ほとんど大事なところ
「今から教科書の大事な部分を読んでいくから、その部分に線を引いていってください」と言いつつ読み上げていくのだが、教科書のほとんどが線で埋め尽くされてしまうという恐るべき先生がいた。 「全部大事じゃないか、もっと厳選してよ!」と喉元まで出かかったことも何度かあった。
その先生と、先日ばったり銅座で会った。 ベロンベロンだった。 向こうはオイのことを覚えていなかったが、こっちとしては忘れようにも忘れられない人物だ。 遠くを歩いていてもすぐにわかった。 せっかくだから少し会話をして別れた。 ベロンベロン故ハイテンションで、とても楽しそうにしていた。
晩酌しながら毎日少しずつ『味覚極楽』を読んでいたところ、さきごろ読了してしまった。 個人的に好きな部分に線を引き、その部分がすぐ開けるよう折り曲げていっていたのだが、7割がた線を引いたような結果になってしまった。 味覚極楽が傑作なのはわかるが、これではあの先生と何ら変わりはない。