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うれしいニュース。クロマグロが保全活動により予定より10年早く個体数を回復

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 絶滅が危惧されていた太平洋に生息するクロマグロは、各国の協力により、予定より10年早く持続可能な個体数にまで回復したそうだ。

 お寿司やお刺身のネタとして、私たち日本人にとってはお馴染みの食材であるクロマグロ(ホンマグロ)だが、乱獲のせいでほんの十数年前まで歴史的な低水準にまで数を減らしていた。

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 しかし各国の漁業関係者が協力して保全活動を行った結果、当初2034年を目処に掲げられていた回復目標をすでにクリアしていることが判明。

 アメリカ海洋大気庁(NOAA)の報告によると、クロマグロを漁獲しつつ、個体数の増加も見込める持続可能な水準を10年早く達成することに成功したとのことだ。

絶滅の危機に陥ったクロマグロ

 クロマグロ(ホンマグロ)は、とろける脂と濃厚な旨味が絶妙に調和した、た魚好きな人にとっては人気の食材となっている。海外では「マグロのフェラーリ」とも呼ばれており、初競りでときに1億円を超える価格で取引されることからもわかる。

 スズキ目サバ科のクロマグロは、太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布しており、成長すれば体長3m、体重400kgを超えることもある大きな魚だ。

 トップクラスのスピードで知られる魚でもあり、大型の個体になれば70~90km/hで泳ぎ、メキシコ・アメリカ西海岸沿いからインド太平洋までのおよそ1万kmの距離をわずか55日間で横断する。

 だがそんなクロマグロも乱獲が進み、一時は絶滅が危惧されるほどまで数を減らしてしまった。

 アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、1990年代後半から2000年代にかけての乱獲により、2009年から2012年のかけてのクロマグロの生息数は、「未漁獲産卵親魚量(unfished spawning stock biomass)」の2%という歴史的な低水準にまで減少していたという。

 未漁獲産卵親魚量とは、クロマグロ漁が行われなかった場合の魚の数のことだ。

 つまり漁業を行わなかった場合に生息するクロマグロを100%とするなら、ほんの十数年前にはその2%しか生息していなかったということだ。

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photo by iStock

各国の保全活動で10年早く回復目標をクリア

 こうして各国は協力してクロマグロの回復に挑むことになった。目標として掲げられたのが、2034年までに未漁獲産卵親魚量の20%以上」という数字だ。

 クロマグロ保全を希望する声は大きく、2016年にはNOAA漁業局に対してクロマグロを絶滅危惧種に登録するよう要請が出されるという出来事もあった。

 これに対しNOAAは、まだ160万匹おり絶滅は防げるとして登録を拒否し、クロマグロ漁は今にいたるまで、漁獲量を制限しながら継続されていた。

 それでも関係者の努力は無駄ではなかった。最新の個体数評価によって、2034年の目標をすでにクリアしていることが明らかになったのだ。

 その後クロマグロは急速に回復し、現時点で未漁獲産卵親魚量の23.2%に達しているという。

豊富な漁獲量を維持しつつ、資源を永続的に成長させることができるバランスがありますが、もうそのポイントを超えています(NOAAの漁業政策アナリスト、セリア・バローゾ氏)

 今月、日本で資源管理を議論する国際会議が開かれ、2025年以降の漁獲量と回復目標が話し合われる。共同通信によると、日本の水産庁はクロマグロ増枠を提案するとのことだ。

他にも保全活動で個体数が増加した魚がいる

 このように大幅に個体数が回復している魚はクロマグロだけではない。

 たとえば、日本ではあまり馴染みがないが、ヨーロッパでは人気の「メルルーサ」という白身魚もまた、持続可能な水準に回復しており、個体数・漁獲量制限ともに増えている。

 また2021年、国際自然保護連合(IUCU)は、マグロ類4種の分類を変更。

 ビンナガマグロとキハダマグロは「危惧」から「軽度懸念」に、クロマグロは「絶滅危機」から「軽度懸念」へと改善されている。

References:From Overfished to Sustainable Harvests: Pacific Bluefin Tuna Rebound to New Highs | NOAA Fisheries / Recovery of the Bluefin Tuna Achieves Major Goals A Decade Ahead of Schedule / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント、29件

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  1. 関係者には感謝します。

    未漁獲産卵親魚量の目標をクリアしたということですが、せっかくですから漁に影響が小さいようにすこーしづつ目標をあげて、最終的に継続的には余裕たっぷりくらいのたとえば 50% くらいまで上げるのはどうかなと思ったり。今は 20% 目標に対し、 23% あまりだから問題ないけど、来年は目標を 21% にして、 30 年後に 50% みたいなちょっとづつというスタイルね。天然ものだけじゃなく、畜養や養殖なども発展できるんじゃないかなと期待しちゃいます。

  2. 本当だろうか?

    罰則もないのに漁獲制限のルールが守られるのだろうか?

  3. つまりそこまで乱獲しなくても需要には応えられてたってことで、今後も今の水準の漁獲制限を継続したほうがいいんじゃない?

  4. 異論のある向きもおられようかとも思うが、寿司ネタにマグロは欠かせないと思うので、これは良いニュースだと思う。(短文に「思う」を三回つかわねばならないのは、個人の嗜好次第の事柄だからであるw)

  5. 素晴らしいね。ついでに価格下がってくれるともっとうれしい。

  6. 一番の要因は養殖が増えたからだろうね
    ただ雑な養殖方法で環境汚染や負荷がなんて話もあるからそのうち別のバッドニュースが報じられるんだろうな

  7. 素晴らしい
    こないだ20年近く前の本でメルルーサやばいみたいなの読んだばかりだったので、そっちも回復してるというのは良いニュースだと思った。オゾンホールもそうだけど、国際社会が完全にではなくてもそれなりに協力して対応すれば、20年ほどで結果が目に見えるカタチで現れるわけだ

    むろん、環境問題にはもっと対処の難しい事柄もたくさんあるけど、こういう成功体験を積み重ねていくことが本当に大事だと思う

  8. この手の国際的に規定した数字やルールって
    真面目に守ってるのっておそらく日本とかごく1部の
    国だけだと思う。国が公式に世界に向けて発表してる
    数字がそもそも嘘という国だってたくさんあるからね。
    国際特許とかよその国は全然守ってないし。
    守らない理由を100年近く前の戦争の恨みを
    国際特許とごちゃ混ぜにして持ち出したりするし。

    1. >>13
      なんで根拠もなく日本は真面目に守ってると思えるんだろう
      政府だの企業だのが改竄・偽装・法令違反散々やらかしてるのに

    2. >>13
      日本がどれだけやらして非難されてきたか調べた方がいいよ

  9. 資源管理が専門の水産学者の方によるとクロマグロの漁獲枠を国際機関で決められるようになったら効果てきめんだったということみたいですね
    マグロのことなので日本は最後まで規制に反対してたそうですけど良い結果が出ました

  10. ちなみに中国は漁獲量の報告及び自主規制等も一切なく取り放題してる模様

  11. 自然の生き物では人間の胃袋を満たせないくらい人間増えてるのが逆に怖い。

    食べ物足りないのに人口増加中の地球はどこまで耐えれる?虫は食べたくない…

    1. >>19
      とっくに足りてないよ。現在の人口を維持できるのは、1世紀前に空気から肥料を合成する技術が出来たから。

        1. >>25
          ハーバー・ボッシュ法で調べよう

          先進国で飢餓が根絶され、現在の世界人口が支えられるようになったのは
          ハーバー・ボッシュ法による農業革命のおかげ

  12. 一番はウクライナ🇺🇦だな
    流通も航海もしづらくなった
    大西洋と偽装もしづらい

    去年末だかカニが安かったじゃん
    あれは冷凍在庫がルートに乗せられなかったから

    流れないなら安くなるし、売れないなら獲りに行かないだけ
    そんな話し

  13. マグロくらいなら環境変化で減ったんじゃなければ獲らなきゃ割とすぐ増えるんだろうな
    鯨とか哺乳類を増やすのは割と面倒そうだが

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