拉致問題功績は安倍・中山という幻想

フジテレビ報道2001で中山恭子首相補佐官が生出演し、番組キャスターは「拉致被害者を北朝鮮に返さなかった功績者」と紹介していた。だが、これは物語にすぎない。
2002年10月の拉致被害者一時帰国の頃を振り返ると、
16日 拉致帰国の5人、27日に北朝鮮へ戻ることを提案 安倍副長官

安倍晋三官房副長官は十六日午前、都内のホテルで、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)から一時帰国した拉致被害者五人の家族らと面談し、二十七日に五人そろって北朝鮮に戻ることを提案した。場合によっては、一日延長することも検討する。
 家族らは生存者本人と相談した上で、十六日中にも返答する。
 また、拉致され死亡したとされる横田めぐみさん=失跡当時(13)=の両親が、めぐみさんの娘とほぼ断定された少女との面会のため北朝鮮を訪問することは当面先送りすることにした。(2002年10月16日)

とあるように、この時点で当時の安倍晋三官房副長官は、北朝鮮との約束通り、拉致被害者を北朝鮮に帰すつもりだった。
これが一変するのは、実はアメリカの意向だった。
17日 北朝鮮、核開発の継続認める 米国務省が発表

米国務省は16日、ケリー国務次官補が今月初めに朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を訪れた際、北朝鮮側が、高濃縮ウラン施設建設などの核兵器開発を継続していることを認めていたと発表した。米政府は、北朝鮮の核開発凍結を決めた米朝枠組み合意や核不拡散条約(NPT)への違反にあたるとして、北朝鮮に開発計画の中止を求める。北朝鮮は従来の核開発否定発言を翻し、94年以来米朝関係の土台だった枠組み合意を「無効」とみなした。
 米国はイラクに対する武力攻撃の環境を整えているさなか、新たに浮上した北朝鮮の核問題にどう取り組むのか難しいかじ取りを迫られる。今月下旬に再開する日朝交渉への影響も避けられない。
 国務省筋によると、ケリー次官補らが今月3〜5日に平壌で行った米朝高官協議の初日に、米国側が北朝鮮側に核開発の「証拠」を突きつけたところ、翌日の本格協議で、金正日総書記の側近で外交を取り仕切る姜錫柱・第1外務次官が「高濃縮ウランを抽出できる装置を購入した。いまも所有している」と認めたという。
 国務省が16日に発表したバウチャー報道官名による声明によると、この席で北朝鮮側は、米側を非難して米朝合意が無効であると宣言した。また、CNNによると、米政府も北朝鮮側に、核開発は米朝合意に違反していると指摘した上で、同合意は無効になったと伝えたという。
 声明は、米国が同盟国とともに、北朝鮮との関係を改善させる大胆なアプローチを取ってきたと強調。しかし、北朝鮮が大量破壊兵器の開発やミサイルの開発・輸出などの問題の姿勢を転換するのと引き換えに北朝鮮国民の生活改善を支援するこのアプローチは「核兵器開発への懸念に照らしてもはや追求できなくなった」としている。
 米政府は、この問題について議会指導者との協議に入るとともに、国務省のボルトン次官とケリー次官補を日本、韓国に派遣することを明らかにした。この日午後、アーミテージ国務副長官と会談し、この問題の説明を受けた橋本龍太郎元首相によると、ケリー氏は20日に東京入りし、日本側と協議する。米政府は、同盟国と共同で核開発断念を迫る構えだ。

16日とは米国時間で、日本時間では17日のことだ。つまり安倍官房副長官が拉致被害者の帰国を提案した翌日のことだ。そして、日本政府がケリー国務次官補と協議したのは20日だ。
そして、
24日 政府「拉致被害5人は離日させず永住へ」

政府は24日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)から帰国している拉致被害者5人について、日本への永住を前提に今後も北朝鮮に返さないことを決めた。同時に北朝鮮に残る被害者の家族全員の安全確保と早期帰国の実現を強く要求。29日に始まる日朝国交正常化交渉までに家族の帰国日程が確定できなければ、同交渉の最優先議題とすることも決定した。

この決定に関するエピソードもあり、中山恭子官房参与と安倍官房副長官が強く返さないと主張したことになっている。
しかし、このくだりがある。

「被害者の子供たちは学校もあり、来月(11月)中の来日は無理だそうですが、北朝鮮は来日に反対していません」
 田中は首相官邸にそう報告した。順調に見えた。
 だが10月16日、北朝鮮が国際社会との約束を裏切って核開発計画を進めていることが明るみに出て、潮目は徐々に変わる。

つまり、ケリー国務次官補が来日した20日を機に方針がガラリと変わっただけであり、中山、安倍が主導したのでも何でもないことが分かる。何のことはない、「返さない」ことを決めたのは核開発問題で圧力をかけたかったアメリカなのだ。
2人の貢献は、むしろその後のことで、家族離散となった拉致被害者の世話役、なだめ役としてメディアに大いに露出したことぐらいしか思いつかない。
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