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捨てるなら引き取ります!北米を脅かす外来種の金魚急増問題に動物園が動く

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(著) (編集)

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 image credit:youtube

 もう飼えないから自然にかえそう…といった感覚で、湖などに放たれた外来種の魚が爆発的に繁殖し、生態系を脅かしている。北米においては東アジア原産の金魚もその1種だ。

 そこで、世界最大の淡水生態系を誇る五大湖の一つ、エリー湖の湖畔に位置するエリー動物園では、新たな取り組みを「ラストチャンス・ラグーン」を開始した。

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 その内容は、不要なペットの金魚の受け入れや、市民にペットの魚の飼い方を教えるというもの。

 実は五大湖周辺では、10年ほど前から、元家庭のペットとみられる外来種の金魚に悩まされており、その数なんと数千万匹とも推定されている。

 無責任な飼い主により捨てられてしまい、野生化・巨大化した金魚が、すさまじい繁殖力で五大湖の在来種を圧倒しているのだ。

鯉は何とかなったものの、今度は金魚!

 五大湖(スペリオル湖、ミシガン湖、ヒューロン湖、エリー湖、オンタリオ湖)は、アメリカとカナダにまたがる世界最大の淡水生態系だ。

 その管理者たちは50年以上も前から外来種のアジアの鯉と戦い続けてきたが、近ごろは幸いにして勝利の兆しが見えてきた。

 一方で、2013年頃から深刻になってきたのが金魚の増加だ。

エコロジストのアンドレア・コート氏は、オンタリオ湖の魚道で、外来種のコイを排除して在来種の魚を保護しているが、ここ10年で、鯉の数が減少した代わりに、金魚が増加したと実感している。

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数千万匹のほとんどが元ペット

 五大湖水産・水生科学研究所のジョン・ミッドウッド氏によると、五大湖における金魚の生息数はおよそ数千万匹にのぼる。

 しかもそのほとんどが、もともとは家庭の水槽にいたはずの捨てられたペットだという。

 野生化すると巨大化し、繁殖力もきわめて高い外来種の金魚。この元ペットの金魚たちにより、在来の魚たちが圧倒され、生態系が次々破壊されている。

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巨大になり野生化する金魚の脅威

 なお興味深いことに、湖に放たれた金魚にはいくつかの変化が起こる。

 自然の水中で目立たないように、体色が鮮やかなオレンジ色から、すこしずつ茶色や暗い色などの暗い色になってゆく。

 また本来雑食の金魚は湖で好きなだけ餌を食べるため、生態系のバランスを崩したり、他の魚の餌を奪いながら成長する。

 そして巨大化。実は金魚は大きいものでは体長40cm以上、体重4kg以上になることもある。飼育下でもすくすく育てばこれが金魚?ってサイズになることもあるのだ。

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 さらに湖では、天敵もないため、本来の高い繁殖力を発揮して、1年で4万個の卵を産むことも。またさまざまな野生の鯉類との交配も可能だという。

 こうした金魚たちが在来種と競って水の底をかき回し、水を濁らせることで水生植物の成長が妨げられ、在来種の生息地が破壊される。

「ラストチャンス・ラグーン」の取り組み

 この問題の対策として脚光を浴びているのが、ペンシルベニア州エリー市のエリー動物園が実施中のプログラム「ラストチャンス・ラグーン」だ。

 2023年9月から始まったこのプログラムは、なんと飼い主が捨てようとするペットの金魚や鯉を、自然へ放つことなく引き取るというもの。つまり行き場のなくなった魚たちに永遠の住処を提供してくれるのだ。

エリー市の児童博物館が周知する「ラストチャンス・ラグーン」

 とはいえ、すべての魚が無条件で引き受けられるわけではない。このプログラムを利用する飼い主はまず、手放そうとする魚の情報を所定のフォームに記入しなければならない。

 その後、引き取られた魚たちは、30日間の検疫期間で念入りな検診や治療を受け、その結果、確実に健康と判断された魚がラグーンに導入される。

 ラグーンとは、エリー動物園内に設置されている87,000リットルの水槽で、飼い主から引き取られた金魚や鯉が安全に暮らせる場所だ。

 捨てられたペットの魚が、五大湖の生態系におよぼす影響を予防するため設置されたこの水槽には、2024年4月までに、52匹の金魚が運ばれ、元気に暮らしている。

 またこのプログラムは、飼い主に適切な魚の飼育方法も教育するなど、エリー湖の湖畔に位置するエリー市の住民に向けて、捨てられるペットの魚を根本からなくす取り組みも同時に行っている。実はこれこそが最も重要な点なのだ。

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金魚を手放す知識不足の飼い主たち

 飼っている金魚の飼育をやめたくなった。もしくは飼えなくなった。でもどうしていいかわからない。かといって、死なせることはできないからトイレに流したり自然に放つ。そこが問題なのだろう。

 また金魚の寿命はあんがい長く、エリー動物園によると、30年から40年生きるという。それを事前に知っていればいいのだが、それを知らずに飼ってしまって困ったという飼い主も多いという。

 さらに知るべきは、湖に放った金魚が、在来種に感染するウイルスを持ち込むこともあることや、わりとタフだという点だ。

 かわいそうだと思い、自然の湖に放てば、多少濁った水の中でもよく食べ繁栄し、野生化および巨大化した金魚はむしろ、湖の堆積物をかき混ぜて濁らせ、在来種の食糧や隠れ場所をめちゃくちゃにしたり、植物に必要な太陽光を遮る迷惑な魚になってしまう。

 以下はアメリカの公共放送サービスPBSが2024年5月に公開した動画。五大湖の生態系を脅かす野生化した金魚に関する報道だ。

How massive, feral goldfish are threatening the Great Lakes ecosystem

一番の目的は一般市民の教育

 元ペットの金魚にラグーンに暮らすチャンスを与えてくれるだけでなく、大事なことを教えてくれるエリー動物園の「ラストチャンス・ラグーン」はとてもよく考えられた取り組みだ。

このプロジェクトの一番の目的は一般市民の教育です。五大湖の大問題である外来生物や、ペットの魚の適切な飼育の仕方や、成長について教えたいと思っています

近ごろは、変わったペットを欲しがったり、世話の仕方を知らないペットを連れてきたりする人がたくさんいるからです (エリー動物園のプログラムディレクター ヘザー・グリュー氏)

 こうしたプログラムがもっと広がれば、飼育の前によく考える人も増えるだろうし、捨てられる金魚も減っていきそうだね。

References: The Last Chance Lagoon / Conservation Projects

本記事は、海外で公開された情報の中から重要なポイントを抽出し、日本の読者向けに編集したものです。

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この記事へのコメント 20件

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  1. 金魚はわりとすぐ死ぬ生き物 という印象だったのだが
    アメリカ人はペットの飼育が上手なのかねぇ?

    1. あっちは色んなものがビッグサイズだから水槽も大きくて水量もあって結果的に環境のブレが小さくて金魚が生き残りやすいのでは

    2. 「お祭りの金魚」は養殖場の品質チェックで選別落ちしてエサ用として
      販売されたクズ金魚が金魚すくいやB級ペットショップに使われる事例が
      多い。だからもともと死にやすい。時々プロの目利きが見のがした
      ミラクル金魚が混じっていて不死身レベルの長生きを見せる。

    3. 飼育したらそうなるよね。常に水が流れている環境と水槽内で目に見えない糞まみれの中で暮らすのとは大違い。

    4. 素人の小学生が、狭い水槽で飼おうとするから
      すぐ死ぬだけじゃないかと思う。

      うちで庭の池(というか、畑の脇の溝)に
      金魚すくいで既にだいぶ弱ってたやつでも、20匹ほど入れておいたら
      10匹ほどは数日内に死に、その後もパラパラと数は減っていったけど、
      5~6匹はだいぶ長く生きていた。
      (アメリカのも、大きくなって発見されたのは、そういう淘汰の勝ち残りだと思う。)
      餌も何もやってないけど、泥や藻があれば勝手に生きていくもんなんだなと思った。

  2. もともとはフナから始まってるし、きっとフナに近い品種ほどタフなんだろうな。動画やサムネに写ってる金魚はほぼフナの体型で品種改良が進んだランチュウとか出目金みたいなのが見当たらない

  3. 人間が飼育する時はペーハー、水温、エサ、ろ過とかめっちゃ気をつかうのに
    ドブに捨てられたら意外と不死身の適応を見せて繁殖しまくる魚は多い。
    なんなら「これ以上デカくなるとヤバいな」と自覚して捨てられた場所に
    最適のサイズで成長をとめる巨大魚までいる。

  4. 自然の水中で目立たないように、体色が鮮やかなオレンジ色から、すこしずつ茶色や暗い色などの暗い色になってゆく。

    これ元々餌にエビの粉とかオキアミとか入ってるから赤とかオレンジ色になってるだけ
    自然にはそんなの無いから本来の銀色とか金色になるだけ

  5. 魚としてはフナなんだから、北米の水族館とか動物園の展示動物の餌とかにできないのかね?切り刻んだ肉ならオオトカゲ系とか亀、ワニなんかガンガン食うでしょ。なんなら水生昆虫とか内臓だって片付けるぜ。ペットショップに餌として提供するのもありなのでは?

    残酷なようだけど、割と日本でも行われてます。外来種の魚を水族館とかが引き取って餌にするのはね。動物園も駆除されたシカとかの肉を餌にして処分してたりするし。

    1. 金魚は野生化するとフナに戻るとかよく言われてるし
      見世物としては野生化金魚は不適当だろうしな・・・

  6. ジョンと言う名前の金魚が大きくなりすぎて
    おじいちゃんの家の池に放しに行った歌があったな(みんなのうた)
    当時は何気なく聞いていたけどあれは警告の為の歌だったんだろうか

  7. 誰だよw
    「屋台の金魚はすぐ死んじゃう」とか「金魚は鮒の三倍餌を食う」とか
    「庭の池に放すと鳥に食べられちゃう」とか言ってたやつ

    まあ鮒の色変わり『緋鮒』から作出されたから「近縁別種の精子で卵分割が始まる」性質を引き継いだわけで、子供が多いのは事実か
    日本の河川でそれほど見ないのはなんでだろう? 鯉とか鯰?
    (昔、一度だけキャリコを河で釣ったことがあるからいることはいる)

    1. 金魚による。フナに近い体型のものは遊泳力あるから生き残るかもしれんけど、体が丸くてヒレがふわふわの奴は本当に生き残れないでしょうよ。

  8. むしろ鯉が何とかなりそうなところにびっくりした
    とんでもない繁殖してたのに

  9. ペットの輸出入を禁じたらどうや
    虫とか植物は知らず知らず入ってくるけどペットの移動は防げるやろ

  10. 太らせて寿命で死んだ金魚食べた事もあるけどマズいので正直他の動物の餌には微妙だと思う

    1. アライグマやらサギやら金魚バンバン食べるから
      いける動物は結構いると思う。
      慣れない餌に拒否反応示す子はいるだろうけど。

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