泳げないし輝くこともできないけど、外から光を貯め込んだら自分でも輝けるようになるの。だから、私も、私も花音ちゃんのそばにいたら輝けるかな?」花音は答える。「もちろん!だから私のために描いてよ!」二匹のクラゲたちは新たな光を貯め込み、輝き始めた。(第1話)

自分だけの問題だとそもそもが他人には関係ない事なので自分が変わりたいと思っていても、自らが動かない限りは状況は何も変わりません。しかし、他人との関りの中で人のために動かないといけない、あるいは人のために動いてみようと心が動かされた時、人は新た行動を起こすことが出来るのかもしれませんね。私たちは日々の生活の中で何気に他人との接触・関りが自分の行動エネルギーに大きく作用することを学習していて、その経験をいつの間にか実践しているといった具合なんじゃないかと思います。
人との関り、自分以外の存在が自身に与えるてくれる影響・パワーは計り知れないものがあるかもしれません。今年の5月、千葉にいる親友からラストメッセージのような電話が入りました。もともと難病を背負っていた彼ですが、さらに別な病気も併発していて治療が思わしくなく、食事も満足に摂れずに体重が激減して今は40kgを下回っているとの事でした。自分ばかりがどうしてこんな状況に置かれてしまったのかという理不尽さも手伝って生きる希望を無くして自暴自棄になっており、彼曰く、自分が生きているうちに千葉に一度会いに来てほしいと懇願されました。
私は妻にその事を話し、彼に会いに行く了承を得て彼にその旨を伝えました。するとしばらくして彼から電話があり、どうせ来てくれるなら秋までに自分なりにリハビリして体力をつけて外出先で一緒に食事を楽しみたいので秋になったら来てほしい、とのことでした。私が会いに行くことがどうやら彼の生きる希望の一つになったようです。その後2~3週間に1度ぐらい電話をくれるようになり、ちまたの世間話をかわすぐらい明るい雰囲気を感じることが出来るようになりました。治療薬も適合し始めているようで何よりです。
万人が皆平等ではないので、人それぞれの与えられた環境下で自分なりのポテンシャルで自分なりに人生を進めていくしかない、ということですね。自分と他者との繋がり・作用を上手く用いて悔いのない生き方をしていきたいものです。自分だけではどうしようもない事、あるいは動けない事、そして堀固まって変えられない考え方も”他者との繋がりを通しで変わることもある”、という事がこの作品から得られることでしょうか。
それとこの作品、最近のネット時代の良し悪しにも物語上で触れていますので、各々がSNSも含めたネット社会にどう関わっていくかの指標にもなるかもしれません。溢れるネット情報の収集と自身からの発進も人それぞれの時代。法整備が立ち遅れているSNS全盛のネット時代の副作用で、昔よりも他人の目を気にしながら生活しないといけない、ある意味自由度合いが低くなったような生きにくい世の中にもなってきていると思います。他人からの誹謗・中傷もかなり問題視されている今、互いにそういったものに晒されない生き方を自身としても気をつけていかないといけませんよね。

この作品は、「推しの子」「ちいかわ」を制作しているアニメーション制作会社”動画工房”による原作を”JELEE”とするオリジナルアニメです。ジャンルは青春。
監督/「エロマンガ先生」を監督した”竹下 良平”さん、シリーズ構成・脚本/”屋久 ユウキ”さん、キャラクターデザイン/「魔法少女まどか☆マギカ」総作画監督、「月刊少女野崎くん」「多田君は恋をしない」のキャラクターデザインを担当した”谷口 淳一郎”さんです。
TVアニメ化され2024年4月~6月に”BS11”で全12話が全国放送されました。インターネットでは”dアニメストア”、”U-NEXT”、”Netflix”、”ABEMA”、”Amazon Prime Video”、”バンダイチャンネル”、”Hulu”、”ニコニコチャンネル”、”FOD”他で配信されています。
コミカライズ・ノベライズもされてまして2024年4月より”藤居 にこ”さん作画による同タイトル漫画が講談社コミックより2巻 発売となりました。また2024年5月より”屋久 ユウキ”さん著作で同タイトル小説もガガガ文庫(小学館)より3巻 発売されております。
出演されている声優さんですが、メインヒロインは4人です。
◆光月 まひる役:”伊藤 美来”さんで「五等分の花嫁」中野 美玖役、「白い砂のアクアトープ」海咲野 くくる役などを演じた方です。
◆山ノ内 花音(かの)役:”高橋 李依”さんで「この素晴らしい世界に祝福を!」めぐみん役、「からかい上手の高木さん」高木さん役を演じた方です。
◆渡瀬 キウイ役:”富田 美憂”さんで「メイドインアビス」リコ役、「機動戦士ガンダム~水星の魔女~」チュチュ役を演じた方です。
◆高梨・キム・アヌーク・めい役:”島袋 美由利”さんで「さよなら私のクラマー」恩田 希役を演じた方です。
4人の声優さんがそれぞれの役割どころで4人の個性を引き出して物語を上手く構成づけております。青春群像劇ですので、それぞれの自身のパート部分では多少目立ちながらも音楽グループとして一緒に共通の目標に向かって行く様では調和がとれていて、スムーズに物語を観て行けます。特に4人の中でも物語上ツートップの伊藤さんと高橋さんはお二人の掛け合いも多く、多くの見どころを作っていらっしゃるので二人のやり取りにも注目して観てくださいね。
最後はオープニングテーマとエンディングテーマの紹介です。
どちらもリズミカルでノリが良く、一生懸命に前向きに毎日を送ろうとする多感な青春時代を謳歌する若者世代のメッセージ曲となっています。とても良い曲なので実際のオープニング・エンディングテーマではなく、長めに聴ける各アーティストさんのPVを貼ってみましたのでご堪能くださいませ!
オープニングテーマ「イロドリ/カノエラナ」
エンディングテーマ「1日25時間。/ツルシマアンナ」
いつか輝こうと未来に向かって前に進む青春真っただ中の方々には何事にも代えがたい一生懸命さと尊さを感じます。そんな刺激を受けながら私たちもいつまでも輝きを失わないようにして前向きに行けたらいいですよね。
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