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桜もさることながら、いま、中南米がすごいことに

 日本では、「桜を見る会」問題が炎上しております。
 桜の花びらのように、次から次から、はらはらと火の粉が飛び散る姿が、もうなんともいえないですが、この件に関しては、郷原先生米山先生の記事が、問題点を実にわかりやすく解説しておられるので、私からはあえて、説明はいたしますまい。

 それにしても、あちら様の言い訳も日ごとに支離滅裂になってきていまして、もう、日本の劣化ぶりを象徴するような状況になってきています。いや、モリカケでの公文書廃棄あたりでもう十分劣化し、詰んでたんですけどね、今回の、言った端から嘘がばれる感て、東大まで出た官僚が、幼稚園児レベルの言い訳が通用すると思っているらしいところが、ほんとに凄いっす。金融緩和が異次元なら、倫理はブラックホールでございますわ。
 まあ、ニューオータニも、アレなことに巻き込まれてしまいましたね。
 5000円で飲み放題付きの立食パーティーができるんなら、うちの会でも来年の総会はあそこで決まりかなと思ったぐらいですし、申し込みが殺到しているんじゃないでしょうか。でもねえ、唐揚げで水増しなんて言われちゃって、あそこのダイニングバー、けっこう私は個人的に好きなんですけど、料理長さんが号泣しておられそうです。ていうか、安く見られそうで、もう接待に使えないじゃんねえ。(笑) それに、ああも現政権とつーかーだってバレちゃうと、会話とか録音されてそうで厭だし。

 でも、それはそれとして、いま、中南米が、ほんとうにすごいことになっているのです。

 ボリビアのクーデターについては先日書きましたが、その後、どさくさまぎれに自称暫定大統領に就任した ジャニーヌ・アニェスが、本来なら、選挙管理内閣として、早々にやり直し大統領選の期日発表をするはずが、(そして、本来なら、それは11月17日の日曜であったはずが)、それどころか、軍にエボ・モラレス支持派のデモの武力弾圧を指示し、キューバの医療団を逮捕拘束、ベネズエラ現政府と事実上断行して、米国の傀儡の自称大統領グァイド野党代表を承認、と、矢継ぎ早に、スーパー極右政策を実施。すでに、政府軍の弾圧で、死者も数十人出ていると。
 もともと、ヘイトツイートなどをしていた疑惑が持たれている人だけに、いまさら驚くべきことではないのですが、一方で、アメリカとヨーロッパの二つのシンクタンクが、ボリビアの選挙結果はそもそも不正でも何でもなかったとして、不正選挙の疑いを煽って反政府デモを引き起こした米州機構を非難する流れも出てきていて、ボリビアの混乱が続くのは必至となりました。

 で、その一方、チリも10月末から、反政府デモが大盛り上がりを見せています。
 こちらは、反・新自由主義デモです。これで、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議も、急遽、開催地変更になりました。

 発端は、地下鉄の値上げ発表で、これは日本でも多少報じられたので、たかが5円ぐらいの地下鉄値上げで、なんでそこまでの騒ぎになるの、なんか裏があるの?....と思われた方も多かったかと思います。
 
 そうなんです。これは発端に過ぎません。
 というか、積もり積もったものが、最後の一滴でコップから溢れた、というアレです。
 新自由主義で格差が進んだ社会で、庶民の人たちが「もうこれ以上は騙されないぞ」と一気に爆発した、という感じ。

 なので、最初、地下鉄駅や工場への放火など暴力的な面ばかりが日本でも報道されましたが、実際には、暴力的なのはごく一部で、しかも、ピニェラ大統領が、地下鉄値上げを凍結を発表した後も、むしろ平和的なデモや抗議行動が、各地に広がっています。

(不思議なことに、もともとかなり暴力色が強かったのに、それがネット動画などの拡散で隠しきれなくなるまでは、徹底して「平和的な抗議行動」と報道されまくっていた香港とは真逆のパターンです)

 まあ、暴力的である、ということを口実にして、チリの現政府は、早々に非常事態宣言と外出禁止令を出して、軍で武力鎮圧しようとしたので、日本の新聞はそれに早々と迎合したってコトでしょうね。ベネズエラなんて、あれだけ争乱があっても、非常事態宣言出したりしなかったんですけどねえ。

 それで、そのチリの抗議行動で、テーマ曲として復活したのが、かつて、軍事クーデターで虐殺された音楽家ビクトル・ハラの作った「平和に生きる権利」です。この歌は、ビクトルが1971年に発表した曲で、本来は、ベトナム戦争への米国の介入を非難した曲です。
 それが、ほぼ半世紀の時代を超えて、米国べったりの政策で民衆を抑圧しようとする政権への抗議の象徴として、蘇ったと。

 この10月25日の抗議行動のビデオを見ていただくだけで、その状況がおわかりになるだろうと思います。
 
 これが Youtube で大拡散されたことで、27日には、チリのジャンルを超えたアーティストたちによる2019年版改訂版歌詞のオフィシャルビデオも登場。

(あら、八木のお友達がいっぱい出ているわ)

 もちろん、チリの団結ソングの定番、「不屈の民」も健在です。それも、こんな感じで。
 
 ということで、日本の報道とは裏腹に、チリの抗議活動に参加しているのは、平和的な人たちが大半であることはご理解いただけたかと思います。こういうのを朝日新聞が報道しないのって、ほんと不思議でなりません。

 という間もなく、昨日はコロンビアで、反政府大デモと全国ストライキです。
 これも、チリと同じく、格差が激化したコロンビアでも、新自由主義を押し進める政府に対しての抗議行動。
 これに関して、チリでやったように「過激派の暴動」「暴力行為」を口実にして、政府側が、非常事態宣言で武力弾圧する事態を避けるために、先手を打って、ボゴダ芸術アカデミーの学生たちが、「私たちは芸術家、過激派じゃない」というテーマ曲を作って、Youtube で大アピール。
 なるほど、軍の介入を防ぐ、新手の手段ですね。それも、芸大の学生と先生たちが総力を結集しただけあって、急遽作ったわりに、ものすごいクオリティの高さなので、必見です。

 などというのもつかの間、前のエントリでも触れたように、左派のラファエル・コレアを追い出して極右化したエクアドルでも、先住民グループを中心に、政府への抗議行動が顕在化しており、一時、首都機能を移転するほどの騒ぎになっていたのですが、その中で、エクアドルの「新しい歌」の代表的グループ、プエブロ・ヌエボの歌手のフアン・パレーデスが、逮捕されるという事態が起こり、全ラテンアメリカの音楽家たちに、事態の拡散と抗議行動を呼びかける触書がまわってきております。
 いまごろ、ラテンアメリカ各地でエクアドル大使館に対しての抗議行動が準備されています。

 ということで、反新自由主義の高まり VS 極右回帰 が熾烈なことになっているラテンアメリカでは、音楽家が表舞台で、正面から、もちろん覆面などしないで、政治にコミットしている、ということをご理解いただけましたでしょうか。

Live Information
12月5日(木) 六本木 Nochero

(東京都港区六本木6-7-9 川本ビルB1) お問い合わせ/03-3401-6801
1st 19:30 2nd 21:00 (入れ替えなし) Charge:2,600円(おつまみ一品付)
アクセス/日比谷線・大江戸線六本木駅より徒歩2分
 2019年も残りわずか。本年最後のNochero定例ライブです。どうぞご期待!
 ギター福島久雄さん。
 ネット予約はこちら http://www.nobuyoyagi.com/event.html



プロフィール

PANDORA

Author:PANDORA
ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
公式サイト http://nobuyoyagi.com

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3.11を心に刻んで (岩波ブックレット)
人は、どのような局面において言葉をつむぐか。30人の執筆者が震災を語ったエッセイ集。澤地久枝、斎藤 環、池澤夏樹、渡辺えり、やなせたかしらと並んで八木も寄稿。
刑事司法への問い (シリーズ 刑事司法を考える 第0巻) (岩波書店)
日本の刑事司法の何が問題か、どのような改革が求められているか。刑事法研究者、実務法曹の他、八木も執筆しております。
禁じられた歌ービクトル・ハラはなぜ死んだか(Kindle版)
長らく絶版状態だった書籍をリクエストにより電子書籍で再版いたしました。八木啓代の原点です。
検察崩壊 失われた正義(毎日新聞社)
5刷。この一冊で特捜検察の現実がわかります。
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なぜラテン人は自殺しないの?に応えて3刷!好評発売中!
キューバ音楽(青土社)
ラテン音楽ファン必読!キューバ音楽のすべてが理論も歴史もわかります。浜田滋郎氏激賞
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