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2011/11/25

news:子どもたちに冗談は通じなかったが・・・

大人が冗談のつもりで言ったことを、子どもが真に受けてしまい、実行に及んで世間を騒がせたという出来事は、古今東西たくさんあるのだろうが、そのたぐいじゃないのかと思わせるエピソードが次のニュースだ。

毎日jp:救命胴衣:全日空機から2着持ち帰る 大分の中学生2人

塾の先生が教えている生徒に、次のようなことを言ったらしい。

「元航空会社員の作家の『持ち帰っても補充され、追跡調査されない』とのエッセーを話した・・・」
「休憩中の雑談で『(ネット販売すれば)5000~1万円程度になるのでは』と言った・・・」

これを間に受けた中坊二人が、修学旅行で乗った全日空機の救命胴衣を盗み出し、持ち帰ったというのだ。
発覚したのはオークションに出したからというのではなく、友達が先生に通報したというのだから、可愛い事件ではある。

ちなみに全日空は大人の対応で、事件とはしなかったが、マスコミには知られてしまったという次第。

中学生たちは、学校の事情聴取に「『ネットで販売すれば金になる。持って帰れ』と塾講師に言われた」と説明したらしいが、塾講師は上記の通り、話をしただけで指示はしていないと言っている。

この説明を信じるとすれば、子どもにうかつなことを言って間に受けられてしまったというところだ。

しかし、乗り物に乗って備品を持ち帰るという行動は、乗り物に限らずホテルとかでも同様だが、結構幅広く行われ、中には罪の意識どころか、そもそも悪いことだとは思っていない人も結構いるようだ。
佐々木倫子と綾辻行人の次の作品にも、そんなマニアの姿が描かれている。

また、ホテルにも、備品を持ち帰らないでくださいとか、ガウンをご希望の方はフロントで販売しておりますとか、書かれているところを見ると、相当数の宿泊客が「失敬」してきたのだろうと思う。

大人になってもこうした行動に出てしまうのは、もちろん困りものだが、子どものすることであれば、ある程度までは必然といっても良いかもしれない。

で、最近は罪の意識のない精神的子どもたちが仲間内で自慢するのと同じように、ネットで自慢して炎上したりもする。精神的子どもたちと書いたのは、大学生でも社会人でも同様の仕儀に至っており、「あれはウソです、フィクションです」といった言い訳で逃げきろうとしたり、とりあえず書き込みを削除して、場合によってはIDも削除したりして逃げきろうとしたりするが、他方で他人の不幸を蜜の味と考える連中には、絶好の大義名分となるだけに、プライバシー暴きや実社会での責任追及(といってもせいぜい学校や勤務先に電話するくらいなのだが)に勤しんだりする。

この水に落ちた犬は皆で叩け式の行動は、考えてみるとマスコミが集団的に疑惑を追いかけた姿の矮小化された姿であり、近親憎悪的な感情を刺激されるのか、マスコミが好んでネットの闇として取り上げることにもつながってくる。

子どもというのは、成長過程で良いこと悪いことを経験し、その都度サンクション(褒められたり怒られたり)を受けて社会性を身に付けていくものだ。もちろん社会性を身に付け、善悪の判断をすることができるように成長するかどうかは定かでなく、残念ながら善悪の判断ができないまま大人になって犯罪者となることもあるのだが、未成年、それも義務教育期の子ども時代の「悪いこと」は、社会性を身に付ける教材みたいなものでもある。
その逸脱行動に対するお灸の据え方は、当の子どもが社会性を身に付けて善悪の判断を付けられるようにすることが目的なのであって、懲らしめることが目的なのではない。

もちろん、結果が重大であれば、被害者のことも考えなければならない。当の子どもにとっても、不幸なことだがその罪を一生背負っていかなければならないという立場になってしまうことはある。万引きのような経済犯罪だって、規模によっては子どものすることで許される限度を越えることもある。きっちり責任をとれということもあろう。
すべてが教材で成長の糧だというつもりはない。

その線引きはどこら辺が適当かと言われると、事件によっても違うと言わざるを得ない。被害者の被害感情も人それぞれだし、加害者たる子どもの意識も様々で、それはもう個別のケースに日々向き合う専門実務家の方々が悩まれる場面であろうから、軽々な線引きはできない。

それにしても、備品を持ち帰ったというような事件は、持ち帰られた方には申し訳ないが、子どものすることであれば成長に必要な教材として、適切なお灸を据える場として有効活用するのがよい。

他方で不用意なことを言った塾の先生も、きっと面白い先生なのかもしれないが、こういったリスクがあるということを覚悟すべきということであろう。

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