自分にはまだ体力があると、皆さんは感じているかもしれない。ウエイトトレーニングをしたり、定期的に歩いたり、週に何度かピラティスに通ったりしている人もいるだろう。(参考記事:「あなたに合うウオーキングの方法はどれ? 効果別のおすすめ5選」)
それでも、低い椅子から立ち上がる、歩道の縁石に上るといった日常の動作が、以前よりも少しだけ遅く、労力がいるように感じられるなら、そこには理由がある。加齢とともに、われわれは筋力だけでなく、素早く動く能力も失っていくからだ。
健康づくりで見過ごされがちなこの能力は「パワー(仕事率)」と呼ばれ、筋肉がどれだけの力をどれだけ速く生み出せるかを表す。
パワーはオリンピックの重量挙げ選手やトップアスリートだけに関わるものではない。素早い動きは、つまずいても転ばずに姿勢を保ったり、閉まりかけた地下鉄のドアにぶつからないよう避けたり、スーパーで買ったものをテキパキと車に積み込んだりするときの助けにもなる。
問題は、パワーの衰えは30代から、つまり大半の人が筋力の低下を実感するずっと前から始まることだ。「筋肉では力よりも先にスピードが失われます」と、米ミズーリ大学健康科学部で高齢者の筋力パフォーマンスと機能を研究するスティーブン・セイヤーズ氏は言う。
筋力は通常、50歳を過ぎると年間1〜2%の割合で低下する。一方、パワーはより速く低下する可能性がある。特に高齢者で、筋肉を定期的に使わない場合、年間3〜4%の割合で下がりうることが研究で示唆されている。
2007年に学術誌「Journal of Aging and Physical Activity」に掲載された研究では、高齢者の日常的な動作の改善については、従来の筋力トレーニングよりも、パワーを鍛えるトレーニングの方が効果的であることがわかっている。(参考記事:「加齢に負けない体をつくる 運動を続ける恩恵をアスリートに学ぶ」)
幸いなことに、パワーを鍛えるトレーニングは、日常のルーティンに比較的簡単に取り入れることが可能だ。パワーを鍛える方法と、それを日々の運動習慣に加えることで日常生活での動作が変わりうる理由を、以下に紹介する。(参考記事:「たった1分の運動があなたを変える、週数回でOK、効果は脳にも」)
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