ファシリテーションの成否はプロセス設計で決まる
「ザ・ファシリテーター」の続編「ザ・ファシリテーター2―理屈じゃ、誰も動かない!」を読んだ。
参考になることが多かったので、感想を書いてみる。
【1】ファシリテーターとは、チームのプロセスを管理する人
続編では、リョウのビジネススクール時代の友人深山に頼まれて、深山が勤める大手電機メーカーで、リョウがファシリテーションのワークショップを開く。
その時のオープンクエスチョンで「ファシリテーターはどんな人?」という質問に対し、リョウは「ファシリテーターとは、チームのプロセスを管理する人」と答える。
この言葉は過去のPFP関西のワークショップで連想する時があった。
PFP関西でワークショップを行った後、なおまるさんが必ず各チームの状況をトレースして、第3者として客観的評価を話してくれる。
当事者は、議論とアウトプットを出すことに夢中で、プロセスの状態の変化まで眼が届かない。
だから、その評価が新鮮に感じる時があった。
また、同様のワークショップで、つちやさんが、僕のグループのタスクカードからバーンダーンチャートを書いて進捗を説明してくれた時があった。
つまり、タスクカードが、TODO(実行前)→DOING(実行中)→DONE(実行完了)の3つに区切られた模造紙に張られて、その移り変わりをバーンダーンチャートで説明してくれた。
その折れ線グラフがあまりにもジグザグだったので、あそこでは議論が収束しなかった、とか、あの時はあのアイデアがうまくいったね、みたいなふりかえりができた時があった。
ファシリテーターとは、コミュニケーション活性化だけでなく、チームのプロセスの状態を管理する役割も持っている。
だからこそ、プロジェクトリーダーはファシリテーターの役割も必要なのだ、と。
【2】ファシリテーションの目的は行動の変化
リョウは、更に「ファシリテーションの成否の2/3は、プロセス設計で決まる」とも言う。
つまり、会議や組織変革では、プロセス設計という前準備がすごく大事だということ。
このフレーズはすごく納得できる。
IT業界のプロジェクトリーダーは、開発プロセスを事前に設計しておかねばならない。
新規機能の開発プロセス、結合テスト以降の運用保守に至るまでの開発プロセスは、全く違う。
だからこそ、2個以上の開発プロセスをフェーズごとに切り替えて、チームを回していかねばならない。
例えば、新規開発はRUP、システムテスト移行はXPで回す、とか。
リョウは、また「ファシリテーションの目的は行動の変化」といも言い切る。
つまり、ファシリテーションを使って議論するだけでは意味が無い。
実際にメンバーの意識や行動に変化が起きなければならない、と。
このフレーズは、「マネージャの仕事はビフォーアフター志向」という言葉を思い出させる。
チームとメンバーが実際に変化すること、特にチームもメンバーも成長するという変化が大事なのだ。
実際、プロジェクトリーダーの評価には、メンバーへの教育やメンバーが成長したかという観点、というプロジェクト成功とは異なる評価基準も含まれることが少なくないからだ。
【3】プロセス制御の観点からファシリテーションを試してみる
ファシリテーションはコーチングと似たようなものという意識があったけれど、ビジネスの観点では「プロセスを設計する」あるいは「メンバーの行動に変化を与える」と言い直せる。
とすれば、このスキルはリーダーシップの一種とも言える。
深山の会社の研究所で起こった変化の一部が興味深かった。
彼の会社は、研究所で出した研究成果がなかなか事業につながらない。
そこには、お互いの専門分野を評価し合わないという濁った雰囲気があった。
そこで深山の上司である所長が、研究所の幹部に他事業部門の担当者という役割をつけて、クロスファンクショナルなチーム構成にした。
すると途端に、お互いの領空侵犯をするような鋭い質問から議論が白熱し、研究テーマの再構築と言う所まで話が進んでいく。
各人が事業部門の利益代表者という役割を与えられただけで、組織は活性化する時がある、と。
プロセスの設計で最初にやることは、アクターの洗い出しとアクターとプロセスの関連図、つまりユースケース図やアクティビティ図、プロセスマッピングを作ること。
そこからゴールツリーや組織体製図、SWOTなどで課題(What)を洗い出し、アクションプラン(How)まで落としていく。
このサイクルのリズムが大事なのだ、というリョウの言葉も印象に残った。
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