凄まじくヘタレな主人公をめぐる三角関係を描いた、エグエグでドロドロなエロゲー原作のグロアニメ。
エロゲー原作のアニメを見たのは、これが初めて。
原作のゲームはプレイ時間が50時間くらいある、と聞いてやる気にならなかったが、アニメは全12話であること、オリジナルを超えるエグさであるということなので、見ることにした。
アニメ本編とともに、ゲームのハイライトシーンもニコニコ動画にあがっていたので、相互に補完しつつ鑑賞した。
事前にWikipediaでネタばれ情報を読んでいたが(でなきゃ見なかった)、それでも面白かった。
ここまでの経緯が素晴らしいスキャンダルにまみれている。
そして、そのスキャンダルがさらにこの作品の名声を高めている。
近年稀に見るロックな作品だと思う。
2005年に発表されるも、無名ブランドでまったくのノーマークだったにも関わらず、過剰なシナリオが評価され、その年のトップクラスの売上を記録する。
だが、リリースされた作品にはバグが続出したため、修正パッチが何度も連発される。
最終的に11回もパッチがリリースされ、最後のヴァージョンは200Mを超える容量になった。
今年になってアニメ化されるや、作品の影響を受けた模倣犯が現れ、最終回が放映中止に追い込まれる。
最終回放送に差し替えられた、何の変哲もない風景映像に写った船を、ファンサブで見ていた外人が絶妙なスレッドの流れのタイミングで「nice boat.」と評する。
以後、国境を越えて、オタクたちの間で「nice boat.」という言葉がネタとしてブレイクする。
放映中止にともない、ゲームの発売元がアニメ最終回の試写会を独自に開こうとするも、その入場資格に「未開封の『Shool Days』のソフト(約1万円)を持参する」という無茶な条件を提示する。(後に撤回)
CSにて放映されるや、ゲーム版を上回るグロくもカタルシスを感じさせる展開に「大絶賛」の嵐。
ボートも登場するサービスぶり。
事件がなくても地上波での放送は無理だったのでは、との声も。
作品の内容もさることながら、それにまつわるネタ、事件の豊富さに圧倒される。
一種の祭状態であるが、こういう無軌道ぶり、スキャンダラスさというのは70年代のロックで死に絶えたかと思っていたのだが、考えてみればエロゲー業界では多かれ少なかれ起こっているわけで、良くも悪くも商業的な環境の未成熟さが見せるトラブルを眺めるのは興味深かった。
内容自体は大枠としては昼メロの発展系でしかないわけだが、その描写の酷烈さによって、多くの人々にトラウマを与えるに十分な出来だった。
三角関係を描いた作品は恋愛ものでは定番であるが、ひどいご都合主義のハーレム作品もある一方で、シリアスな作品ではどうも男が頂点の三角関係ものはえぐい話が多い。
現実でもそうなのだろうが、やはり女性の人生における恋愛の比重の重さがうかがえる。
私は、これまで恋愛メインのエロゲーとしては『Kanon』とか『Air』とか、どちらかというと主人公がヒロインたちを救ってやる、という作品をプレイする機会が多かったのだが、オタク一般における評価の高さに比べ、個人的にはそれら恋愛を重視した作品にそれほどいれこまなかった。
今作のように対等な男女が近代的自我をむき出しにして恋愛をする作品にいたってはやったこともなかった。
だが、これには、ボリュームを圧縮したアニメ版とはいえ、苛烈な印象を刻まれてしまった。
近年、少女マンガで性描写の過剰な恋愛がクローズアップされているわけだが、オタク達のあいだでもおそらく『君が望む永遠』あたりから、過剰な恋愛描写のエロゲーがヒットするようになってきた。
それぞれ逆ベクトルから過剰な恋愛がマイノリティ達に支持されている、という現象が面白い。
おそらくクロスすることはないのだろうけど、男の恋愛妄想と女の恋愛妄想の行く末を想像してみるのも楽しい。
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