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米国は囚人のメンタルヘルスを破壊する独房監禁に於て世界をリードしている(抄訳)

2023/09/26のジョン・キリアコウ氏の記事の抄訳。米国の非人道的な独房監禁の慣行についての警告。

 人間は良くも悪くも社会的動物なので、他の人間との関わりを絶たれれば、精神衛生上悪い影響を被る。従って独房による物理的隔離は拷問の手段としても用いられる。例えば、ROK(大韓民国)の人権専門家に拠ると、南に来たDPRK(朝鮮民主主義人民共和国)出身者(どんな事情で南に来た人であろうと、一律に「脱北者」と呼ばれる)は先ず、亡命者抑留センター(山中の鉄条網で囲まれた隔離施設)の、手を伸ばせば反対側の壁に届いてしまう様な極めて狭い独房に、長時間(1週間〜半年)拘束される。彼等はその間に繰り返し「尋問」を受けるのだが、3ヵ月を過ぎる頃には大抵の亡命者達が「自分は北のスパイだ」と「自白」する様になる。

 また2020年以降世界各地で実施される様になった、「COVID-19パンデミック対策」としてのロックダウンやソーシャル・ディスタンスや各種隔離政策は、独房監禁の希釈化ヴァージョンと解釈することも出来るだろう。科学的には「感染拡大」には全く効果が無いどころか多大な害を齎すことが繰り返し証明されているにも関わらず、これらの似非科学政策が実施された理由のひとつは、ここ40年ばかり、新自由主義勢力が何をやって来たかを振り返れば、自ずと見当が付くだろう。

 マーガレット・サッチャーの言い草を借りれば「社会など存在しない」と宣言する彼等は、労働組合や左派政党等、民衆がその最大の力である数を頼みに纏まった政治的勢力として自らの主張を訴える為の手段を解体し、或いは乗っ取って無力化して来た(例えば国鉄民営化は、当時の最大野党社会党の最大の支持母体である国鉄労組を解体するのが目的だった)。新自由主義勢力がLGBT+等の、社会全体の共通課題ではなく個々人の細かな差異に焦点を当てた運動に資金提供を行っているのは、個々人は分断されていた方が彼等にとっては都合が良いからだろう。個々人をより即物的に互いに自己隔離させる手段として見れば、COVID-19「対策」はそれなりに合理性が有るとも言える。だがそれによって特に小さな子供は、精神の安定や、知能や認知能力や言語能力に著しい悪影響を被ることになるのだから、実に邪悪極まり無い所業だ。
U.S. Leads the World in Solitary Confinement that Destroys Prisoners Mental Health



 米国独房監禁の事例

 アンソニー・ゲイは重度の精神疾患を患っている。そして重度の精神疾患を患い犯罪を犯した多くのアメリカ人と同様、彼は有罪判決を受けた後、統合失調症の治療を受けることが出来た筈の精神病院ではなく、独房に監禁された。

 6フィート×10フィートの独房に1日24時間、週7日隔離された彼は、妄想に陥り、ショッキングな自傷行為に手を染める様になった。

 ゲイはカミソリで自分の目を刺した。

 彼は自分の肉を切り取って食べた。

 自分の睾丸のひとつを切り取って独房のドアにぶら下げた。

 そして囚人服のズボンから引きちぎったジッパーで陰嚢を縫い閉じた。

 病院や刑務所の精神保健病棟に移される代わりに、ゲイは刑期を延長され、更に独房で過ごした。7年の刑期は最終的に97年になった。

 彼はどんな罪を犯したのだろう? 彼は1993年に1ドル紙幣を盗んだ罪で有罪判決を受けた。

 ゲイは2093年に釈放される予定だったが、裁判官は最終的に刑務所のシステムが彼にとって不適切であったことを認めた。

 彼は漸く刑務所から釈放されて病院に送られたが、その時彼は既に22年間を独房で過ごしていた。




 独房監禁とは

 独房監禁とは、長期間に亘って囚人をあらゆる人間との接触から隔離する慣行だ。

 独房監禁は、懲罰や行動制御の手段としてよく使用されるが、メンタルヘルスに深刻な悪影響を及ぼす可能性が有る。

 世界の殆どの国では、囚人が独房で過ごすことが出来る期間を15日間に制限している。米国ではそうではない。米国には何年も、場合によっては何十年も独房に入れられている囚人が大勢居る。

 独房は既に悪い状況を更に悪化させるだけだ。これは誰にとっても(裁判所、州、連邦刑務所局)明らかな筈だ。これはそもそも使用されるべきではない。



 独房監禁の歴史

 これは昔から分かっていたことだ。

 懲罰としての独房監禁は、1829年にペンシルベニア州フィラデルフィアのイースタン州立刑務所で考案された。このアイディアは、堂々としたネオ・ゴシック様式の、逃亡不可能で警備厳重な刑務所を建設して、全ての囚人を独房に監禁すると云うものだった。それぞれの小さな独房には、ベッド、椅子、小さなテーブル、便器、そして聖書しか無かった。


 これはつまり囚人が聖書を読む以外に何も時間を過ごすことが無ければ、釈放される頃には法を遵守する善良なキリスト教徒になっているだろうと云うアイディアだった。

 ところが、全員が正気を失った。



 独房監禁の非人道性

 現在使用されている独房監禁は、不安、鬱、偏執狂、幻覚、自殺願望等、様々な深刻な精神的問題を引き起こす可能性が有ることを示す研究が増えている。

 これらの問題は非常に深刻で、長期的な障害や死に繋がることすら有る。

 米国で独房監禁されている精神疾患を抱えた囚人の数に関する真実の記録は、ひとつの図書館をいっぱいに出来る程だが、話は概ね一貫している。

 独房に居る時間が長くなればなる程、精神状態は悪化する。

 独房での刑期が始まった時にその人が若ければ若い程、精神状態は悪化する。

 そして年齢に関係無く、既に精神疾患を患っている人が独房に入れられると、状況は通常、絶望的になる。

 国連が米国の独房監禁の慣行を拷問の一形態であると宣言したのも不思議ではない。

 

 囚人達の証言

 独房で数十年を過ごし、時にそこで死亡した囚人達は、例えば次の様な証言を残している。

 ・「そこは寒さと静寂と空虚が混ざり合い、骨に染み込み、やがて心に染み込む、独自の世界です。」

 ・「私の人間としてのまともな感覚は日に日に薄れて行きました。」

 ・「彼等が私の周りに新しい壁を建てていると、私は生き埋めにされている様に感じました。………変わらない明るい人工照明と、腕時計や時計が無かったので、昼なのか夜なのか判りませんでした。私は頻繁に眠りに落ちましたが、目が覚めた時には5分眠ったのか5時間眠ったのかも判らず、何日なのか、何時なのかも判りませんでした。………今では、そこに収容されていたのは4年程だったと分かっていますが、若しそう聞かされていたら10年だと信じていたでしょう。それは永遠で終わりが無く、計り知れないものの様に思えました。」

 ・独房生活の25年間は「死よりも酷い刑期」だった。

 ・「私はとても辛い時期を経験し、退屈と孤独がまるで私の中に在る物理的なものの様に感じられる程でした。………それは余りに濃密で窒息させられる様で、私の心から正気を、私の魂から精神を、私の体から生命を絞り出そうとしているかの様でした。………私は心が正気の坂を滑り落ち、狂気に陥って行くのを見て目にして来ました。そして私は自分が周りの連中の様に、頭がおかしくなって狂ってしまうのではないかと恐れていました。」

 ・「時には彼等が首を吊って青くなっているのを看守が見付けることも有ります。ベッドから飛び降りる時に首が折れることも有ります。首に巻かれたシーツが天井の照明を覆う格子にも巻き付けられていて、ピンと張ってバキッと折れるんです。」

 ・「私は或る女性が頬と鼻から肉の塊を掻き毟って、自分の血で窓に書くのを見ました。私の隣人はコンクリートに頭を打ちつけ、結局看守達が彼女をクッション付きの独房に引き擦って行きました。………私の独房の真向かいでは、或る女性がカミソリで自分の喉を切り裂き、担架で運び出されました。他の2人はブラジャーと靴紐で窒息しようとしました。………別の女性は鉛筆の消しゴムの金属バンドで手首を切りました。………誰かの心がウサギの穴に落ちて行くと、残された血溜まりや糞便の汚れを掃除させられるのは何時も、可哀想な囚人ポーターです。」

 ・またリュックを盗んだ容疑で逮捕された或る16歳の少年は、3年間独房監禁された後、自殺した。彼は有罪判決を下されていた訳ではなかったが、裁判を待つ間独房に拘留されていた。彼の遺族に拠ると、彼は独房監禁中に不安、鬱、妄想等の深刻な精神的問題に悩まされていた。



 結論

 独房監禁がメンタルヘルスに与える影響に関する研究は明白だ。独房監禁には何ひとつ良いことは無い。それは深刻な心理的問題を引き起こしたり悪化させたりし、往々にして長期の障害や死に至る。

 国連は独房監禁を非難しており、世界の他の多くの国々の刑務所は独房監禁の慣行を許していない。

 これは米国の刑務所システムと米国のメンタルヘルスケア・システムの両方の失敗を示す生きた事例だ。

 これらを修復するには、多大な時間、お金、努力が必要となる。

 だがとにかく最初のステップは、独房監禁を終わらせることだ。

ロシアと西洋はウクライナの長距離兵器使用を巡って政治的演出を行っている(抄訳)

2024/09/15のアンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。キエフに西洋の長距離兵器を使ってロシア国内を攻撃することを承認するかどうかを巡るやり取りは、政治的な演出だ。
Russia & The West Are Engaged In Political Choreography Over Ukraine’s Use Of Long-Range Weapons



 長距離兵器使用承認問題は政治的な演出

 2024/09/12、プーチン大統領はこう警告した。

 「(ウクライナが西洋の長距離兵器を使ってロシアの奥深くを攻撃するのを許せば)NATO諸国、米国、欧州諸国がウクライナ戦争の当事者になることを意味します。これはこれらの国々が紛争に直接関与することを意味しますから、紛争の本質、性質そのものが劇的に変わることは明らかです。これはNATO諸国———米国と欧州諸国———がロシアと戦争状態に在ることを意味します。」

 また彼はこうも断っている。

 「ウクライナ軍には西洋から供給される最先端の高精度長距離システムを使用する能力は有りません。出来ないんです。これらの兵器は、ウクライナが持っていない衛星からの諜報データ無しでは使用出来ません。これは欧州連合の衛星か米国の衛星———一般的にはNATOの衛星———を使ってのみ出来ることで、NATOの軍人だけがこれらのミサイル・システムに飛行任務を割り当てることが出来ます。」

 ラヴロフ外相も同日、これと同じ趣旨の発言を行っているが、更にこれらの兵器に長年習熟した西洋の専門家の関与が無ければ、これらの複雑なシステムを使用することは不可能だろうとも付け加えている。

 クレムリンのペシュコフ報道官は「この声明が受け手に届いたことに疑問の余地は有りません」と述べた。

 他方、バイデン米大統領とスターマー英首相はこの問題について「検討」する姿勢を見せ、この提案を承認する可能性が十分有ることを示唆した。

 ところがその後、ロシアのリャブコフ外務次官はこう語っている

 「これに関連する決定が以前に為されたことも、この種のシグナルがキエフに伝えられていることも、我々は承知しています。」

 つまり、これらの展開は全て政治的な演出なのだ。



 この駆け引きの目的

 西洋がこうした無責任なエスカレーションを行った来た結果、計算違いから第3次世界大戦が勃発するリスクは高まり続けているが、プーチンは聖人の様な自制力を発揮し続けており、彼がNATO内の標的を攻撃することを許可したり、況してや核による先制攻撃を行う等、過激な対応をする可能性は低い

 若し彼が本当にそうするつもりなら、この様な政治的な演出は必要無い。黙って実行すればいいだけの話だ。

 それに、ロシア国内に対する長距離兵器の使用が許可されたとしても、この代理戦争の軍事戦略的な力学がNATOとウクライナに有利に変わることは無いだろう。

 従ってプーチンが、一部の人々が懸念する様な過激な対応を取らねばならない理由は無い。精々「衝撃と畏怖」の様な爆撃作戦を承認するか、ドニエプル川に架かる橋を幾つか攻撃する位だろう。或いは経験豊富な予備役兵の部分的な動員をもう一度発表するだけかも知れないし、さもばくば西洋への重要な鉱物やエネルギーの輸出を削減/停止するか。

 これらを念頭に置くと、今回のプーチンの政治的演出は、キエフに圧力を掛けてロシア領内から撤退させ、停戦の前提条件を守らせようとする試みだろうと見ることが出来る。

 或いは別の動機としては、ロシア国民を次の動員に備えさせることかも知れないし、NATO諸国への資源輸出削減を仄めかしたいのかも知れない。

 西洋側に関しては、これは新しいことではなく、西洋がこれまでロシアの所謂レッドラインをひとつひとつ超えて来たことの最新事例と見ることが出来る。これは西洋の世論を管理するのにも役立つし、ロシアに次のエスカレーションに備える時間的余裕を与えることにもなる(不意を突かれればロシアも、一部のタカ派が望む様な「過剰反応」をしてしまうかも知れない)。



 何故このタイミングなのか?

 観察者は、西洋がこの問題を取り上げ始めたのがロシアの特別軍事作戦開始から2年半も経ってからである事実を思い出しておくべきだろう。もっと早くにこれが起こらなかったと云う事実は、西洋の意志決定者達が、ロシアとのエスカレーションの梯子を制御不能に陥らせたくなかったことを物語っている。

 ロシアを戦略的に敗北させることが不可能であることが誰の目にも明らかになった今になってこれをやり始めたのは、恐らく純粋な復讐心からで、単にロシア(民間人を含む)を出来るだけ苦しめたいからだろう。長距離兵器を使えば、キエフには更に多くのロシア人を殺すチャンスが与えられるだろうが、それはゲームチェンジャーにはならない。

 この経験は、知覚管理の為だけに政治的演出が行われることも有ると云うことを、観察者に教える筈だ。敵対する陣営の間同士に真の脅威を伝える裏ルートが存在する場合であっても、その一部がソフトパワー上の目的から公に認められることも有るのだ。

 全てが見た目程はっきりしていることは殆ど無い。殆どの場合、目に見える以上のことが舞台裏で起こっている。

ノルドストリームを破壊したのがキエフなら、賠償金を支払うべき———ドイツ国会議員(抄訳)

2024/09/27のRTの記事の抄訳。 2024/09/26、ドイツの左派議員サーラ・ワーゲンクネヒトは、ノルドストリームの破壊について独立した調査の必要性を訴え、若し犯人がキエフなら責任を追及すべきだと主張した。

 まぁ既にこれまでの報道からキエフの関与は確実だが、主犯がキエフだったのかワシントンだったのかについては議論の余地が有る。彼女が米国の責任について省略したのは意図的なものだったのか、単にキエフの単独犯だったと本気で信じているのかはこの報道だけでは分からない。
Kiev should pay if it blew up Nord Stream – German MP



 2024/09/26に公開した動画で、ドイツの左派議員サーラ・ワーゲンクネヒトは、ノルドストリームの破壊行為について、議会による独立した調査が緊急に必要であると主張した。彼女の主張はこうだ。

 2022年のガス・パイプライン攻撃の背後にキエフが居たことが証明されれば、キエフは責任を問われるべきである。
 
 事件から丸2年が経つと云うのに、ベルリンが今だに「耳をつんざくような沈黙」を続けているのは何故なのか。

 オラフ・ショルツ首相の内閣は、爆発に関する進行中の調査やその結果について、議会に具体的な詳細を明らかにすることを頑なに拒否している。

 「ドイツの納税者達から数十億ドルものカネを受け取っているウクライナが第一容疑者なのですから、尚更調査の必要性は喫緊のものです。」

 「若しウクライナがドイツのエネルギー供給に対するテロ行為の責任を負っているのであれば、武器の供給は直ちに停止し、賠償の問題を議題に載せなければなりません。」


 ウクライナのダイヴァーの一団がドイツに天然ガスを輸送していたロシアの海底パイプラインを爆破したとする西洋メディアの報道が多数有る。

 今月初めにデア・シュピーゲルが報じたところでは、この私的に資金提供されたグループは、後に解任されて英国大使となったウクライナのヴァレリー・ザルジニー総司令官の命令で行動していた。

 「この様な友人を持つ人には、敵など必要有りません。」

 「この話が本当なら、我々は正に世紀のスキャンダルに見舞われたことになります。」


 また別の報道に拠ると、ベルリンはCIAから攻撃の可能性について警告されていたが、それでも行動を起こさなかった可能性が有る。

今では忘れられた2001/09/09の一人の男の殺害は、9.11の決定的な前提条件だったのか?(抄訳)

2020/12/09のピーター・デール・スコットとアーロン・グッド両氏の記事の抄訳。9.11の僅か2日前、米軍のアフガン侵攻計画にとって最大の障害であった人物が暗殺され、更に翌日(つまり9.11の前日)、ホワイトハウスはアフガン侵攻計画を策定した。「単なる偶然」として片付けるには余りにも重大過ぎる偶然だ。
Was the Now-Forgotten Murder of One Man on September 9, 2001 a Crucial Pre-condition for 9/11?



 2001/09/11以前の10年間、アジアに於ける米国の複雑な秘密の陰謀の根底には、次の2つの事実が有った。

 1)当時中央アジアには大量の石油埋蔵量があると疑われていたが、証明はされていなかった。これは米国の大きな関心事だった。

 2)中央ジアに対する米国の方針はバラバラだった。つまり政府の各機関は互いに情報共有を拒否していた為、異なる政策を持っていた。

 このバラバラな状態の所為で、反タリバン抵抗運動の指導者であるアフマド・シャー・マスードに対する米国の態度は相反していた。

 マスードは、ヒンドゥークシュ山脈の北に位置するアフガニスタンの北部同盟のタジク人指導者で、ゲリラ戦闘員としての腕前から「パンジシールのライオン」として知られていたが、ソ連占領軍と戦った1980年代からCIAの支援を受けていた。



 米軍のアフガン侵攻の障害となる人物が9.11の2日前に暗殺される

 2001/09/09(つまり9.11の2日前)、マスードはアラブ人テロリストによって暗殺されたが、これは2001年10月の米国とNATOによるアフガニスタン侵攻の重要な前提条件だった。マスードは以下の理由から、米国にとって障害となっていた。


 ・タリバンに制圧されたことの無い唯一の地域はマスードの領土だった(実際その後米軍が侵攻した際にはここからアフガン入りした)。

 ・侵攻にはパキスタンの領土を利用することも検討されていたが。マスードとパキスタンは宿敵同士だった。

 ・マスードは米国の軍事支援を歓迎していたものの(CIAから毎月20万ドルを受け取っていた)、熱烈なナショナリストだった為、米国の侵攻には激しく反対していた。
 
 ・マスードはカリフォルニアの石油会社ユノカルのパイプライン計画に反対し、アルゼンチンの企業と契約を結んだ。


 ・マスードの死後、9.11の後の09/26に、CIAは北部同盟に500万ドルを送っているが、この資金の大半は最早同盟を強化する為ではなく、寧ろ個々の軍閥を分裂させて同盟を解体する為に使われた。この作戦はマスードが生きていたら実行出来なかっただろう。

 米国のアフガン侵攻計画は7月には既に始まっていたが、09/04と09/10、アフガニスタンのビン=ラディンとアル=カイダに対する「政治軍事計画」と言える国家安全保障大統領指令NSPD-9に関する2度の会議が開かれた時に、具体的な詳細が詰められた。



 マスード殺害犯人を巡る疑惑

 ジャーナリストに変装したマスード暗殺者が厳重に警備されたマスード本部に侵入する為に使用した紹介状を起草したのは、ロンドンに避難したエジプト人テロリストのヤシル・アル=シリ(下の画像)と、ニューヨークの郵便局員アハメド・アブデル・サタールだ。後者についてはWikipediaに記事が無いが、彼は世界的なイスラム・テロ運動と、国際テロ・ネットワークの主要な指導者であるエジプトの「盲目のシェイク」ことオマル・アブドッラフマーンを結び付ける重要な仲介者として機能していた。

 
 アブドッラフマーンは国務省のテロリスト監視リストに載っているにも関わらず、1987年以降、米国のビザを発給されており(最終的には永住権も手にした)、国務省、NSA、CIAの支援を受けていた。恐らく彼がムジャヒディーンの勧誘に関与していたので、使い道が有ると考えられたのだろう。1990年に人種差別主義者のイスラエルのラビ、メイル・カハネが殺害された事件にアブドッラフマーンが関与していた容疑について、FBIは捜査しなかった。
Blind Sheikh

 アブドッラフマーンはアフガンに飛んでマクタブ・アル=ヒダマトに加わった。これはオサマ・ビン=ラディンが資金と指導面で協力したパキスタンを拠点とする組織だったが、後にアル=カイダと呼ばれる様になる。

 彼は1990年にニューヨーク市にやって来て、ブルックリンのマクタブ現地事務所、アル=キファ・センターの精神的指導者となり、アフガンへ派遣するジハード戦士の募集、訓練、支援を監督した。

 センターはサウジと米国の軍諜報部の支援を受けてクロアチアに支部を置き、ジハード戦士達を送り込んで、旧ユーゴスラヴィア社会主義連邦の存続を望むスロボダン・ミロシェヴィッチ率いるセルビア人に対して戦いを仕掛けた(西洋ではこれはセルビア人が何の罪も無いイスラム教徒達に民族浄化を仕掛けた民族紛争として宣伝されている)。

 1995年、アブドッラフマーンは1993年の世界貿易センター爆破事件に端を発する数々の共謀罪で有罪判決を受けた。

 2001年の時点でこの盲目のシェイクは、ニューヨーク市でのテロ計画に関与した罪で米国連邦刑務所で終身刑に服していたが、彼は刑務所内からサタールの電話を通じて命令を出し続けた。それには銀行強盗やユダヤ人殺害は合法であるというファトワ(宗教的裁定)が含まれていた。

 FBIはこれを盗聴して、関連する情報を特にエジプト政府やその他の関心の有る政府に転送した。従って米国政府の少なくとも一部は、マスード暗殺計画について事前に知っていた筈だ。

 ニューヨーク・タイムズは問題の紹介状について報じた際、マスードの名前は出なかったと報じているが、標的がマスードであると分からなかった筈は無い。2000年にアル=カイダとタリバン(どちらもパキスタン諜報機関ISIと繋がっている)はパキスタン最大の敵であるマスードを排除することで合意しており、米国もそれを知っていた。「アフガニスタンで最も偉大なゲリラ戦士と考えられていた」マスードは、「タリバン民兵と戦い続ける」唯一の抵抗運動指導者だった。従って彼以上に重要な標的は有り得ない。

 2001年10月、英国はマスード殺害に関与したとしてアル=シリを逮捕したが、何故かその後無罪放免にした。

 また2002/04/09、米国はアル=シリ、サタール、そしてアブドッラフマーンの代理人を務めた弁護士リン・スチュワートを起訴したが、この時の起訴状には紹介状についてのことが何も触れられておらず、エジプトのイスラム過激派グループを支援した罪で、スチュワートは懲役28ヵ月、サッターは懲役28年の判決を受けた。

 但しそしてアブドッラフマーン、サタール、アル=シリの関係、そして彼等のマスード暗殺との繋がりの可能性ついては各主要メディア(Wikipediaも含む)は沈黙している。若じ上位権力がこれらの検閲措置を講じたのだとするならば、それは同じ上位権力自身が暗殺に関与していることを示唆する兆候ではないのだろうか?



 米国の対中央アジア政策

 米国の対中央アジア政策は1997年頃から国務省と、軍・CIAの方針は対立しており、後者はウズベキスタンの特殊部隊を使ってアフガニスタンのオサマ・ビン=ラディンに対抗させようとしたが、標的が最終的にアフガンのタリバン政府全体にまで及ぶに伴い、米ウズベキ同盟に北部同盟が含まれることになった。2000年10月にビン=ラディンが仕組んだUSSコール号爆破事件を受けて、CIAはウズベキスタン軍の任務を北部同盟との合同攻撃部隊に拡大するよう強く求めたが、クリントンは反対した。
Bill Clinton meets Uzbek leader
*1996年、ビル・クリントン米大統領とウズベキスタンのイスラム・カリモフ大統領。

 ブッシュ政権になると風向きが変わり、2001年には米国その他の国の当局者がタリバンと会談を重ね、米国はタリバンとパキスタンにアフガニスタン統一政府の樹立を受け入れるよう公然と脅迫し、軍事作戦まで仄めかした。パキスタンの元外相ニアズ・ナイクの証言に拠れば、米国の代表団は何時アフガニスタンを攻撃するかと問われて、「カブールに雪が降る前(9月か10月)」だと答えた。

 因みに当時ウズベキスタンはこの地域で最悪の人権記録(児童労働や政治犯の拷問・虐殺を含む)を持っていたが、CIAやペンタゴンは気にしなかった。米国がウズベキスタンに対する人権批判を再開したのは2005年のことで、それはウズベキ大統領がオープン・ソサエティ研究所を追放し、米国に国内の軍事基地を閉鎖するよう命じた後のことだった。



 中央アジアでの米軍のプレゼンス

 中央アジアに対するペンタゴンとCIAの関心は、当時世界最大の未確認の石油利権がそこに在ると信じていた米国の石油業界の関心を反映したもので、これを代表するのがハリバートンCEOのリチャード・チェイニー副大統領だった。

 カスピ海周辺に対する米国の足場は、先ずソ連崩壊後のアゼルバイジャンに築かれた。1993年のクーデターでアゼルは決定的にロシアから西洋寄りになった。米国の石油企業がこの地域に進出すると共に体制側の「現実主義者」やネオコンがこの路線を唱導し、この同盟はその後ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスタンにまで拡大した。
Bill Clinton meets with Azeri leader
*1994年、ビル・クリントン米大統領と、CIAの支援を受けて就任したアゼルバイジャンのヘイダル・アリエフ大統領。

 アフガニスタンに関しては、タリバンがこの路線を推進したが、マスードや北部同盟は先述した様にユノカル・パイプラインに反対した。結局タリバンと米国とのこのパイプライン交渉は実を結ばず、パイプライン計画が復活するのは2018年にアジア開発銀行が支援を行ってからだ。

 アフガン統一政府の協議が行き詰まる中、ブッシュ政権は2001/09/04、北部同盟との大規模な秘密作戦計画を承認する大統領指令NSPD-9の起草を承認したが、マスードは米軍駐留に抵抗した。だがこの障害は09/09に彼が暗殺されたことで消え去った。米軍によるアフガン侵攻の舞台が、9.11の直前に整ったのだ。重要な出来事を纏めるとこうなる。

 ・2001/09/04と09/10:米国がアフガニスタンでの軍事行動を策定
 ・09/09:米軍のアフガン侵攻にとって最大の障害であったマスードが暗殺される
 ・09/11:同時多発テロ攻撃

 この後米国の西&中央アジアに於けるプレゼンスは、2003年のイラク侵攻によって更に強化されるが、これもまた9.11以前から既に決まっていた方針だった。



 まとめ

 以上の点を簡単に振り返るとこうなる。

 1)ソ連崩壊後、米国の軍事力、政治力、経済力が中央アジアに徐々に浸透した。

 2)2001/09/09に反タリバン指導者アフマド・シャー・マスードを暗殺する為に暗殺者が使用した紹介状はニューヨークとロンドンで書かれた。

 3)米国政府はその紹介状を知っていた。

 4)マスードは米国のアフガニスタン侵攻に反対していた。

 5)マスード殺害の翌日にして9.11の前日となる09/10、ホワイトハウスはアフガニスタンへの軍事介入を計画した。

アゼルバイジャン

★アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2024/05/01、ジョージア議会を襲撃しようとした暴徒達を、西洋諸国は2021/01/06の米議会襲撃事件の時の様に非難しようとはしなかった。西洋はジョージア政府を打倒すると共に、ジョージアを利用してその隣国アルメニアをCSTOから「引き抜く」為の時間稼ぎをしようとしている。
暴徒達がジョージア議会襲撃を試みても、西洋は偽善的に肩を竦めるだけ(抄訳)

★アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/11/28、アゼルバイジャンは米仏独が自国に対して不法な情報戦活動に資金を提供していると非難した。アゼルは地域の多極化を主導しているので、インド同様、米国はハイブリッド戦争を仕掛けて弱体化しようと企んでいる。
アゼルバイジャンが米国政府資金による情報戦作戦を阻止

★アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/11/21、アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領のフランス弾劾演説は、フランスが米国の属国に成り果てたことを証明している。
アゼルバイジャンが南コーカサスに対するフランス新植民地主義の脅威について改めて警告(抄訳)

★アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。アゼルバイジャンは西洋とプラグマティックな関係を維持したかったが、米国と欧州が公然とアルメニアの肩を持っているので、最早それは不可能だ。アゼルは南コーカサスの多極化プロセスで中心的役割を担うであろう一方、アルメニアはそれを邪魔する西洋の属国に成り果てた。
米国とEUが公然と味方に付いたことで西洋の親アルメニア軸足変更が完了(抄訳)

★アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。最新のイスラエル・ハマス戦争に於ける「民族浄化」の主張に比べると、「アゼルバイジャンがアルメニア人に対して民族浄化を企んでいる」と云う主張には全く説得力が無い。
最新のイスラエル・ハマス戦争は、「アゼルバイジャンがアルメニア人を民族浄化」の主張の信憑性を疑わせる(抄訳)

アンドリュー・コリブコ氏の解説。イランのメディアに拠ると、2023/09/19の対テロ作戦以降、アゼルバイジャンとイランとの関係は西洋の認識に反してかなり改善している。アゼルはアルメニアとは異なり、ユーラシアを揺り動かす多極化の波に乗ろうとしている。
Tasnim News’ Latest Reports Prove That Iranian-Azeri Ties Are Actually Improving

★アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。2023/09/19のカラバフ紛争の展開は、主要関係者達の認識を作り直した。これらの複合的な影響は南コーカサスに革命を齎すだろう。ロシア、アゼルバイジャン、トルコ、そして恐らくイランは地域回廊の推進に協力するかも知れないが、アルメニアは孤立を深めるだろう。アルメニアは地域貿易の妨害を止めればその恩恵を受けることが出来るだろうが、そうなる為には真の多極政府が樹立されなければならない。
最新のカラバフ紛争は、全主要関係者達の互いに対する認識を作り直すだろう(抄訳)

コリブコ氏の分析。2023/03/31、イスラエル外相はアゼルバイジャンとの「対イラン統一戦線」の設立を発表。イラン側は「陰謀だ」と反発している。統一戦線の詳細は不明の儘だが、イランとアルメニアの関係が強化される一方で、イランとアゼルの関係はここ1年悪化している。この不仲は南北輸送回廊の実現にとって障害となり、西洋がそこに付け込む可能性が有る。ロシアにとって、こうした対立関係は懸念事項だ。アゼルとロシアとの貿易は増加しているが、ロシアがカラバフの停戦に違反したとアゼルを非難してからは不確実性が高まっている。
The Azerbaijani-Israeli “United Front” Against Iran Raises Some Serious Questions

★アゼルバイジャンの宗教抑圧と抵抗についての解説。
フセイニュン:「コーカサスのヒズボラ」を作るイランの挑戦(要点)

コリブコ氏の分析。アゼルバイジャンはEUと、ロシアはイランとのガス取引を纏めたが、これは競合的なものと云うより調整的なもの。米帝の圧力により段階的に廃止されるEUのロシアとの取引をアゼルバイジャンが置き換え、ロシアは失われた市場をイランのそれに置き換えている。イランのガス埋蔵量は世界最大規模であり、ロシアと合わせると世界の総ガス埋蔵量の約1/3を占めると予想されている。これをロシアの技術によって利用可能にすれば、将来的にはロシア(+カタール?)との間でOPECの様な仕組みが作られることになるかも知れず、エネルギー安全保障分野でインドとの協力を深める可能性が考えられる。他方アゼルバイジャンはEUのエネルギー安全保障に於てより重要な戦略的な役割を果たすことにより、西側の干渉を先制的に阻止することが出来る様になる。
A Tale Of Two Gas Deals: Azerbaijan-EU & Russia-Iran

★2020/12/09のピーター・デール・スコットとアーロン・グッド両氏の記事の抄訳。9.11の僅か2日前、米軍のアフガン侵攻計画にとって最大の障害であった人物が暗殺され、更に翌日(つまり9.11の前日)、ホワイトハウスはアフガン侵攻計画を策定した。「単なる偶然」として片付けるには余りにも重大過ぎる偶然だ。
今では忘れられた2001/09/09の一人の男の殺害は、9.11の決定的な前提条件だったのか?(抄訳)

関連スレッド。
 ナゴルノ・カラバフ紛争

ウズベキスタン

ウズベキスタン検察庁の発表では、2022/07/01〜02にヌスクで起きた大規模な騒乱により、18人が死亡し、法執行官38人を含む243人が負傷した。負傷者は病院へ運ばれ、149人は必要な医療援助を受けて退院し、94人はまだ医医療機関に居る。

Massive unrest in Uzbek region leaves 18 dead, 243 injured

コリブコ氏の分析。ウズベキスタンのヌスク事件について、モスクワはCSTOの平和維持軍を動かしてはおらず、ペシュコフ報道官も、全てウズベキスタンの内政問題であって問題は全て解決されるだろうとの落ち着いた楽観的な見方を示している。これはロシアもまた事件をカラー革命の試みと見ていないことを示している。
Russia’s Calm Response To The Karakalpakstan Crisis Discredits Color Revolution Speculation

コリブコ氏によるミルズィヤエフ大統領の演説の分析。大統領の演説は憲法改正問題について柔軟に対応し、文化的ジェノサイドに対するカラカルパクスタンの人々の懸念を払拭するものだった。ヌスク危機のエスカレーションを上手く回避出来た様だ。

Analyzing Uzbek President Mirziyoyev’s Address To The People Of Karakalpakstan

★アンドリュー・コリブコ氏の分析の要点。「新ウズベキスタン」構想にとって今後の課題は、善意だが騙され易い民衆が西洋のハイブリッド戦争の偽情報に騙されて、カラカルパクスタンでの抗議騒動の二の舞にならないように、ソフト・セキュリティ面での対策を講じることだ。
ウズベキスタンのカラカルパクスタン危機の社会政治的(ソフト・セキュリティ)力学(要点)

★アンドリュー・コリブコ氏の分析の要点。2022/07/01にウズベキスタンのカラカルパクスタン自治共和国の首都ヌスクで起きた騒動は、総合的に見てカラー革命ではなかったと思われる。
2022/07/01にウズベキスタンのカラカルパクスタンで起きた出来事を脱構築する(要点)

★2020/12/09のピーター・デール・スコットとアーロン・グッド両氏の記事の抄訳。9.11の僅か2日前、米軍のアフガン侵攻計画にとって最大の障害であった人物が暗殺され、更に翌日(つまり9.11の前日)、ホワイトハウスはアフガン侵攻計画を策定した。「単なる偶然」として片付けるには余りにも重大過ぎる偶然だ。
今では忘れられた2001/09/09の一人の男の殺害は、9.11の決定的な前提条件だったのか?(抄訳)

「長らく遅れていた」:米軍がアラスカ先住民の村を壊滅させたことを謝罪(抄訳)

2024/09/22のスプートニクのジョン・マイルズ氏の記事の抄訳。2024/09/21、米海軍の代表が19世紀にアラスカで先住民の村を焼き討ちした事件について謝罪した。歴史的正義は今だ果たされていない。

 「アメリカ合衆国はジェノサイドの上に築かれた」と云う歴史的事実は誰もが一般常識として知っているべきことだと思うのだが、そもそも知らないのか、それとも現在とは関係の無い遠い昔の話だと思っている人が多いらしい。だが米国が他国のジェノサイドや人権侵害を偽りの根拠に基付いて非難したり、代理戦争や直接侵攻で他国を焼き払ったりする時には、そうした事実を改めて思い出しておくべきだろう。彼等は何百年も前と同じ様なことを今だに繰り返しているし、それを不可視化したり正当化したりするのが得意だ。
‘Long Overdue’: US Military Apologizes for Destruction of Native Alaskan Villages



 先住民の活動家達はアメリカ合衆国に対して、数世紀に及ぶジェノサイドと強制移住に対する償いとして、賠償やその他の形の物質的補償を求め続けて来た。

 2024/09/21、米海軍の代表は、1869年にアラスカのカケ集落を焼き払ったことについて後悔の念を表明したが、1882年にアングーン村を壊滅させてから142年目に当たる10/26には、別の謝罪が予定されている。

 カケムラ組織会長ジョエル・ジャクソンは「長い時間が掛かりました」と語る。

 「この謝罪を通じて、私達に対して犯された過ちから私達が立ち直り始めることが出来ればと思います」。

 「これは155年掛けて作り上げて来たものです。」


 海軍のジュリアン・ライネンベバー報道官はこう述べる。

 「トリンギット(別名リンギット)族に与えられた痛みと苦しみは、長らく遅れていた謝罪に値します。」

 部族が受けた壊滅的な出来事の記憶は、口承によって伝えられて来た。海軍当局は、「何世代にも及ぶトラウマを負わせた」攻撃が「誤った」ものであったことを認めた。



 1867年に米国がロシアからアラスカを購入して以来、米国と先住民との関係は頻繁に混乱を来して来た。

 19世紀初頭にロシアと先住民の間で締結された条約により、領土全体で平和が維持されたが、米軍は米国の優位性を維持する為に、殺傷能力の有る武力の使用を容認する方針を貫いた。

 言語、世界観、法制度の違いから来る誤解により、米国は先住民の集落に対して暴力的な砲撃で対応することが多かった。

 1869年、米軍の哨兵がカヌーに乗っていた非武装のリンギット族の男性2人を殺害した。米軍司令官が先住民の慣習に従った賠償の支払いを拒否すると、リンギット族は報復として毛皮商人2人を殺害した。

 「先住民の部族が………政府の力を感じず、目に余る暴行に対して処罰されない限り、彼等は益々危険になる」と、アラスカの連邦歳入徴収官ウィリアム・モリスは書き記している。

 米国はUSSサギノーを派遣し、先住民のケーク村を砲撃した。米軍は村に襲い掛かり、徹底的に破壊し、先住民が厳しい冬の間生き延びるのに必要だった家屋、カヌー、食料貯蔵庫を焼き払った。寒さと飢えに曝される前に、数週間もしない内に何人もが死亡した。

 数年後、リンギット族の呪術師の死に対する賠償を米軍が拒否した後、アングーンの原住民村も同様に破壊された。攻撃を生き延びた13歳の先住民の少年は後に人類学者にこう回想した。「彼等は家を失った私達を浜辺に置き去りにしました。」



 この攻撃は、何世紀も及ぶ西洋による先住民虐待の陰惨な歴史の一部だ。

 今年初め、米国カトリック司教会議は、大陸中にインディアン寄宿学校を設立する上で教会が果たした役割について謝罪した。これらの学校は何百人もの先住民の子供達の死に繋がった。

 2月、アラスカの或る議員は、アラスカ先住民への性的暴行の蔓延を軽視している様に見える発言について謝罪した。先住民は依然としてレイプやその他の暴力犯罪の被害者になる可能性が遙かに高い。

 ジャクソンはこう語る。

 「私達は米国と戦争していた訳ではありません。彼等が私達に宣戦布告したのです。」

 「軍隊が来て私達の村を砲撃した———それだけのことであって、戦争は有りませんでした。彼等はそれを正さなければなりません。」


 先住民の活動家達は、何世紀にも及ぶジェノサイドと強制移住の償いとして、賠償やその他の形の物質的補償を求め続けている。

RTは米国のグローバルなソフトパワー上の失敗の為にスケープゴートにされている(抄訳)

2024/09/14のアンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。多少補足した。RTへの迫害はロシアゲート陰謀論復活の一環だ。
RT Is Being Scapegoated For The US’ Global Soft Power Failures



 RTへの迫害はロシアゲート陰謀論復活の一環

 ロシア・メディアのRTは、「秘密の影響力作戦に従事する」非公開の諜報機関として機能していると云う理由で米国から制裁を受けることになった。

 これは11月の選挙を前に、米国のリベラル・グローバリストのエリート層がロシアゲートの陰謀論を復活させようとする取り組みの一環だ。これまでの展開は以下で解説して来た。

 ・2024//09/04:民主党がジル・スタインを攻撃していることは、彼等がどれだけ必死なのかを物語っている(抄訳)
 ・09/05:最新のロシアゲート・スキャンダルは、代替メディアとトランプの信用失墜が狙いだ(抄訳)
 ・09/04:Russia’s Tenet Media Operation Was A Total Flop If The Reports Are True

 これらの目的はカマラ・ハリスを当選させる為に、ウクライナ紛争に反対する代替メディア、トランプ、保守派の一流インフルエンサー達の信用を失墜させることだった。

 これが成功するかどうかはまだ分からないが、これを補完する目的も有る。米国がソフトパワー面に於てグローバルに失敗していることの責任を、RTになすりつけることだ。「我々の評判が悪いのはロシアが世論を操作しているからだ」と云う訳だ。



 RTに関する告発は濡れ衣だ

 だが、RTは米国の外交政策に関する「不都合な真実」を堂々と視聴者に伝えて来ただけなので、そこに陰謀的な要素は全く無い。

 ロシア軍を支援する為にRTが行っているクラウドファンディングについても同様で、編集長のマルガリータ・シモニャンは定期的にこの取り組みを公然と自慢していた。

 主な告発はこの2つだけだが、どちらも「陰謀」では全くない。

 そしてRTが「諜報」活動に従事しているというもうひとつの主張は事実無根であり、これはロシアのグローバル・メディアの先頭ランナーの信用を失墜させようとする試みに他ならない。

 米国務省はこう主張している。

 ・RTはロシアの諜報機関に情報を流している。

 ・RTはロシアの諜報機関から命令を受けて、モルドバ等の他の国に関するコンテンツを作成している。ロシアはモルドバの次の選挙に干渉しようとしており、それが上手く行かなければ暴動を起こすことも計画している。

 こうした非難は新しいものではないが、これらの主張を裏付ける証拠はこれまで一度も提示されていない。

 それどころか、西洋の主流メディアは世界中で正にこれと同じことをしていると何十年も非難されて来たが、それらには膨大な裏付け証拠が存在する。

 従ってRTを中傷し、且つそれを口実として制裁を課し、あまつさえ他国にこれに倣うよう圧力を掛けるなどと云うことは厚かましさここに極まれりと言うべきだが、米国らしいと言えばらしい振る舞いだ。



 米国は人心掌握競争で負けて焦っている

 米国はグローバル・サウス全体どころか、西洋の一部(益々大きくなりつつあるが)でさえ、人心獲得競争で負けたと云う事実を、全く受け入れることが出来ない。

 米国は今年、「米グローバル・メディア庁」に約9億ドルを割り当て、来年には9億5,000万ドルを要求しているが、目に見える成果は殆ど挙げていない。国務省自身が、世界中でウクライナへの支持が低下している事実を認めている(そしてそれをRTの所為にしている)。米国は世界世論を味方に付けることで、国連でロシアに反対票を投じ、ロシアに制裁を課し、ウクライナに武器を送らせたかった。
 
 だが各国の指導者達の戦略的計算は米国の期待を裏切った。自分達が西洋の傀儡だと非難されたい指導者は殆ど居なかったし、況してやロシアの農産物やエネルギー製品をボイコットして自国の経済を悪化させるなど論外だが、これらの計算は世論とも一致していた(ロシア側の情報を広める上で、RTは世論形成に大きく役立った)。

 従って世界の世論が米国が認め難い結論に達したのは、何十億もの人々が外国の諜報機関に騙されたからだ、と仄めかすことで、米国は人々の知性を侮辱している。



 事実は米国の味方をしていない

 事実は米国の味方をしていない。米国はこの紛争に至る経緯や、紛争が起こっているより大きな背景に関する重要な情報を隠蔽することで、世界中の人々の認識を操った。従って隠されていた事実を知った殆どの人々は米国に腹を立て、熱心にロシアを支持した。

 また、ロシアは新たな多極的世界秩序について明確なヴィジョンを表明しており、中小諸国、特にグローバル・サウスの国々に世界情勢に対する発言力を与えようとしている。だからこそグローバル・サウスの人々はロシアを支持する。

 対照的に、米国は所謂「ルールに基く秩序」を推奨しているが、これは西洋の支配を保持する為の偽善的で利己的な策略であることが暴露された。

 RTは、西洋が支配するグローバルな主流メディアの情報封鎖を突破して、米国の外交政策に関する「不都合な真実」を視聴者に伝え、ロシア側の真実を広めた。非西洋的世界観をこれ程の規模で広めた者はそれまで居なかったからこそ、RTは非常に人気を博したのだが、何を信じるかは情報消費者一人ひとりの決断に委ねられていた。

 RTの副編集長アナ・ベルキナが引用した故ケネディ大統領の言葉を挙げておこう。

 「我々は、アメリカ人民に不快な事実、外国の考え、異質な思想、そして競合する価値観を託すことを恐れません。人民に自由市場で真実と虚偽を判断させることを恐れる国は、人民を恐れる国です。」

 RTに対する攻撃は、米国が今や「反対意見を恐れている」ことを証明している。

旧ソ連圏で急速に広がる親プーチン運動(紹介とコメント)

 2024/09/05のバーミンガム大学の国際安全保障教授ステファン・ウォルフ氏の記事を紹介してみる。取り立てて重要な内容でもないのだが、西洋のプロパガンダの限界を示す事例として、適宜コメントを加えてみた。
Pro-Putin movement spreading fast across ex-Soviet bloc

 一見してウォルフは西洋の体制側の御用学者であることが分かるが、彼は欧州の旧共産圏諸国に親ロシア感情が広まっていることに対して懸念を表明している。

 ドイツ東部の2つの州(つまり旧東ドイツ領)で行われた地方選挙では、ウクライナ支援に反対し、「ロシアのウクライナ侵攻」はは西洋がロシアを挑発した結果だと主張し、ロシアとの本格的な軍事衝突に巻き込まれることへの懸念を表明する2つの政党への支持が急増しているが、著者はこれらを西洋のプロパガンダ路線に忠実に従って「極右」「極左」と評している。まともな有権者ならロシアへの代理戦争を支持するのが当然であり、平和を望むのは異端者だ、と言いたいのだろう。

 著者は「1989年までソ連の支配下に在った中東欧の他の国々でも、同様の感情が高まって」いることを懸念し、特にEUとNATOに加盟にしているにも関わらず公然とウクライナ紛争の継続に反対しているハンガリーとスロバキアを名指しして、権威主義だ、「民主主義と法の支配」を脅かしている、とEUの声明を引いて非難している。つまり民主主義とか法の支配と云うものは、西洋の戦争屋共がそうだと主張するもののことであって、それに反対する意見は「権威主義」、つまり人々の意見を無視して強権的に押し付けられているものだ、と云う印象を与えたいのだろう(だが世論調査結果を見れば、人々は無条件でウクライナ代理戦争を支持する筈だ、と云う暗黙の前提には、欧州でさえ根拠が無いことが判る)。

 「アゼルバイジャンやジョージア等、旧ソ連の一部であった一部の国でも同じことが言える。恐怖、憤り、郷愁が奇妙に混ざり合ったこの感情は、ソ連圏が密かに復活したことを意味する訳ではないが、少なくともその地域の一部でイデオロギーが統合されたことを示している。」

 戦争に巻き込まれたくないと思うのはどんなイデオロギーを奉じている人であろうが自然な反応だと思うのだが、こうした安全保障上の懸念は著者にとっては「イデオロギー」の問題らしい。「イデオロギー」からの洗脳が解けさえすれば、人々は第3次世界大戦のリスクについて気にしなくなるだろう、と云う訳だろうか。

 ウクライナ支援に反対するハンガリーのオルバン首相は自動的に「親プーチン」と云うことになるらしく、著者はオルバンが何度も公の場でプーチンと握手したことを、何かとんでもないスキャンダルであるかの様に取り上げて、「スタント」だと非難した。西洋では最早キャンセル文化が当たり前で、「敵」とされる相手は全否定しなければならず、従って互いに敬意を持った外交関係など以ての外だ、と云う訳なのだろう。実際、西洋の政界はその殆どが、9.11後に「俺達に協力しない奴はテロリストの味方だ」と全世界に宣言したブッシュJr.並みの幼稚なメンタリティに支配されている。

 オルバンを「右派」に分類する一方で、著者はスロバキアのフィツォ首相のことは「左派ポピュリスト」に分類する。「ポピュリスト(人民主義)」と云う用語は現在は主に右派を罵倒する時の枕詞に堕しているのだが、まぁレッテルを貼れれば右派でも左派でも良いらしい。それにポピュリストはそもそも「庶民が流した血で金持ちが肥え太る」戦争には反対するものだから、この点でのこの言葉のチョイスは完全に間違っている訳ではない。

 アゼルバイジャンのアリエフ大統領にしても、南北輸送回廊を通じたロシアとの協力や、BRICSや上海協力機構への接近等に関して、著者は警鐘を鳴らしている。戦争に貢献しない平和的国際協力は、西洋にとっては懸念事項と云う訳だ。

 著者はジョージアについては「曾ては旧ソ連圏に於ける民主主義再生の先駆者だったが、現在は徐々に親ロシアの独裁体制へと転落しつつある」と評している。彼が「民主主義再生」と言っているのは2003年のカラー革命(「バラ革命」)で権力を掌握し、2008年に5日間戦争を仕掛けた腐敗したオリガルヒのサーカシュヴィリの時代のことだ。著者の様な御用学者が「民主主義」を称揚する時、その中身は西洋の企業や投資家を儲けさせてくれる腐敗した独裁政治のことだと云うことがよく解る。

 そして著者が「独裁体制」と呼んでいるのは具体的には「外国人代理人法」を指している。彼は西洋のプロパガンダに従って、この法律はロシアに倣ったものだと主張しているが、そもそもこの法律は米国の同様の法がモデルになっている。そしてこれは外国から一定度の資金提供を受けている団体に登録を義務付けるだけの内容であって、現在の米国の様に外国メディアの積極的な弾圧や検閲等の条項は含まれていない。外国から資金提供を受けた団体に透明性を求めているだけのジョージアが「独裁体制」なら、米国は一体何なのだろう。超全体主義だろうか? いいや、著者は当然の様にこの問題はスルーしている。

 著者は「侵略者としてのロシア」が「一種の同情の復活」を享受していることは、「ウクライナと西洋のそのパートナー諸国にとって懸念事項に違いない」と心配している。「敵」に人間的共感を寄せる様な人間は問題であり存在すべきではないと云う訳だ。

 「東ドイツ、スロバキア、ハンガリー、アゼルバイジャン、ジョージアに於ける権威主義的傾向の高まりは、ウクライナ戦争から始まった訳ではないが、その結果として間違い無く加速している。」

 著者の頭の中では「戦争反対=親ロシア=権威主義」と云う図式が成り立っている様だが、毎度まいど使われるこの「権威主義」と云うのが具体的にどう云う概念なのか、何故それが非難されねばならないのか、例によって説明は一切無い。マントラの様に非難対象に対して繰り返されるだけで、議論を深めることには貢献せず、レッテルを貼る以上の機能は果たしていない。

 著者はこれらの国々の政治指導者達が「様々な国民感情を利用し、注意深く誘導している」と警告しているが、その感情として「ロシアとの戦争に巻き込まれるのではないかと云う長年の不安」(至極尤もな懸念だ)と、「COVID-19の副次的影響とウクライナ戦争によって引き起こされた生活費の危機への対応を誤った利己的な政治体制への憤り」を挙げている。COVID-19「対策」とウクライナ戦争への「対応」が国民生活を圧迫していることへの不満が高まっていることは、流石に無視出来ないらしい。だがそれらの極く正当な不満は、敵に「誘導」されたものに違いない、と云う訳だ。「敵」の存在は斯様に便利なものだ。

 また著者は現在の「リベラル」な「混乱」と比べて、「想像上のソ連圏の過去」と、「その強く、本質的には社会的に保守的な指導者達が課した『秩序』」に対する郷愁が有るとも述べているが、現在の行き過ぎた独善的な「自由主義」が多くの人々に不評であると云う自覚は有るらしい。実際、欧米の指導者達に比べると、プーチンの方がよっぽど、自制心に富んだ古き良きリベラリズムの良き面を体現している(プーチンは社会的にはロシアの伝統を重視もするが、政治的にはかなり西洋寄りの価値観の持ち主ではないかと思う)。ロシアは最近、自国のイデオロギーにうんざりした西洋市民に対して移民の扉を開いたが、大多数の伝統的な価値観の持ち主にとっては西洋よりもロシアの方が、自分達の生き方を守ってくれる国だと映るかも知れない。「自由」とは常に少数派の自由のことであると思っている西洋のリベラル勢には理解出来ないことかも知れないが。

 著者は昨年チェコポーランドで反ロシア強硬派やリベラル・グローバリスト派が選挙で勝利したことは、「他の旧ソ連圏で見られた様な民主主義の後退は、阻止・逆転させることが出来ることを示している」と述べているが、ポーランドの選挙などは露骨にドイツからの干渉を受けたものだったので、選挙結果が果たして本当にポーランド国民の主権的意志の発露であるかどうかは疑わしい。著者の様な御用学者にとって、「民主主義」にとってプロセスの正当性は大した問題ではなく、誰が当選するか、だけが重要らしい。著者が仄めかしているのはつまり、自分達の気に食わない候補が当選しないよう、どんな手を使ってでも「阻止・逆転」すべきだと云うことだ。

 ウォルフの記事はこう結ぶ。

 「これら全ての変化は、欧州及びグローバルな全保障秩序が不安定化していることの兆候である。ウクライナ戦争が何時、どの様に終結するかによって、どの様な新しい秩序が定着するかが決まる。

 しかし、右派と左派のポピュリズムが同時に台頭し、新旧の独裁政権とクレムリンとのイデオロギー的連携が見られることから、ウクライナで誰が勝利するかに関わらず、新たな自由主義秩序の再構築は確実とは程遠いと云う、極めて慎重にならねばならない兆候が得られる。」


 ウクライナ戦争は西洋にとって物理的な戦争である以前に先ずプロパガンダ戦争であり、主たる戦場はウクライナではなく人々の心の中だが、今や西洋の御用学者ですら人心の完全掌握には失敗したことを認めざるを得ない様だ。旧共産圏崩壊時、多くの東側市民が西側について現実離れした過大な幻想を抱いていたと指摘されることが有るが、資本主義社会の美徳たる「自由と繁栄」の中身が実際には放銃搾取であったと認識している人は多いだろう。

 御用学者はアメリカ帝国の一極覇権秩序を疑問視したり異論を唱えたりする者は一律に「ロシアのイデオロギーに感化されている」と云うことにしたい様だが、勿論話はそう単純ではないし、そうした物言いは寧ろ彼等の方が自分達のイデオロギーによって全世界を塗り潰したいと思っていることの裏返しだと言える。だがそれも上手くは行っていない。

9.11記念日:「陰謀論」か批判的思考か? 「熟考すべき8つのポイント」

2018/09/22初出の故グレアム・マックィーン教授の記事。9.11の穴だらけ矛盾だらけの公式説明を疑うことは「陰謀論」ではない。

 この記事で取り扱っている疑問は氷山の一角だ。9.11に関しては今だ答えられていない合理的な疑問が山程有る。事実に基付いて合理的な疑問に拘る人が「陰謀論者」なのではない、合理的な疑問を無視して思考停止する人の方が「陰謀否定論者」と呼ばれるべきだ。歴史の全てが陰謀によって動いていると云う陰謀史観は行き過ぎだが、歴史は往々にして陰謀によって大きく動いているので、陰謀全般を一律に却下するのは現実否認でしかない。9.11は実際にその後の世界の在り方を大きく変えたので、チョムスキーの様に「真相などどうでも良い」と云う態度は不誠実だ。
The 9/11 Anniversary: “Conspiracy Theory” or Critical Thinking? “Eight Points to Ponder” by Graeme MacQueen



 1) 9.11の公式説明に疑問を呈する人はよく「陰謀論者」として却下されるが、これは意味を成さない。陰謀とは、犯罪行為や不道徳行為を犯す為に2人以上の人が立てた秘密の計画のことを言う。9.11の攻撃には明ら​​かに陰謀が絡んでいた。

 2)一部の人は、アル=カイダを非難する公式説明が真実であることは、正気な人なら誰であろうと明らかだと考えている。だがこれは真実ではない。世論調査は、世界人口の半分以下しかこの確信を共有していないことを示している。

 3) ビン=ラディンが犯行の黒幕なら、何故FBIは彼を起訴しなかったのか? 2006年にFBI の広報官はこう説明した:FBIには、ビン=ラディンと9.11を結び付ける確固たる証拠が無かった。

 4)9.11の公式説明に疑問を呈する人は、誰もが雑な思考をするブロガーと云う訳ではない。関連する専門知識を持つ人も多い。米国家科学賞受賞者のリン・マーギュリスは、公式説明を支持する科学はとんでもなく弱いと述べた。3,000人以上の資格を持つ建築家やエンジニアが、世界貿易センターの破壊に関する公式説明に対して公に不満を表明している。

 5)2006年の査読済み論文で、ニューヨーク消防署の職員118人がツインタワーの崩壊中に爆発を目撃したと報告したことが明らかになった。爆発のパターンが目撃され、建物の周囲だけでなく上下にも広がっていた。これは、飛行機の衝突と火災によって建物が倒壊したと云う公式の主張に異議を唱えるものであり、制御解体を示唆している。

 6)2009年の別の査読済み論文で、世界貿易センターの塵の中から大量の特殊な爆発物と焼夷剤(ナノサーマイト)が発見されたと報告された。サンプルは現場の清掃が始まる前に採取された。これは制御解体説を裏付けた。

 7)世界貿易センターの破壊を説明する任務を与えられた国立標準技術研究所は、9.11の3番目の超高層ビルである47階建ての世界貿易センター7の完全崩壊について、多くの科学者を納得させる説明をすることが出来なかった。このビルには飛行機は衝突しなかったが、午後5時21分にビルは崩壊し、対称的に、突然に、自由落下の加速度で下降を開始した。この崩壊に関する全てのことが解体を示唆している。

 8)2018年4月、8人の弁護士がニューヨーク南部地区の米国検事に請願書を提出した。この請願書は、貿易センターが爆発物によって破壊された詳細な証拠を提示し、この連邦犯罪の証拠を大陪審に提出し、最終的には責任者を起訴することを要求している。



 明らかに、9.11 の公式説明を疑問視することには何のスティグマも結び付けられるべきではない。

 更に詳しく知りたい読者は、9..11調査弁護士委員会(Lawyers’ Committee for 9/11 Inquiry)の請願書と国際9.11コンセンサス・パネル(international 9/11 Consensus Panel)の調査結果を参照出来る。どちらもインターネットで見付けることが出来る。
プロフィール

川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
2022年3月に検閲を受けてTwitterとFBのアカウントを停止された為、それ以降は情報発信の拠点をブログに変更。基本はテーマ毎のオープンスレッド形式。検閲によって検索ではヒットし難くなっているので、気に入った記事や発言が有れば拡散して頂けると助かります。
全体像が知りたい場合は「カテゴリ」の「テーマ別スレッド一覧」を参照。

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