鎌倉スイス日記
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スイスを思い、好きな音楽と共に過ごす、古都鎌倉での穏やかな日々の記
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Schweizer_Musik
2023
Thu, 15 Jun 2023 08:24:14 +0900
2023-06-15T08:24:14+09:00
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2013-06-01T12:00:00+00:00
鎌倉スイス日記
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スイスを思い、好きな音楽と共に過ごす、古都鎌倉での穏やかな日々の記
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ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第5番 第1楽章
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<![CDATA[作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名 : ピアノ・ソナタ 第5番 ハ短調 Op.10-1 (1796-98)
演奏と作品解釈についての本を若い頃読んで、その明快な考えに心酔していた私は、彼の弾いたベートーヴェンのこの曲を聞いて、大変ショックを受けた。雑で速すぎたのだ。そのために曲の重要な要素である短6度へのベートーヴェンのこだわりが、希薄となり、ただただ切迫した感じだけの薄っぺらな音楽になっていたのだ。
この傾向は、ポリーニやコヴァセヴィッチ、アラウといった、愛してやまないピアニストたちの演奏にも聞かれ、私の考えが間違っているのか分からなくなっている。
多くの場合、短い16分音符を短くし過ぎているように感じられ、鋭角的に過ぎるのだけれど、それでは曲のアイデアが浮かび上がってこないと私は考えている。
第1主題は次の3つの部分で出来ている。
ハ短調の主和音を打ち鳴らした後、G音からオクターブと短6度跳躍を繰り返して駆け上りEs音を2度鳴らして止まる。短音での提示である。(動機a)
これにゆったりとしたトニックからドミナントの和音が応える。(動機b)
ここは逆に短2度しか動かず穏やか。2つの要素が厳しく対立しておかれた実に意欲的な主題である。
これを減7の和音からトニックへと和音を変えて、繰り返す。
第2部は、下降のスケールで、2度、5度下降して、3度目にオクターブ下降する形に拡大される。5度下降は2つの3度に分けられる。これは、6度を反転させたものであり、第1部の動機に対応したものである。この5度という新たな要素は展開部で大きく発展させる要素となる。
更に言えば、この2つの部分は、主和音と、ドミナントの減7のみで出来ていて、強い緊張感が現れている。
第3部は主題のカデンツの部分であり、はじめてサブドミナントが出てきて、更にはじめてV7が出てきて第1主題が終わる。
曲はこれに続いて第1主題を縮小して繰り返し、主題が確保される。
続いて推移がはじまる。転調を繰り返しながら平行調である変ホ長調へと向かう推移に新しいメロディーが登場するが、これは第1主題の第1部、G-EsとC-Hという動きを使ったもので、第1主題の断片で出来たものと言って良い。
この部分大変美しく、ここを第2主題と思ってしまいそうだが、その第2主題はこれに引き続いて出てくる。
ここでも短6度と短2度の組み合わせが、メロディーの中心となっている。この後の展開でもそれは徹底的に使われ、提示部を終わる。
ここまでやるかというほどのこだわりようである。
以下 続く
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音楽作品分析
Schweizer_Musik
Thu, 15 Jun 2023 08:16:09 +0900
2023-06-15T08:16:09+09:00
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ザードル・イェネーの5つのコントラストを聞く
http://suisse.exblog.jp/32999879/
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<![CDATA[作曲者 : ZÁDOR, Eugene (Jenő Zádor) 1894-1977 ハンガリー→米
曲名 : 5つのコントラスト "5 Contrasts" (1964)
演奏者 : マリウシュ・スモリー指揮 MAVブダペスト交響楽団
CD番号 : NAXOS/8.572548
アメリカ名ユージン・ザドール、(ハンガリー語名はザードル・イェネー)の管弦楽作品全集がNAXOSで進行中である。
このCDは他に子供の交響曲などが入ったもので、その最初のリリースだったと思う。当時から全集を考えていたわけではなさそうで、最近発売になった第7集ではじめて全集の言葉が出てきた。
ハンガリーに生まれ、マックス・レーガーなどに師事し、第二次世界大戦の勃発と同時にアメリカに移った音楽家のひとりでもある。
アメリカではハリウッドで映画音楽の制作に関わり、優れた業績を残したとあるが、それを私は聞いたことがないので、何も言えないけれど、同時代の作曲家たちに比べても、極めて保守的な後期ロマン派的作風に納まっているので、当時はこの優れた管弦楽法の力などはとてもハリウッドで重宝されたに違いない。
聞いた話だが、ロージャ・ミクローシュの映画音楽でもオーケストレーションを多く担当していたとか…。
私はこのシリーズは大体聞いているけれど、才気を感じさせることはあまりないけれど、卓越した技量で説得力のある音楽を作る作曲家であると思う。
マリウシュ・スモリーは、有名曲には目もくれず(笑)、こうした「知られざる作曲家」を発掘してくれる良い指揮者だ。ポーランド出身で、現在はアメリカのルイジアナ州ラファイエットのアカディアナ交響楽団の音楽監督をしている。他にもいくつかの団体と関わっているようだけれど、聞いたことが無いのでこのくらいにしておこう。
ところで、このMAVブダペスト交響楽団だけれど、ハンガリーのオーケストラは名称がかなり混乱していて、ハンガリー・ブダペスト交響楽団、ハンガリー交響楽団、ブダペスト放送交響楽団あたりは、混乱の極みで、名称が変わったりもしているので、混乱に拍車をかけている。
ハンガリー・ブダペスト交響楽団は、正式にはMAV Symphony Orchestraで、日本語ではMAVにブダペスト交響楽団をつけたものや、ハンガリー・ブダペスト交響楽団などと呼ばれることが多い。これにブダペスト交響楽団とだけあるものも多分…だけれど加わる可能性がある。MAVはハンガリー国鉄のことで、このオーケストラはハンガリー国鉄が1945年、大戦終了後の荒廃した国土と国民に心に必要なのは文化だと、楽員の専用客車と楽器の運搬車両を用意して設立したオーケストラだ。
初代の指揮者はシェーケ・ティボル。1947年にウィーン公演を成功させてオーケストラの礎を築いた。ちなみに彼は後年、ベルリンに赴き指揮活動をしつつも、カラヤンのHMV録音に関わっており、定年までその職にあったとか。現在の常任指揮者はRóbert Farkas。
ハンガリー国立交響楽団は、今日ではハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団と名前が変わっている。ハンガリー放送交響楽団は、録音ではブダペスト交響楽団の名称で出ているので混乱のもととなっている。さらにブダペスト放送交響楽団という名称でよばれることも多く、門外漢にはもうワケが分からなくなる。これらは名称がいずれであれ、ハンガリー放送所属の1943年設立のオーケストラである。
この3つのオーケストラにブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団というオケが加わり、混乱はカオス状態となる。ただこちらは伝統あるオーケストラで、1853年にハンガリー・オペラの父と呼ばれるフェレンツ・エルケル(ハンガリー風に書くとエルケル・フェレンツ)という作曲家によって創設されたオーケストラで、主にブダペストのハンガリー国立歌劇場のオーケストラとして活動していて、そのオーケストラが歌劇ではなくコンサートを行う時の名前である。
現在では、イヴァン・フィッシャーとゾルターン・コチシュが設立したブダペスト祝祭管弦楽団などもあり、ややこしさはピークに…。せめてCDやプロモーターによる名称の統一をお願いしたいものだ。
話が横道に逸れてしまったけれど、このMAV交響楽団の演奏は、一定の水準にあるので、安心して聞いていられるもの。スモリーの指揮も客演とは思えないほどしっかりしていると思う。シリーズは今は7枚目に入っているが、お勧めするシリーズ。
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Wed, 14 Jun 2023 14:02:56 +0900
2023-06-14T14:02:56+09:00
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ヨハン・フリードリッヒ・エック作曲の「モーツァルトのヴァイオリン協奏曲」を藤川真弓さんの演奏で聴く
http://suisse.exblog.jp/32988157/
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<![CDATA[作曲者 : ECK, Johann Friedrich 1766-1810 独
曲名 : ヴァイオリン協奏曲 変ホ長調 K.268(Anh.C14.04)
演奏者 : 藤川真弓(vn), ワルター・ヴェラー指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
CD番号 : DECCA/480 5384
出だしは実に良いのだけれど、その後の展開の平凡さは笑いを通り越して呆れる。特に第2楽章は天下の藤川真弓女史も手が無さそう…。
この程度なら、私でも2〜3日もあれば書けるし、もうちょっとマシなものに仕上げる自信はある…(笑)。やらないけれど…。贋作作りには関心がないというか、クライスラー程度に笑いをとる心づもりなら面白そうだけれど、大真面目にやってこの程度ではちと酷い。
しかし、1950年頃までは多分モーツァルトの作だと信じられ、第6番のナンバリングまでされていたのだから恐れ入る。だからジャック・ティボーやクリスティアン・フェラスといった偉大なヴァイオリニストたちの録音まで存在するのだ。
フェラスの録音が良いとか聞いたことがあるけれど、私は2度とこの曲を聞かないと思う。贋作を作るなら、もうちょっと腕を上げてからやってほしいものだ。
しかし、名だたる学者まで騙したとは…。
全集ということで、録音した藤川真弓女史も気の毒な気がする。グリュミオーはステレオでの再録では6番と7番は外していたし、今日、モーツァルト全集にも収められていないこの作品を、今回興味本位で聞いてみたけれど、やはり時間の無駄だった…。残念な贋作でしたね。
ちなみに藤川真弓女史とワルター・ウェラーの指揮でのモーツァルト全集は、この曲の他は素晴らしい出来映えですよ。
この曲だって、最善をつくしておられます。プロフェッショナルの極みだと思う。
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Wed, 31 May 2023 10:39:47 +0900
2023-05-31T10:39:47+09:00
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ナットのピアノ協奏曲
http://suisse.exblog.jp/32987726/
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<![CDATA[作曲者 : NAT, Yves 1890-1956 仏
曲名 : ピアノ協奏曲 (1954)
演奏者 : イヴ・ナット(pf), ピエール・デルヴォー指揮 フランス国立放送管弦楽団
CD番号 : EMI/347826 2
イヴ・ナットのピアノ協奏曲の自作自演は、彼の作曲家としての仕事を知るために素晴らしい遺産だ。
造形美もだけれど、新古典主義的な響きはどこもアイデアに満ち、彼は他にどんな曲を書いたのだろうと、聞けないもどかしさと、わずかにこれだけでも残ったことへの感謝を表明するしかなさそうだ。
音は1954年11月4日のライブだけに、期待は出来ないけれど、鑑賞には差し支えない程度のものである。ライブ故の雑音は意外と少ない。シャンゼリゼ劇場での初演の模様のようだが、もう少し分離の良い音だったら…と思わなくもないが、やはりかけがえのない録音に違いない。
トッカータ風のパッセージの見事さはやはり特筆すべきだろう。更に、第2楽章のペーソスにあふれた表現は、彼がいかにメロディー・メーカーであったかを証明している。
デルヴォー指揮のフランス国立放送管弦楽団の演奏は全く申し分の無いもので、終演後の大きな拍手も当然と思う。
それにしても、彼のベートーヴェンのソナタをはじめ、シューマンやブラームスの録音など、モノラルというだけで忘れ去るにはあまりにもったいないことだ。
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Tue, 30 May 2023 20:00:24 +0900
2023-05-30T20:00:24+09:00
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アラウの名盤!!、リストの超絶技巧練習曲
http://suisse.exblog.jp/32980138/
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<![CDATA[
作曲者 : LISZT, Franz 1811-1886 ハンガリー
曲名 : 超絶技巧練習曲 S.139 (1851/最終稿
演奏者 : クラウディオ・アラウ(pf)
CD番号 : PHILIPS/32CD-375(416 458-2)
1974年から1976年にかけてアムステルダム、コンセルトヘボウで録音された名盤で、今更私が語るまでもなく、音楽愛好家ならよくご存知の録音である。
私はLP時代から愛聴する録音であるけれど、これほどの名曲。たくさんの名演があり、古くはジョルジュ・シフラのいくつかの録音から、ホルヘ・ボレの美しい演奏、アリス=紗良・オットや、かつて夢中になったラザール・ベルマンの録音など、たくさんたくさんある。
更に、これの最初の版(凄まじい技巧の曲)の演奏(大井和郎の演奏を持っている)などなど、あげていけば切りが無い。
それでもこのアラウの演奏は、技巧を誇るのでは無く、ごく当たり前の音楽として聞かせる希有な演奏なのだ。これを聞いていると、とんでもない難しい技巧の曲という気がしない。弾けそうな気がしてくる(無論、私には全く歯が立たないけれど…笑)。
音楽に余裕があり、歌わせ方が実に自然なのだ。
録音も、素晴らしく、1970年代のフィリップスの録音のスタッフの素晴らしさに感謝しかない。ピアノの録音はこのように低音から高音まで余裕のある響きと豊かさで聞かせてほしいし、この録音はまさに理想的なのだ。
録音から思えば50年ほど経った。それでも全く色あせないのは、クラウディオ・アラウの包みこむような豊かで、広がりのある演奏とこのフィリップスの録音があってこそなのだ。まさに永遠の名盤である。
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Mon, 22 May 2023 03:49:11 +0900
2023-05-22T03:49:11+09:00
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モーリス・アブラヴァネルの指揮するチャイコフスキー
http://suisse.exblog.jp/32975253/
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<![CDATA[作曲者 : TCHAIKOVSKY, Pyotr Il'yich 1840-1893 露
曲名 : 交響曲 第2番 ハ短調「ウクライナ」Op.17 (1872/79-80改訂)
演奏者 : モーリス・アブラヴァネル指揮 ユタ交響楽団
CD番号 : VANGUARD/CD5X-3603
モーリス・アブラヴァネルなんて昔の指揮者を取り上げるのは、今ちょっとした仕事で、ここのユタ大学に関連する仕事をしているせいだけれど、改めて聞いて、全く地味な仕事ぶりながら、とても良い仕事をしていると思ったからだ。
チャイコフスキーの第2番の交響曲は、今、戦禍に見舞われているウクライナのタイトルを持っているが、これは3つのウクライナ民謡が交響曲に使われていることによる。
しかし、日本人がこの指揮者のことを高く評価しているのを聞いたことがない。対して欧米では高く評価され、長く活躍したアメリカのユタではオーケストラの本拠となるホールの名もアブラヴァネル・ホールと呼び、今も大変尊敬されている。
彼の録音には、きっと復刻されていないだけだと思うが、日本人に人気のベートーヴェンやモーツァルト、シューベルトやハイドンが実に少なく、交響曲全集は、1960年代から70年代にかけて録音されたマーラーやチャイコフスキー、シベリウスといったの交響曲全集があるものの、ドイツ、オーストリア系の古典作品が少ないのだ。わずかにブラームスの交響曲全集があるだけか?
さらに、日本人は本場物が好きだ。モーリス・アブラヴァネルなんてオスマン・トルコだったエーゲ海の町に生まれた指揮者がアメリカの田舎町である(失礼!!)ソルトレイクのオーケストラを率いて録音したものに興味を示さないのは、当然かも知れない。
しかし、この指揮者、演奏はちょっと地味だけれど、聞いているととても丁寧で、聞かせどころを心得、いつの間にか聞く者を夢中にさせてしまうのだ。
パンチもありながら、爆演とは正反対の格調高い質感で、まとめ上げる。チャイコフスキーのこの交響曲のようにロシア五人組の例えばポロディンの作品のようなクドさが、下品に陥らないで聞くことができるのだ。
例えば終楽章のテーマ。カエルの歌に似たあの主題が、クドクドと繰り返されてウンザリさせられることもあるけれど、それはかけらも無く、楽しい舞曲が繰り広げられるのだ。
オケがもうちょっっと上手かったらなんて心配も無用だ。ウィーン・フィルやベルリン・フィルのような音でないと言うのは当たっているけれど、不満を感じるほどヘタだとは私は思わない。
この前にマーラーの「復活」と第9を聞いて、今、チャイコフスキーに移ってきたところなのだけれど、どれもパッと聞き手を捕らえるような才気に満ちたものではないけれど、聞き込むに従ってどんどん引き込まれていく味わいが身上なのだ。
こういった指揮者は、世の中が狭くなり、どんどん減っている絶滅危惧種のような稀少なものとなりつつある。
今、(チャイコフスキー交響曲全集の)1枚目後半、5番の3楽章に入ったところ。イヤー、良い演奏だなぁ。
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Tue, 16 May 2023 05:17:46 +0900
2023-05-16T05:17:46+09:00
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イタリア・ロマン派の巨匠メルカダンテの荘厳ミサ曲を聞く
http://suisse.exblog.jp/32973437/
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<![CDATA[作曲者 : MERCADANTE, Saverio 1795-1870 伊
曲名 : メルカダンテ/荘厳ミサ曲 (1867/カッライ校訂版)
演奏者 : ファブリツィオ・カッライ指揮 ジェノヴァ・カルロ・フェリーチェ劇場管弦楽団, 合唱団, フランチェスコ・ビラーガ(hr), ジョヴァンニ・バッティスタ・ファブリス(vn), フランチェスコ・メーリ(ten), マッテオ・リッピ(ten), マリオ・カッシ(br), ニコラ・ウリヴィエーリ(bs-br)
CD番号 :Dynamic/CDS7986
指揮をしているファブリツィオ・カッライが校訂したと言うが、1867年頃の曲?ということならば、メルカダンテが失明(1862)した後になるので、口述にて作曲したものだということになる。
それにしても、立派な音楽だ。ヴェルディの出現で、時代遅れとなって忘れられたと言うが、このような音楽が忘れられるのはもったいない!
作曲者のゆかりの地でもあるジェノヴァの歌劇場のオケと合唱団は、とても献身的に作品の録音を行っている。響きがとても良い。独唱は実にオペラティック!!当たり前のことだけれど…(笑)。
1時間以上の大作だけれど、盲目になったばかりで、不自由な暮らしの中で書いたとは思えない充実ぶりで、聞き始めたら止められなくなってしまった。
他にこの作品の録音が無く、これが唯一の録音らしいので、まずは聞いてみてほしいと思う。
高校に入りたての頃、音楽好きの中学の先生の家に遊びに行って、このメルカダンテのホ短調のフルート協奏曲を聞かされ、「どうだ、良い曲だろう」と言われたことを思い出した。
その演奏も持っていたはずだ。次にそれでも聞いてみようか?
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Sun, 14 May 2023 04:33:02 +0900
2023-05-14T04:33:02+09:00
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セルジウ・ルカの弾くドヴォルザーク
http://suisse.exblog.jp/32964077/
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<![CDATA[作曲者 : DVOŘÁK, Antonín 1841-1904 チェコ
曲名 : ドヴォルザーク/ヴァイオリン協奏曲 イ短調 Op.53 B.96・108 (1879-80)
演奏者 : セルジウ・ルカ(vn), レナード・スラトキン指揮 セントルイス交響楽団
CD番号 : NONESUCH/9 79052-2
40年近く前だったか、CD初期の名盤で、この頃、CDでこの曲を聞くにはこれしか無かったこともあり、よく聞いた1枚。何しろ冒頭のトゥッティが何をやっているのか分からない録音ばかりで、LPで聞いていたわけのわからない始まり方からすると、この明晰な演奏、録音は新しい時代の到来を感じさせたものだった。
今聞き返しても、なかなか良い演奏だと思う。ヨゼフ・スークやナタン・ミルシテインの録音をもちろん知っているし、他にもずいぶんたくさん聞いて来たけれど、この演奏の価値は全く衰えていないと思う。
スラトキンの覇気のある演奏も、懐かしい。なんだか上手におさまってしまった最近の演奏にも、魅力が無いわけではないけれど、この演奏の持つ若さというか、勢いのようなものは、当時の彼の演奏からしか聞けない…。
それにしてもセルジウ・ルカは流石に良いヴァイオリニストだ。ユダヤ系なのだろうな。ルーマニア出身で、七歳(1950)の時にイスラエルに移住し、9歳でハイファ交響楽団と共演してデビューしたというから、やはり天才肌の人だったのだろう。
マックス・ロスタル(良いヴァイオリニストだ!!)に師事して、アイザック・スターンがアメリカへと招き、ガラミアンのもとで学び、フィラデルィア管弦楽団と共演してアメリカ・デビュー。凄い経歴の持ち主だったのだなぁ〜。
輝くような響きのヴァイオリン。ドヴォルザークの若書きのこの傑作には相応しい響きだ。
聞いたことない方はぜひ1度お試しあれ!!
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Wed, 03 May 2023 11:58:36 +0900
2023-05-03T11:58:36+09:00
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ヤニック・ネゼ=セガンが指揮するバーンスタインのミサ
http://suisse.exblog.jp/32952860/
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<![CDATA[作曲者 : BERNSTEIN, Leonard 1918-1990 米
曲名 : バーンスタイン/ミサ (1970-71)
演奏者 : ヤニック・ネゼ=セガン指揮 フィラデルフィア管弦楽団, ウェストミンスター交響合唱団, テンプル大学コンサート合唱団, アメリカ少年合唱団, テンプル大学ダイヤモンド・マーチング・バンド, ケヴィン・ヴォートマン(司祭/ten),他
CD番号 :Grammophon/UCCG-1800〜01
ミサとあるが、宗教的なテキストを使っているけれど、ミサのために書かれたものではなく、副題にあるように「歌手,踊り手,演奏者のためのシアター・ピース」として書かれたものだそうだ。
この曲には、作曲者が指揮した壮絶な録音がある。その昔、4チャンネルレコードで聞いて゛凄い!!」って思った。それしか出てこなかった。何度も何度も聞いて、様子を想像してみたりしながら、繰り返して聞いたものだ。
その後、この曲も色々な録音が行われたが、作曲者の自作自演に勝るものは未だ無いと思う。この2015年4月30日~5月3日にライブ録音されたヤニック・ネゼ=セガンの演奏も健闘しているが、あの作曲者の指揮による衝撃には及ばない。(この後、大阪で国内では久しぶりとなる演奏が行われたが、残念ながら聞きに行くことはかなわなかった)
それでもこの曲は、私の信じるところ、彼の最高傑作だと思うし、様々な演奏が行われるべきだと思う。この録音もそう思いつつ、オールソップ盤とともに購入したものだった。
今日ほどこの曲が訴えるものが意味を持つ時代も無いだろう。ワシントンのケネディー・センターのこけら落とし公演のために書かれたこの曲は、泥沼と化したベトナム戦争の終盤にあったアメリカの音楽なのだ。そして平和への希求がこの曲のテーマだと私は思う。
ロック歌手からマーチング・バンドと様々な文化が坩堝と化して、それを背負い、曲を進めていく司祭、清らかな少年たちの歌声…。作曲者の録音も聞いてほしいけれど、この曲の新しい可能性を聞かせるヤニック・ネゼ=セガンの録音を紹介したい。
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Thu, 20 Apr 2023 13:56:47 +0900
2023-04-20T13:56:47+09:00
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チッコリーニの弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第2番
http://suisse.exblog.jp/32951219/
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<![CDATA[作曲者 : RACHMANINOV, Sergei 1873-1943 露
曲名 : ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18 (1900-01)
演奏者 : アルド・チッコリーニ(pf), ヤニック・ネゼ=セガン指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
CD番号 : LPO/LPO-0102D
2011年11月のライブ。ということは85歳を過ぎたアルド・チッコリーニの演奏であるということ。無論、80を過ぎて元気なピアニストはたくさんいるけれど、この録音もまずはよくこの歳でこの曲を演奏するなぁ〜という印象。多少、ポロポロと音を外したりしているけれど、それが気になるなら、コンビューターの打ち込みでも聞いていた方が良い。
ここでのチッコリーニの演奏、小さな傷はともかくとして、なかなかに味わい深い。ちょっとした間、ブレスに枯淡の味わいとも言うべきものがある。それでいて、最後は盛り上がって大きな拍手となるのだから、やはりこの人は一筋縄ではいかないところがある。
ヤニック・ネゼ=セガンの指揮はモーツァルトはあまりに平板で、今ひとつ。ラフマニノフはオケがよく鳴っているのでそれなりに聞けるが、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲で聞かせた繊細さが、ラフマニノフの音楽にはあまり合っていないみたいで…。
この演奏、ダニール・トリフォノフとの録音ほどには成功していないように思うけれど、どうでしょうか?
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Tue, 18 Apr 2023 18:03:44 +0900
2023-04-18T18:03:44+09:00
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ポリーニとアバド/VPOのブラームスのピアノ協奏曲第2番に思う
http://suisse.exblog.jp/32949880/
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<![CDATA[作曲者 : BRAHMS, Johannes 1833-1897 独曲名 : ブラームス/ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.83 (1878-81)
演奏者 : マウリツィオ・ポリーニ(pf), クラウディオ・アバド指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
CD番号 : Grammophom/UCCG-9500
亡くなった友人のヴァイオリニストと話したことを思い出した。彼は長年コンマスとしても仕事をしてきたから言えた言葉かも知れないけれど、偉くなる指揮者って、いつも同じテンポなのだと言っていたっけ。色々な人がいるから、これが偉くなる指揮者の条件とか言うのでは決してないけれど、ポリーニとアバドの弾くブラームスの2番を聞いていてそのことを思い出した。
この録音は1976年5月の録音なのだけれど、この二人、オケをベルリン・フィルに変えて、ほぼ20年後の1995年12月に行った再録音がある。そしてこの2つの録音の演奏時間がほとんど変わらないのだ。聞いた感じもほとんど同じ。この変わらなさと、友人の言葉とどこかオーバーラップして思えてくる。
オケはウィーン・フィルとベルリン・フィルで多少のテイストの違いはある。奏者が違うのだから当然だけれど、テイストは全く同じ。二人のこの曲への解釈がこの50年前の録音の時点で完成していたということもあるだろうけれど、思いつき、場当たり的な演奏ではない、確固たるものがこの演奏にはあるように思える。
考えに考え、推敲に推敲を重ねて行ったブラームスに相応しい演奏だと思う。
二人ともイタリア人だから歌心がどうのという国籍に起因する思い込みに支えられた評が、これほど相応しくない演奏も珍しいと思う。ブラームスがこの演奏を聞いたらニコニコと満足するに違いないと、私は思う。
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Mon, 17 Apr 2023 04:59:02 +0900
2023-04-17T04:59:02+09:00
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アバドのブラームス
http://suisse.exblog.jp/32949872/
http://suisse.exblog.jp/32949872/
<![CDATA[作曲者 : BRAHMS, Johannes 1833-1897 独
曲名 : 交響曲 第1番 ハ短調 Op.68 (1876)
演奏者 : クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
CD番号 : Grammophon/435 6832
持ってるだけで、ロクに聞いていないCDを聞こうと思い立ち、ブラームスの交響曲全集を聞きはじめる。
大学祝典序曲、運命の歌、そしてこの交響曲第1番となるのだけれど、録音もよく、演奏も深々としたブレスで、実に心地よい。何しろどこをとっても真っ当で、伝統的なブラームスが聞けるのは嬉しい。
聞き進んで、終楽章のアルプスの山並みに響くがごときホルンのアンサンブルの後の有名な開放弦のG音からはじまるメロディーが流れてくると久しぶりにグッと胸に迫るものを感じた。
そう言えば、ウィーン・フィルとの旧盤もあったはずなのだが、今回見つけられず…。ともかく1990年11月録音のこの演奏を心から堪能して満足した。
ボンヤリと聞き流すことが最近増えていたことを反省しつつ、アバドの遺産をしばらく辿ってみようかと思う。
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Mon, 17 Apr 2023 04:13:10 +0900
2023-04-17T04:13:10+09:00
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A.デイヴィス指揮で聞くマドンナの宝石他
http://suisse.exblog.jp/31586231/
http://suisse.exblog.jp/31586231/
<![CDATA[作曲者 : WOLF-FERRARI, Ermanno 1876-1948 伊
曲名 : 歌劇「マドンナの宝石」(1911) 第1幕への間奏曲
演奏者 : アンドルー・デイヴィス指揮 フィルハーモニア管弦楽団
CD番号 : EMI/TOCE-13291
学校用のハードディスクのデータを整理していて、こんなCDのデータが出てきて、捨てようかどうしようか迷って聞き始めたら、なかなか良いので残すことに…(笑)
マドンナの宝石の他にはエルガーの「愛の挨拶」やローザスの「波濤を越えて」などが入っていた。
若い新人指揮者で、コリン・デイヴィスとよく間違えていた頃から、イギリス音楽を中心に聞いていたけれど、こうしたポピュラーな小品集も丁寧な仕上げで、なかなかよく聞かせる。
こうした曲集なら、カラヤンが1番だが、彼が録音していない作品もここに入っているし、カラヤンの録音があるものでもそんなに遜色のない良い出来で、聞いていてなかなか愉しく、つい一通り聞き通してしまった。
はるか昔、こうした曲集を持っていたけれど、演奏は誰だったか…。そんなことを気にもしていなかった時代、クラシック音楽に親しみ始めた頃、大分お世話になった曲も多い。なんだか懐かしくもなり、昔、聞き込んだ曲だけに、メロディーも和声進行も、オーケストレーションも憶えていて、あれ、ここにはトランペットが重なっていたっけ…なんて、改めてスコアを探してみたり…。
愉しかった!!(笑)
収録曲は以下の通り。
1. エルガー/愛のあいさつ "Salut d'amour" Op.12 (1889)
2. スッペ/喜歌劇「軽騎兵 "Die leichte Kavallerie (Light Cavalry)"」(1866) 〜 序曲
3. レハール/ワルツ「金と銀 "Gold und Silber"」Op.79 (1902)
4. ポンキエルリ/時の踊り "Tanz der Stunden" (1876/1880改訂/歌劇「ジョコンダ "La Giaconda"」より)
5. ワルトトイフェル/ワルツ「スケートをする人々 (スケーターズ・ワルツ) "Les Pâtineurs"」Op.183 (1882)
7. ヴォルフ=フェラーリ/歌劇「マドンナの宝石」(1911) 第1幕への間奏曲
8. イヴァノヴィチ/ワルツ「ドナウのさざ波 "Flots du Danube"」(1880)
9. ボロディン/交響的絵画「中央アジアの広原にて "Dans les steppes de l'Asie centrale"」(1880)
10. ローザス/波濤を越えて "On The Waves" (1891)
11. マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」(1890初演) 〜 間奏曲 "Intermezzo"
12. エルガー/行進曲「威風堂々 "Pomp & Circumstances"」Op.39 第1番 ニ長調 (1901)
13. ヘンデル/ヘンデルのラルゴ "Largo De Haendel" (1738/歌劇「クセルクセス」HWV.40 第1幕 第1場より)
1987年6月録音
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Sat, 15 Aug 2020 12:41:00 +0900
2020-08-15T12:41:00+09:00
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コリン・デイヴィスで聞くベートーヴェンのコリオラン序曲
http://suisse.exblog.jp/31576887/
http://suisse.exblog.jp/31576887/
<![CDATA[作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名 : 「コリオラン」序曲 Op.62 (1807)
演奏者 : コリン・デイヴィス指揮 バイエルン放送交響楽団
CD番号 : SONY-Classical/SICC 1763
コリン・デイヴィスがSONYにこんなものを録音していたとは知らなかった。
サー・デイヴィスは結構当たり外れがある。ベルリオーズなんて最強の自信で演奏していて、説得力抜群だったりするけれど、何度も録音しているホルストの惑星は、外れの内2入る。山っ気タップリの話を生真面目に説明されているみたいで、もう良いよと言いたくなる。
ベートーヴェンの交響曲全集も持っていたと思うけれど、印象に残っていない。で、この録音はさてどんなものかと、おっかなびっくり聞き始めたのだけれど、コリオラン序曲の低速ぶりに驚き、やっぱり今ひとつかと思っていたら、次第に引き込まれ、完全にノックアウト…(笑)。
この重心の低い音は超弩級だ。
確かにテンポが速いと、音が鳴りきらないで次々と進んで行く傾向がある。だから響きの重心が上がる。ベートーヴェンの書いたメトロノーム・テンポに合わせて、速いテンポをとる演奏がなんだか主流になっているけれど、サー・デイヴィスの指揮するバイエルン放送交響楽団のゆったりとした歩みは、かつての巨匠たちの時代に聞いていた響きを思い起こさせるもので、古楽器などによるオーセンティックな演奏からすれば、対極にあるものだろう。
しかし、ブルーノ・ワルターやフルトヴェングラー、カール・ベームや朝比奈隆を聞いて育った私のような者には、この重心の低い響きと、息苦しさのない余裕綽々のテンポから来る豊穣な音の世界は、とても魅力的で、今だからこそ新鮮でもある。
他の作品も全て、名演!!
こんな録音を知らなかったとは…。はい、大当たりでした(笑)。
収録曲は以下の通り。
1. 劇音楽「アテネの廃墟」Op.113 (1811) 〜 序曲
2. 「コリオラン」序曲 Op.62 (1807)
3. 「レオノーレ」序曲 第1番 Op.138 (1800-07)
4. バレエ音楽「プロメテウスの創造物」Op.43 (1800-01) 〜 序曲
5. 劇付随音楽「エグモント」Op.84 (1809-10) 〜 序曲
6. 「レオノーレ」序曲 第3番 Op.72b (1806)
7. 歌劇「フィデリオ」Op.72 (1804-05/1814改訂第3版) 〜 序曲
8.「レオノーレ」序曲 第2番 Op.72a (1805)
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Wed, 12 Aug 2020 04:05:40 +0900
2020-08-12T04:05:40+09:00
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チャイコフスキーの大序曲「1812年」を合唱入りで聞く
http://suisse.exblog.jp/31572331/
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<![CDATA[作曲者 : TCHAIKOVSKY, Pyotr Il'yich 1840-1893 露
曲名 : 大序曲「1812年」Op.49 (1880/合唱Ver)
演奏者 : アントニオ・パッパーノ指揮 ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団, 合唱団
CD番号 : EMI/0946 3 70065 2 8
この作品は、不幸な生い立ちを持っている。もともと開かれる予定の産業博覧会のためにニコライ・ルービンシュタインが依頼したもので、最初、出版社経由での依頼だったが、「自分自身が感動しないであろう作品に手を付けることはできない」と断ったものの、ニコライ・ルービンシュタイン自身からの直の手紙での依頼に重い腰をあげて作曲したものだった。
作曲中も「序曲はおそらく騒々しいものになる。私は特に愛情を持って書いたつもりはない」と弟アナトリーへの手紙に書いているほどで、出版社にも「良い作品にはならないだろう」とまで書いている。11月7日に作曲を終えているが、1881年春、その博覧会は開かれず、更に依頼主のニコライ・ルービンシュタインが3月23日に亡くなって、この作品は宙にういてしまう。
結局、初演される前に、スコアなどが出版されるという、珍事まで起きたこの作品は、1882年8月にモスクワで初演された。ただ、初演の批評は散々で、凡作であると片付けられた。その後も何度か演奏されているが、評判はあまりバッとしなかった。その点で、作曲者が出版社に宛てた「良い作品にはならないだろう」という予感は当たった。
しかし、作曲から七年、転機が訪れる。
曲に改訂が加えられ、作曲者自身の指揮によって、サンクトペテルブルクにおける演奏会でこの曲は大成功を収めたのだった。作曲者自身が日記に「満足!」と書いている。
以来、あちこちでこの曲が取り上げられ、名曲の仲間入りを果たしたのだった。
原作には大砲をここで放てという指示があったり(実際に大砲が使われることもある)、任意ではあるがバンダを使うこともある。ただ、合唱を使うという指示は原作にはないのだけれど、冒頭のヴィオラとチェロで演奏されるロシア正教会の聖歌「神よ汝の民を救い」が、合唱に置き換えて演奏されることが時々行われる。
曲はいつものチャイコフスキーのスタイルで、少々分かりにくいが、長い序奏(二部に分かれている)があり、展開部を持たないソナタ形式による主部が続く。その点、同じ頃に作曲された弦楽セレナードの第1楽章に近い構造を持っていると言える。その序奏のメロディーが再び戻ってくる点も同じである。
さて、第2主題の後、ロシア民謡風の小さなエピソードが挿入される(207小節〜)がモスクワの西部、ボロジノの民謡だとかで、その部分も歌われることがある。(これは二度出てくる)
この後、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」が崩壊し、ロシア正教会の聖歌が壮大に再現(合唱版はここで大合唱で歌い上げる)することになる。
戦争を描くことに、チャイコフスキーは躊躇したのかも知れない。また、政治に関わることを躊躇したのかもしれないが、結局作曲者の予想を裏切り、この曲はチャイコフスキーの作品の中でも特に人気のある作品となった。
アントニオ・パッパーノはイギリス出身のイタリア系の指揮者。あちらこちらの歌劇場でコレペティトールを務めて、力をつけて指揮者としてデビューした。昨今珍しい影議場のたたき上げ指揮者なのだ。
オーケストラは1908年創設で、1584年創設の音楽院に付属している。多分音楽院としては、世界で最も古い学校だろう。
で、この演奏。ロシアの音楽はロシア人に限るなどという本場主義とでもいうのか、そうしたことがただの幻想に過ぎないと思い知らせてくれる名演である。オケの響きも重心の低い、見事な安定度で、この軽薄になりやすい描写音楽を、しっかりとした音楽作品として再現している。
昔のフリッツ・ライナーなどのような隅々までビシッと決めたような息苦しさとは無縁の、伸び伸びとしたフレージングもまた魅力的だ。収録された他の作品も素晴らしい名演!!一聴をお薦めしたい。
抄録曲は以下の通り。
1. 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ "Francesca da Rimini"」Op.32 (1876)
2. 幻想序曲「ロミオとジュリエット」TH.42 (1869/70. 80改訂)
3. ワルツ "Valse" (1877-78/歌劇「エフゲニ・オネーギン」Op.24 第2幕 第1場より)
4. ポロネーズ "Polonaise" ((1877-78/歌劇「エフゲニ・オネーギン」Op.24 第3幕)
5. 大序曲「1812年」Op.49 (1880/合唱Ver)
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CD試聴記
Schweizer_Musik
Mon, 10 Aug 2020 10:47:57 +0900
2020-08-10T10:47:57+09:00
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