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新レーベル「オーバーラップ文庫」創刊タイトルの1。
作者のSOW先生は「私立エルニーニョ学園伝説」 でジャンプ ジェイ ブックスからデビューされた方。
他にもメガミ文庫で「みすぷり!」や「べるぜバブ」のノベライズ等を書かれているらしい。

さて・・・この「よろず屋退魔士の返済計画」。
父親の借金のカタに売られた主人公の狗郎(くろう) が、債権者である幼馴染のみぎりに振り回されながら借金返済を目指すドタバタコメディです。
「退魔士」という単語から想像できるように、テーマとなっているのは陰陽道を土台とした幽霊や妖怪との交流。
彼らの現世での未練を解決し成仏へと導いていきます。

今回扱われた事件は3つ。
残された彼氏が心配な女子大生、お互いの最終話が被ってしまい書き直しを望む二人の漫画家、真名を探している怨霊。
それぞれの未練を解決していきます。 
前二つは終始軽いノリのコメディで気楽に読め、一転、ラストの話ではシリアスに読ませる。
この切り替えは見事だったな。特にみぎりのキャラクター。
無茶苦茶な言動を繰り返し正直若干引いてしまっていたけど、
その後の御形との会話で主導権をとる様や、

「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!!生きてなにが悪い!生まれてなにが悪い!!たとえ泥の中で生まれようが、生まれた以上はこっちのモンだ!!自分の命だ!オマエの命だ!」

このセリフなどには危うく惚れかけた。危なかった。


全体的によくまとまっており、文章も上手いなと感じられたな。
構成もしっかりしており、専門学校のようなところでラノベの書き方をきっちり習った人が書いたような印象。
読みやすいって大事。


ただ・・・面白いか面白くないかでいったら、面白くなかった。


なんだろう。
好みと言ってしまえばそれまでなんだけど、全体を通してどこを読めばいいのか、何が書きたかったのかがいまいち伝わってこなかった。
特に前半ね・・・。
最初の女子大生幽霊の話は「これ面白いでしょ?」というネタをできるだけ詰め込んでみましたという感じで、逆にまとまりがなくなってしまい置いてけぼりをくらってしまった。
漫画家の話も最後の部分が書きたかったのかなというのはわかるんだけど、オマージュが露骨すぎて引いてしまう。
こういうわかりやすさが求められているのかもしれないけど。。。

キャラクターもいまいち。
主人公は終始流されているだけでまったく魅力がなく、メインヒロインのみぎりは最終話で株はあげたもののどうしても序盤の低評価が拭えない。
もう一人のヒロインである葛は主人公のことが好きなんだけど素直になれずきつく当たってしまう貧乳僕っ子。
「お前らこういうキャラ好きなんだろ?」と言われてるようで。なんだかなー。

コメディパートの会話も勢い重視で中身がなく面白みもない。
最後のシリアスパートはよかっただけに、最初からその方向でやっていった方がよかったんじゃないか。
全体を通してみるとやはり面白くないと言わざるをえない。


・・・とはいえ、以上の感想は曲がりなりにもラノベを10年以上1000冊以上読んでいる者としての感想である。
読みやすく分かりやすい作品であるだけに、ターゲットをラノベにあまり触れたことのない初心者としているならむしろ適切な作品と言ってもいいかもしれないね。
そうした層に読んでもらえるかどうかは営業の腕次第。
作者としてはいい仕事をしたのでしょう。


レビュー:しゅん


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よろず屋退魔士の返済計画 1 100億の契約書 (オーバーラップ文庫)よろず屋退魔士の返済計画 1 100億の契約書 (オーバーラップ文庫) [文庫]
著者:SOW
出版:オーバーラップ
(2013-04-24)