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    「俺は朝鮮人だ-世界プロレスリング強者 力道山-」:北朝鮮版の力道山ストーリー (2013年10月20日 「朝鮮中央TV」)

    一つ前に書いた記事の「祖国賛歌」の銀河水楽団クレジットがいつから消えたのかと過去の動画を眺めていたら、おもしろい番組があった。白黒系の番組は、大体が古い金日成ストーリーなので飛ばしてしまうのだが、このおもしろい力道山ストーリーもほとんどが古い日本のフィルムを使用している白黒番組のため、一緒に飛ばしてしまっていたようだ。

    私も父親がプロレス番組を見ていたこともあり、特に高校時代にはプロレスは大好きだった。テレビのプロレス中継は欠かさず見て、翌日はプロレス愛好仲間とその話題で盛り上がり、さらに技の練習もやっていた。実際の試合は、一度しか見に行ったことがないが、タイガージェット・シンと上田馬の助のタッグが日本チームと戦う試合だった。

    私がテレビを見出した頃は、既に力道山は亡くなっていたが、アントニオ猪木やジャイアント馬場など、力道山の弟子たちが大活躍している時代で、力道山の話は度々披露されていた。韓国・朝鮮系レスラーとしては、大木金太郎(金一)が活躍していた時代でもある。あとは、キムドクを名乗るレスラーもいたが、在日韓国人だったのだろうか。

    「俺は朝鮮人だ-世界プロレスリング強者 力道山-」
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    番組は「(今日我々は)朝鮮民族、金日成民族の尊厳と自負心を全世界に高く誇っています」、「しかし、朝鮮人・力道山は、世界プロレスリング強者として体育人の名誉を世界中に轟かせ、裕福な生活を送っていましたが、今日、我々の体育人の誇り高いその言葉をなぜ、生命の最後の瞬間に残したのでしょうか」という問いかけをし、「国を失った受難の歳月、日本侵略者の悪辣で狡猾な策動の犠牲となり、不本意にも日本人となった彼の深刻な運命が語っている」と結論を先に述べるところから始まっている。

    力道山の生家を訪ねるアントニオ猪木。猪木についての言及は番組中にはなく、「(力道山は)咸鏡南道洪原郡で生まれた朝鮮人・金信洛でした」と紹介している。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    生家の庭には石碑のような物が建てられており、「力道山」と刻まれている。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    力道山の家族
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    右上にいる2人の男性が力道山の兄たちであるが、彼らも朝鮮相撲の力士として有名であったという。この兄たちが力道山の誕生日に白米を大盛りにして与えたら、力道山は大人が食べる量の4倍を食べてしまったという。力道山は15歳の時から相撲力士として名をはせ、多くの賞を得ていたという。

    番組は、力道山が来日した理由を「日帝の朝鮮民族抹殺政策が絶頂に至った当時、金信洛(力道山)の驚くべき力と体格に目を付けた狡猾な日本人、百田イノスケに騙され、日本に連れて行かれることになりました」と説明している。写真は百田イノスケ
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    そして、力道山は「結婚したばかりの妻と離別し、1939年2月」に日本に渡ったと説明した上で、「日帝の朝鮮民族抹殺政策の犠牲となり、突然、不本意にも日本人にされた金信洛」と下の写真を紹介している。「名前:百田光浩、戸籍:百田イノスケ、本籍:長崎県大村」と書かれている。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    そして、「狡猾な日本人は力道山という名前を付け、古代ローマの奴隷武士のように日本相撲力士に仕立て上げました」と説明して下の写真を見せる。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    その後、「偽日本人、力道山になっても日本の奴らを皆打ち破る復讐心に燃え、血と汗で日本相撲一流級にまで到達しました」と下の写真を紹介する。股間に微妙なぼかしが入っているところが何とも北朝鮮らしい。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    しかし、「力道山は、朝鮮人に対する民族的蔑視に耐えきれず、日本相撲の象徴である髷をばっさりと切り落として、プロレスリング界に入りました」と髷を切った力道山の写真を見せる。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    力道山はハワイに渡りプロレスのトレーニングを受ける。その中で彼の得意技である「空手チョップ」を生み出すわけであるが、その説明がなかなか面白い。「手刀打撃(北朝鮮では、空手チョップをこう訳している)、これは力道山が朝鮮虎の気質から見いだしたプロレスリングの新たな技法でした」
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    番組では力道山の最初の大きな試合として「全日本プロレスリング、ヘビー級強者、山口(利夫)」との試合を紹介している。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    「素早い力道山のかわし技でリングアウトし、再びリングに登ってこられなかった山口」とナレーション。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    続いて番組は、力道山対木村政彦の試合、いわゆる「昭和の巌流島」を紹介する。ただし、これはシーケンスが逆で、インターネットで調べた限りでは、山口との対戦が1955年1月26日なのに対して、木村との対戦は1954年12月22日となっている。

    木村との試合を説明するナレーションを聞いていて吹き出してしまった。ナレーションは「続いて力道山は、世界柔道の帝王と誇る木村の挑戦状を受け取りました。この挑戦状には、力道山に日本の服を着させ、日本の名前まで付けて日本人に仕立て上げたが、朝鮮人・力道山の気質を砕こうとする日本反動共の狡猾な陰謀が隠されていました」と言っているが、私が吹き出したのは「日本反動共の狡猾な陰謀」という部分である。ここで「日本反動」が登場するとは想像もしていなかったからである。

    木村を投げる力道山
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    力道山と木村の「昭和の巌流島」対戦の契機となったのは、仲間割れして両人が組んでいたタッグが解消したことによるという説明がインターネットには書かれているが、番組ではこの部分も順序を逆転させ「(力道山は)、全日本レスリング強者(チャンピオン)の地位を堂々と占めました。すると日本反動共は、力道山を利用して、木村とタッグを組ませタッグマッチに出させて自らの体面を保とうと悪辣に策動しました」と説明している。

    そして、力道山の目標が「アジアの最強者になること」であるとした上で、キングコングとの試合を紹介する。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    アジアヘビー級王座を獲得した力道山は、「太平洋沿岸選手権争奪戦」と「タッグマッチ選手権争奪戦」に挑む。ナレーションは力道山が「西洋第一の神話を打ち砕き始めました」、「虎のような力道山の前でブルブルと震える米国の選手たち。力道山の強力な打撃におののき、米国選手はプロレスリング強者の体面を失っていまいました」と説明している。実に、「朝鮮の虎」が「日本反動」のみならず、米国人を打ち破っていくという「痛快な」説明である。朝鮮人民には分からないだろうが、番組では日本のファンが「力道山!力道山!」と応援している声も流れている。友好的日本人民は、「日本反動」に力道山が日本人であると騙され、日本人・力道山を応援しているということなのであろうか。下は米国選手が勘弁してくれとばかり手を挙げている場面。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    番組は続けて、ロメリ(朝鮮語からの音訳)、ボボブラジル、ジャンクレー・サライ(音訳)、フレッド・ブラシ-等との試合を紹介し、力道山は「血を吸う吸血鬼や刀を振り回す殺人者と生死をかけた対決戦をしなければなりませんでした。このように、力道山の値が上がり、人気が高まると、日本反動共は力道山が朝鮮人ではなく、元々日本人であるという嘘の宣伝しつつ、彼が競技に出場する毎に大規模な歓迎事業を行い、その実況中継をテレビで行うなど、騒ぎ立てました。それに踊らされた日本人は試合を見ようと競技場に押しかけ、交通が遮断されたり、負傷者を出すなどの醜態を演じました」と説明し、再び「日本反動」が登場する。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    インターネット情報では、力道山は自らが朝鮮人であることを少なくともこの時期は隠したがっていたということになっている。しかし番組では「力道山は、高まる人気と名誉に陶酔し、自分が奴らの政治的な道具として使われていることに気付かなかっただけではなく、自分が朝鮮人であっても馬鹿にされることはないという満足感に酔っていました」と説明している。

    続けて番組では、力道山が米国に渡りルーテーズと試合をし「アジア人としては初めて、世界プロレスリング重量級最高権威者(インターナショナル・ヘビー級王者)」になったことを紹介する。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    デストロイヤーとの試合の紹介では、「見ただけで人々の気持ちを不安にさせる悪魔と呼ばれる米国のデストロイヤーがインターナショナル・ヘビー級ベルトを狙って挑戦してきました。四の字固めにかかれば担架で運ばれると言われるデストロイヤーの特技に力道山はかかってしまいました」と解説している。ナレーションは真面目にやっているつもりなのだろうが、日本のプロレス中継でも使えそうな表現である。また、BGMも「米帝」が朝鮮を「侵略」する場面で使われる系のものを効果的に使っている。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    インターネット情報によると、デストロイヤーとのこの試合は「両者試合続行不可能」とレフリーにより判断されたということであるが、番組では場外で力道山がデストロイヤーにバックドロップを食らわし、「不屈の人間力道山は、不死神のように立ち上がり最後の力強い攻撃を加えました」と説明した上で、レフリーが力道山の手を挙げている映像を見せている。「勝った」とは言っていないものの、実に「狡猾」である。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    番組には、力道山の活躍を解説する東京スポーツ新聞社・編集局長の桜井康雄さんも登場する。顔は覚えていないが、私がプロレスを見ていた頃、解説者としてしばしば登場してたこの名前はまだ記憶に残っている。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    番組は、桜井さんの日本語の話の上に朝鮮語ナレーションをかぶせているので、桜井さんの声はほとんど聞き取ることができない。朝鮮語ナレーションを翻訳すると「1953年からのテレビ普及は凄かった。それは、力道山のプロレスが見たいということで急速に拡大した」となっている。桜井さんが何を語ったのかは別として、この点については事実である。力道山の試合が映っているテレビの広告。新横浜のラーメン博物館では、本物のこのようなテレビで力道山の試合の一部を流している。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    しかし、それに続く解説がまたおもしろい。番組は、「古代ローマの武士奴隷のように生死を賭けた試合で獲得した力道山の名誉で『金(かね)のにわか雨』を迎えた日本反動共は、それにより敗戦国の経済を復活させ、転落した日本人の士気を高めようという政治的目的に狡猾に利用しました」と力道山を応援する日本人の姿を紹介する。番組制作者が意識しているのかどうかは分からないが、この時期に日本に「金のにわか雨」をもたらしたのは力道山ではなく、朝鮮戦争特需である。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    続けて番組では「日本反動共の狡猾な陰謀を知るはずもない力道山は、こうした血と命を賭けた生死を分ける戦いで勝利するたびに、自分が不本意にも日本人の名前を持つようになったが、朝鮮人であるということを世間がよく知っている以上、同胞が喜んでくれると信じました。しかしこれは、あまりにも間違った考えでした。力道山の勝利を祝福する手紙が日本各地からたくさん寄せられましたが、その中に同胞の名前は一つもなく、通りや飲食店で会う同胞さえも無視したり馬鹿にした視線を向け、友人たちも寄りつかなくなりました」と力道山の苦悩を紹介する。

    このような苦悩を抱えた力道山は「人々が寝静まった深夜、東京から新潟まで乗用車で駆けつけ、夜が更けるのも忘れて帰国船を眺めながら苦悩の涙、男の涙を人知れず流しました」とナレーションは説明している。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    そして、「1961年11月5日、力道山は会いたかった娘と異国の地で初めて会いました」と番組で紹介している。「異国の地」というのが北朝鮮を指しているのか日本を指しているのか、はたまた第三国を指しているのかは分からない。写真は「1995年に撮影された力道山の娘、金ヨンスク」
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    その時、力道山は「敬愛する金日成将軍が、父親が米国の選手に痛快に空手チョップを食らわせる競技場面を見て、過分の褒め言葉と信頼を下さったという娘の話を聞いて大変感激し、俺は金日成将軍様に最後まで従うことにした以上、怖い物はない」と語ったという。しかし、番組は力道山が娘と共に写っている写真は紹介していない。写真は力道山の娘が書いたという本より「愛の主役」という章。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    「こうして英明な民族の男として生まれ変わった力道山は、自分の意志を盛り込み、父なる首領様に挨拶文を差し上げた」
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    力道山が金日成に贈呈したというベンツとそれ(乗用車一台)が記された手紙
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    金日成はこれを受けて力道山を高く評価し、力道山はその後、北朝鮮との自由往来を求める在日朝鮮人の運動に協力したり、東京オリンピックに参加する北朝鮮選手に宿所や費用などを提供することを約束したと番組では説明している。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    しかし、祖国を取り戻し活躍を続けた力道山も不慮の死に直面する。番組ではこの死について「卑怯な日本反動共はチンピラを使って、彼を殺害する卑劣で悪辣な蛮行を働いた」と説明している。インターネット情報では、力道山はナイトクラブで暴力団員とケンカになり、腹をナイフで刺された傷が原因で死亡したということになっている。番組では、その詳細こそ語らないが、酒瓶のような物を映し出している。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    そして、「俺は、俺がなぜ死ぬのか知っている。俺が朝鮮人だからだ。そうだ、俺は朝鮮人だ。力道山ではなく、朝鮮人・金信洛だ。俺の人生は長くなかったが、偉大な首領金日成将軍様を頂いた朝鮮人として生きて、死んでいくということを光栄に思う・・・」という力道山の最後の言葉を紹介して番組を締めくくっている。
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    Source: KCTV, 2013/10/20放送

    韓国・統一部北韓情報センターHPでこの番組について確認してみたところ、再放送とは書かれていなかった。白黒映像は総連関係者が北朝鮮に過去に持ち込んだ物を使ったのであろうが、なぜこのタイミングでこうした番組を作ったのかは分からない。「体育強国」建設と民族意識を結びつける目的があったのかも知れないが、それにしてもである。この記事を書く際に使った「インターネット情報」は、ほぼ全てwikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%9B%E9%81%93%E5%B1%B1)からである。残念ながら、それ以外のソースが明確な情報を見つけ出すことができなかったし、力道山関連の書籍もないし、購入する気もないからである。wikipediaには「北朝鮮では、『力道山は日本の憲兵に拉致されて日本の相撲界に入門、独力で逆境を乗り越えた民族の英雄』とするデマも伝えられているという」という記述がソースを記すことなく書かれているが、この番組はそのソースとして使えるような気がする。

    「祖国賛歌」:銀河水管弦楽団名が消された (2013年10月28日 「朝鮮中央TV」)

    その後も銀河水管弦楽団バージョンの「祖国賛歌」は度々「朝鮮中央TV」で流されている。良い曲ではあるが、「またか」と飛ばしてしまっていたのだが、昨日、生放送で聞きながら何となく画面を見ていたら、「銀河水管弦楽団」名が削除されていた。「朝鮮中央TV」で流される曲は必ずしも演奏楽団のクレジット入りというわけではないので、単にその扱いにしただけなのかも知れないが、一応注目しておく必要はある。いつからクレジットなしのバージョンを流し始めたのかは、遡って調べてみないと分からない。

    10月9日に放送された際には楽団名のクレジットがあった。
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    Source: KCTV, 2013/10/9放送

    10月28日の放送では、背景は同じだがクレジットはなくなっている。
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    Source: KCTV, 2013/10/28放送

    なおuriminzokkiriには、現時点で楽団クレジット入りのバージョンがそのままアップロードされている。

    「人民のための乗馬奉仕基地をお作り下さり」:ミリン乗馬クラブ建設記録映画 (2013年10月25日 「朝鮮中央TV」)

    「ミリン乗馬クラブ」が10月25日に竣工した。「朝鮮中央TV」は同日、タイトルのような「朝鮮記録映画」を放送した。

    「ミリン乗馬クラブ」全景
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    「ミリン乗馬クラブ」のマーク。どこかで見たような気がして、JRAのマークと比べてみたが似ているとも似ていないとも言い難い。馬の顔を題材としているので、自ずと似てきてしまうのであるが、 International Federation of Horseracing Authorities(国際乗馬機関連盟)のHPからリンクされている各国団体のマークを見ると、馬の顔部分だけというのは少数で、実に多種多様である。「記録映画」の中頃では、金正恩さんが登場し、「(図案を)ウリ式に創作したから実に良い」と語ったと紹介している。

    International Federation of Horseracing Authorities HP, http://www.horseracingintfed.com/home.asp
    Asian Racing Federation HP, http://www.asianracing.org/

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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    「装飾図案」の数々
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    「記録映画」には「史跡碑」が登場するが、碑文をよく読むと興味深いことが書かれている。碑文には「偉大な領導者金正日同志と敬愛する最高司令官は、2008年11月4日をはじめとし」と金正恩さんが後継者指名される2年前に既に金正日さんと共に現地指導をしていたような記述がある。しかし、ナレーションでは金正日さんがミリン乗馬クラブを訪れたのは「敬愛する元帥様がミリン地区にある騎馬訓練場を訪問してくださったのは、2012年11年18日でした」と述べている。石碑に刻まれた日にちは意義がある日にちなのだろうが、それを敢えて外して金正恩時代の日にちを挙げているのには何か意味があるのだろうか。
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    確かに、下の写真にあるように乗馬服を着用した金正恩さんが、軍事施設である騎馬訓練場の民間施設への転用を指示したのはこの日であった。拙ブログでもそのことについては記事にしたはずである。
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    お爺さん(金日成)もお父さん(金正日)も乗馬好きであったことが、やはり「ミリン乗馬クラブ」建設と関係があることは間違いない。お爺さんの時代から「人民に乗馬をさせる」夢はあり、「ミリン乗馬クラブ」もその系では遺訓貫徹の一環ということであろう。

    「乗馬は本当に良い運動です。金日成」
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    「乗馬の仕方を初めからきちんと学ばなければなりません。金日成」
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    「乗馬は人の健康に大変良い運動です。金正日」
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    そして、「代を継いで」実践段階に至り、「人民に乗馬の仕方を教えてやらなければなりません。金正恩」
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    この記録映画を見ていて思ったのだが、建設用重機をかなり意図的に映し出している。他の建設現場では、どちらかというと大量の軍人建設者が建設作業をする姿を強調していたが、この「記録映画」には重機が多く登場する。工事の性格上、たくさん動員したのかも知れないが、そうでなければ中国からの中古建設用重機輸入が拡大しているのかも知れない。

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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    乗馬服には金正恩さんが相当に気を遣ったと「記録映画」では紹介している。乗馬服は輸入するのかと思いきや、どうやらこちらは自国内生産のようだ。「愛の乗馬服」というスローガンが掲げられた乗馬服工場。
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    ムンス・ウォーターパークもそうであったが、このところ夜中の現地指導が増えているようだ。理由は不明だが、「建国節」の10月10日までの完工の見通しが立たなくなり、焦ったのであろうか。
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    続いて、「ミリン乗馬クラブ竣工式」を紹介するニュースがあった。ミリン乗馬クラブの看板には英文が並記されている。
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    竣工式終了後、参加者は「革命史跡教養室」を参観したり、模範乗馬を観覧したりした。乗馬クラブには指導者がいなければ朝鮮人民が「初めから乗馬を学ぶ」ことはできないが、模範乗馬を見ていて思ったのは、人民軍の騎馬部隊員を指導者としていくらでも使えるではないかということである。北朝鮮にはアマチュア乗馬クラブなどこれまでないわけだから、乗馬ができるのは軍人だけであるはずだ。実際、模範乗馬では軍服を着た軍人が多数登場する。芝生の上を走っているのは「乗馬服」を着た人々であるが、この人たちも人民軍人であろう。
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    子供たちの乗馬を指導しているのも、人民軍人であろう。
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    Source: KCTV, 2013/10/25放送

    「建国節」には間に合わなかったものの、「ミリン乗馬クラブ」も完成した。前後するが、10月22日から23日に開催された「第4次中隊長、中隊政治指導員大会」に参席した金正恩さんが嬉しそうな顔をしていたのも、計画した「記念碑的建造物」が一応全て完成したからであろうか。「第4次中隊長、中隊政治指導員大会」の様子は今日(26日)「朝鮮中央TV」で「朝鮮記録映画」が放送されたが、金正恩さんの演説肉声は流れなかった。しかし、いくつか興味深い点があるので、これは別記事にしようと思う。

    「人民の幸福と喜びが限りなく溢れる大同江岸の新たな姿、最上の水準で立派に建てられたムンス水遊び場の竣工式開催」 (2013年10月16日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩さんが度々現地指導した「ムンス・ウォーターパーク」が完成した。労働党創党記念日(10月10日)よりも1週間ほど遅れたが、それでも最後に金さんが現地指導したときの様子からすれば、「馬息嶺速度で奇跡が創造された」といってもよい。

    労働党創建記念日に合わせた「記念碑的建造物」は、過去記事でも予想したとおり「ミリン乗馬クラブ」を除き、全て完成した。記憶が正しければ、「馬息嶺スキー場」も当初はこの日までの完成を目指していたのかも知れないが、はっきりと覚えていない。完成したのは、この「ムンス・ウォーターパーク」、「柳京口腔病院」、「玉柳児童病院」である。(この部分は、番組が放送された翌日、10月17日に書いている。「ミリン乗馬クラブ」は、昨日(10月25日)に竣工式が行われた。その様子については、別記事に書くことにする)

    『労働新聞』、「인민의 행복과 기쁨이 한껏 넘쳐나는 대동강반의 새 모습 최상의 수준에서 희한하게 꾸려진 문수물놀이장 준공식 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-16-0003&chAction=S

    『労働新聞』、「어머니당의 뜨거운 사랑속에 궁궐같이 일떠선 옥류아동병원 개원식 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-14-0005&chAction=S

    『労働新聞』、「류경구강병원 개원식 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-14-0004&chAction=S

    2つの病院の竣工式も「朝鮮中央TV」は動画配信しているが、確かにきれいな病院だし、医学無知な私が見れば「最新式」の医療設備が整っているように見える。口腔外科だろうが小児科だろうが、病院が増えることは朝鮮人民にとっては、凱旋門や主体塔よりも直接的に役立つことは間違いない。

    「玉柳児童病院」の建設現場を金正恩さんが現地指導したことを伝える10月5日付けの「朝鮮中央通信」の報道「金正恩元帥様が完工を目前にした児童病院建設場を視察された」と共に配信された写真の中に偽造された物があるという韓国の新聞の記事が出た。

    『朝鮮日報日本語版』、「北の戦勝節パレード、貨物機にペンキ塗り軍用機に偽装」、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131017-00001087-chosun-kr

    上の記事は、民間機を軍用機に偽装して軍事パレードに参加させたというタイトルだが、同病院現地指導の写真についても書かれている。軍用機の偽装についてはさておき、児童病院の写真の偽造など単なる技術的な話だと思う。仮に合成写真であったとしても、児童病院の外見が良く分かる場所での写真を撮り忘れたのか、撮ったがが上手く写っていなかったのか、それとも何かまずい物が写り込んでしまったのか、その程度の話であろう。過去にも金さんが「浮いているように見える」写真はあったが、私は単に複数のフラッシュや動画撮影用の照明が同時に照射された結果ではないかと思っていた。

    さて、タイトルのムンス・ウォーターパークであるが、その規模はかなり大きい。朝鮮語を直訳すると「水遊び場」なので、「ウォーターパーク」と私は書いているし、「朝鮮中央通信」の英語記事でも「Water Park」となっている。しかし、同通信の日本語訳は「紋繍遊泳場」となっており、なんともセンスの悪い日本語訳である。

    しかし、タイトルの番組で見るウォーターパークは、「水遊び場」というようりも敷地面積10万9000平米のスポーツ・コンプレックス(総合スポーツ施設)と言った方が良い。では、以下でその様子を紹介していく。

    ムンス・ウォーターパークの中央ホールには、例によって金正日「天然色石膏立像」が飾られている。ビーチに立つ将軍様であるが、何とも背景と不釣り合いな気がしてならない。それは、彼がビーチでも「野戦服」を着ているからなのであろうが、「野戦服」がトレードマークであるにせよ、もう少し何とかならなかったのだろうか。金正恩さんも現地指導でこの石膏像についてはあれこれと指示したと過去の「録画報道」などでは伝えているが、それにしては今一つである。

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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    10月5日の「0時過ぎ」の現地指導で、上の場所について指示をする金正恩。
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    Source: KCTV,2013/10/23放送、「朝鮮記録映画」、「ムンス・ウォーターパークに刻み込まれた人民を愛する新たな伝説」より

    室内プール
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    室内プール、「水泳」のための50mプールもある
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    「運動室」(トレーニング・ルーム)、水着のままトレーニング・ルームを使うのが「特色」か。
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    と思いきや、ビリヤード施設では、さすがにそれらしい服装でゲームをしている。
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    過去記事に書いたかもしれないが、このウォーターパークに温水施設があるのかどうかは分からない。『労働新聞』等の記事を組まなく読んではいないが、「朝鮮中央TV」の紹介番組を見る限りでは、この点についての言及はない。しかし、金正恩さんがこのウォーターパークを度々訪れ現地指導した様子を紹介する「記録映画」、「ムンス・ウォーターパークに刻み込まれた人民を愛する新たな伝説」の中では「地熱利用」をしていると言っている。しかし、何に地熱利用をしているのかは分からない。そう思ってみていると、写真に写っている人たちが寒そうな顔をしているようにも見える。竣工式があった日の平壌の最高気温は16~17度であった。
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    「地熱利用」であるが、もしかすると下の写真にあるサウナでの利用かもしれない。過去記事にも書いたが、エネルギー不足の北朝鮮では、「地熱利用」を熱心に研究しているようで、もしかすると我々が想像する以上の応用技術があり、普及が進んでいるのかも知れない。
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    クール・サウナもある。私がサウナ好きではないからかもしれないが、そんな物があるとは知らなかった。調べてみると、日本でもクール・サウナを販売している会社がある(例えば、サンセイ冷熱:http://www.sansei-r.com/product/coolsauna.html)。
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    飲食施設の「奉仕員」。例によって、「共和国旗」カラーを基調にした制服だが、帽子が少しかっこよくなったようだ。
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    ビュッフェ式食堂(「奉仕員」ドンムが立っている様子も紹介されているので、もしかするとビュッフェ式ではないのかもしれないが)。ビュッフェ式食堂は、人件費を削減する目的に導入するものだと私は考えているが、人件費をほとんど考慮する必要がないものの、食糧が不足気味の北朝鮮で導入するというのは、「世界的水準に」ということの一環であるかも知れないが、あまり理にかなっていない。そういえば、夏に釜山に行ったとき、「豚スープご飯(テジクッパプ)」食堂に入ったのだが、人件費削減のためか、ここでもキムチ類はビュッフェ式のセルフサービスになっていた。釜山の食堂には、「食べられる分だけ」と大きな看板が出ていたが、朝鮮人民はどのような取り方をするのだろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    水着で生ビールというのは豪快で良いが、そこまでやらなくても良いような気がする。暖房のためのエネルギー浪費ではないだろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    人工波動プール
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    バスケットボールも水着のまま
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    バレーボールも水着のまま、ビーチバレーというのはあるが・・・
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    トランポリンも水着のまま
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    バドミントンも水着のまま
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    ロッククライミングも水着のまま
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    水着のままはやめた方が良いと思うが、それはさておき、上記のように総合スポーツ施設であることはお分かりいただけたと思う。

    屋外にもバスケットボール・コートがある。
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    屋外プール全景
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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    ウォータースライドは、ボートを使うものもあるようだ。屋内でも寒そうなのに、気温が15度前後の屋外での水泳はさぞかし寒いことであろう。屋内は温水であったとしても、屋外プールの温水化というのは贅沢な資本主義国でもあまりないのではないだろうか。さらに、このウォーターパークで使用する水であるが、浄水処理が非常に気になる。過去の金正恩現地指導に関する「録画報道」の中で「排水溝もきちんと整備して、水質を保証するように」と彼が指示したというようなナレーションがあった気がするが、そうだとしても、これだけの施設の水質を維持するためには莫大な浄水施設が必要だと思う。ただ、上記の金正恩現地指導「記録映画」の中では、「西海の水を導入するパイプ工事」の様子も紹介していたので、プールの水は海水なのかも知れない。「西海」の水は「ルンラ・イルカ館」でも使っているので、ウォーターパークまでのパイプライン設置はそれほど大変ではないはずだ。海水を使うと、施設の維持管理は淡水以上に難しくなってしまうのだが、実際に行ってみないとどうなっているのかは分からない。

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    Source: KCTV,2013/10/16放送

    「西海の海水」のパイプラインを設置する「軍人建設者」
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    Source: KCTV,2013/10/23放送、「朝鮮記録映画」、「ムンス・ウォーターパークに刻み込まれた人民を愛する新たな伝説」より

    「20時報道」:ヨムジュ郡に「階級教養館」新たに建設、最近押収された物品(DVDや携帯電話)も展示か?(2013年10月21日 「朝鮮中央TV」)

    昨日の「20時報道」を見ていたら、ヨムジュ郡(報道では言っていないが、平安北道に位置すると思われる)に「階級教養館」が新たに建設されたという報道があった。「階級教養館」については、誰それが訪問して「米帝や日帝の蛮行を憤怒しながら観覧した」というような報道はしばしば行われているので、「またか」と思って見ていたのだが、よく見たら、「米帝や日帝の蛮行」とは関係ないような展示物が映し出されていた。ナレーションでは「過去に我々人民に加えられた米日侵略者と階級敵の野獣的蛮行について解説を聞いた」とだけ言っている。

    しかし、「ヨムジュ郡に持ち込まれた聖書」という写真がまず映し出された。これについては、戦後すぐに持ち込まれた物の可能性もあるが、写真を見る限りでは比較的新しい本のように見える。左が「聖書」右が「賛美歌」。
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    Source: KCTV,2013/10/22放送

    「報道」では続けて、ラジオ、携帯電話、トランシーバーなどが映し出される。これらは明らかに「日帝」時代や朝鮮戦争期の物ではない。左上に解説があるが、画面が流れてしまって読み取ることができない。
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    Source: KCTV,2013/10/22放送

    さらに、カメラが右に動いていくと、カセットテープやDVDなども映し出される。
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    Source: KCTV,2013/10/22放送

    北朝鮮は、中国に脱北した朝鮮人民に韓国の手配師が聖書などを手渡したという話を、脱北後帰国した人々へのインタビューの中で伝えてはいたが、経緯は分からぬ物の、最近持ち込まれ押収されたとみられる物品をこのように見せるのは珍しい。「階級教養館」に展示したということは、現実的にこうした物品の北朝鮮浸透が相当増加しており、それに対する警鐘の意味で「報道」の中で見せたのかも知れない。こうした物に手にする輩は「階級敵」だということを言いたいのであろう。

    モランボン・国家功勲楽団合同公演、21世紀楽団・国家功勲楽団合同公演 (2013年10月17日、20日 「朝鮮中央TV」)

    モランボン楽団と国家功勲合唱団との合同公演、ロシア・21世紀管弦楽団と国家功勲合唱団との合同公演などがあった。前者については、私の予想は外れ、金夫妻が鑑賞したバージョンの放送であった。そうではあったが、前日に放送された21世紀楽団単独公演とは比較にならないほどの内容であったことは間違いない。派手な照明やレーザー光線の使用、ステージの壮大さ、カメラワークなど、「文明強国」を強調するにはあまりある内容であった。

    これまでのモランボン公演を見直してはいないが、歌手の顔のクローズアップと全身映像との合成は今回の使用が初めてだったような気がする。
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    Source: KCTV,2013/10/17放送

    過去記事でも取り上げた「祖国賛歌」は、ピアノ伴奏のみから始まるというなかなか素敵な編成であった。
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    Source: KCTV,2013/10/17放送

    「偉大なその名前は勝利の旗」という金正恩称賛ソングも登場した。最近は、金正恩称賛ソングがたくさん出てきており、どの曲が新曲なのか分からなくなっている。この曲もこれまでのモランボン公演では歌われていないので、比較的新しい歌だとは思う。過日、子供たちが登場する教育系番組を見ていたのだが、こちらでも恐らく学校で歌われている、モランボン公演では出てこないような「金正恩先生に歩みを合わせて」などの金正恩称賛ソングが多数登場した。
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    Source: KCTV,2013/10/17放送

    ところで、李雪主夫人が登場したとき、「金日成・金正日バッジを着用していない」とさんざん騒がれたが、その後、彼女がバッジを付けている姿はあまり目にしていない。記憶は若干曖昧であるが、どこかの視察に同行したときに付けていたのかも知れないが、映像を見る限りは相変わらずバッジを付けていないように見える。「付け忘れた」と言われないように付けないことで貫徹しているのか、あるいは「ファッション的に」付けないのか分からないが、後者であるとすればこれはなかなか大変なことである。
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    Source: KCTV,2013/10/17放送

    一方、21世紀管弦楽団と功勲合唱団との合同公演は、21世紀管弦楽団単独公演よりも盛り上がっていた。やはり、朝鮮曲が多く含まれていたことがその要因だとは思うが、音楽音痴の私が聞いても、合同公演の方が演奏に重みがあったような感じがする。全体の流れを見ていると、こちらの公演は朝露友好を強調するものであったといえる。

    ロシア人歌手と手を繋いで「永遠の友」を歌う金ホンサン(?)この曲は洋楽であるが、オリジナル曲名が分からない(しばしば耳にする曲ではるが)。朝鮮語では「友(ロッドマンが金正恩を『友』と呼んだことを朝鮮語訳したときに使われたのと同じ単語)」となっているが、歌詞や曲調はラブソングである。
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    Source: KCTV,2013/10/20放送

    この曲は、英語とスペイン語(多分)で歌われている。原曲がそうなっているのかもしれない。おもしろかったのは、左のロシア人男性が曲終了後も朝鮮女性の手をずっと握り続けていたことである。これが想定外の行動であったのか、朝鮮女性は右側の2人に手を差し出し4人が手を繋いだ状態で礼をした。しかし、その後もロシア人男性はこの女性の手を握り続け、舞台の袖まで送っていった。ロシアン・コーテーシーと北朝鮮の美風の衝突のようでおもしろかった。
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    Source: KCTV,2013/10/20放送

    きちんとエスコートをするロシア人歌手(左)。これを見て、朝鮮人民は「カッコイイ」と思ったのだろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/20放送

    この公演では、歌なしの「パルコルム」も朝露合同で演奏されたが、かなり派手に管楽器が「プー」という変な音を出していた。私の耳でもはっきりと聞き取れるほどだったので、相当なミスだと思う。曲目が曲目だけに少しまずい気もするのだが。

    そして、当然、21世紀楽団長が「銀河3-2号」打ち上げ成功を祝して作曲した「星に向かって前進」も演奏されたが、なかなか面白い演出があった。なんと、舞台の袖から朝露両国の国旗を持った宇宙飛行士が登場するではないか。これを見て、ロシアの国際宇宙ステーションで北朝鮮の宇宙飛行士が活躍する日はいつ来るのだろうかと考えてしまったが、実はこの2人両国のドラマーでその後、ドラムソロの競演を行った。
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    Source: KCTV,2013/10/20放送

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    Source: KCTV,2013/10/20放送

    演奏会は両楽団の指揮者が一緒に指揮をする「人民が愛する我々の領導者」で幕を閉じる。ロシア人女性歌手と朝鮮人男性歌手が曲の一部を2人だけで歌い上げるが、なかなか素晴らしい声である。
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    Source: KCTV,2013/10/20放送

    「朝鮮中央TV」では、報道番組の中で21世紀管弦楽団の団長らのインタビューを放送していた。ロシア語なので何を言っているのか分からなかったが、朝鮮語字幕を読む限りではモランボン楽団や功勲合唱団を絶賛していた。確かに素晴らしかったので、本当にそのようなことを言っていたのであろう。

    「敬愛する金正恩元帥様がロシア21世紀管弦楽団の公演を観覧された」 (2013年10月16日 「朝鮮中央TV」)

    2012年4月の「光明星3-1号発」射以来、関係が悪化していた朝露関係がこのところ改善しているようである。詳細な内容が報道されなかったので記事にはしなかったが、10月4日には「朝露政府間貿易、経済及び科学技術委員会林業分科委員会第18次会議議定書」が調印されたという記事を『労働新聞』などが配信している。周知の通り、ロシアでは多くの朝鮮人民が建設現場などで働いており、中でも林業に従事する数は多い。前述のとおり、「議定書」の中身は公開されていないので分からないが、恐らく林業部門で働く労働者の労働条件や人員拡大などについての内容が盛り込まれているのであろう。

    『労働新聞』、「조로정부간 무역,경제 및 과학기술협조위원회 림업분과위원회 제18차회의 의정서 조인」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-05-0024&chAction=S

    また、このところソ連時代の映画が何本か「朝鮮中央TV」で放映された。時間がないのできちんと見ていないのだが、朝ソ合作映画で朝鮮人の抗日武装戦線にソ連兵が協力するといった内容の映画も放送された。ロシア正教の牧師(ロシア正教ではそう呼ぶのかは不明だが)も登場するが、どうやらキリスト教は邪悪とされる北朝鮮でもロシア正教は別扱いのような印象を受けた。ただし、飛ばしていくつかの画面を見ただけなので、正しい評価ではないかもしれない。後日、きちんと見た後で、この映画については紹介したいが、エンドロールでソ連の楽団が演奏する「アリラン」がとても印象的であった。

    こうした状況の中で、ロシアの21世紀管弦楽団が訪朝し、金正恩夫妻が観覧する前で10月15日に公演を行った。この公演は翌16日の夜8時半頃から「録画実況」として「朝鮮中央TV」で放送された。以下では、その様子について紹介していく。

    『労働新聞』、「경애하는 김 정 은원수님께서 로씨야 21세기관현악단의 공연을 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-16-0001&chAction=S

    同公演を金正恩夫妻が観覧したことについては、上記の『労働新聞』記事が伝えている。同行者は党中央委員会政治局委員の金己男さんのみである。来賓用の椅子はたくさん並べられていたのだが、軍関連の同行者はなく、党関連の同行者が1名だけだったというのには何か理由があるのかも知れない。

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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은원수님께서 로씨야 21세기관현악단의 공연을 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-16-0001&chAction=S

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    Source: KCTV,『労働新聞』記事と同じタイトルの「録画報道」(静止画を用いた報道)、2013/10/16放送

    動画で演奏を紹介する「録画実況」では、金夫妻の入退場は割愛されている。朝露関係が改善しているとはいえ、なぜこのタイミングでロシアの楽団を招聘したのか分からなかったのだが、「録画実況」を見ていたらその答えがあった。

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    Sorce: KCTV,2013/10/16放送

    公演は、最初曲が終わった後で「ロシア連邦国家会議代議員、ソ連人民俳優イオシフ・コプチョン(音訳)の祝賀発言」を会場の大型スクリーンに映し出したビデオで紹介するのだが、その中で彼は上の写真にあるように「1948年10月12日、ロシアが朝鮮民主主義人民共和国を承認し、外交関係を樹立し」と述べている。この発言からすると、朝露国交樹立を記念しての公演ということのようだ。

    曲目はほとんどロシア曲であるが、朝鮮曲や英語(とスペイン語)の歌詞の曲も演奏された。北朝鮮の曲目としては、「合唱と管弦楽、朝鮮の歌を主題とした組曲」、金正恩さんの健康を願う歌「燃える願い」が朝鮮語で歌われたが、やはり朝鮮人民の拍手はロシア曲に比べて大きかった。モランボン・バージョンと違ったところは、最後の間奏のところで「アーーー」と歌っていた(音楽用語で上手く表現できず失礼)。「燃える願い」では、朝鮮人民は手拍子を送っていた。やはり、よく知っている歌には手拍子も打ちやすいのであろう。

    「燃える願い」を歌うアンナ・ノビコバ
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    Sorce: KCTV,2013/10/16放送

    しかし、実は「燃える願い」の数曲後に凄い曲が演奏された。それが「合唱と管弦楽、オブシャンニコフ作曲、星に向かって前進」である。

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    Sorce: KCTV,2013/10/16放送

    「あれか」と思いつつ見ていたら、続いて朝鮮語で秒読みが始まった。
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    Sorce: KCTV,2013/10/16放送

    曲は、宇宙に向かって飛んでいく「銀河3-2号」を表現したのか、実に軽快な感じである。私は音楽に疎くこれ以上のコメントはできないので、どなたか詳しい方がコメントでフォローして下されば幸いである。この曲は、急に終わるからなのか、「銀河3-2号」の曲にもかかわらず、曲終了後の拍手はあまり大きくなかった。聞き慣れた「燃える願い」と異なり、拍手をするタイミングを逸したのであろう。どちらかというと、「銀河3-2号」が飛び立つシーンの方が拍手が大きかったような気がしないでもない。

    上記『労働新聞』の記事を後で読んでみると「人工地球衛星『光明星-3』号2号機の成功裏な発射により主体朝鮮の尊厳と威容を全世界に力強く示したことを祝し、バベル・オブシャニコフが創作した合唱と交響楽『星に向かって前進』は観覧者に深い感銘を抱かせた」と書いてある。バベル・オブシャニコフは21世紀管弦楽団の団長兼首席指揮者である。

    おもしろかったのは、演奏会を締めくくる場面である。下の写真にあるように、花束贈呈が終わった後で出演者は深々と頭を下げるのだが、子供たちは花束を持って立っている子と頭を下げている子がいる。実は、花束は出演者に渡されたのであるが、それを受け取った出演者が子供たちにやった。これが番狂わせになったのであろう。想定外に花束を受け取った子供たちはどうしたらよいのか分からなくなってしまったのかも知れない。これが北朝鮮でなければごく普通のどうでも良い話なのであるが、こういう練習をしっかりとやっている北朝鮮ではある意味珍しい光景である。これを見て「ええ?」と思ってしまうのが、やはり北朝鮮の特殊性なのかも知れない。

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    Sorce: KCTV,2013/10/16放送

    ところで、全体として21世紀管弦楽団の演奏はどうだったのか。音楽音痴の身勝手な評価ではあるが、モランボン楽団よりダサイ。ジャンルが違うし、どちらかというと「銀河水管弦楽団」に近い構成だと思うのだが、北朝鮮の楽曲を聴き過ぎて感覚が麻痺している可能性を含めても、やはりダサイ。21世紀管弦楽団がロシアでどのような位置づけなのか機会があればロシアの専門家に聞いてみたい。

    ここからはいつも以上にとてつもない憶測ではあるが、過去に訪朝公演をしているにせよ、金正恩さんがダサイ楽団を敢えて招聘したのは、モランボン楽団との差を朝鮮人民に見せたかったからではないだろうか。21世紀楽団員は自分たちの演奏会があった同じ15日、金正恩さんと共に「モランボン楽団と功勲合唱団公演」を観覧している。金正恩さんは夫人と共に10日にこの公演を観覧しているので、報道されている限りでは2回目である。

    『労働新聞』、「조선로동당창건 68돐경축 모란봉악단과 공훈국가합창단 합동공연 《조선로동당 만세》 진행
    경애하는 김 정 은원수님께서 공연을 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-11-0002&chAction=L

    『労働新聞』、「경애하는 김 정 은원수님께서 로씨야 21세기관현악단 성원들,평양시민들과 함께 모란봉악단과 공훈국가합창단의 합동공연을 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-16-0002&chAction=L

    実は、金正恩夫妻が10日に観覧したモランボン・功勲合唱団公演のフルバージョン動画は依然として公開されていない。「20時報道」などで同楽団公演の様子を連日報道しているが、なかなかフルバージョンは出してこなかった。ところが、昨日「朝鮮中央TV」の放送終了直前に流す「明日の順序(明日の番組予告)」によると、今日(17日)同楽団の公演を放送することになっているようだ。10日の公演か15日の公演かは分からないが、「元帥様」が観覧しているのでどちらでもおかしくない。

    で、話を「朝鮮人民にモランボンとの違いを見せつけるため」に戻すと、恐らくは21世紀楽団団長と共に観覧したバージョンを使うはずである。朝鮮人民は「元帥様」がロシアの楽団長を横に座らせ、ロシアの楽団よりもカッコイイ演奏をするモランボン楽団に「文明大国」を感じるはずである。だからこの日までフルバージョンの放送を待ったのかも知れない。「20時報道」などで同公演を繰り返し紹介してきたのも、朝鮮人民の期待を高める効果を狙ってのことであろう。要約バージョンや報道を見ている限りでは、例によってかなり派手な照明効果や小道具を使っているようである。

    白い人民帽はダサクても、いや「思想性と芸術性において文句の付けいようがない」し、現代的さにおいても今夜、朝鮮人民は感動することであろう。

    と、この日本人民も放送を心待ちにしている。

    「朝鮮で国家経済開発総局を国家経済開発委員会とすることを決定」 (2013年10月16日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が表記のような記事を伝えた。内容はその事実のみで、「最高人民会議常任委員会政令が16日発表された」としている。政府部局の「総局」を委員会組織に変更したわけだが、昨日記事にした「朝鮮経済開発協会」の一件と合わせて考えると、政府からの統制を弛めて活動の自由度を高めようとしたのかもしれない。

    今後、経済関連のより具体的な重大発表が出てくるかも知れない。

    「朝鮮経済開発協会組織」 (2013年10月16日 「朝鮮中央通信」)

    「朝鮮中央通信」が表題のような記事を報道した。記事によると協会は「外国の企業と団体に朝鮮の特殊経済地帯について広報し、進出に協力する民間級団体である」としている。「民間級団体」とあるが、北朝鮮に「民間級団体」など存在するのであろうか。実態としてはもちろん政府がコントロールする「政府級団体」なのだろうが、それを敢えて「民間級団体」としているところには、「特殊経済地帯」の開放、そこまで行かずとも統制を緩やかにしていく考えが反映されているのかも知れない。

    同協会の役割としては「特殊経済地帯開発に役立つ投資討論会、相談会、展示会、経済情報交流、諮問サービス、政府の委任による投資合意、投資家の企業活動援助など」が含まれていう。「政府の委任による」としながらも「投資合意」までできるということは、かなりの権限が与えられているということになる。

    同協会の最初の事業としては、「カナダとマレイシア、米国をはじめとした各国の経済専門家たちを招請して、16日から特殊経済地帯開発に関する平壌国際討論会を主催している」と既に活動を開始しており、「平壌国際討論会」に米国の「経済専門家」も含まれているというから驚きである。

    「朝鮮中央通信」は同協会の電話番号とファックス番号、メールアドレスを公開している。このようなことは通常しないと思うのだが、相当本格的に機能させようとしている様子がうかがえる。

    公開されたメールアドレスにメールを送ってみた。北朝鮮が公開しているsilibank系のメールアドレスは少なくとも日本から送信した場合、私の経験では全てサーバーエラーで戻ってきてしまうが、公開されたアドレスにはきちんと配信されたようで、サーバーからのエラー通知は今のところ来ていない。

    『朝鮮中央通信』、「조선경제개발협회 조직」、http://www.kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf

    「20時報道」:体育節 (2013年10月13日 「朝鮮中央TV」)

    こちらも過去コメントに関する話である。「人民軍式行進」と関連して「体育の日」関連の行事だったかと書いたのだが、「体育節」関連の行事は紹介されているものの、こちらは北朝鮮国内での行事の紹介だけである。

    北朝鮮の「体育の日」について調べてみたのだが、どうやら「体育の日」というのは毎月1日定めてあるようだ。というのは、「朝鮮中央通信」の過去記事を「体育の日(朝鮮語の)」で検索してみると、「新年初めての体育の日を迎え、省・中央機関幹部たち集団走り(マラソン)開催」という記事を2013年1月13日に動画付きで配信している。「新年初めての体育の日」というからには、「初めてではない体育の日」もあると思うのだがどうなのだろうか。残念ながら『労働新聞』を検索してみても「体育の日」というキーワードでは何もヒットしないようで、その実態についてはよく分からない。「韓国・統一部北韓情報センターの資料では「体育節」は10月の第二日曜日と1949年8月2日に制定されたとされている。

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    Source: KCNA, 「新年初めての体育の日を迎え、省・中央機関幹部たち集団走り(マラソン)開催」、http://www.kcna.kp/kcna.user.article.retrieveNewsViewInfoList.kcmsf

    韓国・統一部、北韓情報センターHP、「北韓主要行事予定表」、http://unibook.unikorea.go.kr/?sub_num=96

    『Daily NK』は、北朝鮮の「2013年北カレンダー入手・・・先軍節・体育節指定」という記事の中で「10月10日は日曜日なので、公休日に指定されたのか分からない」と書いているが、上記の「北韓情報センター」の資料が正しいのであれば、毎年日曜日になるわけで、敢えて「公休日に指定」する必要などない。

    『Daily NK』、「2013年 北 달력입수…선군절·체육절 지정」、http://www.dailynk.com/korean/read_photo.php?num=98213&cataId=nk03100

    今回紹介するのは「体育の日」ではなく「体育節」である。こちらが日本の「体育の日」に該当する日で、こちらは年に1度である。では、「朝鮮中央TV」の「20時報道」の中で報じられた「体育節」について紹介していくことにする。
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    「金日成総合大学」の体育祭。「経済学部」応援団。銀河3号と9号の装飾がある。
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    競技は、「サッカー、バスケットボール、バレーボールなどを学部間で競技を行っている」という。こちらは「コンピューター科学学部」の応援席。
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    こちらは「哲学部」。
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    次は「文学部」。
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    「法学部」
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    やはり綱引きはあった。
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    試合風景よりも学部の応援席を紹介したが、大学のHPもない金日成総合大学なので、普通の学部だけではあったがおもしろかった。上の写真は、報道で紹介された順に掲載したのだが、やはり党の重視する政策と関連づけられている気がしてならない。経済学部(経済強国建設)→コンピュータ学部(先端科学重視)→哲学部(金日成-金正日主義重視)→文学部(領導文学)→法学部(法秩序の確立)と来たわけだが、経済とコンピュータを哲学の前に紹介したところなど、実に金正恩体制の主要指針を反映しているようでならない。北朝鮮の場合、「紹介の順序」というのは色々な場面で意味を持つので、あながちこれも無関係ということではないと思う。

    トクソン地区炭鉱連合企業所での「体育節」の様子。
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    セチャン炭鉱対ソチャン炭鉱のバレーボールの試合
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    また、炭鉱ならではの競技も行われている。この競技は、どうやら坑道を支える木製の柱を組み立てる競技のようである。
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    こちらは万力に何かを挟んで組み立てる競技のようだ。
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    なかなか体格の良い女性もリレーに参加したようだ。
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    Source: KCTV, 2013/10/13放送

    「海外公民となった誇りを抱き迎えた意味深い9月の名節」:朝鮮総連「建国記念日」関連行事、朝鮮学校生「人民軍式行進」 (2013年10月8日 「朝鮮中央TV」)

    別記事に書いたコメントで総連系朝鮮高校の「人民軍式行進」が話題になったので、それが登場する番組を紹介しておく。コメントには「20時報道」などの報道番組であったはずと書いたが、調べてみるとタイトルのような「特集番組」であった。

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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    また、10月10日の労働党創建記念日関連の番組かと思ったが、9月9日の「建国記念日」の番組であった。思えば、北朝鮮のカメラマンが日本で撮影できるはずなどなく、朝鮮総連系の制作会社のカメラマンが撮影した映像を北朝鮮に送り、それを北朝鮮で編集して番組にするという手順なので、放送までに1ヶ月の期間を要したということであろう。

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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    9月7日、東京朝鮮文化会館にて「朝鮮民主主義人民共和国創建65周年慶祝在日本朝鮮人中央大会」開催。大会には、許宗萬総連中央常任委員会議長他、総連幹部、朝鮮大学校教職員などが参席した。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    金正恩さんが「全体在日同胞に送った祝賀文」を読み上げていると思われる。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    それを受けて「限りない感謝の情が溢れ」万歳をする総連関係者。金日成・金正日両名の肖像画が入ったバッジを付けている。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    「敬愛する金正恩元帥様の領導に従い、祖国を愛し、同胞を愛し、後継者(子供たち)を愛することで、新たな全盛期の活路を切り開こう!」というスローガンが掲げられている。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    番組では、「東京大会」以外の日本各地での大会も簡単に紹介している。地方によっては、かなり小規模の大会となっている。下の写真は「福岡大会」。「東京大会」と比べるとやはり小規模である。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    9月7日、「中央写真展示会」、東京朝鮮中高等学校にて開催。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    金正恩さんなどの写真を見る総連幹部
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    まず、下の写真を見せておき・・・
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    続いて、ハンカチを持った女性の「静止画」を挿入するというなかなか苦しい編集もしている。ナレーションは「参観者は代を継いで謳歌する首領福を幸福として頂く誇りと尊厳を心臓に刻みました」と言っている。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    9月4日、「建国慶祝総連中央講演会」、朝鮮会館にて開催。「講演会」とはいうものの「録画講演」がなされたということで、数編の「朝鮮記録映画」を見たということだ。私のような日本人は、この手の「朝鮮記録映画」は、「朝鮮中央TV」で放映されるとほぼ同時に見ているので、何を今更という気がしないでもない。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    9月5日、「建国創建在日朝鮮人者会科学者研究討論会」、朝鮮出版会館にて開催。「参加者たちは皆同様に、共和国が創建されたその日から自主の道、先軍も道で導いて下さり、我々式社会主義強国を世界に誇れるように打ち立てて下さった偉大な大元帥様たちの業績を激情高く討論しました」とナレーションは語っている。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    9月6日、「建国慶祝宴会」、朝鮮会館にて開催。なぜか「大元帥様」の写真は白黒が使用されているように見える。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    「宴会」には「朝鮮同胞」の他に、「日本各界の人士たちや世界20カ国あまりの代表が参加」したとのことである。東京にある北朝鮮と国交のある大使館の関係者を招待したのであろうか。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    9月7日、「建国慶祝野会(室外で飲食を楽しむ会)」、東京朝鮮文化会館前広場で開催。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    「野会」で歌を歌う子供。この子が何を歌っているのかは分からないが、ナレーションでは「『我々の愛、このぐらい、そのぐらいではない』、『攻撃戦だ』、『人民が愛する我々の領導者』、『タンスメ(一気に)』」などが演奏されたと言っている。この手のカラオケ大会には私も出場したいものだ。歌は下手でも、出演者よりこの手の曲を聞く頻度は圧倒的に高い自信はあるのだが(より正確には、このところ、この手の歌しか聞いていないという方が正確である。恐らく、下の写真で歌っている若い人たちは、平素は日本の曲で盛り上がっているのであろうが)。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    愛知、大阪、兵庫などでも「芸術公演舞台」が開催されたとのことである。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    人民軍式行進が出てきたのは総連系学校の運動会の一つとして紹介された「埼玉朝鮮初中級学校運動会」の一場面ででである。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    「運動会」では、日本の小学校で普通に行われている「かけっこ」などが競技演目の中心となっているはずである。「人民軍式行進」は映っているからやったのであろうが、どちらかというと一部で、この番組を北朝鮮で制作する際、相当意図的に挿入したのであろう。
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    Source: KCTV, 2013/10/8放送

    番組は、「そうです。偉大な首領様と敬愛する将軍様の愛国遺産である総連は、栄光的な我が共和国と共に敬愛する金正恩元帥様に従い、ひたすら勝利と栄光の道だけを歩き続けることでしょう」と締めくくっている。

    「敬愛する金正恩元帥様をお迎えし、全国道対抗体育競技・大衆体育部門決勝競技平壌体育館で成功裏に開催」:北朝鮮版全国的運動会 (2013年10月11日 「朝鮮中央TV」)

    「錦繍山太陽宮殿参拝」や「モランボン楽団と功勲国家合唱団合同公演『朝鮮労働党万歳』開催」は、金正恩さんが登場する「記録映画」ではあるものの、とても短くあまりおもしろくなかった。「合同公演」については、後日、フルバージョンの「記録映画」が出てくることに期待をしているが、どうなるだろうか。

    「錦繍山太陽宮殿参拝」については、過去記事にも少し書いたが、軍服を着た人々のみが同行しており、紹介されているのは人民軍次帥・崔龍海、人民軍参謀総長・李ヨンギル、人民武力部長・鄭ナムドンだけである。昨年との比較はまだしていないが、党関係者を外したのには何か理由があるのだろうか。

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    Source: 『労働新聞』、「조선인민군 최고사령관 김 정 은동지께서 조선로동당창건 68돐에 즈음하여 금수산태양궁전을 찾으시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-10-0002&chAction=L

    「合同公演」には、李雪主夫人他、崔龍海、張成沢、朴奉珠など、レギュラーメンバーが同行している。

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    Source: 『労働新聞』、「조선로동당창건 68돐경축 모란봉악단과 공훈국가합창단 합동공연 《조선로동당 만세》 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-11-0002&chAction=L

    「合同公演」を紹介する番組を見ていて思ったのだが、「モランボン楽団」のコスチュームが今回は少しダサい。何がダサいのかというと、下の写真にある人民帽風の白い帽子で、まあ党創建記念の「合同公演」だからそうしたのかもしれないが、もう少しセンスの良い帽子はできなかったのだろうか。

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    Source: 『労働新聞』、「조선로동당창건 68돐경축 모란봉악단과 공훈국가합창단 합동공연 《조선로동당 만세》 진행」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-11-0002&chAction=L

    金正恩さんは「モランボン楽団と功勲国家合唱団の合同公演は、思想性と芸術性において文句の付けいようがない」と評価し、「このような革命的な芸術団体(複数)を持っているということは、我々の党の自慢である」と意味深長なことを言っている。「銀河水管弦楽団」を意識した発言かどうかは分からないが、もしかするとダサい人民帽を起用したこともこの発言の延長線上にあるのかも知れない。

    <追記>
    「白い人民帽」がコメントで話題になったので、「報道」の中で大写しになった写真を掲載しておく。
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    Source: KCTV,2013/10/12放送

    さて、タイトルの「運動会」であるが、見ていてぶっ飛んでしまった。番組冒頭のアナウンスでは「全国道対抗体育競技決勝競技をお送りします」といっているので、それなりの「スポーツ競技」をやるのだと思って見ていた。金正恩さんが道対抗戦レベルの競技を見に来たのは、やはり「新たに改築された平壌体育館」での大会であった点からは理解できたのだが、その後、まさかという展開があった。

    つまらない写真ではあるが、「朝鮮中央TV」で金日成・金正日・金正恩関連の「報道」や「記録映画」を流すときはその前後で必ずこの「赤画面」が出てくる。朝鮮人民もこれが出たときには、「お、ヤバヤバ、注目しなくては」となっているのかは分からないが、この番組の冒頭にも「赤画面」が出た。ただ、普通は続けて「敬愛する金正恩元帥様が・・・」と番組のタイトルが付くのだが、今回は何も出てこなかった。なので、厳密に言えば本記事のタイトルは番組タイトルではなく、『労働新聞』の同競技会を報じる記事のタイトルである。

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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    番組の冒頭では、各道の応援団の様子を紹介している。写真は咸鏡南道の応援団である。各道で「道カラー」が決まっているようである。咸鏡南道は深緑のようだ。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    しばらくすると「爆風のような万歳」とともに金正恩さんが登場する。写真は、登場直後に指さしながら関係者に何かを質問しているところ。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    そして、体育省第1部長が金正恩さんに開会宣言をする。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    初戦は平安南道対南浦市の女子バレーボールである。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    この試合では、前半戦と後半戦を平安南道チームが制し、2対0で勝った。下は勝った平安南道チームに拍手を送る金正恩。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    続いては、「シルム(朝鮮相撲)」の咸鏡南道と平安北道の決勝競技である。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    この試合は、子供から始まり年長者へと続いていく。試合では、平安北道チームが4対5で勝った。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    ここまでは、普通の体育大会だったのだが、ぶっ飛んだのは次だ。

    何と「遊技娯楽競技」なるものが始まったのであるが、1番目の競技は「ボールを抱え、頭に乗せて走り」競技である。

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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    4つの道の間で競技が行われたのであるが、これはもう「町の運動会」である。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    次は「続いて走り」の決勝戦である。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    リレーなのかと思ってみていたら、リレーではあったのだが何と色々な「こと」をしながらリレーをする。これも「町の運動会」にピッタリの競技である。ただ、町の運動会と違うのは、しっかりと審判(白い服を着て帽子をかぶった人々)が付いてみていることである。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    次は人を負ぶって走っている。「続いて走り」競技では南浦市が優勝した。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    次はおなじみの綱引きである。平安北道対慈江道の決勝戦。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    綱引きの審判団も本格的である。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    2対0で勝って喜ぶ平安北道チーム。
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    Source: KCTV, 2013/10/11放送

    結局総合優勝は平安南道であった。10位は平安北道であるが、その理由がなかなかおもしろく「女子バレーで不正行為があったので、自動的に最下位となった」とのことである。平安北道の試合の様子は紹介されなかったので、どんな「不正行為」があったのかは分からない。しかし、少し前にあったサッカー試合で先鋒チームの不正行為が咎められたように、今回も「不正行為」を咎めているのは、金正恩さんの「体育強国」構想と関連しているのかも知れない。

    ともあれ、「元帥様」を前にして運動会競技をやってしまうのにはたまげたが、もしかすると北朝鮮ではこれらの競技もりっぱな競技種目なのかも知れない。娯楽の少ない北朝鮮では、こうした競技が朝鮮人民の重要な娯楽の一つになっているのだろうが、「元帥様」が直接その様子を目にして拍手を送るのは悪くないと思う。よく見れば『労働新聞』の記事には「大衆体育部門」と書いてあるのだし。

    「敬愛する金正恩元帥様をお迎えし、金日成総合大学教育者住宅竣工式を盛大に開催 2013.10.9」:李雪主夫人登場、生きていた「銀河水管弦楽団」 (2013年10月9日 「朝鮮中央TV」)

    「朴槿恵一味」と朴槿恵さんを名指しで強く非難する北朝鮮の声明などについて記事を書いているのだが、連発で色々なことを言うのでなかなかまとめることができない。「国防委員会政策局スポークスマン声明」、「祖国平和統一委員会スポークスマン談話」など連発しているのだが、朴槿恵さんを名指しで非難、「警告」しつつも、今日(10月9日)に「朝鮮中央通信」で報じられた「朝鮮国防委員会政策局スポークスマン、南朝鮮当局は誰某を責める前に自ら反省してみる方がよいと主張」という報道の中では「我々は、いつでも過ちを改めた人には寛大であったし、過去を不問に付すことで度量のある対処をしてやった」とした上で「我々の軍隊と人民は、我々の今回の警鐘に対する朴槿恵一味の順応を決して『屈従』とは見なさない」と問題をこれ以上拡大させたくないという姿勢も見られる。

    『労働新聞』、「박근혜일당은 대세의 흐름을 똑바로 보고 더이상 함부로 날뛰지 말아야 한다 조선민주주의인민공화국 국방위원회 정책국 대변인성명」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-04-0047&chAction=S

    『労働新聞』、「박근혜패당은 우리의 응당한 비판과 경고를 똑바로 새겨들어야 한다 조국평화통일위원회 대변인담화」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-06-0012&chAction=S

    『労働新聞』、「그 누구를 탓하기 전에 자기부터 심각히 반성해보는것이 좋을것이다 조선민주주의인민공화국 국방위원회 정책국 대변인 기자질문에 대답」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-09-0014&chAction=S

    北朝鮮が今回「朴槿恵一味」非難を始めた背景にはいくつかの原因が考えられるが、その最初の契機となったのが毎度出てくる「最高尊厳の冒涜」であろう。北朝鮮メディアは「最高尊厳の冒涜」が何であるかについては一切言及していない。場合によっては、朴槿恵さんが「国軍の日」やAPEC会議に際して行われた習近平さんとの単独会談で述べた北朝鮮の「核放棄」や「体制転換」が「最高尊厳の冒涜」であるかのような論理も展開しているが、「核放棄」や「体制転換(並進路線放棄)」について朴さんはずっと言ってきているので、北朝鮮を激怒させているのはやはり「李雪主・銀河水事件」の話であろう。

    青瓦台HP、「대통령 연설、제65주년 국군의 날 기념사」、http://www.president.go.kr/president/speech.php?&cur_page_no=1&mode=view&uno=70&article_no=38&&cur_page_no=1

    VOA、「시진핑 "북 핵 반대, 안보리 대북 결의 준수" 」、http://www.voakorea.com/content/article/1764356.html

    韓国の国情院や政府関係者が「李雪主・銀河水事件」の事実関係について、何らかのコメントをしたのかは確認していないが、韓国メディアは『朝日新聞』の下記記事を引用しながら「李雪主・銀河水事件」を報道している。

    『朝日新聞』、「正恩氏夫人に醜聞か 所属した楽団が解散、公開処刑も」、http://www.asahi.com/international/update/0920/TKY201309200265.html

    この記事では、この情報のソースを「最近脱北した北朝鮮高官が明らかにした」としているが、誰に明らかにしたのかは書かれていないものの、恐らく記事を書いた「【機動特派員・牧野愛博」記者に対してということであろう。

    『朝日新聞』の記事で終われば、北朝鮮も無視して終わったのであろうが、それを韓国メディアが取り上げ、尾ひれを付けた報道をするので、北朝鮮も堪忍袋の緒が切れたという所ではないだろうか。「北朝鮮も」と書いたが、むしろ最愛の妻について無茶苦茶なことを言い立てられた夫(金正恩)が最も怒っているのであろう(『朝日新聞』報道が事実であるか否かにかかわらず、怒るに値する)。

    この記事が流れて以後、李雪主さんはしばらく金正恩さんと共に登場することがなかった。韓国メディアは「やはり」というような報道を流していたが、本記事のテーマとした竣工式に彼女が登場した。竣工式は9日だったので、即日公開の「記録映画」である。金正恩時代になり、「記録映画」が出てくるタイミングはとても早くなったが、その中でも即日公開というのはとても早い部類である。もしかすると、明日の労働党創建記念日前に変な噂を打ち消して、李夫人を登場させたいという目論見があったのかも知れない。

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    Source: KCTV, 2013/10/9放送

    しかも、李夫人は、『朝日新聞』のインターネット配信記事が「朝鮮戦争停戦60周年慶祝閲兵式参加者のためのモランボン楽団の祝賀公演鑑賞に李雪主夫人」として掲載した『朝鮮通信』の写真の中で着ている服と同じ服を着ての登場である。『朝日新聞』の記事を北朝鮮が意識してここまでやったのであれば、やはり同記事の影響力は絶大であったということになる。

    『朝日新聞』が引用した写真とは同じではないが、同じ場所で撮影された写真。
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    Source: 『労働新聞』、「경애하는 김 정 은원수님께서 전승 60돐경축 열병식 참가자들과 함께 모란봉악단의 공연을 관람하시였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-08-04-0001&chAction=L

    さらに、教員宿舎に金正恩さんが持参した食器を食器棚に並べる「純真な」李夫人の姿も紹介している。

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    Source: KCTV, 2013/10/9放送

    過去記事で「金さんが階段を歩いて登ったと言っているが、エレベータはないの」と書いたが、この「記録映画」ではエレベータを大きく映し出している。

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    Source: KCTV, 2013/10/9放送

    朝鮮人民がどれほど「元帥様が歩いて登られた」ことを意識してみていたのか分からないが、今回エレベーターを大きく出すことで、「さすがに元帥様だ」という効果を狙ったのかも知れない。

    前回の指導で、教員の机の上に立て付けの本棚を設置せよと金正恩さんは指示していたが、それも指示通りついている。

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    Source: KCTV, 2013/10/9放送

    前回の視察に際して紹介された画像では、建設資材が放置されたままであり、道路面の工事などが終わっていなかったが、この「記録映画」で見る限りでは相当に完成度が高い。恐るべき「軍人建設者」、「馬息嶺速度」といったところであろうか。教員宿舎以外にも労働党創建記念日までに完工するという建物や施設があるので、明日以降、それらが紹介されることになるのだと思う。

    そして、「解散・公開処刑された」と報じられた「銀河水管弦楽団」もちゃんと登場している。

    今日、新バージョンの「祖国賛歌」が流れたのだが、なんと「出演:銀河水管弦楽団」となっているではないか。

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    Source: KCTV, 2013/10/9放送

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    Source: KCTV, 2013/10/9放送

    本件については、どうやら北朝鮮にやられたようだ。

    「敬愛する金正恩元帥様が諸部門の事業を現地指導 2013.9」 (2013年10月2日 「朝鮮中央TV」)

    金正恩さんの9月の「革命活動」の様子を紹介する「記録映画」が10月2日に「朝鮮中央TV」で放送された。その大部分は、「録画報道」などで既に紹介されたものであるが、私の見落としなのかも知れないが、知らなかった「革命活動」も含まれている。以下、それらを紹介していくことにする。

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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月2日「愛国石工場」現地指導、「愛国石展示場」を視察しながら「愛国石展示場は、展示場というよりも石宮殿のようだ」、「この工場は見るだけでも腹一杯になる工場」、「国家の建材工業を発展させ、建材国産の国産化基準を高めるのに愛国石工場は重要な位置にある」などと発言。

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    Source: KCTV,2013/10/02放送

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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月3日「リョンヨン海岸(龍淵浅海)養魚事業所」現地指導
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「チョウザメは海へ、朝鮮は世界へと」というスローガンが掲げられている。2010年11月21日、お父さん(金正日)と共にこの事業所を訪れたということだが、このスローガンはその時にお父さんが言った言葉であろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「経営活動で実利を担保しなければならない」などと語る。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    チョウザメの卵が高価なキャビアであることはよく知られている。キャビアを普通の朝鮮人民が食しているとは考えられないし、そんなことをすれば「経営活動の実利は担保」できないので、中国あるいはロシアに輸出しているのであろう。すると朝鮮人民は、チョウザメの肉を食べることになるわけだが、こちらもなかなか美味だということである。私はキャビアを数粒食べたことがあるが、肉の方は食べたことがないので、機会があれば食してみたい。

    廣島蝶鮫を販売する業者のHP、http://www.tyouzame.jp/

    ナマコを手にしての重さを確かめながら「他国と比べ半分の生産周期で育てたという報告を聞き満足」する金正恩
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月8日、「共和国創建65周年」を記念して建設された「銀河科学者通り」を視察した。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「この地区が天地開闢された」と喜ぶ金正恩
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「科学者住宅」に併設された「銀河託児所」も視察。壁に描かれている絵に注目。明らかに馬息嶺スキー場を意識したものである。スキーとスノボ両方が描かれているところなど、さすが「若き元帥様」というか、心憎い。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月13日、「人民が着ることになる乗馬服、スキー服の見本」を見る。下は「乗馬服」の見本
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「スキー服」の見本を確認する金正恩。「我々人民が、この世に羨むものがないよう、馬息嶺スキー場で心ゆくまでスキーを楽しめるよう温情が込められた措置もして下さった」ということであるが、何のことだかよく分からない。いずれにせよ、「人民が心ゆくまでスキーを楽しめるようにするする」ためには、中古のレンタルスキーなどを大量に輸入する必要がある。中国には中古スキーはあまりなさそうなので、スイスか旧東欧から持ち込むのかも知れないが、中古のスキーセットも制裁品目に該当するのだろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    また、同じ会場で「校服(学校の制服)見本」も見た。右に立っているのが、見本を着た生徒たち
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「女子学生の靴が、足の形に合うように調整できるのか自ら確認」する金正恩。誰かに言われてやっているということはないと思うので、この辺りは「朝鮮中央TV」のナレーターが言っているように本当に「細心の指導」といえそうだ。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    どうやら女子学生の「校服」により深い関心があるようだ。確かに、男子学生の「校服」はシャツとズボンというこれまでとあまり変化のない校服のように見える。女子の方はブラウスのデザインやスカートのショルダーベルト(というのかどうか知らないが)が一新されているような感じがする。赤いスカーフも結び目を工夫しているのか、少しかっこよくなった。「我々の学生が新しい校服を着るようになれば、社会の雰囲気が完全に変わり、国家の容貌が新しくなる」と金正恩さんは語ったとのことだが、「社会の雰囲気」をどのように変えていきたいのであろうか。それが重要であるにせよ、やはり何かを変えたいという彼の思いがこういう言葉に表れているのかも知れない。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月14日、「新たに改築された平壌体育館」を指導。バスケットボールをバウンドさせながら、「競技場フロアの跳ね返りと音の響き方を自ら確認、世界的水準だ」と語る金正恩。こういう所にこだわるのもやはり「若き元帥様」ならではなのかもしれない。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「ルンラ人民遊園地の立体律動映画館と電子娯楽館」を指導。「律動」という漢字は、「朝鮮中央通信」の日本語訳を見るまで思いつかなかった。「立体」は3Dということですぐに分かったのだが、椅子が動くことと「律動」を結びつけることはできなかった。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「立体律動映画」、「我々を待つな」。3D映画なので3D眼鏡を掛けずに見ると画面が二重に見える。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「立体律動映画」を鑑賞する金正恩
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    ディズニーランドなどの「立体律動映画」ではどのような装置を使っているのか分からないが、ここでは2台のプロジェクターから別々の映像を照射してスクリーン上で重ね合わせているようだ。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「各道に立体律動映画館を建設する」ことと「多様な三次元立体映画をもっとたくさん制作する」よう指示する金正恩。なぜか、案内人が指指しているのは音響効果用のシンセサイザーであろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「電子娯楽館」を視察する金正恩。ゲーム機に書かれているブランド名はきれいに消されていると思ったのだが、SEGAはでかでかと書かれたままだ。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月17日、「ムンス・ウォーターパーク(紋繍遊泳場)」を現地指導。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    手前に立っている軍人のベルトには拳銃フォルダが付いたままになっている。金正恩の警護は、通常、若くて背の高い軍人があたっているが、この軍人も警護要員なのだろうか。一瞬、崔龍海かとも思ったのだが、『労働新聞』の記事で確認したところ、この日の指導には彼は同行していないようである。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    金正恩を歓迎する「軍人建設者」。この現地指導では「人民軍、軍人建設者」を高く評価する言葉を繰り返し述べている。馬息嶺スキー場もそうだが、やはり100万以上いる軍人を「実利あるように」使うためには建設事業に従事させるのが最良の方法と考えているのであろう。人民軍が軍需産業にどれほどコミットしているのかは分からないが、安保理制裁を受け武器輸出が難しくなっている中で、軍需産業に従事した労働力としての人民軍人と経済権益を建設事業にシフトさせているのかも知れない。重要な権力基盤でである人民軍は、いくら「先党政治」にシフトさせるにしても、絶対につぶせないわけだから、このような形で経済建設にコミットさせるのは良い方法なのかも知れない。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    ウォーターパークのレストランについて指導をする金正恩。やたらとそり込みが目立つが、髪型を変えたのであろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月22日、再びウォーターパークを現地指導。脱衣室にて「脱衣室には乾髪機(ヘアドライヤー)を設置して人民の便宜を図れ」と指導。「乾髪機」は、北朝鮮で一般的に使われているのだろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    数多くの「水槽(プール)」があるわけだが、気になるのは、こんなに大量の水をどのように浄水処理するのだろうか。金正恩さんは、タイルの材質だのスライダーの柱の色だの、外面的な部分については「細心」の指導をしているようだが、浄水処理については一切言及がない。そもそも、そういう発想がないのだろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    同日、「ミリム(美林)乗馬クラブ」視察。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「ミリム乗馬クラブを予定された期日内に完工する期待と確信を表明」する金正恩。「予定された期日」が党創建記念日(10月10日)だったような気もするが、そう言わなくなったのは間に合いそうもないからだろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月23日、「完工段階に至った口腔病院建設場」視察
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「必要な口腔総合治療器具は党が準備した。それを使えば、1日に数百人治療できる」と語り、病院を「柳京口腔病院」と命名する金正恩。こちらは、はっきりと「党創建記念日に開業する」と言っている。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月24日、「5月1日競技場」視察し、「改修・補修事業を指示」。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「競技観覧が楽にでき、見た目の良い新しい椅子を設置」するように指示している。「平壌体育館」の改築もそうであるが、どうも金正恩さんは椅子にこだわるようだ。映像を見る限りでは、それほど見た目が悪いことも座り心地が悪いこともなさそうなのだが、なぜだろうか。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    さらに「陸上トラックとサッカー場に国際基準に適合したゴム版と人工芝を敷き、如何なる競技も問題なく開催できるように夜間照明施設も備えろ」と指示をする金正恩。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月28日、「完工を前にした金日成総合大学教育者住宅建設場」を視察。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    金正恩が視察した1号棟3階の部屋。これまでに新たに建設された住宅を見てずっと気になっていたことは、立派な部屋にもかかわらず照明が貧弱だということだ。大体は、天井から電球型の蛍光灯がぶら下げられているだけで、傘も何もない。「元帥様」が視察する時の部屋も、入居後に紹介される部屋もこの点については全く変わっていないので、これが平均的というのか、平均以上ということなのであろう。しかしこの住宅には、下の写真にあるようにダイニング・キッチンであろうか、テーブルの上にそれらしい照明が取り付けられている。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    こちらの照明もカバーが付いているように見える。「全ての住居には液晶テレビも設置してやろう」と語る金正恩。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「住宅の各階を歩いて登り、建設状況を視察する敬愛する元帥様」ということであるが、この住宅にはエレベータが設置されていないのであろうか。上の写真で見る限りかなりの高層アパートなので、もしないとすると上層階の人は大変なことになる。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    9月29日早朝、「ムンス・ウォーターパーク建設場」を再び現地指導。「記録映画」を見る限りでは、真っ暗な時間帯にやってきて、下の写真のように明るくなるまで現地指導をしたようだ。
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    Source: KCTV,2013/10/02放送

    「人民大学習堂案内」:朝鮮人民のための公開人民講座 何を学ぶのか? (2013年9月27日 「朝鮮中央TV」)

    毎月月末には放送しているのかも知れないが、9月27日の「朝鮮中央TV」で10月の「講座スケジュール」を放送した。この種の番組は、「報道」の後などにさらっと流れるだけであるが、実は案外おもしろい。それは、こうした情報は西側の朝鮮ワッチャーを意識したものではなく、朝鮮人民に普通に情報を提供している目的で流されているからである。一般的に朝鮮人民は「政治・思想」ばかり学習させられているように思われているが、そういう学習は相対的にたくさんあるにしても、それ以外のこともきちんと学んでいる。では、それを「人民大学習堂」の講座スケジュールを見ながら確認していこう。

    「人民大学習堂案内」
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    「18日 4号講義室 16時、我が民族の優秀な結婚風習と美風良俗、社会科学院民俗学研究所室長 博士・副教授 張ソンナム」。まず、「社会科学」系の講義から紹介される。北朝鮮の社会主義的あるいは主体(チュチェ)的「結婚風習」のことなのか、本当の伝統的な「風習」なのかはわからないが、いずれにしても興味深い。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    「25日 4号講義室 16時、我が党は人徳政治で一心団結を実現した偉大な党、平壌機械大学 教員 金チョルマン」。こちらは典型的な政治学習のようだ。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    「7日 2号講義室 16時、エネルギー節約型建物と熱損失評価方法、中央暖房研究所 研究者 博士・副教授 李クムボク」ここからは「科学技術」系の講義の紹介となる。この講義など日本のどこかの大学にもありそうなテーマである。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    「8日 4号講義室 16時、医学分野における衝撃波利用技術、金策工業総合大学 教員 金クァンリョル」こちらなど、「衝撃波」どのように利用するのか想像もつかないが、このような講義には医療関係者が出席するのであろう。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    「14日 4号講義室 16時、建物保温によるエネルギー節約技術、人民大学習堂 講師 金ヨンナム」。エネルギー不足が慢性化している北朝鮮では、省エネ技術に相当関心を持っていることが分かる。先端素材などを使った技術ではないと思うが、「素朴な」方法で省エネを実現しているのであれば、先進国でも案外使える技術なのかも知れない。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    「15日 4号講義室 16時、地下レーダー探査技術、金日成総合大学地質学部 講座長 副教授 李イルギョン」。鉱脈をレーダーを使って発見する技術のことであろうか。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    「22日 1号講義室 16時、最近のキノコ生産の発展動向、国家科学院キノコ研究センター 室長 ユン・ピョンサン」。今度は農業関連の講義である。少し前に、金正恩さんがどこかの農場のキノコ栽培施設を現地指導したという報道があったが、北朝鮮ではキノコ栽培に力を入れているようである。正しい知識かどうかは分からないが、どこかでキノコは低カロリー食品である(=したがって、飽食の国ではダイエットに最適)という話を読んだことがある。だとすると、北朝鮮のように要カロリー国では、味覚の点はさておき、あまり役立たないような気もするのだがどうなのだろうか。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    「23日 1号講義室 16時、情報検索で『分類-検索語辞典』を利用した意味検索方法、人民大学習堂 講師 ヤン・ヨンホ」。『分類-検索後辞典』なるものがあるのだろうか。私も1冊欲しいところだ。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    「29日 1号講義室 16時、配列信号処理方法とその応用、金策工業総合大学 教員 金クァンミョン」。情報関連技術なのであろうか、よく分からない。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    「30日 1号講義室 16時、知識経営体系の構成要素と構築方法、金策工業総合大学 講座長 博士・副教授 金スンナム」。これなど、北朝鮮の経済改革との関連で本当に聞いてみたい講義だ。「知識経営体系」なるものを北朝鮮がどう定義しているのかも知りたいし、その「構成要素」が何で、どのように「構築」するのかなど実に興味深い。おもしろいのは、この講義を「科学技術系」のカテゴリーに含めていることである。もしかすると、経営システムそれ自体ではなく、経営に情報技術を応用するという内容なのかも知れない。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    次は「新技術通報講義」である。「7日 2号講義室 16時、最新鉱山採掘技術、人民大学習堂 講師 金チョン」。「新技術通報講義」というカテゴリーであるが、敢えて分けているところからして、現場ですぐに応用できるような段階に至った技術なのかも知れない。
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    Source: KCTV,2013/9/27放送

    政治・思想学習は他で十分やっているので必要ないのか、科学技術系の講義が多い。

    「祖国賛歌」:新しい金正恩賛歌 (2013年9月11日 「労働新聞」)

    このところ「朝鮮中央TV」では「祖国賛歌」という歌をかなり頻繁に流している。この歌は、9月11日の『労働新聞』で大きく紹介された。その日にこの歌を紹介する記事を書きかけたのだが、今日まで放置してしまった。この歌は、同新聞のトップ記事で紹介されたのだが楽譜と歌詞のみが掲載され、歌詞の解説などは掲載されなかった。

    翌日、9月12日には「朝鮮中央TV」で「共和国創建65周年慶祝 功勲国家合唱団公演『繁栄しろ祖国よ』」が放送され、この中で同合唱団による男性五重唱の「祖国賛歌」が紹介された。

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    Source: KCTV, 2013/9/12放送

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    Source: KCTV, 2013/9/12放送

    その後、「朝鮮中央TV」ではこの「公演から」バージョンの「祖国賛歌」をしばらく流していた。では、9月11日に書きかけた記事を使いながら歌詞を紹介しておく。

    「祖国賛歌」
    作詞:「集体」(共同作詞、プロジェクトチーム)
    作曲:ソル・テソン
    (荘厳に誇り高く)
    1.
    愛する母が 初めの一歩を 歩ませてくれた
    温かい故郷の家の庭 祖国よ
    誰にも大切な その懐は祖国
    輝け朝鮮 人民共和国

    2.
    絵のように光芒として 目に眩しい 地と海
    金銀宝貨(で)埋め尽くされた伝説の国
    幸福よ溢れ出ろ 人民の祖国

    3.
    雲の上にはオオタカが舞い 木蓮の花が咲くこの野山
    聡明で美しい朝鮮の姿
    羨むことはない 朝の国

    4.
    躍動する若さで飛躍するその姿
    強固な気性(が)天にも届くこの朝鮮
    心臓を捧げよう この朝鮮のために

    5.
    青空には我々の国旗(が)無窮にたなびき
    この地では全ての夢が叶う
    その方を永遠に愛そう

    輝けこの朝鮮 人民共和国

    歌詞には「人民共和国」という言葉が2回出てくるが、浅学の私はすぐに「とうとう民主主義を放棄したのか」と思った。しかし、調べてみると、諸説あるものの、解放直後の1945年9月6日に朝鮮の社会主義者が宣布したのが「朝鮮人民共和国」ということである。北朝鮮系のwebでこれについて裏を取ろうと思ったのだが、少し調べただけでは見つけることができなかった。

    しかし、9月12日に放送された「功勲合唱団」公演では「愛国歌」に続いて「人民共和国宣布の歌」が演奏されているので、やはり「人民共和国」が「民主主義人民共和国」の始点ということであろう。この「人民共和国宣布の歌」のメロディーはしばしば耳にしていたのだが、タイトルはこの時に初めて知った。

    「人民共和国宣布の歌」
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    Source: KCTV, 2013/9/12放送

    歌のタイトルは「祖国賛歌」であるが、やはり「金正恩賛歌」がちゃんと埋め込まれている。4番の「躍動する若さで飛躍するその姿」や5番の「その方を永遠に愛そう」は彼を指していることは間違いない。

    「功勲合唱団」公演が行われて以後、しばらくの間、「朝鮮中央TV」の「20時報道」などでは、この歌を学習する朝鮮人民の姿が多く紹介された。

    コンピューターを見ながら歌を学習する金亨稷(キムヒョンジク)師範大学の学生
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    Source: KCTV, 2013/9/13放送

    モランボン楽団創設以来、全人民的な「新しい歌」というのは大体モランボン楽団が歌っていたのだが、今回は「功勲合唱団」バージョンがしばらく使われたので、「銀河水・李雪主事件」との関連で「モランボン」にも異変が起きたのではと思ったのだが、その後、モランボン・バージョンの「祖国賛歌」が登場して、最近ではこちらばかり流されている。

    ***********
    <参考>
    「朝鮮中央通信」は28日に伝えていたが、10月1日付けの『労働新聞』に「総連中央代表、我々の最高尊厳を冒涜した日本保守言論を断罪」という記事が掲載された。それによると「総連代表が9月24日に朝日新聞を訪れ」、「朝鮮に対する悪宣伝を行った」ことについて抗議したとのことである。

    『労働新聞』、「총련중앙대표들 우리의 최고존엄을 모독한 일본보수언론을 단죄」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-10-01-0028&chAction=S

    確かに、今回の「銀河水・李雪主事件」は『朝日新聞』に掲載された記事が発端である。韓国のメディアは「李雪主が2週間も公式な場に登場しない」など、関連記事をたくさん流しているが、「銀河水団員公開処刑」の一件も含め、もう少し様子を見る必要がありそうだ。
    ***********

    モランボン・バージョン「祖国賛歌」
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    Source: KCTV, 2013/9/30放送

    3番の歌詞にあるオオタカと思われる。
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    Source: KCTV, 2013/9/30放送

    4番の「天にも届くこの朝鮮」はやはりこのことであった。
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    Source: KCTV, 2013/9/30放送

    また、4番の「心臓を捧げよう」はそんなにエグい話ではなく、「スポーツ強国」になり人共旗を世界の大会でたなびかせようということのようだ。映像は過去記事でも紹介したアジアカップでの女子サッカー優勝シーン。
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    Source: KCTV, 2013/9/30放送

    5番の「その方を永遠に愛そう」の場面では、「その方」の名前が出ている。
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    Source: KCTV, 2013/9/30放送

    歌は人共旗と国章が出て終わる。
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    Source: KCTV, 2013/9/30放送

    『労働新聞』HP版では、写真ファイルを使って歌が紹介された。
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    Source: 『労働新聞』、「조국 찬가」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2013-09-11-0040&chAction=D
    プロフィール

    川口智彦

    Author:川口智彦
    「크는 아바이(成長するオッサン)」

    ブログの基本用語:
    「元帥様」=金正恩朝鮮労働党委員長(上の絵の人物)、2016年12月20日から「最高領導者同志」とも呼ばれる
    2021年1月11日から「総秘書同志」
    「首領様」=金日成主席
    「将軍様」=金正日総書記
    「政治局員候補」=金ヨジョン(「元帥様」の妹)、2018年2月11日から「第1副部長同志」とも
    「白頭の血統」=金一族
    「大元帥様達」=「首領様」と「将軍様」
    「女史」=李雪主夫人(2018.07.26より「同志」に)

    우 그림은 충정 담아 아이가 그린 경애하는 김정은원수님이십니다.

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