電磁波アラカルト。
世の中がまだアナログ中心で動いていた時代、リモコン付きテレビが登場すると「便利な世の中になったものだ」と誰もが口を揃えて言った。音楽を歩きながら楽しんだり、どんな場所からでも電話やメールを送れるなど、人間を取り巻く生活環境は大きく変化し、そしてテレビはアナログ放送からデジタルへと飛躍的に姿を変えた。
人間にとって都合よく進化し続ける現代社会であるが、その裏には眼に見えないリスクが多く潜んでいる。便利な家電製品に囲まれつつ、それでも更なる利便性を求めて止まない人間の欲求は果てしない。
それ故、人類は進化し続ける生物でもあるが、全ては「何らかの犠牲」の上に成り立っているものである。原発事故はその犠牲の象徴とも言えるのではないだろうか。4年ほど前の話しであるが、WHO(世界保健機関)の国際がん研究機関(IARC)から、携帯電話の電磁波と発がん性の関連性について、限定的ながら「可能性がある」との分析結果が公表され、一時は世界が騒然となった事を記憶している。
耳にあてた状態で通話を長時間続けた場合、脳腫瘍が発症する危険性が上昇する可能性があると言う。携帯電話の電磁波については携帯が普及し始めた 1990年代から既に指摘されており、WHOによる発表は「今更」と言った感も否めないが、世界のトップに位置する機関が公式に認めた内容である為、その意味ではこれを予防措置の警告として受け止めた方がよさそうである。
多くの電化製品に囲まれた生活の中では、携帯電話に限らず電磁波を浴びる状態が恒久的に続いている。眼に見えない恐怖と言えば、巷を随分と騒がせた「放射性物質」だが、そのリスクから比べれば電磁波は微々たるものであるし、発がん性のリスクが最も高いと分類されている「煙草」「酒」「コーヒー」などは日常的に見える恐怖として捉えられることはまずないだろう。
このように、わたしたちは「矛盾」と言うリスクを背負いながら生きているが、自然界には不思議な植物があるもので、電磁波を吸収して育つサボテンがあると言う。NASA(アメリカ航空宇宙局)の調査によりその性質が発見された「セレウス・サボテン」は、2005年に話題になったようだ。
有害な電磁波を発生するパソコンやテレビから身を守るアイテムとして、インテリアにもなるこのサボテンを部屋の片隅に置いてみては如何だろうか。
※大衆文藝ムジカ03号に掲載されているエッセイです。
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