メインコンテンツにスキップ

うれしいニュース。米国最大のダム撤去計画により、サケが川に戻ってきた!

記事の本文にスキップ

28件のコメントを見る

著者

公開:更新:

この画像を大きなサイズで見る

 思い切ってダムをやめたらすぐにサケが戻ってきた!60年使ってたダムを撤去したところ、わずか1カ月でサケたちが川を遡上、さっそく産卵を始めたという驚きの朗報がアメリカから舞いこんだ。

 アメリカ最大規模のプロジェクトとして、今年10月ダムの撤去が完了したクラマス川の上流で、今月サケの産卵が確認され、環境保護と生態系の回復への大きな一歩と話題になっている。

広告の下に記事が続いています

 かつてサケの産卵地だったクラマス川にサケを呼び戻すため、既存の水力発電ダムを破壊する大がかりな計画は、20年前から現地の部族と州と政府機関が協力して進めてきたもの。

 昔のように川にサケがいる光景がついに、しかも思いのほか早く現実になろうとしている。

サケを阻んでいた巨大なダムを撤去

 アメリカのオレゴン州南部の源流から、カリフォルニア州北部の山岳森林を流れ、太平洋に流れ込むクラマス川は、かつて西海岸で3番目に大きなサケの産卵地だった。

 だが1918年から1962年にかけ、この川に巨大な水力発電ダムが建設されると、今まで産卵のために戻っていたサケたちは行き場を失うことになった。

この画像を大きなサイズで見る

 このダムは7万世帯に電力を供給したが、サケが上流にむかうための水路、いわゆる魚道などは備えておらず、サケにとっては生まれ故郷への行く手を阻む障害物になったからだ。それだけでなく、このダムは川の水質まで低下させた。

 こうしてサケが激減した川にも今年になってようやく転機が訪れた。

 2024年10月2日、クラマス川とその支流を含む644kmにわたり、サケの生息を阻んできた4基のダムが完全に撤去された。

 これで再びサケが遡上することが可能になったのだ。

Salmon return to Klamath River after historic dam removals | USA TODAY

なんと1カ月後にサケが遡上して産卵

 その成果が現れたのはなんと1カ月後。サケたちが驚異的な早さで上流に戻り、産卵を始めたのだ。

この画像を大きなサイズで見る

 その数日前からサケの遡上は見られていたのだが、正式に認められたのは11月1日。オレゴン州の魚類野生生物局が、クラマス川の上流で産み落とされたサケの卵を発見し、115匹のサケ(キングサーモン)の産卵を発表した。

 標高約1,160mに位置する上流域は、自然豊かな環境にあるだけでなく、サケの産卵に適した低い水温を保っている。

 ダム撤去後から1カ月足らずで多くのサケが集まり、産卵を始めたこのエリアはさっそく注目されており、生物多様性の面からも重要視されるようになった。

 やはりダムが消えたことで、彼らの生息環境は劇的に改善されたのだ。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Bob Wick, Bureau of Land Management Oregon and Washington via Flickr under CC BY 2.0

サケの大量死を訴えていた人々

 2000年初めに始まったダム撤去計画の中心は、クラマス川とともに暮らしてきたユーロック族、カルーク族、クラマス族などの先住民族、それに各州と政府機関が協力する形で推進された。

 中でも重要な役割を果たしたのは、ユーロック族代表のジョセフ・ジェームズ氏やカルーク族代表のラッセル・アッテベリー氏などのリーダーたちだ。

 彼らは子孫のため、ダムによる環境破壊、特に歴史的生息地から切り離されたサケが、水質悪化により大量死していることを訴えてきた。その努力がやっと報われたことをとても喜んでいる。

サケが川にいるのを見ると心が温まります。私たちのサケが帰ってきました。この河川域の部族はみんな、未来の世代に健康な川を受け継ぐために、何十年も戦ってきました (ジョセフ・ジェームズ氏)

クラマス川の回復活動に心が躍ります。広大な産卵エリアの復活や、水質改善を促進してサケの帰還をサポートしてゆきます。カルーク族だけでなく、この河川域のすべての先住民にとってもこの日は本当に素晴らしい日です (ラッセル・アッテベリー氏)

Salmon return to lay eggs in historic habitat after largest dam removal project in US history

今年のサケは健康で川の未来に希望も

 ダム撤去により、クラマス川下流の水質も徐々に改善が期待されている。

 サケや川の変化について部族の人々はこう報告している。

今年上流に戻ってきたサケはとても健康的で、細菌に感染した個体もいませんでした。有害な藻類の大量発生が減って(昔のように下がってきた)水温がサケを元気にしてるんです (カルーク族で漁業計画のマネージャー トズ・ソト氏)

こんなに早くこれほど多くのサケが戻ってくるとは予想外のことで、川の未来に希望が持てます。これが正しい道だと感じました。

この地域はダムによる深刻な被害をずっと受けてきました。ダムの撤去後は川の包括的な回復を通じて、サケ、ニジマスなどの回復も目指します (ユーロック族漁業部門の責任者 バリー・マコービー氏)

この画像を大きなサイズで見る

故郷の川に戻るサケの謎

 川で生まれ、海で大きくなり、川に戻って子孫を残して一生を終える。サケやマスに見られるこうした現象は母川回帰(ぼせんかいき)と呼ばれている。

 だが彼らがなぜ、生まれ故郷の川に戻ってこれるのか、その仕組みはまだわかっていない。

 仮説としては、地球の磁場を化学反応で感知、または体内にある磁気受容体(実物は未発見)を通じて感知する、またはその両方などがあるそうだ。

「これは朗報」「川も元気になって良かった」の声

 故郷に戻れるようになったサケのニュースに海外ユーザーからも喜びのコメントが寄せられている。

・これは朗報!

・環境保護の成功例

・ダムなくなってすぐ。そんなに早くサケが戻るなんて!

・これからの世代にとってもうれしい出来事

・部族の人たちにありがとうと言いたい

・サケもだけど川も元気になって良かった!

・こういうのが他の地域でもできるといいなあ

サケは川の生態系の糧にも

 巨大なダムが無くなって、昔ながらのふるさとの川に戻れるようになったサケ。

この画像を大きなサイズで見る

 サケがもともといた川では、サケ自体の繁殖の成功率が高いだけでなく、産卵後に死んだサケが川の栄養源になり、生態系が豊かになる。

 今後はこの上流域を中心に、激減してたサケの数もどんどん増えそう。自然に戻った川でもいろんな生き物が見られるようで楽しみだね。

References: Salmon Have Already Returned Far Upriver to Spawn in Historic Habitat After Nation's Largest Dam Removal Project / Salmon Make a Long-Awaited Return to the Klamath River for the First Time in 112 Years, After Largest Dam Removal in U.S.

広告の下にスタッフが選んだ「あわせて読みたい」が続きます

同じカテゴリーの記事一覧

この記事へのコメント、28件

コメントを書く

  1.  一つ疑問、記事中にもあるように「故郷の川に戻るサケの謎」ですが、今回やってきたサケはこの川生まれなのかな?と。  4 つのダムの下流で生まれてより上流まで遡上しているのか、それとも他の川で生まれてこの川に来たのかくらいが候補として思いつくのですがどっちなのかなぁと。
     長いこと発電で使われたダムも当時は魚のことまでは思い至らなかったわけで今は余裕ができたとか設備更新でいったん廃止とか、まぁいずれにせよ良かったなと。 仮に次にダムを造るとしても配慮のあるダムになってほしいな。
     一般に水力発電は持続性のある発電方法ということになってますが、廃止した分の発電は何で発電しているのかもわかると良かったと思いました。 って元記事にも触れてあるところ見つけられませんでした。

    1. 他の川生まれのサケだとしたら
      「故郷縛り」はそこまで強くないということかな。
      多くの川に同じ種のサケが遡上してることを考えれば
      歴史的には「非故郷川」への遡上は普通に起きてるんだろうし。

  2. 50年くらい前には多摩川にもサケの稚魚を放してたんだぜ
    カムバックサーモンとか言ってテレビCMまで流してた
    結果は動物の本能を利用した虐待以外の何物でもなかった

  3. 治水ではなく純粋に水力発電専用のダムだったのかな?ならまあ代替電力が見つかっての事だろうし、良かった良かった。

  4. 相模湾は相模ダムが出来る以前は鰤の宝庫だったと聞いたことある
    ダムだけが原因とは思えないけど水生生物にはダメージ大きいんだろうな

    1. 河の氾濫などによって、山や平地の豊かな栄養素が海に流れ込み、漁場を形成することは知られている
      ダムをつくったせいで、そういった陸上からの栄養素が流れ込まないために、海が痩せたり
      場所によっては砂浜など、海岸線が陸を侵食している地域もある

      なんというか。人間の安全な生活と、自然豊かな大地はなかなか両立できない
      あと面白い例では浄水場で浄化しすぎたせいで、海は綺麗にあったが海洋生物が大幅に減少した瀬戸内海みたいな例もあるよ

    2. 湘南も毎年砂を入れないと消滅する砂浜で、実際毎年のみると
      凄いことになってるし、サザンの歌でも有名な稲村ヶ崎はとっくに
      この世から消えた
      ダムはいらないとは思わないけど、砂浜をつぶすまでダム作るって
      本当に災害対策に効果あるのかといいたい

      1. 逆に考えると「毎年砂を入れないと消滅する砂浜」が維持できる量の土砂が
        常に上流から下流に河川を流れていたと考えると治水の視点からすると大変なことだと思うので
        なんとか両立できる上手い解決法が無いかを探ってほしいですね

  5. インディアンは「河上(かわかみ)に白人が住まないところを水源に」という
    それが取り戻したというわけだ
    ダムのせいで鮭が遡上できず、水温が上昇する(ダムによりたまり水になってる)
    これで飽和酸素量低下や魚に黴が生えるなど問題が出るそうだ

    7万世帯に電力を供給していた4基のダムを鮭のために撤去というのはどのくらいの事業なのか
    小型だったのかな? 大きさが気になるけど
    ダムを無くすに問題がいくつかあるだろう
    思いつくのは「ダム湖に沈んだヘドロ」「洪水対策」「電力需要」ほか

    ヘドロはそのまま流すと魚が死ぬ、鰓に詰まったり、水中が無酸素常態になるから
    また気候変動で洪水が起きたばかり、治水対策は十分なのか?
    電力は原発でカバーかな?

    日本では「進めた工事は止められない」「作ったものは壊さない」という風潮は未だ強い
    でも自然に戻すということも大切だと思う
    この国ならダムより干潟と都市の植林が急務

  6. 「故郷に戻れるようになったサケ」と一文が記事にあるが、この内容にそんなサケ存在しないが。
    川にサケが戻って良かったは、100%人間の都合として良かったって意味だよ。
    自然は、それに適応するかしないかで良い悪いは介在しない。

    1. なんでこんな独りよがりな意見を自信満々の断言口調で言えるんだろう。
      毎回思うけどこういう人の思考回路って不思議で仕方がない。

    1. マジレスすると、それ人間でやったことあるよね。
      たしか駅の改札の床に発電機をしこんで、人が通ると踏んだときの圧力で発電するやつ。
      上手く行ったのかどうかは知らないけどw

  7. 風力発電のために田舎の田園地帯に並んだ風車
    周りの風景から浮いた違和感にぞっとするものさえ感じた

  8. 俺は誰かの犠牲のもと、自分の生活が豊かになってもその誰かや、自然に保証する行動をする気もないし、これまで実際行った事もないので、普通にサケが戻ったことを喜ぶと思う、ごく普通の一般人です。

  9. タイトルを見てアメリカ最大のダムを撤去したと思った
    フーバーダム撤去なら大ニュースになってるわなw

    1. でも、今後も継続して環境を良くしていかないと、またサケが姿をクラマス・・・

  10. 日本の河川工事も、も少し融通効いてほしい。コンクリート舗装で生き物が住みにくそう。

    1. 水害の被害に遭った人たちに、同じこと言ってみてよ
      何て返事が返ってくるかな?

  11. ステキやん、、、発電ダムや砂防ダムの必要性は
    理解するけど、こういった自然のサイクルを見ると
    嬉しくワクワクする。
    日本の河も上流に向かえば砂防ダムで細かく区切られ
    ヤマメもイワナもいない川が多い。

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

動画

動画についての記事をすべて見る

水中生物

水中生物についての記事をすべて見る

最新記事

最新記事をすべて見る