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ビーチサイドの人魚姫
俊樹

2019年9月Nikon D700で一眼レフデビュー。カメラは独学。2020年4月、Nikon D810へアップグレード。いつか写真展を開く為、日々精進。勿論、詩、小説、エッセイ、作詞は継続中。2021年夏、Nikon Z7Ⅱへと更にアップグレード。2022年10月、3回目の心臓手術に耐え抜き現在に至る。2023年8月ペースメーカー植え込み。

相合い傘は恋の花。

2014年07月10日
エッセイ 22
相合い傘

 日本列島の約半分が梅雨前線に覆われ、本格的な雨のシーズンである。南の海からは台風8号が虎視眈々と日本列島を狙っており、列島各地で記録的な豪雨が降り続いている。
 そんな鬱陶しい雨の中で唯一微笑ましいのが、最近ではあまり見かけない相合の絵。小・中校時代はかなり流行ったと思う。教室の黒板に誰かが冷やかしで相合カップルを描く。それを見た本人たちは顔を真っ赤にしながら、必死で否定したものである。
 そんな経験を持った人も多いのではないだろうか。私も数回描かれたことがあったが、意中の人ではなかったのでかなり憤慨した記憶がある。
 小学1年生の時の思い出に、今でも鮮明に記憶している雨の情景がある。私の家には子ども用の長靴がなかった。だから雨の日は大人用のを指し、大きな黒い長靴を履いて登校したが、大人用のは幼い子どもにとっては重すぎた。
 長靴も同じで重く歩きづらかった。学校の下駄箱には赤や黄色など色とりどりの長靴が並んでいる。傘も同じように花壇の花のように見えた。そんな中、私の長靴と傘だけが黒くとても汚れて見えて少し恥ずかしい思いをした。
 その日は朝から晴れ間が覗いていた。1年生の授業が終わるのは早い。何の勉強をしたのか理解すらしない内に下校の時間になる。教室の窓から外を見るといつの間にか雨が降っていた。傘が無いとかなり濡れてしまうほどだった。
 クラスメートの殆どが雨具を持って来てはいなかったが、外の雨を見ても誰も慌てる様子はない。親が迎えに来てくれることを知っているからだ。私は誰も迎えに来ない事を既に知っていたので、濡れて帰ることを覚悟していた。校門に次々と迎えに来る母親たちの姿が見える。子どもたちは親から傘を受け取り、親と一緒に家路に着く。
 「雨めあめ降れ降れ母さんが蛇の目でお迎え嬉しいな…」私はこの歌が大嫌いだった。小雨になるまでもう少し待っていようか、それとも思い切って走って帰ろうかと悩んでいた。そんな時だった。「神戸君、一緒に帰ろう」後ろから声がした。
 同じクラスで同じ町内に住む畳屋の浩子ちゃんだった。黄色い傘をすっと差し出し微笑んだ。その横にいた浩子ちゃんの母親を見上げると、ふくよかな顔をさらに丸くして頷いていた。私が初めて経験する相合傘だった。
 大きなランドセルが幼い子どもの背中をすっぽりと隠し、赤と黒が隣同士隙間のないほど寄り添って、7月の雨の中に仲良く消えて行った。

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俊樹
この記事を書いた人: 俊樹
本名/神戸俊樹
静岡県藤枝市出身。
19歳の時に受けた心臓手術を切っ掛けに20歳から詩を書き始める。
2005年3月詩集天国の地図を文芸社より出版、全国デビューを果たす。
うつ病回復をきっかけに詩の創作を再開。
長編小説「届かなかった僕の歌」三部作(幼少編・養護学校編・青春編)父を主人公にした(番外編)を現在執筆中。
詩、小説、エッセイ、作詞など幅広く創作。
2019年9月、一眼レフデビュー。Nikon D700を使用。
2020年4月、Nikon D810にアップグレード。
2021年夏、ミラーレス一眼 Z7Ⅱへと更にアップグレード。
2022年10月3度目となる心臓手術を受け、大成功を収める。
2023年8月徐脈性心房細動で心停止(失神)したため、ペースメーカーを植え込む。

コメント22件

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takechan0312

嬉しい思い出ですね。
私の家も農家だったから、
普通の雨なら迎えに来てくれません。
でも台風の時とかは一斉下校が多かったです。
父が単車で迎えに来てくれて、
雨が強いので、そのままカッパで戻ったこともあります。
あの頃は恥ずかしかったけど、
今では楽しい思い出です。

2014年07月10日 (木) 11:13

ネリム

こんにちは
読んでいて心が温かくなりました。

2014年07月10日 (木) 12:23

みゆきん

素敵な思い出だわ
私も母が迎えにきたっけ・・・
その母も、もう居ない 寂しいな。

2014年07月10日 (木) 15:44

由莉

こんにちは^^

素敵な出来事ですね♪♪
ほっこりとしました*^^*

2014年07月10日 (木) 16:26

双子パンダ

o(^▽^)o

黒板に相合を傘書かれたことがあったのか
忘れてしまいました(笑)。
忘れているくらいだから、書かれたことないと思います( *´艸`)
素敵な思い出があると、雨でも心がほっこりしますね♪

2014年07月10日 (木) 18:36

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2014年07月10日 (木) 19:56

くわぁ

懐かしい思い出ですね。
心が温まります。

タラちゃん、可愛いです。
やんちゃぶりが目に浮かびます。
東京の野良猫は飼い猫と変わりません。
目と目で話す会話。
癒されますよ。^^

2014年07月10日 (木) 21:53

ま~ねん

こんばんわー

相合傘 懐かしいねー 今時の子供達もこんなの描くのかな~

長靴と傘のお話しは ちょっとウルウルかな
たぶん俊樹さんと同年代の私は 
よく似た光景を見て大きくなってるかなー

小学校の入学式の記念写真で当時、私の通ってた小学校は制服だったんやけど制服を着れない子も居たしランドセルを持ってない子も。

昭和30年代前半の生まれって若いなー って言われてた頃が懐かしい~~~ もうお婆ちゃんやもん(*>_<*)

2014年07月10日 (木) 22:08

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2014年07月10日 (木) 22:30

koyuri

自家用車が一般化すると

雨でも、傘の出番がありません。

風情というのは、多少の不便さと仲良しなのかもしれませんね。

2014年07月10日 (木) 23:12

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2014年07月11日 (金) 13:47

たけぞう

こんばんは(*^^*)

私は相合い傘を書かれたこともありますが書くほうが多いかったような気がします(笑)

現実の相合い傘はなかったかも…(泣)

羨ましい(*^^*)

2014年07月11日 (金) 19:19

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2014年07月12日 (土) 01:42

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2014年07月12日 (土) 05:25

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2014年07月12日 (土) 15:32

sado jo

こんばんわ^^

いい話ですね~
日本人の心の暖かさを感じます^^

2014年07月12日 (土) 21:09

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2014年07月13日 (日) 14:13

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2014年07月14日 (月) 07:28

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2014年07月14日 (月) 13:17

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2014年07月14日 (月) 22:14

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2014年07月15日 (火) 09:55

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2014年07月15日 (火) 17:07