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ハーグ法廷の最後の恥ずべき歓声(抄訳)

2024/12/18のスティーブン・カルガノヴィッチ氏の記事の抄訳。多少補足した。1995年のスレブレニツァのジェノサイド」の責任者とされているラディスラフ・クルスティッチ将軍が、自らの罪を認め、ジェノサイドが実際に起こったことを公に認めた。これは早期釈放を巡ってハーグ法廷に強要された自白だった。

 旧ユーゴスラヴィアで起きた戦争犯罪を裁く法廷なるものが、司法の精神そのものを愚弄する様な米国による茶番であり見世物裁判であることはこのブログでも既に紹介した。だがそんな結論有りきの裁判でさえ、当時「共産主義政権最後の独裁者」「現代のヒトラー」などと喧伝されたスロボダン・ミロシェヴィッチ大統領が有罪であることを証明する証拠を見付けることが出来なかった。つまり1990年代に西洋メディアの紙面を騒がせ続けた「ユーゴスラヴィア民族紛争」なるものは、事実に基付かない全くの嘘だった。

 NATOによるユーゴスラヴィア解体計画を進める上で大いに役立ったのが所謂「スレブレニツァの虐殺」の物語であり、加害者と被害者の構図が180度転倒させられたこの大嘘によって、西洋の多くの人々が、その後のNATOによる無差別爆撃を「人道の為」に支持するように誘導された。何度も指摘している様に、過去の戦争プロパガンダの嘘を知っておけば、次の新しい嘘を見抜くことがそれだけ容易になる。
The Hague Tribunal’s Last, Shameful Hurrah




 2024/11/13、ボスニアのセルビア人元軍司令官、ラディスラフ・クルスティッチ将軍が、再度早期釈放を求め、1995年にボスニア・セルビア軍がスレブレニツァのボシュニャク人に対して行ったジェノサイドに関して自分が「幇助」したことを認める書簡を提出したことを、ハーグの国際残余刑事法廷メカニズムが発表したとの報道が西洋に出回った。

 彼は既に言い渡された35年の刑期の2/3以上を服役している。

 彼は1990年代のボスニア紛争中、スレブレニツァを含む地域で活動するボスニアのセルビア人軍の主要部隊、ドリナ軍団の参謀長兼指揮官だった。

 1998年、彼はスレブレニツァ関連の(ジェノサイドを含む)様々な罪状で起訴され、2001年に有罪判決を受け、懲役46年の刑を宣告された。

 2004年の控訴でジェノサイドの判決は「幇助」に変更され、刑期も35年に短縮された。

 興味深いことに、クルスティッチが「幇助・教唆」したとされるジェノサイドの実行犯達の身元は、彼の裁判でもその後のスレブレニツァ裁判でも、一度も明らかにされていない。

 クルスティッチの訴訟とその有罪判決は、その後に続いたスレブレニツァ関連の裁判のモデルとなった。

 裁判中、そして裁判が終わってからも、クルスティッチは無実を主張し続けた。彼の法廷弁護士達は、起訴状の事実的根拠と、クルスティッチ将軍が起訴されたジェノサイドの法的概念の両方に、かなり効果的に異議を唱えた。だが予想された通り、彼等の主張は法廷にも控訴審にも受け入れられなかった。

 ハーグ法廷とその後継である残余メカニズムの慣行では、囚人が刑期の少なくとも2/3を服役した後でないと、早期釈放の請願を受理しないことになっている。裁判所が請願に応じるかどうかは裁量に委ねられているが、非公式には、早期釈放請願の大部分は、申請者に有利な判決が下されるのが常だった。

 2022年、英国とポーランドで刑期の2/3強を服役した後、クルスティッチは当然認められるべき権利としてこの制度を利用することを決意し、その旨の請願書を提出した。ここから話は興味深いものになる。

 数ヵ月に亘る調査と協議の後、2022/11/15、裁判長のガッティ・サンタナ判事は、クルスティッチの請願をきっぱりと却下する判決を下した。ハーグの他の略全ての役人達と同様、彼女の念頭に有ったのは自分のキャリア、年金、福利厚生だったかも知れない(別件で旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷の判決に反対したプリスカ・マティンバ・ニャンベ判事は稀有な例外だ)。

 これが結論有りきの判決だったことは明らかだった。判事の長々としたカフカ的なレトリックを要約すると、早期釈放が認められない理由は、つまりクリスティッチ将軍に対する告発の凶悪性を考慮すると、彼は十分な程度に、また裁判長が納得する程、更生を実証し、自分に帰せられている犯罪に対する反省を表明出来なかった、と云うことだ。では具体的にどの様な条件を満たせば十分に更生・反省したと見做されるのか、彼女は定義を与えなかった。

 この漠然と定義された「反省」に基付く判決は、申請者が長年に亘り一貫して無実を訴えていると云う事実を無視している。従って彼の早期釈放が認められるには、彼が脅迫に屈して従来の立場を変更し、自らの罪を認めなければならない、と云うことが暗黙の条件として求められることになる。これは請願が認められた他の囚人達と比べて不平等な扱いだ。そして彼はそうすることによって事実上、法廷の判決が事実的・法的に正当であると認めることになる。

 これによって「強要された自白」が得られれば、この不正なハーグ法廷の後援者達にとっては得難いプロパガンダ上の勝利となる。

 2022年の最初の請願時には、請願を成功させる為には何が必要なのか、裁判所から全く指示を受けなかった為、2024年の2度目の請願では、クルスティッチ将軍はどうやら必死になる余り、自らヨーゼフ・Kを演じることに決めた様だ。

 彼のこの戦略によって法廷は開き直ることだろう。そして彼は自分自身と、既に十分中傷された祖国に対して、多大な道徳的ダメージを与えるかも知れない。悔い改めたクルスティッチは書簡の中で、スレブレニツァで実際にジェノサイドが行われたと認めている。彼は償いの為に犠牲者達の墓に頭を下げたいとまで書いている。

 クルスティッチの弁護士は判事に当てた書類の中で、ICTY(旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷)の判決に異議が唱えられ否定されている時にに、また国連総会が「スレブレニツァのジェノサイド」に関する異なる記述を認めないと云う決議を可決した時に、「ジェノサイドの幇助と教唆」で最初に有罪判決を受けたクルティッチがこうした声明を出したことの重要性を強調して御機嫌を取っている。

 まるで全てが冗談の様だ。だがこれは冗談ではない。

 これは法の原則どころか正義さえも軽んじ、強要された自白を自分達に都合良く利用する、似非司法機関のやり口だ。

 この邪悪なシステムの機能について知りたければ、ミシェル・フーコーの古典的研究『監獄の誕生』でも読んでみれば良い。

 「………自白は、正しい方法で得られた限り、更なる証拠を提供すると云う検察の義務を略免除した。………『犯罪者が正当に処罰されるだけでは十分ではない。彼等は可能であれば自らを裁き、有罪としなければならない。』………それは或る程度まで、他の全ての証拠を超越しており、真実の計算の一要素であり、被告人が告発を受け入れ、その真実を認識する行為でもあった。それは、被告人抜きで行われた調査を自発的な肯定に変えた。自白を通じて、被告人自身が刑罰上の真実を生み出す儀式に参加した。」

 クルスティッチの真意はともかく、彼の釈放の請願が認められる可能性は極めて低い。この茶番が法廷にプロパガンダ上の大勝利を収めさせたことは事実だ。従って絞り出せる利益を最大限既に引き出してしまった以上、何故今更彼を釈放する必要が有るのか。法廷の手から逃れた後、彼がもう一度自分の話を引っ繰り返したらどうするのか。
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川流桃桜

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