残すところわずか
早いもので今年も残り一ヶ月ちょっと。本当に早い……。
そういえば劇場版リリカルなのはのBD&DVD出ましたね。もちろん私も買いましたが、初回限定版はなんかいっぱい付いてきて感動しました。映画の方も今観返してもやっぱりいいですし、フェイトちゃん復活シーンとかすごい泣けますし、名前を呼んでのくだりもやばいです。映画館で泣きそうになったの思い出しました。劇場版A'sの制作も決定したようですし、また映画館に足を伸ばす作業が始まります。楽しみだなあ。
そういえば今年のMF文庫の新人賞は全部読みましたので宣伝でも。
あえて一番良かったのを挙げるならば、やはり最優秀賞の「変態王子と笑わない猫。」でしたね。ふつうにおもしろいし、うまいです。キャラ造形に長けているといいますか、「建前」と「本音」の間に隠された、主人公とヒロインの関係の変化と、心情の機微をとてもよく描けていた印象でした。だからあんなに魅力的なキャラになっているのかもしれません(イラストの力もかなり大きいけど)。特にヒロインね。
でも好みで言えば私は「喰 -kuu-」を推しますかねえ。
こちらは既に感想を書いているので、覗いていただければだいたい思ったことは書いてあります。こちらの大食い少女もかなり魅力的なキャラになっておりますので、どうぞ読んでみてください。イロモノだけど真っ当な青春ものです。
上記の二つは自信を持っておすすめしますが、あとの「ふぉっくすている?」「ドラゴンブラッド」「社会的には死んでも君を!」「つきツキ!」「魔法少女☆仮免許」は私的には横一列って感じです。一番これはダメってのはなかった。どれもいいところはあるんだけど、物足りなさもあったりします。続きが読みたいなーって思ったのはこの中だと1つかな……。なにかとはここでは言いませんが。
【2010年10月度三ツ星ラノベ】
アクセル・ワールド 6 (電撃文庫 か 16-11) 川原 礫 HIMA アスキー・メディアワークス 2010-10 by G-Tools |
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旧<ネガ・ネビュラス>の輪郭が顕になり、新展開にも深みが出た6巻
とある魔術の禁書目録(インデックス)〈22〉 (電撃文庫) 鎌池 和馬 灰村 キヨタカ アスキーメディアワークス 2010-10 by G-Tools |
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激動のロシア編完結。上条当麻、一方通行、浜面仕上らが打ち勝ったものとは
ハロー、ジーニアス (電撃文庫 ゆ 3-1) 優木 カズヒロ ナイロン アスキー・メディアワークス 2010-10 by G-Tools |
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脚を壊した主人公に、接触する才女。彼がその出会いを通じて得たものは、とても大事なモノだったのではないだろうか
【二ツ星】
伝説兄妹! (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫) おかもと(仮) YAZA 宝島社 2010-09-10 by G-Tools |
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主人公はクズいけど、なにかがキレイなものが見えてくるかもしれない不思議なエネルギーがあります
百億の魔女語り1 オトコが魔女になれるわけないでしょ。 (ファミ通文庫) 竹岡 葉月 中山 みゆき エンターブレイン 2010-09-30 by G-Tools |
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キャラがみんなかわいくてほんわかしてるんだけど、隙を見せずに予想外のオチを飄々といれるのが竹岡葉月である
ニーナとうさぎと魔法の戦車 (集英社スーパーダッシュ文庫) 兎月 竜之介 BUNBUN 集英社 2010-09-25 by G-Tools |
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戦争を通じて少女の成長が見て取れる物語。おもしろかったです
神明解ろーどぐらす 3 (MF文庫J) 比嘉智康 すばち メディアファクトリー 2010-09-18 by G-Tools |
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予想外の修羅場展開寄せにびっくりしました。ホントささいなすれ違いなのに……。
蒼穹のカルマ6 (富士見ファンタジア文庫) 橘 公司 森沢 晴行 富士見書房 2010-10-20 by G-Tools |
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物凄いアホなのに展開には抜け目ないのが相変わらずすごい。あと鳶一さん……。
以下は10月の読書メーターです。
なれる!SE2 基礎から学ぶ?運用構築 [★]
なれる!SE 2 (電撃文庫 な 12-7) 夏海 公司 Ixy アスキー・メディアワークス 2010-10 売り上げランキング : 52298 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
システム開発会社に入社し怒涛の4月を乗り切った桜坂工兵。彼が出会った同僚の姪乃浜梢は、小動物系でちょっと天然な気もあるかわいい女子だった。
しかし、システム運用担当の梢は、そのシステムを構築する工兵の見た目子供の鬼上司、室見立華と犬猿の仲で──。
とあるモバイルゲームインフラを舞台に、工兵を板挟みにしつつ構築と運用の熾烈な戦いの幕が上がる!
システムエンジニアの過酷な実態をコミカルに描くスラップスティック・ストーリー、第2弾!
あれ、なんかすごいラブコメチックになってきてるんだけど……。
しかも同じ社内でも違う部署で、血で血を洗うようにひどく険悪な二人がぶつかってるんですけど!?
って今度は身内争いの話なのか。なんか同じ会社なのにすごい不毛だな……。さすがにどこもこうだとは思わないけど、ふつうはそんなもんなんですかね。とにかく工兵の心労がまだまだ絶えそうにないなと思う……。
社会人一年生として日々上司の無茶ぶりに振り回される工兵。
どんなに過酷な環境でも次第に「慣れ」というものが身についてきたある時、同じ会社でも違う部署――システム運用の同僚である姪乃浜梢に出会う。出会いこそ形が悪かったものの、和解するやいなや急速に接近する二人。そんな状況を見かねた室見さん、という三角関係が浮上してきましたよ……?
しかもこの二人の間にはかつて仕事で因縁があり仲も最悪。おまけに部署も敵対しているとくれば殊更。ケチのつけ合い、細かいこじつけ、責任の押し付け合い、そんな不仲が積もりに積もっていくのを工兵がなんとかしようと動くところは熱いなあ。というかこういう役割はもう工兵にしかできないんじゃないだろうか。技術面はまだまだおろそかだが、そう思うと工兵って実はかなり優れた人材なのでは。
まあそのおかげで姪乃浜さんとはすんごくお近づきになっていくんですけどね。
というか室見さんといい姪乃浜さんといいどことなく子どもっぽい面があるから、恋愛面だととても学園ラブコメっぽくなってしまうんだがw いやしかしこのブラックすぎる要素を少しでも和らげるためにはこういう展開しかないからな……。この方向性はいいと思う。
←『なれる!SE 2週間でわかる?SE入門』の感想へ
撃路崎真咲の密室プレイ [★]
撃路崎真咲(うつろさきまさき)の密室プレイ (電撃文庫) 相生生音 松竜 アスキー・メディアワークス 2010-11-10 売り上げランキング : 3217 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
目を覚ますと、世界は真っ暗闇だった。
唯一わかったのは、自分が拘束されている、ということだけ。やっと慣れてきた目をこらすと、眼前にはなぜか腕組み仁王立ち少女。
撃路崎真咲、と名乗る彼女は、何かしら企んでいるようで、かいつまんで言うなら、密室での濃密プレイをご所望だった。
「ぷ、ぷれいってなんですか!? そんなんじゃありません!」
「いやだって俺縛られてるしあんたスカート脱いで下半身丸出しだし」
「そ、それは間違ってないですけど。間違ってないですけど!!」
「だろ? っておい馬鹿、ちょ、あぶな……!!」
俺は、ここからいつ出られるんだろうな。
特にタイトルに出てるほど密室プレイという字面に意味はない仕上がりになってる。
まあ作者があとがきで公認しているとおり内容がない、もっというと薄味(本人がぶっちゃけていいんだろうか)。なんだけれど、キャラのかわいさや魅力はそれ以上に出ていると思いました。面倒くさい性格の真咲さんがかわいい。とにかくかわいい。お嬢様でドジでうっかり屋で少しだけ流されやすい真咲さんめっちゃかわいい。
完璧超人を軽く超越する主人公の姉を、主人公と真咲さんが一丸となって一度見返してやろうと始まった二人の共闘生活。あの手この手を尽くすのですが「完璧超人」は伊達などではなく、意識せずとも結果的に二人をいとも容易く蹴散らしているという始末。勝てると思うことはおこがましい相手へ挑み続けることになにかしらの意味は見いだせるのか。しかしそれでも止まらないのが撃路崎真咲の挑戦である。そんな彼女の潔さと、それにいつの間にか深く共感し、感化されている主人公の関係がよかった。
まあその実態は会話文がすごくだらだら続くだけなんだけどね!
あと表紙がかなりもったいないと思いました。
こんな味気ない背景真っ白な表紙でも、エロかわいい松竜さんの絵が中にはたくさん詰まっているというのに。
喰 -kuu- [★★]
喰-kuu- (MF文庫 J う 4-1) 内田俊 まりお金田 メディアファクトリー 2010-11-20 売り上げランキング : 776 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
すぐれた戦士には例外なく、賞賛と敬意をこめて二つ名が送られる。ある者は《氷山に咲く花》と、またある者は《四つの胃袋を持つ男》と、そして彼女はかつて、こう呼ばれた戦士だった――《極大引力》。突然バイト先に現れた大食い少女・井ノ原みのりの勇姿に魅せられた主人公・ハチは「俺と付き合ってくれ」といきなりの告白に打って出る。そんなハチに対しみのりは「これを食べきることができたらお付き合いします」と、三十人前の超巨大ラーメン『食神』を指さすのだった――。大食いに身を捧げた者達の熱きドラマが今始まる!!
これはおもしろかった! というか熱い!!
大食いそして早食い、という特異なジャンルでありながら、ここまでの青春小説にまとめあげられたのはかなりすごいんじゃないかと個人的には思いました。イロモノでありながら極めて真っ当な青春モノであるけれど、それ以上も以下もいらない。ノリはスポ根で部活ものに近い感じがした。
突如バイト先に現れた大食い少女・みのりのその勇姿に感極まった主人公のハチ。そのまま勢いで愛の告白をするが、条件として約30人前の巨大ラーメンを食べきることを突きつけられる。それがみのりからの挑戦であり、大食い以外にはなにも残らない自分を肯定してくれる誠意を確かめるものでもあった。
大食い。それは傍から見れば、いいイメージよりは悪いイメージのほうが先行するでしょう。
卑しい。汚い。みっともない。たかが自慢のひとつにしかならない、愚かな行為。そう揶揄する人の方が多いかもしれません。
しかし彼らのように青春を本気でそれに費やす者たちもいるのです。
バカだと笑われても。冷めた目で呆れられても。彼らには退けない意地と誇りがあり、負けられない「食」の戦いがそこにある限りは。
いいところの娘でも、何をやってもダメで幼少から期待されることなく生きてきたみのり。
平凡なりに一生懸命打ち込んできた野球を、肘の故障がきっかけで惨めになったハチ。
かつては生きる意味を見失いつつあった似たもの同士の二人が導かれたのは、そんな大食いの道である。再び全力で打ち込めることができるものにめぐり合ったハチが再起するところは、すごい熱かったです。しかもそれが愛するための人ならばという意味もあるので尚更。
二人がこの大食いの舞台で再会したのも、そんな「食」からの引力によってなんじゃないだろうか。そう思うとこの先二人がカップルになるのはある種当然になるような。まあでもお似合いだしもう両想いなんだから早く付き合えばいいのに。
なんかやたらベン・トーと比べられているけど、読んでみるとベクトルが違うし比べるのはお門違いのような気がした。まあ通ずるものがあるのは認めるし、食い物の描写はあっちの方が格段にうまいのはわかるけど。
でもそれを差し引いても今後も楽しみなシリーズになりそうな気がします。みのりかわいいし。まだ新人作家さんですし、今後の活躍に期待がかかる。
とにかく、個人的にはかなり当たりなのでオススメです! ごちそうさまでした!
ヘヴィーオブジェクト 巨人達の影 [★]
ヘヴィーオブジェクト 巨人達の影 (電撃文庫) 鎌池和馬 凪良 アスキー・メディアワークス 2010-11-10 売り上げランキング : 251 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
巨大兵器オブジェクトが世界のバランスを支配し、物事の全てを決める。シンプルで安全で、クリーンな国際競争を行う場所。それが俺たちの『戦場』だ。こんな最前線から兵士が去っていく一番の理由は、負傷でも戦死でもなく、基地内における男女間の恋愛問題のこじれだったりする。
そう。今時、戦場で死ぬなんて流行らない。
──―はずだったのだが、
「「クソッたれ!! どこのどの辺が安全でクリーンな戦場だちくしょう!!」」
爆乳美人上官フローレイティアは、今日も今日とて、ごく自然に戦地留学生クウェンサーと貴族なのに下っ端軍人ヘイヴィアの二人をオブジェクトだらけの戦場に放り込んでいた。
相変わらずな二人の敵は、以前出会った「おほほ」と笑うあのエリート女と、そいつが駆るオブジェクト。ヤバそうな予感バリバリで、しかもなぜか我らがお姫様の機嫌も悪く……これが恋愛問題のこじれってやつなのか?
オホホさんの正体マジかよふざけんなよおっっぉおおおおおお。
あの言葉遣いでGカップとか言ってたくせにそんな、そんな正体かよ! がっかりを通り越してびっくりだよ!
……それはさておき。
そんなこんなで恒例となったバカ二人組の命がいくつあってもたりないドンパチ痛快劇。
いつも通りといえばいつも通りの内容なんだけれど、なんかだんだん生身の人間VSオブジェクトの構造から離れていっている気がする。そういうどう考えても自殺行為な戦いに向かっていくのが熱いのに、その成分が取り除かれてしまうとすごい疲れてしまうよ。もともと説明文が多いシリーズだしな。
まあそれでも派手さとスケールのデカさはどんどん上がっているのは楽しいのも事実としてあるわけで。ちょっとした人間関係もわかってきたりしてきてるし、今後もそういう方向性でいくんだろうか。
あとクウェンサーの野郎フラグ立てすぎだろう常識的に考えて。
オホホさんだけならずなんか軍人美女だったり雇われメイドにまで懐かれてるし……。どこのイマジンブレイカーだよ。
一方ベイビーマグナムのお姫様はどんどん影がなくなっているような気がして不憫でならない……。もしかしてメインヒロインじゃないのか。
←『ヘヴィーオブジェクト 採用戦争』の感想へ
ヴァンダル画廊街の奇跡3 [★]
ヴァンダル画廊街の奇跡〈3〉 (電撃文庫) 美奈川 護 望月 朔 アスキー・メディアワークス 2010-11-10 売り上げランキング : 19643 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「──四枚の絵が揃った時、世界に審判が下る」
絵画を掲げる事によって、混乱を振りまこうとするアンノウン。ヴァンダル一行は、彼の目的を知るためのカギがエナの母・イソラの研究内容にあると推測し、行動を起こす。一方ゲティスバーグたちは、文化制定局局長アナベルに出頭を命じられる。そして独自のルートでUMA──アンノウンの目的を調査していく……。両者が最終的に行き着いた真実は世界政府の構築とイソラに関わる驚愕の真実だった……!
果たしてヴァンダルたちはアンノウンを止められるのか!?
第16回電撃小説大賞《金賞》受賞作、感動の完結編!!
2巻の感想で息の長くなるシリーズになりそうって言ったら、これで完結ですと……。しかもすごい静かに閉幕した。
消化不良ではないといえば、実際そうでもないしもっと読んでいたかった。
たった一枚の絵が、一人の価値観を変え、人生をも変える転機となることもある。そんな芸術に託された思いを様々なかたちで受け取り、自らのしるしとしていた人々と、『ヴァンダル』が絡んでいくのが心地良かった作品でしたね。まあ完結となるこの巻はほぼひとつに集約されるのですが。
正直『DEST』とかアンノウンとかいらなかったのになあと思うのは、この物語においては無粋な考えなんだろう。ダンタリアンみたいな方式で、珍妙な一団が世界そこかしこをめぐり周って、絵画によって世界の変わった人たちと出会い、あれやこれやのいざこざ、それを追い続けるインターポールの刑事たちってのをずっと見続けていたかったなあというのが本音。この作品は説明の前にとりあえず読んで感じてみてって類の作品なので尚更。
「誰かの心にある一枚の絵」「芸術に、その自由を!」というロマンあるテーマ性は最後まで突っ切っていたので、そこは好印象でした。
ううん、綺麗っちゃ綺麗だったけど本当にこれで終わるのが残念だ……。
←『ヴァンダル画廊街の奇跡2』の感想へ
@HOME 我が家の姉は暴君です。 [★★]
@HOME 我が家の姉は暴君です。 (電撃文庫) 藤原 祐 山根真人 アスキー・メディアワークス 2010-11-10 売り上げランキング : 697 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
とある事情から親類の『倉須家』に引き取られることになった僕。だけどそこは、血の繋がらない七人のきょうだいたちが住むという妙な家だった──諧謔的な長男、おっとり&投げやりな長女、暴君の次女、スキンシップ過剰な三女、男か女かわからない三男、カメラを手放さない四女に、そして次男の僕。ともあれ新しい生活は割と順調である……次女のリリィが何故かやたらと僕にキツく当たってくる以外は。
電撃文庫MAGAZINEに連載され人気を博した、ちょっと風変わりなハートウォーミング(?)ストーリー、開幕!
あの藤原祐先生が家族モノでハートウォーミング……だと……ってことで読んでみた作品。
箱を開いてみればあらすじ通りの真っ当な家族モノでありました。笑いあり、泣きあり、血が繋がっていなくたって家族になれるという、そんな温かいテーマ性を如実に示した作品でしたね。
今回は響が倉須家に迎えられる導入部から、七きょうだいの次女でありサブタイにも謳われている暴君ことリリィにスポットが当てられています。このお姉ちゃんがまたとんでもなくひねくれていて、突飛な言動もしょっちゅうなのですが、その一見理不尽な行動だったり言動が、すべてきょうだいを守ることに結びついているあたり憎めないやつです。きょうだいを大切にすることにかけては倉須家一番なんじゃないだろうかってくらいに家族思い。
特に両親を失った悲しみを新しい家族へはだすまいとする響へ、彼女が「家族として」当てた辛くとも優しい言葉はとても印象に残っています。正直こんなに懐の深い姉キャラだとは思ってもみませんでした。リリィお姉ちゃん素敵。
わけありだらけのこの七きょうだい。
まだまだ本編では触れられていないきょうだいたちの過去に受けた傷、そしてこれから逃げずにそれに向き合い、乗り越えていかなければならない問題がたくさんあるでしょう。そこら辺の各エピソードとの絡め方も気になるところです。今後の展開も楽しみに待っています。
他人だからこそ生み出せる、家族以上の絆が見られるかもしれません。
プラナス・ガール3
プラナス・ガール 3 (ガンガンコミックスJOKER) 松本 トモキ スクウェア・エニックス 2010-11-22 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
絆ちゃんは本当にかわいいなあ。こんなにかわいいんだから女の子なはずがないよな。
コミックス派であるがため半年くらい待たされたのに、物語自体には進展という進展はないのだけれど、正直それでもいいんじゃないか感がすごい。というか本当に終始学園で起こるイベントの事あるごとに、絆ちゃんと槙くんがいちゃついているだけ。なんだけど! そうなんだけど! なんなんだろうこのニヤニヤ感は! もう二人のいちゃいちゃには慣れてるはずのに。これはもういい意味のマンネリになってもらいたいと思う。そう大丈夫だ、問題ない。
偽装デートの話があるのだけれど、あれって突き詰めれば野郎三人でショッピングしているってことなんだよね。
そうやって冷静に考えるとふつうは憐れみの気持ちが出てくるはずなのに、槙くんいつにも増してワイルド系イケメンになってたり、絆ちゃんはちょっとだけ露出多くていつにも増して大胆になっていたり、あれなんだろう勝手に拳が壁にめり込んだぞ。
と、通常の感覚が麻痺するくらいにはまんまデートじゃんこれ!! って思ってしまう。どう見ても完全にカップルですありがとうございました。やべえ、ふつうに羨ましいって思っちゃった。
ここまできても「藍川絆は自称男子。ただし誰も確かめたことがない」という不明瞭かつ曖昧な境界線の存在のおかげで、絆ちゃんの性別が揺らいでおります。もうこれだけは絶対なこだわりなんだろうなあ、って思ったけど最後の胸タッチの回がそれを突き崩しそうだった気がする。まあなんか槙くんがヘタレなおかげで流れたっぽいけど。性別不詳でもそこがキャラクターを引き立てているし、読者としてもこの境界線は今後も崩してほしくないですね。
あと遅まきながら絆ちゃんが女子の制服着てることは教師も公認なんだなってわかった。
読み終わってしまうのがあっという間だったけど、今回もニヤニヤ楽しむことができました。
どうすればこんな子に懐かれるんだろう……。
藍坂素敵な症候群3 [★]
藍坂素敵な症候群〈3〉 (電撃文庫) 水瀬葉月 東条さかな アスキー・メディアワークス 2010-11-10 売り上げランキング : 6002 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
風邪をひいた空のお見舞いイベントで起こったハプニングにより、空の奴隷にされてしまった浩介。肩をもまされたり、オセロをやったり、さらには荷物持ちとして休日に二人で買い物に行くことになるが、当然そんなことを看過できる素敵たちではないわけで!?
そんな折、医術部の面々は街で素敵のように白衣を着てメスを振りかざす女と遭遇する。彼女はかつてなく最悪な“耽溺症候群(フィリア・シンドローム)”に罹患していた。素敵は自らの《世界と乖離していく》疾患を押しての対決を覚悟するが!?
うおお、ここで完結なのか……なんか結構駆け足でしたね。
というか水瀬先生の作品群で初完結だったのがこのシリーズだったらしいじゃないですか。私的にはもうちょっと長く続けてもらっても構わなかったんだけど、締めは素晴らしく綺麗だったのでまあ不満という不満はなかったですね。
完結故、急なラブコメ寄せが多少強引だと感じたのは否めなかったのだけれど、素敵・空・伊万里が浩介に向ける好意自体にはしっかりと理由もついてるし納得もできる(伊万里ルートだけかなり薄味だけど……)。そう思うといつの間にか伏線張ってたのか、と目がさめるような感覚になるのが不思議だった。のもつかの間で、まさかここにきて空から熱烈なアタックきましたよ。初めはなんか成り行き的な誤解だったんだけど、そのまま突き進んでしまうとは。すげえ、あの藍坂素敵を徹底的に「恋敵」として見ている。さらには浩介を独占するような言動がちらほら、と。なんだこのかわいい生き物。
にもかかわらず主軸はやっぱりタイトル通り素敵に傾いてしまうんだよな。
まあ元々は耽溺症候群が浩介のまえに現れ、後に浩介と素敵が互いに認め合い、その関係性の揺らぎや移ろいを感じ取っていくような作品だったと思うしそれは仕方ないと思う。症状が悪化すると世界から乖離されていく藍坂素敵の耽溺症候群は、素敵と医術部の面々、そして浩介との間に緊張感や逼迫感を生み出して、素敵自身の葛藤だったり恋愛要素の促進剤みたいなのにも一役二役も買っていたし。
適当に部室のゲームをしたり、耽溺症候群の出張治療だったり、そんな今までの医術部の活動が積み重なって、いつからか浩介もどうしようもない恋の病――藍坂素敵な症候群にかかっていたんでしょうね。浩介も誰かれ構わず、かつナチュラルにその人の支えになったり、傷を共有してやったり、そんなありとあらゆる手段を用いて全力で助けちゃうもんだから、女の子たちは惚れていったのだろうか。まあ、やっていることはすごい立派だしな。それに、最後まで素敵を諦めなかったのは他でもない彼なんだから。
いろいろ急なところもありはしましたが、最後まで楽しむことができました。
二人には今後も素敵な世界があらんことを。
←『藍坂素敵な症候群2』の感想へ
クロノ×セクス×コンプレックス3 [★★]
クロノ×セクス×コンプレックス〈3〉 (電撃文庫) 壁井 ユカコ 村上 ゆいち アスキー・メディアワークス 2010-11-10 売り上げランキング : 931 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
念願の現代日本に帰ったミムラ。だが幼なじみの小町は存在ごと消え、故郷の姿は変わり果てていた。意気消沈して学園に戻ったミムラのためにオリンピアが使った時間魔法で、学園に起こる大パニック。そしてミムラは、時間の改変がもたらす恐ろしい結果、そして 「小町を忘れるな」 という司書の言葉の意味を知ることになる。司書の正体とは──!
なんかすげえいきなり重くなってきたよ……。もうわくわくどきどきじゃなくてハラハラにシフトしているような。
これはミムラもオリンピアもかなり辛いと思う。というかオリンピアが本当にいいやつすぎて泣ける。やることなすこと全部ミムラのためって……一途にもほどがあるだろう。いや、もちろんそれは好意からなる恋慕じゃないんだけど、友達づきあいに不器用な彼女のここまで一心にミムラを助ける姿はある種の感動さえ湧いてきてしまう。
だけどミムラも本物のミムラによって世界から小町が消されたのはやっぱり嫌で、オリンピアの優しさや気遣いを無碍にしながら、真実に進めば進むほど自分を犠牲にしてしまっているミムラを見ているのはかなり辛いものがある。小町はミムラにとってそれほど大きい人物なのはわかっているものの、これだとオリンピアがすごく不憫すぎる……。
物語はたしかに大きく動き、ページ数は少ないもののものすごく濃密な一冊だった思う。転機といっていいほど。
さて本物のミムラがやっと出てきたわけだけども、なんかすごいワイルドなキャラですね。
ていうかこの子他人の体を使って自分の体を襲うとかかなり……アレですよね。なんかもう肉食系とかそこら辺超越してますよね。あとされるがままのミムラが本当に乙女すぎてかわいい。ミムラも自分の体に襲われるとか災難だなあ。
とか思いながらこのシーンはすごいニヤニヤしてましたけどね! ミムラかわいいよね。
そんなわけで続きが楽しみです。でもどうなっちゃうんだろう……。ミムラもオリンピアもがんばれ。
←『クロノ×セクス×コンプレックス2』の感想へ
俺の妹がこんなに可愛いわけがない7 [★★]
俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈7〉 (電撃文庫) 伏見 つかさ かんざき ひろ アスキー・メディアワークス 2010-11-10 売り上げランキング : 15 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「お、おまたせっ」
顔を上げると、照れくさそうな微笑みを浮かべている……俺の彼女がそこにいた。俺の愛しい恋人である彼女の名前は、高坂桐乃。
「あんたのこと……“京介”って、呼ぶから」
「だって、その方が……恋人っぽいじゃん?」
めちゃくちゃ仲の悪い兄妹だったはずの俺たちが、こんなただならぬ関係になっちまうなんて…………まるで悪夢だ。
夏休みに入ってからというもの、俺の周りでは恋の話題が尽きやしない。「待て……殺さないでくれ……」あやせの家にお呼ばれして、楽しい一時を過ごしたり。
「──妹に彼氏ができたかもしれない」「実姉モノのエロゲーが姉さんに発見されてしまいました」「責任を取ってもらいますわ、京介さん」友達から人生相談(?)をされたり。
そして一年ぶりの『あのイベント』も──
シリーズ最大の山場到来!? 注目の第7弾!!
うわー、ここにきてすげえ大型爆弾きた……。
思えば京介も桐乃も随分変わった気がします。
かつては兄妹という関係が一度冷え切り、あまつさえ兄は凡人で妹は才の塊という対極的な関係になってしまった二人。本当に関わり合いさえなかったこの兄妹が、いわゆる「オタク文化」を通じ、短い期間で急激にコミュニケーションが増え、人間関係が増す。京介にとっても桐乃にとっても、それがプラスに働いていたのは違いない。特に桐乃は自分のあるがままを京介や黒猫、沙織といった人たちが肯定してくれる世界を手に入れたわけだからより一層。
でもまさか桐乃が京介に好意まで持つとは思わなかったんだよ。
態度自体は相変わらず不遜で口が悪くてうざいキャラなんだけど、今回のことでそれが好きの裏返しなんじゃないかという可能性が浮上してきたわけです。というか確定でいいのか、これ? 偽デートの話はまだいいとして、黒猫と京介の距離がググっと近づいていくのに焦って偽彼氏まで持ち出し、自分の好意に気づいてもらおうとするとか、本当に桐乃どうしちゃったんだ。天才肌のくせにあまりの不器用さに不覚にもかわいいとか思ってしまった。
で、一方京介ももう桐乃のこと好きすぎるだろ。
桐乃の人生相談から始まり、それを通じて出会った人たち、関わったコミュニティ、すべてが京介の環境を一変させたわけです。今はもう見事に毒され続けてこんなに「マジキチ」とかふつうに使ってるし立派なオタク像に……。しかしながらそれらすべてを差し置いて、彼のあらゆる原動力の中心に据わっていたのはやっぱり桐乃なんですよね。
話しかければ無視され、言葉をかわせばケンカになるまでに冷え切っていたにもかかわらず、どんな相談事も文句を言いながら真摯にぶつかっていた京介。いままでは兄としてという義務感もあったんだろうが、偽彼氏騒動でもう完全にそれを上回っているなにかがあると確信しました。というか私も妹いますけど、偽彼氏騒動のことはそこはおまえが口出ししていいことじゃねえだろって本気で思ったので、そう思うことでしか納得できません。京介は本当にそれでいいのかよ。
そして極めつけの黒猫。
京介とは同じ学校、同じ部活動、そして桐乃の不在ということもあって急速に距離を縮めてきた彼女。正直もうこの巻ののっけから京介に対してデレデレな態度は端々から窺えたんだけど、黒猫自身は桐乃の京介への好意に気づいてないんだろうか。ていうか気づいてないとおかしいんじゃないのか。それともわかっていてあえて告白したのか? どちらにせよ、今後桐乃との衝突は避けられない気がするんだけど、でも親しい人にはかなり想いやりが深い彼女がまさかここまでの強硬手段を敢行してみせるとは思わなかったのが本音。黒猫にとって京介は、桐乃と争ってまで手に入れたい人なんでしょう。まあ黒猫からしても京介は自分を肯定してくれる人間だったからなあ。そこら辺は桐乃と似通ってる。
とまあすごい展開になってきてるのは明らかなんですよねこれ。どう収集付けるのかまったく予想がつかない。ああもうどいつもこいつも難儀だなあ、おい!
拗れるに拗れる気がするんだけど、そうなると俺妹らしさがかなり削がれてしまうと思うのでどうなんだろう。伏見先生はそこら辺の斟酌にかなり気を使っているらしいので、あんまりシリアス寄りにはならないと思うけど。
まあ個人的な意見としては桐乃と京介には絶対にくっついてほしくないです。もしくっついたら私の中でなにかが確実に崩壊する。これだけは守ってほしい一線とはまた違うべつのなにかですが……。
というわけで、早く続きがよみたい。このままじゃ生殺しすぎる。
←『俺の妹がこんなに可愛いわけがない6』の感想へ
子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき [★]
子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき (角川スニーカー文庫) 玩具堂 籠目 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-10-30 売り上げランキング : 8908 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
第15回スニーカー大賞《大賞》受賞!!
生徒の悩みを解決に導く「迷わない子ひつじの会」。そのメンバーである成田真一郎(なるたまいちろう)は、寄せられる風変わりな相談に大奔走! そんな時出会ったのが、生徒会室の隣を隠れ家にするボサボサ頭の仙波明希(せんばあき)。ダラリと本を読んでいる彼女に、なにげに相談について聞くと、毒舌だけどとても的を射ていて――!?
実は生徒たちに「子ひつじの会」が広まったのは、この仙波の活躍があってこそだった!!
とりあえず、キャラ立てがうまい作品だなーと思いました。
内容の方は正直「大賞」というには物足りない部分を感じていたのですが、キャラの造詣と役割、そして小粋な掛け合いにかけては手馴れている感が窺えて、そこが勝因となったとのかなーという印象も。そもそも私は大賞という枠を斜に構え過ぎなのかもしれないけれど。
仙波さんのキャラはやる気のない文学少女的なニュアンスを感じた。悪態をつきながらも、なんだかんだで生徒会の面倒をみてやったり相談事の助言をしたりと縁の下の力持ちの彼女はとてもいいキャラですね。ダウナー系ツンデレですね。
しかしながら生徒たちの相談事というのが、ふつうといえばふつう。
特にそれが悪いってわけじゃないんだけど、もうちょっと捻ってほしかったというのが本音。その相談事ひとつひとつで各々の考えや価値観が見えてくるのはおもしろいのですが、解決はやたらあっさりかつ予想の範囲内といいますか、なんか落ち着くところに落ち着いてるって感じなんですよね。だからインパクトには欠けるかも。それでも一定のエンターテイメントは堅実に提供されていると思いますけど。
とりあえず引きは気になるので続きは買う方向で行きたいと思います。
まあこれは触りの部分と言ってもいいので、今後の展開次第では化ける可能性も多いにあるんじゃないかな。作者さんの発想に期待。
それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ【完全版】1 [★]
それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ[完全版]Ⅰ (朝日ノベルズ) 庄司 卓 赤石沢貴士 朝日新聞出版 2010-10-20 売り上げランキング : 1208 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
天才ゲーマーの女子高生・山本洋子は、その腕を買われて千年後の未来で宇宙戦争をすることになってしまうのだが……!? 未完だった超人気作品が、完結に向けて再始動! 巻頭に特別書き下ろし短編も収録!
当時富士見ファンタジア文庫から刊行されていた原作も未読、当然アニメも観ていないという初めてづくしのヤマモトヨーコです。実はタイトルを知ったのもこれが出たあとなんですが、周りから推されたので値段に悩みつつも買って読んだと至ります。未完結だったらしいこの作品は、この朝日ノベルズで完全版として再出発し、完結まで乗り切るらしいですよ。じゃあ私もそれに付き合いますかってなノリでした。
これもう10年以上前の作品らしいんだけど、ノリが古くて逆に新鮮だったw
ヨーコが挙げるゲームやハードは軒並み古いし、知ってるタイトルなんて片手で数えるほどしかなかったけど、このノリはすごい好みでしたね。なんだろうか、すごい昔ながらって感じで90年代らしさが溢れてる。
そんな超絶ゲーマーなヨーコが千年後の世界の宇宙戦艦パイロットになって戦争に駆り出されるお話です。戦争、といっても千年後は科学技術の超発達によって死人が一人もでないものにまで形式化してました。ある種のスポーツとはよく言ったものです。
とりあえずエスタナトレーヒチームはヨーコとまどかの罵り合いにニヤニヤすることを理解しました。
チームの4人のデビュー戦を各章で触る感じなのですが、一番印象に残ったのは綾乃ですかね。格闘戦艦? ともう章タイトルから興味を煽られました。というか根拠とかないけどなんとなく現代っ子はほとんど綾乃が好きになりそうな気がするw 私自身も小柄なのに徒手空拳は最強っぽい設定は好きだし。
レッドスナッパーズはヨーコたちのライバル的な位置なんだろうか。なんとなくこいつらすぐ忘れられそうなキャラ造形なんだが。でもこの四姉妹のノリも結構楽しめたのでよかった。
そんなこんなで完全初見でも割と楽しく読むことができました。続きも買おう。
ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc6 [★★]
ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc6 (ファミ通文庫) 田尾 典丈 有河 サトル エンターブレイン 2010-10-30 売り上げランキング : 3555 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「なんじゃ、こりゃ――っ!」
雄叫びとともに来襲した従妹の麻衣。中学までの武紀と、主人公道を極めんとする今の彼とのギャップに驚きつつ、その変化を受け入れる彼女だったが……「二度とタケにいに近づかないで!」武紀を想うあまりヒロイン達に残酷な言葉を口にしてしまう。違うんだ麻衣! わかってくれ理恵、俺の気持ちは――って何故ここに『エターナル イノセンス』がある!? 選択肢無限の真世界を奔走する、青春ADVノベル、待望の第6弾!
『ストリートに舞い降りた漆黒の堕天使』さん……。
武紀さんそれはちょっとどうよって思う過去ではあったけど、人間誰しも無性に二つ名が欲しい時期がありましたよね。しかしこのセンスは大人になるとかなり恥ずかしいなw
さて毎度毎度目新しい切り口で攻めて来るこの作品ですが、今回もその例に漏れず。
そのきっかけというのが武紀の従妹である麻衣の登場なのですが、この子は中学生のくせにかなりの正論キャラです。若さ故に感情から押し寄せる糾弾もストレートで、エターナルイノセンスのヒロインズに対する嫌悪も隠そうともしない。しかし、まったくもって何一つ間違ったことを言っちゃおりませんし、それが武紀の不幸な境遇を知り、その上でずっと一緒に過ごしてきた最初の「家族」から見た立場ならば、彼女の言い分は非常に理解できます。何もかもが武紀を思うがためなんだからね。
倫理。社会。法律。世間体。
この作品はそんな絶対的正義に正面切ってケンカ売ってるような人生観や恋愛観を一人の男子が「マジメに(超重要)」臆面なく掲げているので、こういうキャラは出てきてもおかしくなかったしむしろ必要ですらあったと思います。
そんでもってフェアリーシステムの異常が発生。設定者のうち、武紀だけ負担が莫大だったわけはすごい納得いった。そりゃ5つのルートを同時進行してれば重くもなるわ。
武紀に突きつけられた現実は「一人を選んで他は消える」か「誰も選ばず全員消える」になってしまったわけだけど、彼が誰か一人だけを選ぶなんてことはするはずもなく、もうひとつの選択肢として「1つのルートを5つの世界にわける」という見方によってはヒロインズにとってかなり残酷な提案をするのですが、現状それが一番だったのは仕方ないことなんですよね。これは「誰か一人を選んだ場合」である攻略後のグッドエンドを迎えたあとの世界で、ヒロインズは互いに干渉できない断絶された世界にいるわけです。夏海がこぼしてたけど、この場合だと確実に「二人だけの幸せ」が約束されるわけだから、ちょっといいかな……なんて思っちゃったりするのも仕方ないことなんだろうなあ。
でもやっぱりみんなで幸せになることを頑として譲らない武紀△。彼の誠意ある想いと行動にふと手を差し伸べてやる元主人公の正樹もいいやつです。
そして最後の引きがやばい!! 正真正銘のメインヒロインがついにきた!!
本当に次回が楽しみ過ぎて困る。武紀にデレデレなあの人が見れると思うとすごいわくわくするよ!
←『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc5』の感想へ
“菜々子さん”の戯曲 小悪魔と盤上の12人 [★★★]
“菜々子さん”の戯曲 小悪魔と盤上の12人 (角川スニーカー文庫) 高木 敦史 笹森 トモエ 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-10-30 売り上げランキング : 2661 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
高校に入学した宮本剛太(みやもとごうた)、とあるアクシデントによって“奈々子先輩”と出会う。美少女大好きな彼にとって、彼女はストライクゾーンのど真ん中、一目で心を奪われ、彼女が所属する映画研究会に入ることに。そんな中、校内で盗撮写真が出回っているという噂が流れ、映研が疑われてしまう。宮本はその疑いを晴らす為に調査を始めることになるが――小悪魔“奈々子さん”の言葉に突き動かされる宮本は、いかなる真相に辿り着くのか!?
菜 々 子 さ ん マ ジ 天 使 な 小 悪 魔
すげええええええええこれすげえええええええええええ。
もう菜々子さんのひとり勝ちだわこれは。小学生であれだったんだから、ちょっぴりアダルトになった菜々子さんが魅力的じゃないわけがない。
「わたしね、昔から、ひとが何を考えているのか考えるのが好きなのよ。で、もしこの人がわたしの思っているように動いて、わたしが狙った通りのことをしてくれたらすっごい愉快だなあって。そういうの――わくわくするの」淡々とこんなことを人前で言ってのける子なんですよこの子は。黒い、黒いよ!
というかアダルト菜々子さんマジエロい。女子高生にあるまじきアダルトさ。
なんていうの、なんかもう上のセリフからもわかるとおりセリフのひとつひとつから所作の端々まで、一挙手一投足に到るまですべてが艶めかしい。極端すぎる表現だとわれながら思うが、そうなんだから仕方がない。かわいい顔して中身はこんなんなんだからそういうギャップってのもあるよね。やっぱ美人の方が映えるよな、こういう役回りは。
強かでいて儚げ。狡猾でいて臆病。どんな面でも一本芯が通っている菜々子さん、あっぱれです。
ストーリーの方はあの1巻からどうするんだと思ったけど、こういう切り口できたかという感じ。
Nのこともだいぶ仄めかされつつ、今回の視点人物である宮本剛太のちょっと変わった映研の日常風景。文芸部への入部事件で菜々子さんと馴れ初めたことをきっかけに、徐々に動いていく歯車。後に上がる元アイドルの盗撮問題で、疑われる映研。これの解決に宮本は乗り出すわけですが、なんというかもうオチがすごかった。終盤までつきまとっていた違和感が一気にカッチリ解ける、魔法みたいな展開の運び方に脱帽。そして最後に全部持っていく菜々子さん。完璧や。完璧やでこれ。
地味に宮本も結構推察力というか、人を見る力みたいなのに長けていると思う。感情を読み取ったり、表情から思考を推測したり、立ち回りがいろいろ便利そうだった。それは菜々子さんに会うまえからあったから意外。
いやあ、もうすごくおもしろかったです。
キャラ的には菜々子さんが強すぎるけど、踊らされる人間がいないと話しは成り立たないわけで。もちろん個性に富むサブキャラたちの配置も申し分ないと思っていますよ。これは次回も期待だなあ。
←『“菜々子さん"の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕』の感想へ
猫物語(白) [★★★]
猫物語 (白) (講談社BOX) 西尾 維新 VOFAN 講談社 2010-10-27 売り上げランキング : 4 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
“何でもは知らないけれど、阿良々木くんのことは知っていた。”
君がため、産み落とされたバケモノだ。
完全無欠の委員長、羽川翼は2学期の初日、1頭の虎に睨まれた――。それは空しい独白で、届く宛のない告白……<物語>シリーズは今、予測不能の新章に突入する! これぞ現代の怪異! 怪異! 怪異!
いい話だった。とってもいいお話だった。
よくも悪くもガハラさんのキャラが輝いていたと思う。いや、話自体は羽川の話なんだけど、ガハラさんなくしてこのお話はやっぱり成り立たなかったといいますか、今回結構重要なポストについていたのではないと思います。しかし丸くなって毒が抜けたガハラさん、前よりめっちゃかわいくなってると思う。阿良々木さんの前でもこうなのかはまだ未知数だけど、かなりソフトになっててなんか微妙にキャラ違うようなw
そして羽川と急速にすごい仲良くなってるのが和む。同じ男を好きになった者どうしってのもあるのかもなー。遠慮のないガハラさんとそれに遠慮がちの羽川の構図だったんだけど、なんだか妙に馬があってるところもあるな。
そして羽川です。
彼女を取り巻いてきた境遇、ありえないほどの空気。しかしこれらを水に流しても有り余る、阿良々木暦という存在が羽川翼を支えてきた。彼女のストレスの権化である障り猫――ブラック羽川が暴れることによってそれらのストレスからも解放された。
だが、彼女にとっての阿良々木暦は、彼女のトクベツではなくなろうとしている。否、なくなった。
そのために生まれてしまった怪異、苛虎。彼女の中に燻る嫉妬心を象徴する存在。
今回のエピソードで羽川は自分ととことん向き合いました。自分を受け入れ、自分を許せる、そしてすべてをひっくるめて新しい自分を迎えようとする物語です。自分の感情の一部であり、ストレスを請け負ってきたもう一人の自分であるブラック羽川を、そして嫉妬に燃える炎をまとう苛虎さえも受け入れた彼女。
積み重なったいままでを、積み上げていくこれからを。
羽川翼が羽川翼であるが故に、あるが為に。
それは決して「成長」ではなく「肯定」の物語でありました。
おもしろかったです。今後羽川にスポットがあたるのかはわからないけど、この話で羽川がすごい好きになりました。
にしても羽川視点の阿良々木さんはちょっと美化されすぎてないかw これが恋は盲目ってやつですね。
←『猫物語(黒)』の感想へ
ANIMAX MUSIX FALL 2010
リッパーさんに誘われて行ってきました。
正直言えばアニソンのライブはアニサマぐらいしか行ったことがなく、出演アーティストの方も知識0の人が結構いたのですが、思っていた以上に楽しむことができました。7時間もの間、いっぱい跳んだり、サイリウム振ったり、声もたくさん出せて楽しかったです。ちゃんと生で聴くことができて嬉しいアーティストの方もたくさんいました。
機会があったらまた次も行きたいなー。
続きからは細やかな感想とか。セットリストは「まあいいか」さんより。
二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない [★★]
二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない (集英社スーパーダッシュ文庫) 朝田 雅康 庭 集英社 2010-10-22 売り上げランキング : 1804 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
問題児ばかりで構成されたクラス、それが私立伯東高校二年四組だ。
クラスのボスである委員長は強権を発動し「皆の心をひとつにする」ために交換日記を開始する。
日記は誰が書いているのかもわからないようにされ、登場するクラスメイトも属性に基づく異名やその所属する派閥で表現される。日記では予想外の事件や秘めたる恋が描かれて…?
第9回SD小説新人賞佳作受賞作、パズル感覚で読み明かされる、学園青春小説が登場です!!
なるほどパズル感覚とはよく言ったものである。確かにこれはおもしろかった。
あだ名と本名を一致させるという「読者にも遊ばせる」ような今までにない試みはかなり新鮮で、35人もいるクラスメイトの特徴・性格・派閥・繋がりが頭にスーっと入ってきました。交換日記という一人称視点で描かれているものの、それでいて学園モノの体はしっかりとし、恋愛要素も挟み、群像劇みたいな視点の移り変わりから様々な事件をひとつに収束させる模様は読んでいて爽快でした。これは作者の人巧いなあ。発想の勝利でしょう。
かくいう私も名前を埋めながらやっていたのですが、熱中しすぎて読書に4時間ぐらいかかっていた件。本書は300ページもないのに。それにしてもイラストの庭さんがいい仕事しすぎている。35人をきっちり描き分けた技量はたしかなもの。
万能だったり、一芸に秀でているキワモノ、イロモノが集う文字通り問題児の巣窟・二年四組。
とにかく個性的なメンツが集うのだが、性格に難があるものの多さときたら。万能者とか腹黒とかストーカーとかちょっと本当にやばいんじゃねえのか。あと才女はなんだったんだいったいw
彼らが立ち向かう事件もかなり大きかったけど、それよりもクラス内の人間関係に惹かれて読んでいた部分が大きいと思う。どこの感想でもハツラツ娘が人気だけどそれもわかる。私もたぶん一番好きです。たしかに制裁男の関係は切ないし、たったそれだけのすれ違いがここまでこじれるとは思わなかった。でもちゃんと正式カップルになってよかったなあ。お嬢と副委員長の方はかなり難航だろうけど、いつか振り向いてくれる日がくるんだろうか。でもこれだけはクラスが一丸となって協力してるのはなんとなくウケるよなw
基本我が強いやつが多いのでこうして三つの派閥ができあがり、そりが合わない連中もどうしても出てきてしまうことは当然だけど、様々な悪態を吐こうがなんだかんだでその関係はサバサバしていると思う。やっぱり腐っても「クラスメイト」という繋がりは大きいんでしょう。
いやあ楽しませてもらいました。続編は難しいと思うけど、ぜひ読みたい。
続きには一応答え合わせ的なものを書いておきます。pdfじゃなくてふつうにテキストだけど。
学校の階段の踊り場2 [★★]
学校の階段の踊り場2 (ファミ通文庫) 櫂末 高彰 甘福 あまね エンターブレイン 2010-10-30 売り上げランキング : 731 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
大晦日の夜に神社の1000段におよぶ階段を駆け上がる恒例イベントで起こった騒動『年越しの階段』、バレンタインチョコを幸宏に渡す三島&御神楽の乙女【ライバル】心を描く『恋愛とチョコレート』&『チョコレートと恋愛』、卒業間近の九重、刈谷、遊佐、中村の微妙な四角関係『エンドレスフォー』、そして新学期、天栗浜高校に入学した井筒奈美は階段部と出会う――『予兆』。ビバ、青春の無駄足! それぞれの「心の階段レース」を描く待望の短編集第2弾!!
一年前に本編は完結し、久しぶりの階段部。今回はマジでラスト(?)な短編集。
櫂末先生の新作はもちろん読みたいのですが、階段部二部スタートでも全然オッケーですね。というか本当にそういう流れなのかと思った。
この短編集はサブヒロインたちからの視点でそれぞれの恋愛模様が描かれるのが中心です。
実は中村さんが一番乙女っぽい思考してたことがわかったんだけど、普段からのギャップですごくニヤニヤしてしまいました。遊佐がガチなラブレターをしたためていたのも意外だったけど、刈谷先輩と九重部長を合わせてこの4人の恋愛模様はもっと覗いていたかったなー。刈谷先輩は階段レースには鋭敏だけど恋愛事情にはやっぱり鈍いのね……。
三島さんと御神楽さんは本格的に恋敵になりつつありそうですね。1つのお話を別視点で捉える構成は私も好きなので二人の内面を見れて良かったと思います。にしても御神楽さんはすごい強かな人だな。幸宏を落とすのはかなり茨の道かもしれないけれど、どっちも応援したいところ。
でもって最後には表紙を飾った井筒妹の視線で階段部を見るお話。
肩を壊し、バレーができなくなった彼女が階段部を通じて、その熱意を再燃させた想定外にいいお話だった。まあ幸宏はここでもナチュラルにフラグを立ててまたかおまえって思いもしたけども。泉先輩が部長らしくなってて一層魅力が増してた気がする。
……あれ、美冬姉さんの出番は?
久々に階段レースも見れたし、やっぱり良質なスポ根&青春モノには変わらないなあ。いい短編集だった。
←『学校の階段10』の感想へ
生徒会の九重 碧陽学園生徒会議事録9 [★]
生徒会の九重 碧陽学園生徒会議事録9 (富士見ファンタジア文庫) 葵 せきな 狗神 煌 富士見書房 2010-10-20 売り上げランキング : 53 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「そういえばまだやってなかったね」的ノリで、ついにあの人の過去が明らかに! 金髪ツインテールや赤髪の美少女も登場でお楽しみ満載だ!(※「かつてないスケール」が何を指すかは、お手に取ってご確認ください)
いよいよ最終巻が近くなってきた生徒会本編。
あのヒッキーの真冬がたくし上げというレベルの高いエロ表紙でがんばってくれました(どうせならスカートくわえるくらいとか思ってません。ホントです)。さあ、次回は予定通りなら杉崎のエロ表紙がくるはずだけど、果たして富士見書房はそこまでの英断を踏み切れるのか気になりますね。
まあ中身はいつもどおりといえばいつも通りですけど、やっと明かされた会長の過去であったり、会長と知弦さんの馴れ初めであったりとなかなかマジメなお話が多かった印象。会長の最初の友達はその反動がアレだったけどw
そんな中でリリシアさんの話は久々に生徒会らしさを補充できた感じだった。やっぱり杉崎は基本アホだけど不意を撃つようにカッコ良くなるよなあ。リリシアさん相手にここまでのフラグを立てるのは初めてなんじゃなかろうか。
そんでもって極めつけはバレンタインのお話であります。
ヒロイン総勢もう杉崎にデレデレだなと思わされますが、深夏はなんか一周回ってむしろ違和感があるw いや一番かわいいのはわかるんだけど、「あたしはおまえにデレデレだぜ!」オーラと態度がやばい。超かわいい。さすが夢にお嫁さんとか書くやつだ。
それには及ばないけど真冬もかつてないほどかわいいと思わされましたね。基本イロモノ扱いされてる彼女ですが、このバレンタインのお話では杉崎相手にがんばってくれたと思います。
終わりが近いのは名残惜しいですが、最後まで生徒会らしさを貫いてほしいなあ。
←『生徒会の八方 碧陽学園生徒会議事録8』の感想へ