トランプ、ツイート:ホワイトハウス声明:中国を利用して北朝鮮に圧力 (2018年8月30日)
30日、トランプがツイート。
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ホワイトハウス声明
米中間の大きな貿易紛争により、北朝鮮が中国から大きな圧力を受けていると、トランプ大統領は強く感じている。また、我々は中国が北朝鮮に対して、現金、燃料、肥料、そして様々品目の相当な量の援助を提供していることも知っている。これは、(米国にとって)助けにならない。しかし、大統領は、金正恩との関係はとてもよく温かいものであり、現時点で米韓軍事演習に多くの金を使う必要はないと信じている。一方で、大統領が韓国や日本との合同軍事演習をするという選択をすれば、直ちに開始することもできる。もし演習を行う決定をすれば、それはこれまでにない大規模なものとなろう。米中間の貿易紛争とその他の問題については、トランプ大統領と中国の偉大な習近平主席により解決されるであろう。(中国との)関係と結びつきは依然として大変強い。
Source: Twitter, 2018/08/30
Source: Twitter, 2018/08/30
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マティスが、米韓軍事演習の継続的な中断はしないと発言したが、「するかしないかは大統領次第」とし、ただし、再開することになればその規模は「史上最大」となるであろうとも北朝鮮に警告を発している。
北朝鮮もトランプに対して基本的には同じスタンスであるが、トランプも「元帥様」との関係は「とてもよく、温かい」としている。現時点だけ切り出すと、これまでの米朝交渉と同じように、話し合いは行われたが霧散するというコースを辿っているようにも見えるが(それを期待している人々は、米国にも日本にも韓国にもいる)、最大の違いは「最高領導者」と「大統領」が「よい関係」を維持しようとしている点である。北朝鮮としては、「最高領導者」が微笑みながら握手をしたい相手が悪人であったとなれば、これは、いくら米国を「二面戦術」だと非難したところで、「最高領導者」の判断ミスとなり、彼の業績、ましては初めての大きな外交デビューに傷を付けることになる。また、トランプも政治的な冷静さからではなく、感情的に善悪の判断をするので、恐らくは「元帥様」に対して悪い感情は持っていないはずである。もちろん、トランプとて、「元帥様」の悪口を言ったとたんに、交渉のトラックは断絶し、昨年と同じ局面に逆行、それは、いくら「中国が悪い、北朝鮮が悪い」と言ったところで、「元帥様」同様、彼の外交的判断のミスと評価され、当然のことながら、11月の中間選挙に悪影響を及ぼすことになる。
中国に対する不満は、今回かなりはっきりとした。前回のツイートでは、「中国との貿易紛争」と北朝鮮を無理矢理に結びつけている感が強かったが、今回の「声明」では、「貿易紛争」自体は存在するものの、具体的に提示されている「現金、燃料、肥料、そして様々品目の相当な量の援助を提供」を問題視し、これが「(米国にとって)助けにならない」としている。ポムペオの7月訪朝の結果が芳しくなかった理由について、トランプは、中国からこうした「援助」を受けられるようになったので、北朝鮮が強気になったと考えているのであろう。その系では、シンガポール会談直後の金正恩訪中は、大きな意味があったのであろう。米国は、その内容を読み間違えたまま、ポムペオを平壌に派遣したので、想定外の強い反発を北朝鮮から受けた可能性がある。
そう考えると、今回のポムペオ訪朝中止も、訪朝して決まったことを、すぐさま習近平訪朝でひっくり返されることを警戒した結果であろう。だからこそ、朝米交渉で中国が障害になっていることをこれほどまでに強調しているのであろう。トランプは交渉をするつもりは充分にあるが、二回目の失敗はしたくない、というのが米国の本音ではないだろうか。
さらに、「米韓軍事演習」についても、再開されれば「史上最大規模」と言っている。これが、北朝鮮に対する威嚇であることは上に書いた通りであるが、同時に「日本」についても言及することで、その演習が北朝鮮だけをターゲットとしたものではなく、中国もターゲットとしたものであることを暗示している。最近、中国はあまり韓国に配備されたサードについて言及しなくなったようだが(中国外務相記者会見をきちんと読んでいないが)、また、北朝鮮を口実にサードなどの配備が強化されれば中国は嫌であろうし、ましてや、北朝鮮情勢などお構いなく、軍備強化を進めている日本は、いっそう「北朝鮮」を口実に、事実上、中国もターゲットにした軍事力強化に邁進するであろう。いずれにせよ、そういう状況が再現されるのは東北アジアにとっては不幸な事態である。
「米中間の貿易紛争により、北朝鮮が中国から大きな圧力を受けている」としつつ、「(中国が)相当な量の援助を提供」としているといっているところは、理解に苦しむが、上に書いたことを前提にすれば何となく分かる。中国に対しては北朝鮮へのバックドアをきちんと閉めなければ、さらに強い貿易圧力を掛けると威嚇し、北朝鮮に対してはそうなれば「相当な量の援助」を受けられなくなるのだから、さっさと米国の交渉に応じ、非核化を進めなさいというメッセージと解することができる。一見矛盾しているが、結果としては極めて米国にとって妥当である。
いずれにせよ、習近平訪中が9日前後に実現し、文在寅訪朝が12日前後に実現する中で、様々な動きが出てくるであろう。トランプは、「大変よく、温かい」関係にある「元帥様」を米国に呼びたいと思っていることは間違いないし、そしてその際、自分に対する大きな手土産を持ってこさせることを画策しているはずだ。
「偉大な指導者習近平」が、それをどう受け止めるか。米中貿易紛争は、政治的にも経済的にも習近平にとっての方が痛手になるはずだが。
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ホワイトハウス声明
米中間の大きな貿易紛争により、北朝鮮が中国から大きな圧力を受けていると、トランプ大統領は強く感じている。また、我々は中国が北朝鮮に対して、現金、燃料、肥料、そして様々品目の相当な量の援助を提供していることも知っている。これは、(米国にとって)助けにならない。しかし、大統領は、金正恩との関係はとてもよく温かいものであり、現時点で米韓軍事演習に多くの金を使う必要はないと信じている。一方で、大統領が韓国や日本との合同軍事演習をするという選択をすれば、直ちに開始することもできる。もし演習を行う決定をすれば、それはこれまでにない大規模なものとなろう。米中間の貿易紛争とその他の問題については、トランプ大統領と中国の偉大な習近平主席により解決されるであろう。(中国との)関係と結びつきは依然として大変強い。
Source: Twitter, 2018/08/30
Source: Twitter, 2018/08/30
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マティスが、米韓軍事演習の継続的な中断はしないと発言したが、「するかしないかは大統領次第」とし、ただし、再開することになればその規模は「史上最大」となるであろうとも北朝鮮に警告を発している。
北朝鮮もトランプに対して基本的には同じスタンスであるが、トランプも「元帥様」との関係は「とてもよく、温かい」としている。現時点だけ切り出すと、これまでの米朝交渉と同じように、話し合いは行われたが霧散するというコースを辿っているようにも見えるが(それを期待している人々は、米国にも日本にも韓国にもいる)、最大の違いは「最高領導者」と「大統領」が「よい関係」を維持しようとしている点である。北朝鮮としては、「最高領導者」が微笑みながら握手をしたい相手が悪人であったとなれば、これは、いくら米国を「二面戦術」だと非難したところで、「最高領導者」の判断ミスとなり、彼の業績、ましては初めての大きな外交デビューに傷を付けることになる。また、トランプも政治的な冷静さからではなく、感情的に善悪の判断をするので、恐らくは「元帥様」に対して悪い感情は持っていないはずである。もちろん、トランプとて、「元帥様」の悪口を言ったとたんに、交渉のトラックは断絶し、昨年と同じ局面に逆行、それは、いくら「中国が悪い、北朝鮮が悪い」と言ったところで、「元帥様」同様、彼の外交的判断のミスと評価され、当然のことながら、11月の中間選挙に悪影響を及ぼすことになる。
中国に対する不満は、今回かなりはっきりとした。前回のツイートでは、「中国との貿易紛争」と北朝鮮を無理矢理に結びつけている感が強かったが、今回の「声明」では、「貿易紛争」自体は存在するものの、具体的に提示されている「現金、燃料、肥料、そして様々品目の相当な量の援助を提供」を問題視し、これが「(米国にとって)助けにならない」としている。ポムペオの7月訪朝の結果が芳しくなかった理由について、トランプは、中国からこうした「援助」を受けられるようになったので、北朝鮮が強気になったと考えているのであろう。その系では、シンガポール会談直後の金正恩訪中は、大きな意味があったのであろう。米国は、その内容を読み間違えたまま、ポムペオを平壌に派遣したので、想定外の強い反発を北朝鮮から受けた可能性がある。
そう考えると、今回のポムペオ訪朝中止も、訪朝して決まったことを、すぐさま習近平訪朝でひっくり返されることを警戒した結果であろう。だからこそ、朝米交渉で中国が障害になっていることをこれほどまでに強調しているのであろう。トランプは交渉をするつもりは充分にあるが、二回目の失敗はしたくない、というのが米国の本音ではないだろうか。
さらに、「米韓軍事演習」についても、再開されれば「史上最大規模」と言っている。これが、北朝鮮に対する威嚇であることは上に書いた通りであるが、同時に「日本」についても言及することで、その演習が北朝鮮だけをターゲットとしたものではなく、中国もターゲットとしたものであることを暗示している。最近、中国はあまり韓国に配備されたサードについて言及しなくなったようだが(中国外務相記者会見をきちんと読んでいないが)、また、北朝鮮を口実にサードなどの配備が強化されれば中国は嫌であろうし、ましてや、北朝鮮情勢などお構いなく、軍備強化を進めている日本は、いっそう「北朝鮮」を口実に、事実上、中国もターゲットにした軍事力強化に邁進するであろう。いずれにせよ、そういう状況が再現されるのは東北アジアにとっては不幸な事態である。
「米中間の貿易紛争により、北朝鮮が中国から大きな圧力を受けている」としつつ、「(中国が)相当な量の援助を提供」としているといっているところは、理解に苦しむが、上に書いたことを前提にすれば何となく分かる。中国に対しては北朝鮮へのバックドアをきちんと閉めなければ、さらに強い貿易圧力を掛けると威嚇し、北朝鮮に対してはそうなれば「相当な量の援助」を受けられなくなるのだから、さっさと米国の交渉に応じ、非核化を進めなさいというメッセージと解することができる。一見矛盾しているが、結果としては極めて米国にとって妥当である。
いずれにせよ、習近平訪中が9日前後に実現し、文在寅訪朝が12日前後に実現する中で、様々な動きが出てくるであろう。トランプは、「大変よく、温かい」関係にある「元帥様」を米国に呼びたいと思っていることは間違いないし、そしてその際、自分に対する大きな手土産を持ってこさせることを画策しているはずだ。
「偉大な指導者習近平」が、それをどう受け止めるか。米中貿易紛争は、政治的にも経済的にも習近平にとっての方が痛手になるはずだが。