モデルの所有者は誰か?
IT21の会オープンカンファランス2005で児玉公信さんの講演を聞いて、1年間モデリングし続けた概念が全て一つに揃ったような気がした。
最も印象に残った言葉は「モデルとは、ある人から見たある状況における明示的な解釈である」ということ。
つまり、モデルを書くには、人が必要。人はモデルの所有者に相当する。
そして、状況とは、モデルの文脈を指す。
クラス図でモデルを書く時、とある勉強会でモデルの所有者が誰なのか、という議論がよく出る。つまり、このモデルはどの人が眺めて、どんな文脈でモデル化したものなのか?という質問がよく出た。
「UMLモデリングの本質 」には、「モデルの所有者はモデルの中に登場しない」という一文がある。当たり前なのだが、クラス図を書いていくと、文脈を忘れて、たくさんのアクタが登場して混乱してしまう時がある。
下記のクラス図の所有者は誰だろうか?
児玉さんが講演で説明していたが、売り手と買い手のロールが登場しているから、所有者は売り手でも買い手でもない。所有者は仲介業者になる。
売り手や買い手が所有者の場合、上記のクラス図から所有者が消えて、何かしらの制約が追加されるだろう。
他の例として、「本質」の後半の章に「航空チケット予約システム」のクラス図がある。そのクラス図の所有者は、売り手、例えば、旅行代理店になる。
モデルの所有者が重要なのは、要求から要件を定義し、概念モデルまで落とす作業で意識する必要があるから。
シナリオを書いている時、普通はユーザの視点からシナリオを書く。例えば、アクタごとのシナリオのように。
しかし、ビジネスモデリングであるからには、ユーザのアクティビティを追跡してどのサービスから課金するか、を探す。その時に、モデルの所有者がビジネスを提供する人へ変わる。
そのことを意識する必要がある。
【参考文献】
UMLモデリングの本質 児玉公信著
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