喰 -kuu- [★★]
喰-kuu- (MF文庫 J う 4-1) 内田俊 まりお金田 メディアファクトリー 2010-11-20 売り上げランキング : 776 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
すぐれた戦士には例外なく、賞賛と敬意をこめて二つ名が送られる。ある者は《氷山に咲く花》と、またある者は《四つの胃袋を持つ男》と、そして彼女はかつて、こう呼ばれた戦士だった――《極大引力》。突然バイト先に現れた大食い少女・井ノ原みのりの勇姿に魅せられた主人公・ハチは「俺と付き合ってくれ」といきなりの告白に打って出る。そんなハチに対しみのりは「これを食べきることができたらお付き合いします」と、三十人前の超巨大ラーメン『食神』を指さすのだった――。大食いに身を捧げた者達の熱きドラマが今始まる!!
これはおもしろかった! というか熱い!!
大食いそして早食い、という特異なジャンルでありながら、ここまでの青春小説にまとめあげられたのはかなりすごいんじゃないかと個人的には思いました。イロモノでありながら極めて真っ当な青春モノであるけれど、それ以上も以下もいらない。ノリはスポ根で部活ものに近い感じがした。
突如バイト先に現れた大食い少女・みのりのその勇姿に感極まった主人公のハチ。そのまま勢いで愛の告白をするが、条件として約30人前の巨大ラーメンを食べきることを突きつけられる。それがみのりからの挑戦であり、大食い以外にはなにも残らない自分を肯定してくれる誠意を確かめるものでもあった。
大食い。それは傍から見れば、いいイメージよりは悪いイメージのほうが先行するでしょう。
卑しい。汚い。みっともない。たかが自慢のひとつにしかならない、愚かな行為。そう揶揄する人の方が多いかもしれません。
しかし彼らのように青春を本気でそれに費やす者たちもいるのです。
バカだと笑われても。冷めた目で呆れられても。彼らには退けない意地と誇りがあり、負けられない「食」の戦いがそこにある限りは。
いいところの娘でも、何をやってもダメで幼少から期待されることなく生きてきたみのり。
平凡なりに一生懸命打ち込んできた野球を、肘の故障がきっかけで惨めになったハチ。
かつては生きる意味を見失いつつあった似たもの同士の二人が導かれたのは、そんな大食いの道である。再び全力で打ち込めることができるものにめぐり合ったハチが再起するところは、すごい熱かったです。しかもそれが愛するための人ならばという意味もあるので尚更。
二人がこの大食いの舞台で再会したのも、そんな「食」からの引力によってなんじゃないだろうか。そう思うとこの先二人がカップルになるのはある種当然になるような。まあでもお似合いだしもう両想いなんだから早く付き合えばいいのに。
なんかやたらベン・トーと比べられているけど、読んでみるとベクトルが違うし比べるのはお門違いのような気がした。まあ通ずるものがあるのは認めるし、食い物の描写はあっちの方が格段にうまいのはわかるけど。
でもそれを差し引いても今後も楽しみなシリーズになりそうな気がします。みのりかわいいし。まだ新人作家さんですし、今後の活躍に期待がかかる。
とにかく、個人的にはかなり当たりなのでオススメです! ごちそうさまでした!
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