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ビーチサイドの人魚姫
俊樹

2019年9月Nikon D700で一眼レフデビュー。カメラは独学。2020年4月、Nikon D810へアップグレード。いつか写真展を開く為、日々精進。勿論、詩、小説、エッセイ、作詞は継続中。2021年夏、Nikon Z7Ⅱへと更にアップグレード。2022年10月、3回目の心臓手術に耐え抜き現在に至る。2023年8月ペースメーカー植え込み。

人生は枯れ葉のように(従兄を偲んで)。

2024年12月22日
その他 10
枯れ葉01

枯れ葉02

枯れ葉03

枯れ葉04



 毎年11月中旬辺りになると喪中ハガキが届くのだが今年は何の気配もなく過ぎたので、そろそろ年賀状の準備をと思っていた矢先の事だった。藤枝在住の従姉から連絡があった。喉を詰まらせ嗚咽の混じった震える声で「政人が亡くなった…」。私は暫く返す言葉が出ず従兄の顔が走馬灯の様に脳裏を駆け巡った。数年前に直腸が発覚し治療に専念し一旦は回復したものの、その後再発。そして再び抗がん剤等で治療を続けていたがその甲斐もなく僅か3ヶ月で力尽きてしまったと言う。60代にして命を落とすとは本人が一番無念の思いだったろうと思う。
 従兄はプロのサッカー選手だった。ジュビロ磐田の母体であるヤマハ発動機で活躍。絶頂期には「FWの神戸」と呼ばれ試合の度に新聞のスポーツ面を賑わせていた。小学生の時、サッカーボールを追い掛けて広いグラウンドを縦横無尽に走り回る姿を思い出す。そんな従兄を私は教室の窓から恨めしそうに眺めていた。自分は心臓が悪いため運動は禁止。体育の時間はいつも一人教室に取り残されていた。そんな私とは対象的な従兄は身体も大きく健康に恵まれ足も速かった。
 サッカーボールに自分の夢を乗せて走る姿が眩しかった。中学を卒業すると静岡中の高校からスカウトが殺到。勿論サッカーの名門「藤枝東高」も当然その中に含まれたが、何と父親が藤枝北高に勝手に決めてしまったようだ。本人はやはり藤枝東に行きたかったと後で聞かされた。
 そしてその勢いのままヤマハ発動機に入社しプロデビューを果たす。自分の夢を実現した18歳の若者は自信に満ち溢れ己の信ずる道を突き進んだ。そして月日は流れ従兄にとって最初の試練に遭遇する事となる。やはり従姉「三千代」からの電話だった。「政人が脳内出血で緊急入院」の知らせ。入院先はなんと私が最初の心臓手術を受けた「静岡市立病院」。私はその翌日新幹線に飛び乗りお見舞いへと急いだ。ベッドの傍らには従兄の奥さんが心配そうに付き添っており、私に一礼した。白い鉄パイプで出来た病院のベッドが妙に懐かしく感じる。従兄の意識はハッキリしているものの口が聞けず半身麻痺の状態だったが、私をひと目見るなりその大きな眼を更に大きくして驚きその内、涙をポロポロと溢し始めた。私が来ることは知らなかったようで、嬉しかったのだろうと思う。闘病生活の長い私は自分が誰かを見舞う事は滅多になく、いつもその逆でお見舞いばかり頂いているため、見舞うことの尊さ有り難さをこの時に初めて実感した。
 従兄は見た目は少し怖い部分もあったが、心根は実に優しく思い遣りに充ちていた。私の父が亡くなった時、真っ先に駆け付けてくれ「何かあったら俺に相談しろよ」と父の亡骸の前で小さく震えていた自分を温かく励まし力付けてくれた。サッカーで鍛えた強靭な身体の持ち主だった事から半身麻痺からの回復も早かった。自宅に戻ってからはリハビリの日々だったが、言葉も話せるようになり杖を付きながらも自力で歩けるまでになった。ただ、懸念として残ったのは病気知らずの健康な身体に恵まれた事が従兄にとっては仇となり自信過剰になっていたのではないかと思われる。
 人生は枯れ葉の如し、散って土に還る。従兄はきっと今頃は空の彼方でサッカーボールを追い掛けているかも知れない。心より御冥福をお祈り申し上げます。
※暫くの間、喪に服すため新年のご挨拶は控えさせて頂きますので宜しくお願いします。
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俊樹
この記事を書いた人: 俊樹
本名/神戸俊樹
静岡県藤枝市出身。
19歳の時に受けた心臓手術を切っ掛けに20歳から詩を書き始める。
2005年3月詩集天国の地図を文芸社より出版、全国デビューを果たす。
うつ病回復をきっかけに詩の創作を再開。
長編小説「届かなかった僕の歌」三部作(幼少編・養護学校編・青春編)父を主人公にした(番外編)を現在執筆中。
詩、小説、エッセイ、作詞など幅広く創作。
2019年9月、一眼レフデビュー。Nikon D700を使用。
2020年4月、Nikon D810にアップグレード。
2021年夏、ミラーレス一眼 Z7Ⅱへと更にアップグレード。
2022年10月3度目となる心臓手術を受け、大成功を収める。
2023年8月徐脈性心房細動で心停止(失神)したため、ペースメーカーを植え込む。

コメント10件

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limalima

この写真は、
幽玄、わび、さび、の中の、さびを映像にした傑作ですね。

2024年12月22日 (日) 07:23

ネリム

おはようございます。
枯れ葉綺麗ですね。

2024年12月23日 (月) 08:15

sado jo

最後の一葉(オー・ヘンリー作)

重い肺病を患って最期の時を待つ若い画学生『ジョアンナ』は向かいの壁にへばり付いた枯れ葉を見て「あの落ち葉と私の命とどちらが早く失われるか」と人生に絶望していた。
嵐が吹き荒れたある日の朝に窓の外を眺めると、何と枯れ葉は嵐にもめげずに壁にへばり付いていた…その姿に勇気をもらった彼女はがんばって重篤な肺病を克服したのだった。
後になって彼女は真実を知った…階下に住む老いた画家の『ベールマン』が病で絶望している彼女を励まそうと、あの嵐の夜に壁に落ち葉の絵を描いたを事。そしてそれが原因で肺炎を患って亡くなった事を…彼女の命を救った壁の枯れ葉は売れない老画家の人生最大の傑作だった。
…と言う美しい短編小説を思い出しました。

2024年12月23日 (月) 17:25

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2024年12月23日 (月) 22:53

荒野鷹虎

俊樹さんへ!!

眼科は、意外に眼底がきれいで、手術しないで済みました。強い抗炎症剤を調整して終わり助かりました。☆彡☆彡

2024年12月24日 (火) 18:50

山田

こんばんは

人生は出会いと別れの連続が人生です
一番辛いのは自分との出会いの別れが来る時です
この恐怖から逃れるために認知症があります
本人は天国の楽園ですが、介護する人は大変です

2024年12月24日 (火) 21:28

雪野繭

今年は私のところでも従兄弟が亡くなりました。
死因は肝臓癌です。
12年前にも別の従兄弟が肝臓で亡くなっているので、
これで2人目です。
従兄弟とは血縁が濃いので、次は私かも?
と、不安になっています。
若い人が亡くなるのは、とても辛いことです。
「人間は歳の順に死ぬんじゃない。」
という母の言葉を思い出しているところです。

2024年12月25日 (水) 21:31

apricot・a

従兄さん、ご愁傷様でした。
寂しい事ですね。
本当に人生って分からないもので、思いもよらぬ事がおきるもの。
私もまさかの癌を経験しましたし、これから先も平坦な道とは限りません。
人生は枯れ葉のように・・・心打たれるお写真でした。

2024年12月27日 (金) 09:37

みけ

従兄さん 急なお別れでしたね…
プロのサッカー選手だったとのこと。
サッカー観戦が好きなので
なんだかすごく身近に
感じてしまいました…

写真の
紅の葉が
一生懸命生きてこられた
従兄さんと重なるようでした。

今年もあと数日。
たくさんの素敵な
お写真ありがとうございました✨
まだまだ寒さもこれからですが
どうぞお元気で
良いお年をお迎えくださいね🍀
(*´ω`*)

2024年12月27日 (金) 20:37

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2024年12月28日 (土) 18:03