ショートショートを書きました
正解はどれかわかりますか?
答えを当ててください。
「5つの凶器」
「これはむごい……」
犯行写真をみて、隗岏仁は、銀紙を噛んだような不快感をおぼえた。
被害者の名前は銀狐。
その銀狐のからだは無惨にも真っ赤に染まっていた。まさに血だるまである。死因は、出血多量によるショック死というから、さもありなんといったところだろう。
意外にも、顔だけはきれいだった。
そういえば海外の国に、完熟トマトをぶつけ合う、そんなお祭りがあったはずだ。
隗岏仁がそう思ったのも、被害者の死に顔が、はにかむようで安らかに見えたからだ。
内線の電話が鳴った。
「そうか、わかった。直ぐ行く」
捜査員がジアリと名乗る、怪しい人物をしょっぴいてきたという。
隗岏仁は上着に袖を通した。署長室を出て、取り調べ室へと向かった。
マジックミラー越しにみたジアリは、いかにも低学歴の無職といったチー牛顔である。とはいえ、その見た目で連行したわけではあるまい。
隗岏仁は部下の刑事に訊ねた。
「両者の接点はなんだ?」
「はい、二人とも東京上野クリニックへの通院歴があります」
「なっ、なんだって?!」
動揺し、声が裏返ってしまった。
「署長、なにか心当たりでも?」
「いや、別に。……なんでもない」
なんでもないはずはなかった。署長の隗岏仁も、以前当クリニックの世話になっていたからだ。
むろん部下たちに、そんな恥をさらす訳にはいかない。
「そうか。二人はタートルネックボーイか……」
としれっとつぶやいた。
「おそらく犯人は、自分のプライバシーを守るため口封じにはしったのではないでしょうか」
「ああ、動機はきっとそれだ。いや、それしかない。そうに決まってる」
隗岏仁は、早く事件を解決しようと投げやりだった。
「署長、これを見て下さい。容疑者の家宅捜査は済ませてあります。これはすべて、ジアリの自宅にあったものです」
①刺身包丁
②アイスピック
③医療用メス
④マシンガン
⑤ダガーナイフ
どれも殺人には申し分ない凶器である。
隗岏仁は、先ほど見た死体の写真を思い出した。すると、鋭い刑事のカンが頭の中でスパークした。
「わかったぞ、犯行に使われた凶器はこれだ!」