テレビでは終戦の日をはさんで、色々と戦争を主題に色々な番組をやっている。特にスカパー!のドキュメンタリーなどのチャンネルではそれが著しい。
考えなくてはならないし、忘れてはならないことだと思う。更に現在進行形でイラクなどのことについても考えていたいと思う。 さて、広島に原爆が落とされた日に、産経新聞にあったカラヤンとナチスのことについての記事を読んで、またまた考えてしまった。ナチスと関係があったことを戦後問題となった音楽家は数多い。カール・ベームやクレメンス・クラウス、ヴァルター・ギーゼキング、ウィレム・メンゲルベルク、アルフレッド・コルトー、ヴィルヘルム・バックハウス等々、大変多い。 権力を持つナチスに対して、おおっぴらに反対したりしなかった、あるいは協力したからと言って、その後追放したり、烙印を押してそれらの個人に対する反対運動を煽ったりすることは、私は大変違和感がある。 権力者が犯した過ちを、犯罪を、それと知らなかったただの取り巻きにまでその責任を問うというのは「正義」という剣の振り回しすぎに思われるからだ。 ナチはホロコーストをはじめ数多くの人道に対する罪を犯したことは間違いない。だからそれに反対しなかったからといってそこにいただけの人々も罪に問うのであれば、スターリンに追随した人々や、スペインのフランコ政権に追随した人々も同じように社会から追放するなどの制裁をしなくては公平ではないと思うからだ。 最近、プーチンがソ連は「ナチスのような虐殺もしていないし、アメリカのように無差別に民間人相手に原爆を落としたりしていないから、それほど酷くはなかった」とうそぶいているそうだ。アメリカは反論でないだろう。けれど、こういうのを五十歩百歩というのだけれど…。 戦争だから、そして我が国は、ドイツは負けたから一方的に叩かれたということなのだろう。ただ、私はどこかの辞めた大臣のように「しかたがない」と言ってすます気にはなれないでいる。 チスの蛮行はどうしても許せないが、その蛮行と直接関係のないところで、音楽を演奏したということが非難されるとしたら、当時ドイツに住んでいたことだけでも人道に対する罪であると言っているようなものではないか? 当時、ドイツにいた音楽家たちに対して、ナチとの関係を戦後も問い続け、その演奏するベートーヴェンやブラームスにナチの影を感じるとなれば、一体…。 イスラエルでは今でもワーグナーはタブーだと聞いたけれど、実際はどうなのだろう。確かにホロコーストで災難に遭われた人達が、そのことを思い出させるものとしてワーグナーがあるので辞めて欲しいと言われることについてはよくわかる。その思いを傷つけてまでワーグナーをユダヤ人の国で演奏する必要はないと思う。 しかし、正確を期すために言わせていただければ、ワーグナーがナチであったことはない。アメリカに亡命したというワーグナーの娘たちは反ナチであった。ただワーグナーの音楽をヒットラーが好み(大好きだったのはレハールなどであったそうだが)その音楽を利用したからであろう。ワーグナーの音楽はナチのプロパガンダ放送のテーマ音楽として、ヨーロッパでは有名だった。更にバイロイト音楽祭はナチスの保護のもとで戦争中も隆盛を極めていた。 しかし、だからワーグナーはナチスと何の関係もない。ヒットラーが生まれる前にワーグナーは亡くなっているのだ。 カラヤンの演奏にナチの響きを感じるというのは…。確かにカラヤンはナチの党員だった。ヴィルヘルム・フルトヴェングラーがナチだと言って非難する者もいるが、彼がナチであったことは一度もなかった。戦争中にドイツに留まったことが、ナチスであるという非難に繋がっているようで、ナチスのプロパガンダに利用されていたことも事実だろう。 だが、彼はユダヤ人の収容所の番人でもなかったし、殺したわけでもない。どうして亡命しなかったのかと非難しつづけた人々が、亡命しない=ナチスであるという極めて単純な思いこみにあるように思う。 彼よりずっと若く、これから成功への階段を駆け上がろうとしていたカラヤンが、その成功のためにナチの党員証を持つに至ったとしても、私には理解できるこどもある。ナチを肯定していのではないので、誤解のないようにしてほしい!! 音楽は抽象的な言葉である限り、権力に利用されるものであるのだろう。そして、カラヤンにナチを感じるという人に「それは間違いだ」とまで敢えて言う気はないけれど、「音がそんな政治的メッセージやイデオロギーを持つなんてちょっと考えられないけどねぇ」とつぶやくこととしよう。 山田耕筰の「かちどきと平和」を聞いて、戦意高揚の音楽だと非難するような愚かなことだけはしたくないものだ。ちなみに「かちどきと平和」は1912年の作品で、第一次世界大戦前の作曲である。富国強兵の時代から大正デモクラシーへと移る時代の音楽。だから「平和」であったのだと私は思う。
by Schweizer_Musik
| 2007-08-19 22:55
| 音楽時事
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