角川元会長の国賠訴訟は、歴史的な裁判になるか?
新年早々、裁判の傍聴をしてきました。
角川歴彦元KADOKAWA会長の国賠訴訟です。
ご存知のように、角川歴彦氏は、東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約をめぐって、大会組織委員会の元理事に合わせて6900万円余りの賄賂を渡したという贈賄罪で起訴され、無実を訴えています。
この裁判自体は、初公判が昨年の10月に始まったところで継続中なのですが、それとは別に、この角川元会長、病気療養中であったにもかかわらず、無実を訴えて自白しなかったために、226日にわたって拘置所で拘束されたということで、この「人質司法」の問題を訴えるために、国賠訴訟を提起。
その第一回弁論で、弁護団と角川氏自身の意見陳述が行われるというので、ひさびさに東京地裁に出向いたわけです。
まず、弁護団の村山浩昭弁護士、弘中惇一郎弁護士、伊藤真弁護士、海渡雄一弁護士が、それぞれの観点から、人質司法と刑事裁判の実体及びその問題、その違憲性、国際人権基準上の問題点を指摘されます。
それ自体、短いながら、それぞれ、すばらしい講義になっていましたので、興味のある方は、上のリンクからお読みください。
そして最後に、角川歴彦氏本人の意見陳述です。
私自身、文筆業もやっているとはいえ、別に、角川氏に個人的恩義があるわけではありません。(角川からは一冊も出してないし)。また、東京五輪汚職疑惑についても、そのこと自体の真相に興味があるわけではありません。
しかし、いかなる理由があるとしても、取調べで拷問は駄目だろう。
拷問といっても、中南米の軍事独裁政権でやってたみたいな、爪を剥がすとか指を切りおとすとか電気ショック通すとか輪姦するというようなものばかりではありません。(そういう被害者の方たちにも実際にいっぱい会ってきましたので、その痛ましさはたぶん日本で一番知っていますが)
病気の人間を、それと知りながら放置するとか、薬を取り上げて与えないというのは、これだって、立派な、いや、かなりのレベルの拷問です。
ていうか、それ、かなりアレな軍事独裁政権ならともかく、いちおう、民主主義とか法治国家を標榜している国で、絶対にあってはいかんでしょう。
といいながら、すでに大河原加工機冤罪事件では、体調不良を訴え、進行胃がんの診断が出ていた相嶋静夫氏の保釈が認められず、そもそもが公安がでっち上げた無理筋の事件であったにもかかわらず、2021年に相嶋氏はお亡くなりになっています。
(その前に、名古屋入管で、スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん死亡事件が起こり、法相や入管庁長官が遺族に謝罪するという、法務省の人権意識がいかにトンデモかということを象徴するような事件が起こっていますが、これは人質司法の問題とは同根とはいえ、少し違うので、ここでは触れません。)
まさに直前にそんな事例があったにもかかわらず、角川歴彦氏は容疑を否認したため、80歳近い高齢で心臓手術後であったにもかかわらず、拘束され、かかりつけ医への通院が許可されるどころか薬も十分に与えられず、あげくにコロナにも感染し、死を覚悟した、と。
実際、拘置所の医師に、「生きている間にここから出られません。死なないと出られないんです」と言われたそうで。
角川氏は死を覚悟したそうですが、大河原加工機冤罪事件で亡くなった相嶋氏が「このまま殺されちゃうな。ここで死にたくないな」と言っておられたことを知り、自分が生きて出られた以上は、公共訴訟として「人質司法そのものが憲法違反で、国際人権規約からみて人権を蔑ろにしていることを問う」ために、「残りの人生をかけて」、この訴訟を提起したのだそうです。
と意見陳述しながら、最後は涙声に。
証言のあまりの内容に、傍聴席からも、すすり泣きの声が。
てか、角川氏ぐらい資金力があって、強力な弁護団を雇える人ですら、そこまで追い詰められる恐ろしさってことですよ。しかも、保釈を得るためには、主張を一部断念せざるを得なかったというのもひどい話です。
一方で、ここまで言われた国側の弁護人は、女性検察官二人と男性検察官一人なのですが、ずっと露骨につまんなさそうな顔で聞いていた挙げ句に、角川氏が涙声になったあたりで、女性検察官が薄ら笑いさえ浮かべていたのは、ちょっとホラー。
そういえば、相嶋静夫氏の保釈を徹底的に阻止して死に追いやった挙げ句、事件が公訴取り消ししなきゃならないほどのでっち上げレベルの冤罪だったことが明らかになって、裁判所から起訴自体が違法とまで認定されてるのに、謝罪を拒否した塚部貴子検事も女性でしたし、自民党裏金議員を悉く不起訴にする一方で、袴田氏の再審無罪判決で、裁判所から証拠の捏造まで指摘されているのに、反省どころかぶーたれた畝本直美検事総長も女性というの、もっとホラー。
実際のところ、表にあまり出ていないだけで、このような事例はほかにいくらでもあるでしょう。実際に、2005年の枚方市談合事件で無罪判決を受けた小堀恒隆副市長(当時)は、前立腺肥大症を患っていたのに薬を取り上げられ、そのため尿が出なくなり死の淵を彷徨った挙げ句、拘置所のずさんなカテーテル治療で膀胱に損傷まで受けています。
この小堀さんはそれでも激痛と屈辱を堪えながらも潔白を訴えて、最終的に無罪判決を勝ち取るわけですが、たいていは、死への恐怖や苦痛に耐えかねて、無実であっても、検察官の思惑通り、強要された自白調書に署名することを受け入れて、保釈(ただし、有罪)を得るわけです。
それにしても、こういったことのどこがまともな法治国家なの? 明らかに異常でしょうが。
そんな取り調べで得た自白なんて、ゴミ以下でしょう。
それに尽きますよね。
で、人質司法の恐ろしさを身をもって体験し、保釈された角川氏は、「もう二度と同じような思いをする人が出ないように」この訴訟を提起したわけということです。
いやそれはそのとおりです。仮に角川氏が有罪であるとしても、こういう取り調べはあってはならないのです。そして、角川氏のように資金力や発信力のある人が、強力な弁護団を雇い、この国賠訴訟を大々的に提起したことは、日本の司法史上、画期的とも言えます。
はたして、日本の裁判所は、「人質司法」の存在を認めることができるのか?
それが人権侵害であること、違憲性があることを認めることができるのか?
それによっては、日本の司法の転換ポイントになるかもしれないこの裁判、ちょっと目が離せませんよ。
角川歴彦元KADOKAWA会長の国賠訴訟です。
ご存知のように、角川歴彦氏は、東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約をめぐって、大会組織委員会の元理事に合わせて6900万円余りの賄賂を渡したという贈賄罪で起訴され、無実を訴えています。
この裁判自体は、初公判が昨年の10月に始まったところで継続中なのですが、それとは別に、この角川元会長、病気療養中であったにもかかわらず、無実を訴えて自白しなかったために、226日にわたって拘置所で拘束されたということで、この「人質司法」の問題を訴えるために、国賠訴訟を提起。
その第一回弁論で、弁護団と角川氏自身の意見陳述が行われるというので、ひさびさに東京地裁に出向いたわけです。
まず、弁護団の村山浩昭弁護士、弘中惇一郎弁護士、伊藤真弁護士、海渡雄一弁護士が、それぞれの観点から、人質司法と刑事裁判の実体及びその問題、その違憲性、国際人権基準上の問題点を指摘されます。
それ自体、短いながら、それぞれ、すばらしい講義になっていましたので、興味のある方は、上のリンクからお読みください。
そして最後に、角川歴彦氏本人の意見陳述です。
私自身、文筆業もやっているとはいえ、別に、角川氏に個人的恩義があるわけではありません。(角川からは一冊も出してないし)。また、東京五輪汚職疑惑についても、そのこと自体の真相に興味があるわけではありません。
しかし、いかなる理由があるとしても、取調べで拷問は駄目だろう。
拷問といっても、中南米の軍事独裁政権でやってたみたいな、爪を剥がすとか指を切りおとすとか電気ショック通すとか輪姦するというようなものばかりではありません。(そういう被害者の方たちにも実際にいっぱい会ってきましたので、その痛ましさはたぶん日本で一番知っていますが)
病気の人間を、それと知りながら放置するとか、薬を取り上げて与えないというのは、これだって、立派な、いや、かなりのレベルの拷問です。
ていうか、それ、かなりアレな軍事独裁政権ならともかく、いちおう、民主主義とか法治国家を標榜している国で、絶対にあってはいかんでしょう。
といいながら、すでに大河原加工機冤罪事件では、体調不良を訴え、進行胃がんの診断が出ていた相嶋静夫氏の保釈が認められず、そもそもが公安がでっち上げた無理筋の事件であったにもかかわらず、2021年に相嶋氏はお亡くなりになっています。
(その前に、名古屋入管で、スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん死亡事件が起こり、法相や入管庁長官が遺族に謝罪するという、法務省の人権意識がいかにトンデモかということを象徴するような事件が起こっていますが、これは人質司法の問題とは同根とはいえ、少し違うので、ここでは触れません。)
まさに直前にそんな事例があったにもかかわらず、角川歴彦氏は容疑を否認したため、80歳近い高齢で心臓手術後であったにもかかわらず、拘束され、かかりつけ医への通院が許可されるどころか薬も十分に与えられず、あげくにコロナにも感染し、死を覚悟した、と。
実際、拘置所の医師に、「生きている間にここから出られません。死なないと出られないんです」と言われたそうで。
角川氏は死を覚悟したそうですが、大河原加工機冤罪事件で亡くなった相嶋氏が「このまま殺されちゃうな。ここで死にたくないな」と言っておられたことを知り、自分が生きて出られた以上は、公共訴訟として「人質司法そのものが憲法違反で、国際人権規約からみて人権を蔑ろにしていることを問う」ために、「残りの人生をかけて」、この訴訟を提起したのだそうです。
と意見陳述しながら、最後は涙声に。
証言のあまりの内容に、傍聴席からも、すすり泣きの声が。
てか、角川氏ぐらい資金力があって、強力な弁護団を雇える人ですら、そこまで追い詰められる恐ろしさってことですよ。しかも、保釈を得るためには、主張を一部断念せざるを得なかったというのもひどい話です。
一方で、ここまで言われた国側の弁護人は、女性検察官二人と男性検察官一人なのですが、ずっと露骨につまんなさそうな顔で聞いていた挙げ句に、角川氏が涙声になったあたりで、女性検察官が薄ら笑いさえ浮かべていたのは、ちょっとホラー。
そういえば、相嶋静夫氏の保釈を徹底的に阻止して死に追いやった挙げ句、事件が公訴取り消ししなきゃならないほどのでっち上げレベルの冤罪だったことが明らかになって、裁判所から起訴自体が違法とまで認定されてるのに、謝罪を拒否した塚部貴子検事も女性でしたし、自民党裏金議員を悉く不起訴にする一方で、袴田氏の再審無罪判決で、裁判所から証拠の捏造まで指摘されているのに、反省どころかぶーたれた畝本直美検事総長も女性というの、もっとホラー。
実際のところ、表にあまり出ていないだけで、このような事例はほかにいくらでもあるでしょう。実際に、2005年の枚方市談合事件で無罪判決を受けた小堀恒隆副市長(当時)は、前立腺肥大症を患っていたのに薬を取り上げられ、そのため尿が出なくなり死の淵を彷徨った挙げ句、拘置所のずさんなカテーテル治療で膀胱に損傷まで受けています。
この小堀さんはそれでも激痛と屈辱を堪えながらも潔白を訴えて、最終的に無罪判決を勝ち取るわけですが、たいていは、死への恐怖や苦痛に耐えかねて、無実であっても、検察官の思惑通り、強要された自白調書に署名することを受け入れて、保釈(ただし、有罪)を得るわけです。
それにしても、こういったことのどこがまともな法治国家なの? 明らかに異常でしょうが。
そんな取り調べで得た自白なんて、ゴミ以下でしょう。
それに尽きますよね。
で、人質司法の恐ろしさを身をもって体験し、保釈された角川氏は、「もう二度と同じような思いをする人が出ないように」この訴訟を提起したわけということです。
いやそれはそのとおりです。仮に角川氏が有罪であるとしても、こういう取り調べはあってはならないのです。そして、角川氏のように資金力や発信力のある人が、強力な弁護団を雇い、この国賠訴訟を大々的に提起したことは、日本の司法史上、画期的とも言えます。
はたして、日本の裁判所は、「人質司法」の存在を認めることができるのか?
それが人権侵害であること、違憲性があることを認めることができるのか?
それによっては、日本の司法の転換ポイントになるかもしれないこの裁判、ちょっと目が離せませんよ。