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【読書メモ】官僚の研究 不滅のパワー1868−1983

官僚の研究―不滅のパワー・1868‐1983

官僚の研究―不滅のパワー・1868‐1983

「官僚の研究 不滅のパワー1868−1983」はバブル景気ちょい前、1983年に出版された本で、日本における官僚機構の変遷、その実際を扱っています。

実際に大蔵省*1の官僚であった秦郁彦(はた・いくひこ)氏が執筆されているだけあって、歴史とデータを踏まえたしっかりした内容の本です。
カストリ雑誌のようなルサンチマン根性成分は)ないです。

内容抜粋

  • 大正末期〜昭和初期の不況の結果、合格したけれど枠がないので町役場や臨時職員で食いつなぐという例もあった
  • 日中戦争以降、「戦争による目減りも見込んで」大量採用。もちろん、統制経済体制確立のためでもあったが。
  • 吉田茂池田勇人佐藤栄作が首相の座を得たのは、終戦後の公職追放令に伴う人事異動のためというのが定説
  • 戦前の県知事などは中央から派遣されてきた「官選知事」
  • 「公選知事」は地方自治、政策的機動性に優れるが、コストがかかる。典型例が三濃部都政*2
  • 天下り」の実態は「ある種の調整弁」とするハーバート大ケント・E・カルダー博士*3の調査。派遣されるのは業界団体や弱っている企業であり、口利きや対外調整を行う事で業界が極端に不利にならないよう外部アドバイザーとして有効に機能している。
  • 大正デモクラシー期は政友会派VS民政会派と、官僚にも派閥争いがあった。*4
  • 戦中は政党VS軍部・官僚という図式が成り立っていた。細かく分けると下表のようになる

活動時期軍部との関係活動の傾向
新官僚満州事変、2・26事件受動的、消極的政党からの失地回復。農村の自力更生運動等を主導
革新官僚日中戦争以降能動的、積極的*5戦時統制計画に新たな役割を見出す。概念的用語羅列でお茶を濁す傾向

*1:現在は財務省金融庁に分割

*2:その尻拭いは自治省OBの鈴木知事が担った

*3:ケント・カルダー - Wikipedia

*4:なんだか、アメリカ合衆国の共和党派VS民主党派みたいですね

*5:この手の官僚が、以前紹介した【読書メモ】戦争と広告 - Bye Bye Mooreにも出てきます