2006年09月 : 異常な日々の異常な雑記 QLOOKアクセス解析 アクセスランキング

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沼正三「家畜人ヤプー(1)」

[ 2006/09/24 ]
三島由紀夫や澁澤龍彦が絶賛し、石森章太郎、江川達也らによってマンガ化もされ、戦後最大の奇書とも言われるが、一般の知名度は低い作品。
作者の正体も不明であり、この作品には様々な逸話がついてまわる。
ハードSFにしてSM文学の金字塔。
マゾヒストの、マゾヒストによる、マゾヒストのための文学。

幻冬社から全五巻で出ているのだが、品切れになっている巻もあるので、とりあえず一巻だけ読んでみた。


一冊だけでもその凄まじさはこちらの想像を遥かに上回っていた。
カニバリズム、スカトロジー、人体改造、性倒錯などが、ねちっこく描写されている。

白人女性と日本人男性のカップルが、未来からやってきたUFOに乗った白人女性と知り合うことで、彼女の世界に誘われるのだが、その世界というのが、すごい。
戦争によって、日本人以外のアジア人が死に絶え、アングロ・サクソン人を貴族とし、他の白人は平民、黒人は奴隷、日本人は家畜とする未来社会。

未来社会において描写される日本人(ヤプー)は知能を持ったまま肉便器や靴の中敷や、代用子宮や、玩具になっている。
そして、そのような境遇を喜んで受け入れている、という話なのだが、その設定の肉付けが恐ろしく精緻で、説得力を持つために、確固たる自我を持たない人間ならば、洗脳されておかしくなりそうな内容である。

「指輪物語」はエルフ語、「星界の紋章」はアーヴ語という人工言語を設定に組み込んだ。
「ソラリスの陽のもとに」は「ソラリス学」という架空の学問体系を生み出した。
が、そういう作品内の設定、劇中トリビアの緻密さは、これまでに読んできたどんな本よりも濃密で、ノーマルな性的嗜好の私としては吐き気を覚えるほどだった。
「ドグラマグラ」が脳髄の地獄ならば、さしずめこれは「精神の地獄」と言ったところか。

人間の想像力の極北であるという意味で、優れた作品であるが、私としては、白人が家畜で日本人が貴族で、というような逆のシチュエーションで読みたかった。
そういう個人的趣向で評価が揺らぐようなぬるい作品でもないけれどもさ。


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[ 2006/09/24 ] SF・ライトノベル | TB(0) | CM(-)

デヴィッド・クローネンバーグ「裸のランチ」

[ 2006/09/23 ]

バロウズの原作も有名な作品だが、未読。
原作は現代文学的な混沌が際立つ「わけのわからない」傑作だそうだが、映画は麻薬中毒の作家が幻覚に苛まれながら作品を完成させようとする話にしている。

筋らしきものはあるが、奇想天外で、深読みしようというほどいれこまなかったので、ざっと流し見に近いものがあった。
特筆すべきはグロテスクな映像美であるが、そういうのがちとこたえて、思考力を奪われたのかもしれない。
「ロスト・チルドレン」とか「デリカ・テッセン」などのような印象を画面から感じ取れたが、話は全然違う。
麻薬中毒患者の見る世界を一般人の目にも視覚化してみせた、という点はよくできていて、クリーチャー的なものとの対峙が常態化している様はグロテスクで真に迫っているのではないかと思われる。
ドラッグカルチャー抜きには語れないので、個人的には微妙だったな。


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[ 2006/09/23 ] 映画 | TB(0) | CM(-)

東野圭吾「虹を操る少年」

[ 2006/09/21 ]

薄味のSFだった。
「光」に関して絶大な感性を持つ天才少年が社会現象を引き起こし、陰謀に巻き込まれる話だが、ハードSFではよくある、「次の人類」「次世代の知的生命体」というテーマの作品。
クラーク「幼年期の終わり」、小松左京「継ぐのは誰か?」など、同種の優れた作品には哲学的な領域にまで到達した傑作があるのだが、これはなあ。

この人の作品で一番ヒットしたのは「白夜行」で、それはSFではないし、読んでもいないからなんとも言えないが、「秘密」とか「変身」とかを見ると、どうも既存のSF作品を薄味にしただけにしか見えない。
ストーリーテリングがそれなりにうまく、わかりやすく書いているのが大衆の支持を受けている要因だろうけれど、物足りない。
もっとこちらの想像の上をいく作品を発表してほしいが、そうすると、今の成功はどぶに捨てなきゃならないんだろうなあ。


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[ 2006/09/21 ] 娯楽小説 | TB(0) | CM(-)
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