NHK大河ドラマが吉田松陰にスポットを当てる危うさ

2015年大河『花燃ゆ』はイケメン押し 伊勢谷・高良・東出ら続々(47NEWS)

同作は、女優の井上真央主演で、吉田松陰の末妹・文(後に美和と改名)の激動の人生を、幕末から明治維新にかけての歴史的転換期を陰で支えた人々の群像劇と共に描く。幕末の長州藩で、松下村塾を開き、高杉晋作や久坂玄瑞など、多くの才能ある若者を育てた松蔭役に伊勢谷、高杉役に高良、久坂役に東出を配役。

今更ながら主役は吉田文であっても、実質の主役は吉田松陰。その人をハイライトにした大河ドラマを今になって作ろうというのはある種の作為を感じる。
吉田松陰・対外思想

『幽囚録』で「今急武備を修め、艦略具はり礟略足らば、則ち宜しく蝦夷を開拓して諸侯を封建し、間に乗じて加摸察加(カムチャッカ)・隩都加(オホーツク)を奪ひ、琉球に諭し、朝覲会同すること内諸侯と比しからめ朝鮮を責めて質を納れ貢を奉じ、古の盛時の如くにし、北は満州の地を割き、南は台湾、呂宋(ルソン)諸島を収め、進取の勢を漸示すべし」と記し、北海道の開拓、琉球(現在の沖縄。当時は半独立国であった)の日本領化、李氏朝鮮の日本への属国化、満洲・台湾・フィリピンの領有を主張した。松下村塾出身者の何人かが明治維新後に政府の中心で活躍した為、松陰の思想は日本のアジア進出の対外政策に大きな影響を与えることとなった。

要は現在のロシアのサハリン州を奪い、朝鮮半島を属国化し、満州に進出。台湾、フィリピンにも進出。これって、吉田松陰の松下村塾の塾生たちで作った明治政府以降の日本が実際に行った対外戦略そのもの。明治以降の大日本帝国下の日本は吉田松陰の構想をそのまま忠実に実行したに過ぎない。大東亜共栄圏などは戦前の政府がでっち上げたワケではなく、幕末からその構想があったのだ。
「花燃ゆ」言わば日本帝国主義のイデオローグの大河ドラマ化だ。
このドラマが決まったのは昨年12月。ちょうどNHK経営委員問題が起きた頃。
吉田松陰は靖国神社に祭られている。ちょうど安倍首相が靖国神社参拝した頃だ。もちろん、吉田松陰は安倍首相のおひざ元、山口県出身だ。いつも不思議に思うのだが、中韓は靖国神社A級戦犯合祀ばかり批判しているが、アジア侵略のイデオローグの合祀に反対したという話は聞かない。なぜなんだろう。これじゃ、アイヒマンを非難し、ヒトラーは不問にするのと同じだ。
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