藍坂素敵な症候群3 [★]
藍坂素敵な症候群〈3〉 (電撃文庫) 水瀬葉月 東条さかな アスキー・メディアワークス 2010-11-10 売り上げランキング : 6002 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
風邪をひいた空のお見舞いイベントで起こったハプニングにより、空の奴隷にされてしまった浩介。肩をもまされたり、オセロをやったり、さらには荷物持ちとして休日に二人で買い物に行くことになるが、当然そんなことを看過できる素敵たちではないわけで!?
そんな折、医術部の面々は街で素敵のように白衣を着てメスを振りかざす女と遭遇する。彼女はかつてなく最悪な“耽溺症候群(フィリア・シンドローム)”に罹患していた。素敵は自らの《世界と乖離していく》疾患を押しての対決を覚悟するが!?
うおお、ここで完結なのか……なんか結構駆け足でしたね。
というか水瀬先生の作品群で初完結だったのがこのシリーズだったらしいじゃないですか。私的にはもうちょっと長く続けてもらっても構わなかったんだけど、締めは素晴らしく綺麗だったのでまあ不満という不満はなかったですね。
完結故、急なラブコメ寄せが多少強引だと感じたのは否めなかったのだけれど、素敵・空・伊万里が浩介に向ける好意自体にはしっかりと理由もついてるし納得もできる(伊万里ルートだけかなり薄味だけど……)。そう思うといつの間にか伏線張ってたのか、と目がさめるような感覚になるのが不思議だった。のもつかの間で、まさかここにきて空から熱烈なアタックきましたよ。初めはなんか成り行き的な誤解だったんだけど、そのまま突き進んでしまうとは。すげえ、あの藍坂素敵を徹底的に「恋敵」として見ている。さらには浩介を独占するような言動がちらほら、と。なんだこのかわいい生き物。
にもかかわらず主軸はやっぱりタイトル通り素敵に傾いてしまうんだよな。
まあ元々は耽溺症候群が浩介のまえに現れ、後に浩介と素敵が互いに認め合い、その関係性の揺らぎや移ろいを感じ取っていくような作品だったと思うしそれは仕方ないと思う。症状が悪化すると世界から乖離されていく藍坂素敵の耽溺症候群は、素敵と医術部の面々、そして浩介との間に緊張感や逼迫感を生み出して、素敵自身の葛藤だったり恋愛要素の促進剤みたいなのにも一役二役も買っていたし。
適当に部室のゲームをしたり、耽溺症候群の出張治療だったり、そんな今までの医術部の活動が積み重なって、いつからか浩介もどうしようもない恋の病――藍坂素敵な症候群にかかっていたんでしょうね。浩介も誰かれ構わず、かつナチュラルにその人の支えになったり、傷を共有してやったり、そんなありとあらゆる手段を用いて全力で助けちゃうもんだから、女の子たちは惚れていったのだろうか。まあ、やっていることはすごい立派だしな。それに、最後まで素敵を諦めなかったのは他でもない彼なんだから。
いろいろ急なところもありはしましたが、最後まで楽しむことができました。
二人には今後も素敵な世界があらんことを。
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