経営事項審査の虚偽申請について
平成23年3月28日、建設業手続きを扱う行政書士向けに東京都都市整備局による講習会が実施されました。その概要は以下の通りです。(講師:財団法人建設業情報管理センター東日本支部支部長 安井康夫 様)
安井様のお話では、経審を受けている16万強の建設業者のうち、これまでの経験値から4割程度が疑義チェックにかかっていて、そのうち修正が必要になるのは約2割(13,000業者)ではないかとのことです。
虚偽申請防止対策の強化については、経審改正に先駆けて今年の1月1日から実施されているところである。対策の内容としては、極端な異常値を示すものについては行政庁へ報告する「報告基準」が新設されたこと、行政庁が独自に完工高と技術職員数値の相関分析を行うこと、その他の情報などを総合的に用いて重点審査を行っていくことが挙げられる。従来の完工高の水増しだけではなく、技術職員数の水増しについても、疑義チェックを行っていく。
【審査基準の改正事項】
不適切な申請の代表例としては、以下のものが挙げられる。
① 未完成工事の売上計上
② 工事進行基準の不正な適用
③ 費用計上の先送り
④ 回収可能性がない債権等の資産計上
⑤ 完成工事原価や販管費の特別損失計上
税務申告と科目名が同じだからという理由で建設業法の財務諸表を作成するのは危険であり、そのため、補助簿などの確認も必要になる。
【注意すべき科目処理】
1.受取手形
「割引手形」「裏書手形譲渡高」は、「受取手形」と相殺する。回収困難なことが明らかな「不渡手形」は、その他資産の「破産更正債権等」に振り替える。
2.完成工事未収入金、売掛金、未収入金
3か年間の決算書に、同じ先の同じ金額が載っていたら注意が必要である。回収困難と思われるものは、その他資産の「破産更正債権等」に振り替える。
3.未成工事支出金、材料貯蔵品、販売用資産
要注意科目。税務申告書に添付されている『棚卸資産の内訳書』では、工事ごとの金額が書かれない。 業者の協力を得て、発注者、現場名、工期、金額がわかるようにし、現場ごとの金額を把握する。
4.短期貸付金、長期貸付金
代表者や親族への貸付で、借用証書等を交わしていない場合も、返済時期の把握が重要(特に短期の場合)。
5.仮払金、前渡金、立替金
1年近く精算されていない、また金額が大きい仮払金などは注意が必要。「仮払税金」などを、適切な勘定科目に振り替える。工事材料の購入や外注のための前渡金は、「未成工事支出金」へ振り替える。
6.短期借入金、長期借入金
代表者や関係会社からの借入金については、有利子・無利子に関係なく、きちんと返済時期を確認できるようにしておく。
7.工事未払金、買掛金、未払金、未払費用
下請業者への労務に対する外注費用は、「未払費用」ではなく「工事未払金」へ計上する。
8.未成工事受入金、預り金、前受収益、前受金、借受金
「仮払金」と同様に、決算期が終わった後に精算されるべき勘定科目。長期に亘り帳簿に残っている場合には、その内容を十分に検証する必要がある。
9.収益と費用の区分と利益区分
複数の事業を営んでいる企業の場合には、税務申告書の『製造原価報告書』等として建設業にかかわる部分も合算されて記載されていないか。『雑益、雑損失の内訳書』に計上された費用が、「原価」又は「販売費及び一般管理費」に計上されていないか。