“菜々子さん”の戯曲 小悪魔と盤上の12人 [★★★]
“菜々子さん”の戯曲 小悪魔と盤上の12人 (角川スニーカー文庫) 高木 敦史 笹森 トモエ 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-10-30 売り上げランキング : 2661 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
高校に入学した宮本剛太(みやもとごうた)、とあるアクシデントによって“奈々子先輩”と出会う。美少女大好きな彼にとって、彼女はストライクゾーンのど真ん中、一目で心を奪われ、彼女が所属する映画研究会に入ることに。そんな中、校内で盗撮写真が出回っているという噂が流れ、映研が疑われてしまう。宮本はその疑いを晴らす為に調査を始めることになるが――小悪魔“奈々子さん”の言葉に突き動かされる宮本は、いかなる真相に辿り着くのか!?
菜 々 子 さ ん マ ジ 天 使 な 小 悪 魔
すげええええええええこれすげえええええええええええ。
もう菜々子さんのひとり勝ちだわこれは。小学生であれだったんだから、ちょっぴりアダルトになった菜々子さんが魅力的じゃないわけがない。
「わたしね、昔から、ひとが何を考えているのか考えるのが好きなのよ。で、もしこの人がわたしの思っているように動いて、わたしが狙った通りのことをしてくれたらすっごい愉快だなあって。そういうの――わくわくするの」淡々とこんなことを人前で言ってのける子なんですよこの子は。黒い、黒いよ!
というかアダルト菜々子さんマジエロい。女子高生にあるまじきアダルトさ。
なんていうの、なんかもう上のセリフからもわかるとおりセリフのひとつひとつから所作の端々まで、一挙手一投足に到るまですべてが艶めかしい。極端すぎる表現だとわれながら思うが、そうなんだから仕方がない。かわいい顔して中身はこんなんなんだからそういうギャップってのもあるよね。やっぱ美人の方が映えるよな、こういう役回りは。
強かでいて儚げ。狡猾でいて臆病。どんな面でも一本芯が通っている菜々子さん、あっぱれです。
ストーリーの方はあの1巻からどうするんだと思ったけど、こういう切り口できたかという感じ。
Nのこともだいぶ仄めかされつつ、今回の視点人物である宮本剛太のちょっと変わった映研の日常風景。文芸部への入部事件で菜々子さんと馴れ初めたことをきっかけに、徐々に動いていく歯車。後に上がる元アイドルの盗撮問題で、疑われる映研。これの解決に宮本は乗り出すわけですが、なんというかもうオチがすごかった。終盤までつきまとっていた違和感が一気にカッチリ解ける、魔法みたいな展開の運び方に脱帽。そして最後に全部持っていく菜々子さん。完璧や。完璧やでこれ。
地味に宮本も結構推察力というか、人を見る力みたいなのに長けていると思う。感情を読み取ったり、表情から思考を推測したり、立ち回りがいろいろ便利そうだった。それは菜々子さんに会うまえからあったから意外。
いやあ、もうすごくおもしろかったです。
キャラ的には菜々子さんが強すぎるけど、踊らされる人間がいないと話しは成り立たないわけで。もちろん個性に富むサブキャラたちの配置も申し分ないと思っていますよ。これは次回も期待だなあ。
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