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2014/01/26

消費税の6つの落とし穴

日経コンピュータ2014年1月9日号の記事をメモ。

【参考】
日経コンピュータ2014.01.09|HATのブログ

【1】2014年4月から消費税率が5%から8%に上がる。
企業の社内システムも3月末までに、消費税対応を終わらせる必要がある。
しかし、消費税対応には6つの落とし穴がある、という記事。

普通は、税率マスタを別テーブルとして保持しておき、5→8へデータ更新するだけで良いはず。
でも、1997年に消費税率が3→5%へ上がった時とは違う状況がある。

以下は、6つの問題の内容を記事から抜粋して、感想を書いてみた。

【2】社内調整に想定外の時間がかかる

小売流通・アパレルなどの消費者に近い業界では、価格表示は、税込の総額表示にするか、外税表示にするか、で売れ行きが大きく変わる。

記事の例では、税込98円で販売していたとき、本体価格は端数切捨てなら94円になる。
(いわゆる税はがし)
すると、94円に8%の消費税を加えると、101円になり、100円を上回ってしまう。

政府は、消費税率は適正に転嫁すべき、と指示を出しているからには、その方針に従って価格転嫁するか、利益を下げてでも元の値段で売るか、システム部門だけでは決められない。

例えば、100円という価格を維持するために、肝心の商品の質や量を下げて、原価を下げ、利益を確保する戦略もあるだろう。
実際、食品・食材・洗剤などの生活必需品は、値段は変わらなくても、商品やボトルの容量が減ってくるかもしれない。

システム修正としては、販売期間単位に商品の価格を保持する価格マスタにも影響を受けるため、販売部門や製造部門と1つずつ調整せざるを得ないだろう。

4月以降、100円ショップでは、どう販売していくのか、見てみたい。

【3】Excelマクロにも税率計算が潜む

販売や会計システムのように、ERPなどのパッケージ化されたシステムでは、消費税率の変更の影響調査はまだやりやすい。

問題なのは、財務や総務などの担当者がExcelマクロで消費税率を計算して作成したデータを、ITシステムに流し込んでいる場合などだ。
つまり、情報システム部門が管理していない場所で、担当者がシステム外で作ったデータには、消費税率の変更まで考慮が行き届いていない。
すると、社内の全ての部門の業務フローをシステムだけでなく運用の観点からも、再調査する工数が発生する。

【4】ERPもマスタ変更だけでは済まない

ERPを納入しているSIならば、税率マスタの変更だけで対応できます、と言うだろうが、それだけでは収まらない。
ERPの標準機能としては問題ないかもしれない。

しかし、普通のERPはその会社独自の追加機能というアドオンが必ずあり、その箇所が税率マスタを使っていないとなれば、修正工数が発生する。
特に、バッチ処理はカスタマイズして作る場合が多いから、税率を固定値だけのヘッダファイルに書き込んでいたり、最悪な場合は、ハードコーディングしている時があるだろう。

すると、ソースのリコンパイルが発生し、機能がデグレしていないか、回帰テストの工数が更に発生してしまう。

【5】5%対応の経験は通用しない

内部統制(J-SOX)の法律順守によって、変わった点が二つある。
一つは、価格表示が外税表示から総額表示が義務付けられたこと。
価格表示のソース修正は、その企業の売り上げに直結するから、影響が大きい。

もう一つは、特に会計システムの変更作業が正しい手続きを踏んで行われたかどうか、システム監査・会計監査が適用されて、保守作業プロセスの監査が厳しくなったこと。
消費税率変更の仕様や設定手続に関する文書をきちんと残しておかないと、システム監査や会計監査で、不備や改ざんを指摘されるリスクがある。

最近の日本の製造業がバブル期以前のような発想豊かな製造活動ができない原因の一つは、内部統制が厳しくなり、会社の資産や労働時間を使って自由にアイデアをはぐくむことができなくなったからではないか、と個人的に思ったりする。

【6】SI契約は経過措置の可能性あり

ユーザ企業がITベンダと契約している案件では、普通は、3月まで税率5%だが4月以降は8%になる。
SaaSのような利用料金を支払うスタイルがそう。
つまり、期をまたぐと消費税率が変わるので、2013年度と2014年度をまたぐ案件の売上や原価の管理は注意が必要。

ただし、4月以降も税率5%のままでよい時もあるらしい。
すると、消費税の経過措置に関わる範囲を事前調査しておかないと、無駄に払い過ぎになってしまう。

例えば、工事進行基準を適用している案件が相当するらしい。
工事進行基準を適用しているSI案件は、普通は大規模案件だろうから、原価管理に一層の注意が必要になる。
そのほかにも色々あるらしいので、注意すべき。

【7】8%対応はしばらく続く

2015年4月には税率が10%に上がると推測されている。
つまり、直近2~3年は消費税対応に振り回される。
経過措置など、消費税対応の法律の内容は十分に調査しておくべき。

また、10%適用になると、消費税の金額も増えるため、請求書などの帳票の金額の桁あふれが発生するバグが出る可能性もある。
業務システムで使われるすべての帳票の項目の桁数を洗い出し、消費税対応で影響があるか調査していくのは、とても工数がかかるだろう。
あるいは、消費税率が2桁に対応していないような税率マスタや価格マスタもあるかもしれない。
そうなれば、DBのテーブル変更をすることになり、より影響が大きくなってしまう。

【8】記事でちょっと面白かった内容は、自動販売機やコンビニ、ファミレスは4月1日の何時に消費税率が切り替わるのか、という疑問。

全国津々浦々にある自動販売機や24時間稼働のコンビニ、ファミレスがすべて消費税に対応するのは、直感的には大変そうだ。

記事によれば、自販機は日頃から売価変更が頻繁に起きるため、システムで一括変更できる仕掛けになっているので消費税対応は容易であるらしい。
また、コンビニやファミレスも、毎日の日次締め処理と同じ手順で一斉に切り替えられる、とのこと。

POSシステムは普通、システム日付以外に営業日という概念も持つ。
したがって、営業日の単位で切り替えるために、4月1日0時ではなく、例えば、深夜2~3時に一斉に切り替えるようになるらしい。
ゆえに、3月31日の23時59分に買い物して、レジに並んだら24時を過ぎてしまうと、消費税率が5%から8%に上がって、支払額が増えてしまうケースはないらしい。
でも、4月1日の2~3時にコンビニで買い物するときは、消費税率に注意した方がいいのかもしれない。

僕も、自販機の値段が3月31日と4月1日で変わっているか、確認してみたいと思う(笑)

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