5月に入ってからすっかりブログをご無沙汰してしまいました。ひとつの原因は、私の勤める環境金融の会社が、ずっと準備を進めてきたLED事業の展開の足元が固まってきて、新しい人材を採用したり、広いオフィスに引っ越したり、、ということでてんてこ舞いの忙しさが続いていることがあります。
もうひとつには、ミャンマーのサイクロンと四川省の地震、という二つの巨大災害が続いて起こったことで、「わたしがものを書くということは、数十万人の命があっという間に失われる災害の前に、なんと無力なことか」と気力が萎えてしまったせいでもあります。
今回アメリカでの報道でも、「二つの巨大災害が相次いで起こったことで、通常なら支援に積極的な市民団体の間で『援助疲れ』がおきている」などという報道もありました。ちょっとうなずけてしまったりして、自分でも情けない思いではありました。
一ヶ月もたってしまいましたが、自分自身気力が萎えたままなのも癪なので、立ち向かうためにもきちんと考えてみようと思います。
1)軍事政権は天然災害に弱い ミャンマーのような軍事政権は、国家予算の大きな部分を軍事予算にまわしています。当然インフラの整備や、災害が起こった時の緊急対策にまわす予算は少なくなり、起きてしまった災害に対処する能力が弱くなります。また、今回海外からの援助隊の入国を拒んだことで、被害の拡大を防ぐ努力を放棄しているとみなされても仕方がない状態です。
カトリーナの以前に、ルイジアナの工兵隊が堤防補修の予算を求めた際に、イラク戦争に戦費を回さざるをえないブッシュ政権がこれを拒否したことが、堤防の決壊につながったのと同根です。
2)官僚の腐敗が人災を招く 四川の小中学校が倒壊したことの背景に「おから工事」、要するに役人のピンハネで粗雑な工事がされていたことが報道されています。もちろん賄賂を要求する役人がいるのはどこの国も変わりがないのでしょうが、それが手抜き工事につながっているというのが悲劇です。
3)環境破壊は自然災害を拡大する ASEANの事務局長は「海と住宅地の間の緩衝地帯として機能していたマングローブ林の破壊が、ミャンマーを直撃したサイクロンで多くの死者が出た原因の一つである」と述べたそうです。(関連記事)
また、ミャンマーにおける大規模な森林の伐採が、ハリケーンの際の下流のイラワジデルタへの土石流の被害を拡大したのでは、という声もあります。(関連記事)
また、四川省に多数ある水力発電のためのダムに貯水された水の重みが地震を誘発したのでは、という説もあるようです。(関連記事)
4)弱者ほど災害&二次災害に追い詰められる 昨日はテレビでミャンマーのテント生活者の様子を見ました。その中では親を失ったり、親がケガで動けず、幼い子供たちがお茶を作ってはペットボトルに入れて売り歩いたり、スパイスを売り歩いて生き延びようとする様子が報道されていました。政府からはコメの支援しかないのだそうです。
最近アメリカでは、カトリーナ当時お母さんのおなかのなかにいた赤ちゃんが、母親が政府の提供するトレーラー生活のもと生まれ、生まれつき喘息をわずらっているが、トレーラーから発生したホルムアルデヒドのせいだとは因果関係が認められずに政府と係争中だ、、という報道がありました。
健康で金融資産でもあれば、被害から立ち直ることも比較的容易でしょうが、財産、働き手を失った家族、子供、病人にとって復興への道のりはいっそうつらいものになります。
いったん起きてしまった災害をなかったことにすることはできませんが、それでも、おおざっぱにまとめた4つの事柄を考えると、 1)民主的で軍事より民生重視の政府 2)役人&労働者のモラル 3)環境保全の重要性 4)弱者に公正な社会 こういった要素が、起こりうる災害による被害を最小限に食い止める助けにはなると考えることができます。わたしがふだんから望んでいる政府や社会のありかたそのものが、実は自然災害に対しても立ち直る力のある社会でもあるということだったみたいです。
アメリカでは今年5月末までに竜巻による死者が100人を超えています。過去3年間の平均の年間の死者が62人ですから、今年は明らかに異常です。(関連記事)
温暖化にともなって、台風、ハリケーン、サイクロンの規模の巨大化が予測(というよりすでに観測)されていますから、今後の気候変動をどう防ぐかだけではなく、自然災害に対して立ち直る力のある社会をどう築くかというのは、世界的な課題であると思います。
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