西洋はヴチッチの譲歩に満足せず、セルビアの完全支配を求めている(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。セルビアのヴチッチ大統領はこれまで西洋に対して数々の譲歩を行って来たが、2023/12/24にカラー革命未遂を起こされたことは、西洋がセルビアを完全支配するまで決して満足しないことを証明している。
The West Isn’t Content With Vucic’s Many Concessions And Wants Full Control Over Serbia
セルビアでカラー革命の試み
2023/12/24、セルビアのヴチッチ大統領は、西洋が支援する野党による失敗に終わったカラー革命の試みを非難した。最近の国政選挙の(裏付けられていない)不正疑惑を口実として、彼等が政府庁舎を占拠しようとしたのだ。
Serbian President Vucic slams 'color revolution' attempt, vows to preserve independence, sovereignty
彼はまたこの陰謀について事前に警告してくれた匿名の外国諜報組織に感謝したが、これはその後ブルナビッチ首相の発表によって、ロシアの治安当局であることが判明した。
ヴチッチは譲歩に譲歩を重ねて来た
ヴチッチ大統領はこれまで西洋に対して多くの譲歩を行って来た為、多くの人々が今回の展開に驚いた。
これまでヴチッチ政権はNATO(1999年に捏造した人道問題を口実に78日間に亘ってセルビアを不法に爆撃したあのNATO)と「個別パートナーシップ行動計画」を締結した。
またセルビアは正式なEU加盟も希望しており、更にブリュッセルの要請によって(NATOがセルビアから勝手に奪い取って独立宣言させた)コソボとメトヒヤの「独立」も、非公式に承認した。
更にセルビアは、新たなユーロ・大西洋パートナーとの連帯の意の表明として、国連でウクライナを巡って、歴史的な同盟国であるロシアに反対票を投じることまでした。
セルビアが西洋からの圧力を受けても動かなかった問題は、対ロシア制裁と、ロシアとの軍事技術協力の中断だけだ。但し後者に関しては今はそれ程断言は出来ない。
04/12の報道で、米国防総省から漏洩した機密文書に拠ると、セルビアはウクライナに武器を送ることに同意したことになっている。この時ヴチッチはこの疑惑を否定したが、06/06の報道では言を翻し、セルビアがウクライナに弾薬を輸送する仲介業者に弾薬を販売することに反対していない、と発言した(つまりセルビアが間接的にウクライナに弾薬を送っている可能性を否定しなかった)。
どう見ても、ヴチッチ率いるセルビアは、多くのグローバル・サウス諸国(最近関係を拡大したばかりの国も含む)に比べて、ロシアにとっての政治・軍事パートナーとしては信頼出来ないことが証明されている。
従って西洋はヴチッチがこれまでに行った多くの譲歩に満足しているだろうと考える人も居るだろう。だが実際には今回のカラー革命未遂で証明された様に、西洋はこれでもまだ飽き足らずにセルビアを完全に支配したいと思っている。
西洋はやり過ぎた
だがこの覇権主義的な発想は、客観的な利益の観点から言えば逆効果だ。何故ならこれは、セルビアの様に幾ら譲歩したところで、西洋の完全支配欲を満足させることは出来ないのだと云うシグナルを、他の国々に送ることになるからだ。
従ってこの教訓を学んだ他の国々は、今後は西洋の圧力に従いたがらなくなるかも知れない。セルビアの様に、自国の利益を損なう様な不快な政策を幾ら実施してみたところで、結局カラー革命の脅威から解放されることは無いからだ。
今後のことを考えるならば、ヴチッチは西洋とのバランスを考え直すのが賢明だろう。
主権の行使と云う点に関して、セルビアが非常に困難な立場に置かれていることは確かだ。だがそうだとしても、ヴチッチは少なくともカラー革命の試みを支持する西洋諸国に対して正式な外交照会を行うことが出来た筈だ。また部分的にせよNATOとの協力を停止すれば、強い不満のメッセージを送ることが出来る。
ヴチッチは国内で板挟みに
ヴチッチが今抱えている問題は(完全に自業自得なのだが)、セルビアのリベラル・グローバリスト達は彼が西洋に対して最大限譲歩することを望む一方で、保守ナショナリスト達は彼が既にやってしまった譲歩の多さに愕然としている、と云うことだ。
振り返って05/28の反政府デモは完全にカラー革命の試みだった訳ではなく、カラー革命と愛国者抗議の混在だったことをはっきりさせておく必要が有る。彼は西洋とロシアとの間で綱渡りをすることによって。図らずも両方のグループを同時に怒らせてしまい、結果的に支持を減らすことになってしまった。
だが12/24に起こったことは教科書通りのカラー革命の試みであって、良心を持った真の愛国者であれば支持することの出来ないものだ(但し中にはシャーデンフロイデを覚えた人も居るだろう)。ヴチッチのコウモリ政策は結局、リベラル・グローバリスト達を敵に回すことになってしまった。
彼は彼等を満足させる為に最善の努力を続けて来た訳だが、彼等はここまでやっても満足しなかった。彼が教訓を学んで最終的に彼等に見切りを付けるとは考え難いが、最善のシナリオではそうした方が良いだろう。
The West Isn’t Content With Vucic’s Many Concessions And Wants Full Control Over Serbia
セルビアでカラー革命の試み
2023/12/24、セルビアのヴチッチ大統領は、西洋が支援する野党による失敗に終わったカラー革命の試みを非難した。最近の国政選挙の(裏付けられていない)不正疑惑を口実として、彼等が政府庁舎を占拠しようとしたのだ。
Serbian President Vucic slams 'color revolution' attempt, vows to preserve independence, sovereignty
彼はまたこの陰謀について事前に警告してくれた匿名の外国諜報組織に感謝したが、これはその後ブルナビッチ首相の発表によって、ロシアの治安当局であることが判明した。
ヴチッチは譲歩に譲歩を重ねて来た
ヴチッチ大統領はこれまで西洋に対して多くの譲歩を行って来た為、多くの人々が今回の展開に驚いた。
これまでヴチッチ政権はNATO(1999年に捏造した人道問題を口実に78日間に亘ってセルビアを不法に爆撃したあのNATO)と「個別パートナーシップ行動計画」を締結した。
またセルビアは正式なEU加盟も希望しており、更にブリュッセルの要請によって(NATOがセルビアから勝手に奪い取って独立宣言させた)コソボとメトヒヤの「独立」も、非公式に承認した。
更にセルビアは、新たなユーロ・大西洋パートナーとの連帯の意の表明として、国連でウクライナを巡って、歴史的な同盟国であるロシアに反対票を投じることまでした。
セルビアが西洋からの圧力を受けても動かなかった問題は、対ロシア制裁と、ロシアとの軍事技術協力の中断だけだ。但し後者に関しては今はそれ程断言は出来ない。
04/12の報道で、米国防総省から漏洩した機密文書に拠ると、セルビアはウクライナに武器を送ることに同意したことになっている。この時ヴチッチはこの疑惑を否定したが、06/06の報道では言を翻し、セルビアがウクライナに弾薬を輸送する仲介業者に弾薬を販売することに反対していない、と発言した(つまりセルビアが間接的にウクライナに弾薬を送っている可能性を否定しなかった)。
どう見ても、ヴチッチ率いるセルビアは、多くのグローバル・サウス諸国(最近関係を拡大したばかりの国も含む)に比べて、ロシアにとっての政治・軍事パートナーとしては信頼出来ないことが証明されている。
従って西洋はヴチッチがこれまでに行った多くの譲歩に満足しているだろうと考える人も居るだろう。だが実際には今回のカラー革命未遂で証明された様に、西洋はこれでもまだ飽き足らずにセルビアを完全に支配したいと思っている。
西洋はやり過ぎた
だがこの覇権主義的な発想は、客観的な利益の観点から言えば逆効果だ。何故ならこれは、セルビアの様に幾ら譲歩したところで、西洋の完全支配欲を満足させることは出来ないのだと云うシグナルを、他の国々に送ることになるからだ。
従ってこの教訓を学んだ他の国々は、今後は西洋の圧力に従いたがらなくなるかも知れない。セルビアの様に、自国の利益を損なう様な不快な政策を幾ら実施してみたところで、結局カラー革命の脅威から解放されることは無いからだ。
今後のことを考えるならば、ヴチッチは西洋とのバランスを考え直すのが賢明だろう。
主権の行使と云う点に関して、セルビアが非常に困難な立場に置かれていることは確かだ。だがそうだとしても、ヴチッチは少なくともカラー革命の試みを支持する西洋諸国に対して正式な外交照会を行うことが出来た筈だ。また部分的にせよNATOとの協力を停止すれば、強い不満のメッセージを送ることが出来る。
ヴチッチは国内で板挟みに
ヴチッチが今抱えている問題は(完全に自業自得なのだが)、セルビアのリベラル・グローバリスト達は彼が西洋に対して最大限譲歩することを望む一方で、保守ナショナリスト達は彼が既にやってしまった譲歩の多さに愕然としている、と云うことだ。
振り返って05/28の反政府デモは完全にカラー革命の試みだった訳ではなく、カラー革命と愛国者抗議の混在だったことをはっきりさせておく必要が有る。彼は西洋とロシアとの間で綱渡りをすることによって。図らずも両方のグループを同時に怒らせてしまい、結果的に支持を減らすことになってしまった。
だが12/24に起こったことは教科書通りのカラー革命の試みであって、良心を持った真の愛国者であれば支持することの出来ないものだ(但し中にはシャーデンフロイデを覚えた人も居るだろう)。ヴチッチのコウモリ政策は結局、リベラル・グローバリスト達を敵に回すことになってしまった。
彼は彼等を満足させる為に最善の努力を続けて来た訳だが、彼等はここまでやっても満足しなかった。彼が教訓を学んで最終的に彼等に見切りを付けるとは考え難いが、最善のシナリオではそうした方が良いだろう。
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