製造業の受注生産プロセス
「受注生産に徹すれば利益はついてくる! -取引先に信頼で応える“おもてなし"経営-」本の内容のうち、製造業の受注生産プロセスをまとめてみた。
【受注設計生産(ETO)】
【業界】造船、製鉄、金型
【リードタイム】3~6ヶ月
【在庫】仕掛品在庫が予測しにくいので増加しやすい
【特徴】
・特注品を作る受注生産。
・顧客の満足度は高いが、待たされる納期が長い。
・納期調整が難しく、仕掛品在庫が増加しやすい。
【繰返し受注生産(MTO)】
【業界】機械
【リードタイム】1~2ヶ月
【在庫】仕掛品在庫は少ない。
【特徴】
・あらかじめ設計済みの製品(部品組立は未実施)を受注後に生産開始する。
・日本の中小企業は、繰り返し性の強いMTOを主体にしている。
・注文または内示情報をトリガーに生産を開始するので、生産計画を事前に立てにくい。
・生産調整が難しいので、工場の操業度が変動しやすい。赤字と黒字を繰り返しやすい。
【受注組立生産(ATO)】
【業界】PC組立、自動車
【リードタイム】短い
【在庫】在庫が増えやすい
【特徴】
・部品は先行手配または見込生産で在庫しておき、受注後にその部品を組み立てて製品を出荷する。
・MTOではリードタイムが長すぎ、MTSでは製品在庫が膨れ上がるような製品が多い。
・多品種少量生産プロセスでよく使われる。
・欠点は、在庫が増えやすい(MTSの欠点)。工場の操業度変動が発生しやすい(MTOの欠点)の両方を持つ。
【見込生産(MTS)】
【業界】家電
【リードタイム】極端に短い。
【在庫】完成品(製品)の在庫が膨れ上がりやすい。
【特徴】
・販売予測を基に生産計画を事前に作り、生産計画に基づいて製品を作る。MRPが主流。
・受注生産企業でも、製品保守サービスのために保守部品を見込生産で作りこんでおく所もある。
【感想】
「受注生産に徹すれば利益はついてくる! -取引先に信頼で応える“おもてなし"経営-」本にも書かれているが、現在の日本の製造業は、繰り返し受注生産(MTO)がベースにあるが、多品種少量生産が普通なので、トヨタのようなATO(BTO)生産方式を目指そうとしている。
しかし、ATO生産方式は、在庫が増えやすく、工場の操業度変動が発生しやすい弱点を持つ。
したがって、ATOを推進するのは非常に難しい。
JIT生産コンサルタントを入れても、なかなか効果が出ないらしい。
トヨタがATOで成功している理由は、受注から製造までの各工程の在庫の変動量を、トヨタが系列会社も含めて統制しているからだ、と指摘しているのは、なるほどと思う。
だから、トヨタはすごいのだ、という指摘もあるけれど、僕よりも年上の人達に聞くと、トヨタには「自動車絶望工場 (講談社文庫)」のようなイメージもあって芳しくない話もあったらしい。
今はどうなのかは知らない。
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