変愛サイケデリック2 [★★★]
変愛サイケデリック 2 (電撃文庫 ま) 間宮 夏生 白味噌 アスキーメディアワークス 2011-08-10 売り上げランキング : 69286 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
変人・彩家亭理子の親友・円馬佐那の秘密を知った千光生徒会の原犀斗。執拗なほど正義に寄生する“完璧常人”の彼は、佐那の退学を提案することで気に食わない理子を陥れようと画策。裏工作の準備万端で千光高校の全校生徒を巻き込んだ疑似裁判『千光大会議』を立ち上げるのだが──。
『千光大会議』では、代表生徒として『月光』の“あの2人”もちゃっかり登場の予感!?
変人たちが贈る、異色の青春“変愛”ストーリー、超波乱の第2弾!
1巻よりはたしかにパワーダウンしてる感はあったかもしれないけど、それでも好きなものは好きなんだ。
というよりは私はこの作家さん・間宮夏生先生の書く文章が好きだったり、キャラ自身であったり、その動かし方だったりが好きなのかもしれない。たぶん相当なヘタを打たない限り、ずっと著者の本を買おうと思うくらいには好きになってる。
さて今回の話は言ってみれば生徒総会という名の公衆裁判・『千光大会議』の議題に祀り上げられた、円馬佐那のお話。ずっと男として育てられ、女でありながらも男として性別を偽って学園生活を送ってきた彼女の秘密が、突如生徒会役員の原犀斗によって白日の下にさらされてしまいます。あれほど腕っ節は強かった彼女は、秘密を明かされるとここまで弱くなってしまう。もちろん佐那自身にもいままで周りを騙していたという罪悪感はありましたが、そんなものはただの言い訳です。さらにはいつも理子の隣には自分がいたはずなのに、そのポジションが『変愛部』の1年生ズの存在により無意味になってしまうのではないか、という恐怖にさえ苛まれていっぱいいっぱい。
しかしそんな佐那を守るために立ち上がったのが、彼女の親友でもある我らがストレンジサイケデリコ・彩家亭理子です。人間を愛し面倒を好む理子のことだからこんな状況でも「おもしろいこと」だと不謹慎にも心から楽しんでいるかと思えば、意外にも友達想いでした。もちろん「おもしろいこと」きちんと楽しんだ上で、心から佐那の力になりたいし守りたいんですよね。
そして理子とともに佐那を助けることとなった『変愛部』の1年生ズ。あれだけ荒んでいた悠仁はなんかもう理子の付き人というかボディーガードみたいな感じになってた……。あと佐那とはある意味秘密を共有していた伊庵も思うところがあったんでしょう。今回一番働いたのはなんたってこの子だからね。理子を快く思っていないにもかかわらず、佐那があまりにも見ていられなかったんでしょうね。優衣も含め、この三人もだんだん変わってきてるよなあ。
原犀斗は正直小悪党みたいな印象しかなかったけど、あくまで物語を盛りたてる障害みたいなもんだからあまり問題はなかったかな。まあ性別を偽ってただけで退学云々の話まで大きくなるのはちと過激すぎるとは想いましたけどね。「え、そんなんで?」って思っちゃったよ。佐那の葛藤をうまく引き立てていたからいいんだけどさ。
そんな感じで見事に『千光大会議』に打ち勝ったのち、晴れて女の子デビューした佐那がかわいかったです。地味に『月光』の葉子さんと野々宮が出てきましたが、これからもレギュラーメンバーになるんだろうか。葉子さんは相変わらずでしたマジで。
なにはともあれシリーズ化してめでたい限りです。理子の壮大なおふざけはこれからも続く!……んだよね?
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今週の感想録 28ページ
ついに「一週間に一回は更新しよう」が途絶えてしまった……。たった半年でこれか。
というわけで色々お久しぶりです。コミケが終わり、もう今週末にはアニサマ二日間が迫っています。そして気づけば8月ももう一週間ありません……早い、早すぎる。
なぜ更新できなかったというかしなかったかというと、忙しさと怠慢と体調不良が重なってこうなってしまいました。しかも数年ぶりに歯が痛くなってこのまえ歯医者に駆け込んできましたよ。見事に虫歯がありました。今度抜くことになりました……。いやなんかもう歯の痛みってすべてのやる気が根こそぎ奪われますよね。もうやることといったらすぐに寝て痛みを忘れるくらいですよ。おかげで本も全然読めないったら。
そんなこんなです。でもコミケはすごい楽しかった。関わった方々本当にありがとうございました。
というわけで今週のおしながきです。二週間分です。ほんとはこの期間もう2冊読んでるんですが、そっちは個別であげます。
・ソードアート・オンライン8 アーリー・アンド・レイト [★★]
・魔法科高校の劣等生2 入学編 下 [★]
・ゴールデンタイム3 仮面舞踏会 [★]
・デュラララ!!×10 [★]
今週の感想録 27ページ
もう明日から夏コミって全然実感ないんだいけど来るものは仕方がない。
いやあ、さっきまでサークルチェックしてて慌ただしいったらなかったんですけど、こういう作業をなんでもっと前もってやろうって気が起きないんでしょうね。まあ、ただの怠慢なんですけど……。
にしてもコミケに対する物欲がだんだん低下している気がします。たぶんそれは東方ジャンルから疎遠になったためでしょう。一応本家は回って神霊廟は買おうかなーって思ってますが優先度は低いかな。あとはアレンジCDが少しほしいくらいだし……東方系を漁りまくってたころの私は若かったんだ……。企業もべつにとりわけ欲しいものとかないし、素直にだれかのファンネルとかになったほうがいいんじゃないかって気はします。まあついったーの知り合いのスペースとか回るからさみしくないですし!
週末も暑くなりそうなんで、水分補給とかに気を付けないと。
それでは今週のおしながき。
・夢魔さっちゃん、お邪魔します。2 [★]
・それがるうるの支配魔術 GAME2:リメンバランス・パズル [★★]
・ストライク・ザ・ブラッド1 聖者の右腕 [★★]
脱兎リベンジ [★★★]
脱兎リベンジ (ガガガ文庫) 秀章 ky 小学館 2011-07-20 売り上げランキング : 26530 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「宇宙人」と揶揄され、友達もいない内気な高校生・兎田晃吉。軽音楽部に所属する彼の唯一の趣味はギター。文化祭を控えるも、彼にはバンドを組む仲間もなく、イケメン部長・志鷹の嫌がらせで練習場所もない。そんな兎田と偶然出会い、事情と実力を知った漫研の部長・兎毛成結奈は、彼にリベンジを達成させるため、なにやら妙な友達を集め始めるのだが……。軽音部の笑われ者と、漫研の実力者、ふたりの残念な出会いが新しい才能を開花させる! クソッタレな世界をねじ伏せろ!! 第5回小学館ライトノベル大賞・ガガガ賞受賞作!!
間違っているのはこの世界のほうなのだと。そう、青春はこうでなくっちゃ。
僕たちは、何一つ間違っていないのだと。
今はまだ報われないけど、それでも戦うことを止めなければ、いつか必ず勝ち名乗りをあげられるのだと。
それを今、証明しよう。
まず結論から言いますとめちゃくちゃおもしろかったです。この青臭さと終盤の爽快感は抜きん出たものを感じました。
どうにも同レーベルで同じ時期に発売された「寄生彼女サナ」に話題を持って行かれがちでしたが、是非とも読んでいただきたい作品であることは間違いないです。こういうの超好きです。
才能が輝けない世界なんてねじ伏せろ! 全身でこのメッセージを浴びるといいです。
背の低さと声の異常な高さゆえに、クラスからは「宇宙人」と揶揄され続けた主人公・ウサ吉。そんな境遇を自分にはお似合いだと諦観している彼は、あるときたった一人の漫研部員・兎毛成結奈と出会う。お互いの趣味とその実力を赤裸々に明かし、才能を認めながらとある協力関係を結ぶ。埋もれるべきではない才能を、いままでバカにしてきた連中を見返してやる、と。
メインの二人もさることながら、結奈先輩の同級生でこの計画の協力者の皆さんがまた素敵でした。特に乃ノ香先輩がかっこよかったです。かなりクセのある人物たちには間違いないのですが、他でもない彼らがウサ吉の背を押し、数々の妨害にも屈せず立ち向かう姿は熱いのなんの。彼らも各々なんらかの「いわくつきの過去」を抱えているにもかかわらず、ウサ吉にその思いを託しているんですよね。絶対成功させるんだ! って勢いが本当にいい。ストレートにいい。
軽音部の先輩にタンカ切るところはとてもかっこよかった。お膳立ては結奈先輩がしたけど、それでもウサ吉がいままでの自分と決別した瞬間だったと思う。
結末は予想の斜め上をいった感じでしたが、こういう終わり方のほうがたしかに余韻が残りやすそう。
日常はいつも通りに流れる、それでもウサ吉や結奈先輩の中で変わったものがたしかにありました。
ラブ要素はあんまりなかったんだけど、七元リュウの正体に気づくとすごいニヤニヤしてしまった。ああ、そういうことみたいな。
それから、絵師さんの仕事もすごい丁寧で好感が湧きました。白黒絵でのキャラの表情とか特に印象に残ってます。
いやもうホントにおもしろかった。重ねて言いますがおすすめです。
ついったーとかでも散々言いましたが、今年のガガガ大賞で一番おもしろかった。
これを機に手に取ってくれる人が増えればいいなー。続刊はあるかわかりませんが、作者さんの次の作品も買おうと思いました。
素晴らしい青春をありがとうございました。
ベン・トー7.5 箸休め~Wolves,be ambitious!~ [★★★]
ベン・トー 7.5 箸休め ~Wolves, be ambitious!~ (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫) アサウラ 柴乃 櫂人 集英社 2011-07-22 売り上げランキング : 427 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
半額弁当争奪バトルに青春を賭ける佐藤洋たちHP(ハーフプライサー)同好会は、槍水の妹・茉莉花のおねだりに端を発した一泊二日の旅行に行くことに! 季節外れの観光地に向かう一同だったが、途中で予期せぬアクシデントに遭ってしまう。そこへかつて出会ったあいつが現れ…!?
その他に、佐藤たちの旅行のウラで静かに起きた著莪とその友人たちの日常編や、ウェブ掲載された短編、雑誌連載で大反響をよんだ「間食版」も書き下ろし分を加えて収録! もはや短編集ではないボリューム感満点でお届けする、メガ盛りの箸休め、庶民派シリアスギャグアクション、狼が大志を抱く7.5巻!!
またしても短編集なのですが、これが短編集とは思えないほどのボリュームですごく読み応えがありました。
もともとこのシリーズはページいっぱいに文字がぎゅうぎゅうに、それこそ日の丸弁当の米粒みたいに詰め込まれていますが、不思議とスラスラと読めてしまうんですよねー。普段だったら「うわあ」って思うのに、このシリーズだと逆にそれが安心するというか、安定の文字数! みたいな。
そして短編集であるがゆえに軽い話が多く、つまりこの作品の真髄であるコミカルパートがいつもより増量されています。いやー今回も笑わされた。佐藤がちょっと役得すぎてイラ壁するレベルだけど!
>3.5倍
茉莉花、恐ろしい子……! そしてこんな幼い子に気遣われる佐藤ェ……。
「冗談でもそういうことはやめてください。気色悪いです。……怒りますよ?」※もう怒ってます。
なにげに白梅様の出番が多かったのもここだった。いやーいつ見ても清々しいほどのSだなあ……ははは。いいじゃないか、白梅パパにならって白梅様ルートにいってしまえばいいじゃないか!
あと再登場となる企業戦士レッドが無駄にカッコよかったんだけど、オチがどうしようもないw
>モモとカズラと
これは仕方ない。佐藤視点からだと蔓先輩がイッちゃってる人にしか見えないw
なにげにこの三人組がセットでいるときって貴重だから、こういう小エピソードは嬉しかったかも。オチはやっぱりしょうもないけどね!
>天使の贈り物
不幸の化――ではなくてみんなの天使あせびちゃん回。
あせびちゃんはなんか短編だとすごい出番あるよね……ってことは結構人気があるはず。にしてもこの扱いはどうなんだろうかw いやそういうキャラだからいいんだけど。本当に5日死人が出るレベルに達してるぞw
>男子寮と従姉とバレンタインデー
なんというバレンタインあるあるw でもなんだかんだで私はもらわない年は今のところないんだけど。
しかしこれが悲しき男の性。いつも以上に気合が入っている佐藤たちのバレンタインエピソードはおもしろかった。こういう空回りがあってこその青春だよね。あとで笑い飛ばせればそれもいい思い出ではないか。
>ある日の著莪あやめ
なんだよもう早く付き合えよこいつら……。ってくらい「なんだかなあもう!」と騒ぐほど甘い話ではありませんか。そういえばこのシリーズで恋愛方面を書かれるのは割と珍しい気がする。ううんやはり私は著莪が一番好きなのかもしれない……。いいよね、こういう関係。すごく憧れてしまう。
あと「3.5倍」とリンクしているので、またそこでもニヤニヤしてしまいました。ごちそうさまです。
というわけで短編集ながらいつも通りのノリで大変おもしろかったです。次回も期待。アニメ放映中には出るのかな?
←『ベン・トー7 真・和風ロールキャベツ弁当280円』の感想へ
今週の感想録 26ページ
もう8月かーって思うと非常にやるせない……。今年もあと5ヶ月かあ。
そろそろ夏コミの時期ですがどう動くかも決まってないし、カタログ買ったはいいけどそもそもあまり出費もできないという状況で……。まあ私は元からコミケではあまりお金を使わないのですけど。知り合いの作家さんとかには挨拶に行く感じ。むしろそっちが目的と言っても過言ではないという。去年の夏はそういえばなんちゃって伊波さんのコスとかしましたねえ……ハハハ(遠い目)
今年のガガガ大賞を一応全部読んだのでそちらの雑感でも軽く。
まだ感想を書いてなかったり書かなかったりしてるのはまあ置いておいて、全体的にそれぞれの個性がちゃんと見えておもしろかったと思います。ガガガ文庫の特徴的なレーベルカラーとして「イレギュラー」だとか「アウトロー」だとか「尖ってる」みたいな、いわゆる「売れ路線」に反駁したイメージがもはや多くの人にあると思いますが、お話としてだけ見ると今回の受賞作の中ではそんなイレギュラーさはあまり感じなかったというか、むしろ「構えてたのにいい意味で拍子抜け」みたいな真っ当さが光っていたと個人的には思います。
というのもこの中で一番おもしろかった作品を聞かれれば迷いなく「脱兎リベンジ」を挙げるんですが(感想は後日)、これもかなり真っ当な青春モノでした。話自体には真新しさを感じたわけではなく、むしろ単純明快で手垢がつきまくった王道的展開なんですけど、その何度も使いまわされたような話でここまで「おもしろい」と感じさせられるのは、やはり作者の手腕です。そういうような魅力を感じた理由があります。
それから「こうして彼は屋上を燃やすことにした」も生死をテーマにした堅実な青春モノでした。「脱兎リベンジ」とはまた気色が違います。
主要人物全員死にたがりという一見手の施しようのないキャラたちがそれでも生きる意味を模索し、1人でできないなら3人、4人なら――と悩みを共有する術を学び、この生きづらい世の中にドロップキックをかましてやろうというスカッとするものです。結構余韻に浸れたことが記憶に新しかったです。
またこの中で一番「売れ路線」に近いと思われる「寄生彼女サナ」も、前述したとおりお手軽で楽しい真っ当なラブコメに仕上がっています。ぶっちゃけこの5作で一番表紙力があるのもこの作品だと思ってます。最初寄生虫がヒロインって聞いたときはどんな話になるのかと戦々恐々と構えていたのですが、このとおりです。だってかわいいものはかわいいもの!
そして一番ガガガのレーベルカラーに沿っていたのが「キミとは致命的なズレがある」でした。
しかし表紙のインパクトもあれば、キャラの個性などが尖っているにもかかわらず、先が気になるような物語構成と同時に読みやすい文章であったのが意外といえば意外だった印象が強いです。私自身にはちょっと合わないジャンルだったので評価自体はそこまで高くないものの、物語を書くのは本当にうまかったです。見せ方も然り。
「赤鬼はもう泣かない」はどうにも印象に残りませんでした。おもしろくなる要素はたっぷりあるんだけど、後半からのどうにも中途半端な展開がそれらを生かしきれてない感じを受けてしまいました。でも逆に言えば、見せ方や展開がうまく変わったりすれば、また印象も変わるのではないかなと思います。主人公がんばって系の話だったし尚更。
以上のように今年はかなり強力な新人勢だと思いました。以降レーベルの武器になりそうな可能性もありそうで楽しみです。というかこうして書いてみるとやっぱりガガガ文庫は個性強いな! うらやましい!
というわけで以下は今週のおしながきです。
・九十九の空傘 [★]
・緋弾のアリアⅩ 禁忌の双極 [★]
・レンタルマギカ 争乱の魔法使いたち [★★]
・テルミー2 きみをおもうきもち [★★]
・別冊図書館戦争Ⅰ [★★]