「敬愛する金正恩同志をお招きし、新たに作った地下電車の試運転が行われた」:車内に灰皿、「専用座席」、「定員220人」 (2015年11月20日 「労働新聞」)
20日、『労働新聞』が「元帥様」が新型地下鉄車両の実走テストに乗車したと報じた。
『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 새로 만든 지하전동차의 시운전이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-11-20-0001
「元帥様」は10月に「金ジョンテク電気機関車連合企業所」を「現地指導」し、完成した車両は見ている。今回は、その実走車両に乗り込んでの「現地指導」ということになる。
地下鉄車両は、「我々の技術で」と言っているので、完全な北朝鮮製なのであろう。ロケットを打ち上げることができる国なので、資金とやる気があれば、地下鉄車両ぐらいはできるはずである。平壌地下鉄というのは、ショーケースの象徴的存在なので、ある意味、その車両を今まで「我々の技術」で製造してこなかった方が不思議である。「首領様」と「将軍様」が地下鉄を作った当時は、トンネルを掘ることが重要で(軍事的にも)、そこを走る車両には関心を向けなかったのであろう。それは、冷戦期間中だったので、車両は社会主義兄弟国(東ドイツ)から中古車両をいくらでも調達できる状態でもあったからであろう。
ここで、「我々の技術」で製作した車両を走らせたのは、中古車両を譲ってくれる社会主義兄弟国が中国を除いてなくなったことと、車輌製造技術が向上したこと、「人民生活の向上」に「元帥様」が力を入れていることをアピールするためなどの理由が考えられる。
実は、10月の時点では、車両は中国製の中古を改良したものではないかと思っていたのであるが、今日に至るまでその疑問は残るものの、なんとなく純粋な「我々の技術」で作ったような気がしている。それは、中国地下鉄の歴史が短い(最も古いものでも北京1号線で1969年:wiki情報とコメントでの指摘)ので、車両の交換時期に至っていないこと、動力部分は北朝鮮仕様と互換性がなさそうなことなどであるが、はっきりとしたことは分からない。もちろん、地下鉄から地下鉄への移転という必要もない。
平壌地下鉄は標準軌であるが、車内はあまり広そうに見えない。
Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 새로 만든 지하전동차의 시운전이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-11-20-0001_photo
友好的日本人民が案内員同志と(当時はソウル訛りの)朝鮮語で話しているのを見て、不思議そうな顔で乗客に見られていたのだけははっきり覚えているのだが、平壌地下鉄が禁煙だったかは覚えていない。少なくとも私が乗ったときはタバコを吸っている人はいなかった。「元帥様」はそれほどタバコを我慢できないのか、車内に灰皿を持ち込んで喫煙している。権力者としての威厳を見せたいのかもしれないが、せっかく「専用座席」(左の青いシール)のマークの横に座り、障害者等への配慮を見せる写真を使っているのに勿体ない。「足を朝鮮につけ、世界に目を向け」ていれば、世界は「禁煙」・「分煙」に向かっている趨勢ぐらい分かるはずなのだが。
Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 새로 만든 지하전동차의 시운전이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-11-20-0001_photo
Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 새로 만든 지하전동차의 시운전이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-11-20-0001_photo
しかし、北朝鮮では恐らくこの青マークは必要ない。80年代の韓国がそうであったように、マークがあろうがなかろうが、高齢者等には競って席を譲るのが北朝鮮社会だと思うからだ。「元帥様」は、車両を「美男子」と褒めたが、韓国では見られなくなってしまった、北朝鮮の「美男子」的側面(もちろん、席を譲るのは男性だけではない)をいつまでも守ってほしいものである。日本社会を「腐った資本主義社会」とは思っていないが、老人が前に立っていても優先席で足を広げてスマホをいじっている若者は、醜さの極みである。
この車両、ドアーがとても大きい。平壌地下鉄ラッシュ時の乗客数は分からないが、これほど大きなドアーにする必要があるのだろうか。さらに、「乗車人員220人」と書かれている。日本の主要地下鉄の「定員」を調べると、中間車両で大体150人である。上の写真から分かるように、日本の地下鉄と比べて特段大きな車両にも見えないのだが、「220人」というのは、算出根拠が日本とは違うのであろう。日本でも混雑時には2倍ぐらいの乗客が乗るわけだから、実際には300人以上が乗っているということになる。
Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 새로 만든 지하전동차의 시운전이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-11-20-0001_photo
つり革がないのはまだよいとし、荷物棚がないように見えるが、なぜだろうか。
<追記:2015年12月4日>
「元帥様」の11月の民間部門「現地指導」の様子を伝える「朝鮮記録映画」が放送された。その中では、地下鉄試運転の「現地指導」も含まれており、そこに移った車両には一部つり革があった。また、コメントでドアーのサイズや開閉速度が話題になったが、動画で見るとドアのサイズはさほど大きくなく、また開閉速度も日本の車両とさほど変わらないように見える。
『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 새로 만든 지하전동차의 시운전이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_01&newsID=2015-11-20-0001
「元帥様」は10月に「金ジョンテク電気機関車連合企業所」を「現地指導」し、完成した車両は見ている。今回は、その実走車両に乗り込んでの「現地指導」ということになる。
地下鉄車両は、「我々の技術で」と言っているので、完全な北朝鮮製なのであろう。ロケットを打ち上げることができる国なので、資金とやる気があれば、地下鉄車両ぐらいはできるはずである。平壌地下鉄というのは、ショーケースの象徴的存在なので、ある意味、その車両を今まで「我々の技術」で製造してこなかった方が不思議である。「首領様」と「将軍様」が地下鉄を作った当時は、トンネルを掘ることが重要で(軍事的にも)、そこを走る車両には関心を向けなかったのであろう。それは、冷戦期間中だったので、車両は社会主義兄弟国(東ドイツ)から中古車両をいくらでも調達できる状態でもあったからであろう。
ここで、「我々の技術」で製作した車両を走らせたのは、中古車両を譲ってくれる社会主義兄弟国が中国を除いてなくなったことと、車輌製造技術が向上したこと、「人民生活の向上」に「元帥様」が力を入れていることをアピールするためなどの理由が考えられる。
実は、10月の時点では、車両は中国製の中古を改良したものではないかと思っていたのであるが、今日に至るまでその疑問は残るものの、なんとなく純粋な「我々の技術」で作ったような気がしている。それは、中国地下鉄の歴史が短い(最も古いものでも北京1号線で1969年:wiki情報とコメントでの指摘)ので、車両の交換時期に至っていないこと、動力部分は北朝鮮仕様と互換性がなさそうなことなどであるが、はっきりとしたことは分からない。もちろん、地下鉄から地下鉄への移転という必要もない。
平壌地下鉄は標準軌であるが、車内はあまり広そうに見えない。
Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 새로 만든 지하전동차의 시운전이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-11-20-0001_photo
友好的日本人民が案内員同志と(当時はソウル訛りの)朝鮮語で話しているのを見て、不思議そうな顔で乗客に見られていたのだけははっきり覚えているのだが、平壌地下鉄が禁煙だったかは覚えていない。少なくとも私が乗ったときはタバコを吸っている人はいなかった。「元帥様」はそれほどタバコを我慢できないのか、車内に灰皿を持ち込んで喫煙している。権力者としての威厳を見せたいのかもしれないが、せっかく「専用座席」(左の青いシール)のマークの横に座り、障害者等への配慮を見せる写真を使っているのに勿体ない。「足を朝鮮につけ、世界に目を向け」ていれば、世界は「禁煙」・「分煙」に向かっている趨勢ぐらい分かるはずなのだが。
Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 새로 만든 지하전동차의 시운전이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-11-20-0001_photo
Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 새로 만든 지하전동차의 시운전이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-11-20-0001_photo
しかし、北朝鮮では恐らくこの青マークは必要ない。80年代の韓国がそうであったように、マークがあろうがなかろうが、高齢者等には競って席を譲るのが北朝鮮社会だと思うからだ。「元帥様」は、車両を「美男子」と褒めたが、韓国では見られなくなってしまった、北朝鮮の「美男子」的側面(もちろん、席を譲るのは男性だけではない)をいつまでも守ってほしいものである。日本社会を「腐った資本主義社会」とは思っていないが、老人が前に立っていても優先席で足を広げてスマホをいじっている若者は、醜さの極みである。
この車両、ドアーがとても大きい。平壌地下鉄ラッシュ時の乗客数は分からないが、これほど大きなドアーにする必要があるのだろうか。さらに、「乗車人員220人」と書かれている。日本の主要地下鉄の「定員」を調べると、中間車両で大体150人である。上の写真から分かるように、日本の地下鉄と比べて特段大きな車両にも見えないのだが、「220人」というのは、算出根拠が日本とは違うのであろう。日本でも混雑時には2倍ぐらいの乗客が乗るわけだから、実際には300人以上が乗っているということになる。
Source: 『労働新聞』、「경애하는 김정은동지를 모시고 새로 만든 지하전동차의 시운전이 진행되였다」、http://www.rodong.rep.kp/ko/index.php?strPageID=SF01_02_02&newsID=2015-11-20-0001_photo
つり革がないのはまだよいとし、荷物棚がないように見えるが、なぜだろうか。
<追記:2015年12月4日>
「元帥様」の11月の民間部門「現地指導」の様子を伝える「朝鮮記録映画」が放送された。その中では、地下鉄試運転の「現地指導」も含まれており、そこに移った車両には一部つり革があった。また、コメントでドアーのサイズや開閉速度が話題になったが、動画で見るとドアのサイズはさほど大きくなく、また開閉速度も日本の車両とさほど変わらないように見える。