アキネ会の日常

ライトノベルコミュニティー「ラノベdeアキネイター」の参加メンバーが“共同運営”するライトノベルレビューブログ

一般小説

5
2015年春の覇権(当社比)アニメ、『響け!ユーフォニアム』について。

かつての『涼宮ハルヒの憂鬱』や3年前の『氷菓』もそうでしたが、小説のアニメ化は京アニが一番ですね。原作の良いところを残しつつ、アニメでしか表現できない魅力を存分に引き出してくれる。
それだけにとどまらず、アニメを観た後に原作を読み直すと、「アニメでは表現できなかった原作小説ならではの面白さ」を気づかせてくれるのが、本当に素晴らしいのなんのって。

『ユーフォ』で言えば、音楽的な演出だったり久美子と麗奈の百合百合しいやり取りなんかはアニメならではでしょう。一方で、ダメダメだったあのチームが滝先生の指導の下じわじわと成長していく過程は、小説の方が表現できてたかなと思います。どんなに厳しい練習をしていても、アニメだと「週1回」だからね。

というわけで、キャラクターについて思うところを思うがままに書こうと思います。


一番「変わった」と思うのは、主人公の久美子。このキャラ、実はけっこう中途半端な立ち位置なんですよね。ユーフォの経験は長いから、それなりの技術はある。マイナー楽器だけあって競争相手も少ない。けど、圧倒的技量のあるあすか先輩や麗奈ほどではない。全国行きたい!という強い意志はなかったけど、真面目に練習しようというやる気はある。
この中途半端さから、小説ではどうしても「語り手」「観察者」みたいなポジションだったけど、アニメではしっかり主人公をやっていたと思います。どこか冷めていた久美子が、上手くなりたい、全国に行きたいと強く思うようになっていく過程がきっちり描かれておりました。

あと、小笠原部長。原作では3巻通して、3年生の中でも、変人超人のあすか先輩や大正義天使の香織先輩と比べると、インパクトが弱いキャラでした。けれどアニメでは、顧問と部員の板挟みになって四苦八苦する部長の姿がとても素敵でした。
アニメを観終わった後、もう一度原作を読み直したら、実は原作でも、彼女は彼女なりに悩んでいる場面が結構あったことに気づきました。3巻最後の挨拶のシーン、最初に読んだときは特に何も思わなかったけど、アニメの小笠原部長を思い出しながら読んだら、泣けました。

そして香織先輩。原作でも聖人ですがアニメでは大天使でしたホント。最早言うことはない。
ひとつ不満があるとすれば、麗奈と一騎打ちした次の回の冒頭で、麗奈が「あのときは生意気言ってすいませんでした」と謝るシーン。あそこは原作通り、回を跨ぐことなく、決着がついたその場でやってほしかった。それでこそ、「負けを認めるために挑んだ」香織先輩への麗奈の素直な敬意が伝わったんじゃないかなと思う。

香織先輩といえば、その信者の優子ちゃん。原作1巻だと、麗奈にキツく当たるちょっと嫌な先輩ってキャラで終わってしまうんですよね。
バカっぽい子だけど、大量に辞めた2年生の数少ない生き残りだし、A編成に入るだけの実力もある。香織先輩を信奉するのもそれなりの理由がある。実は原作2巻でそのへんのエピソードが分かって、ようやく優子先輩の人となりが分かるんですが。アニメではうまいことオリジナルのシーンを挟むことで、「本来2巻でわかるはずの優子先輩の良さ」を「1巻分のエピソードの中」で伝えてくれたと思います。GJ部!


一方で、ちょっと不満が残るのが、あすか先輩。アニメだと、ただの完璧超人&変人で終わってしまっているのよね。「ソロをふくのは麗奈でも香織でもどうでもいい」と切り捨てるところがありましたが、あの冷酷さもあすか先輩の一面なわけで。奏者としては一流だし、部をまとめる力もあるけれど、決して「誰かの味方」にはならない。そういう、怖いくらいの公正さを、もう少し出してほしかったなと。

あとはサファイヤちゃんね。この子も天真爛漫で可愛らしい変人キャラでしたけど、忘れてるかもしれないけど、全国レベルの名門校出身。あの自信は、確かな実力に裏打ちされているのです。それと、この子ってどちらかというと「コンクールの結果より、楽しく演奏」というタイプなんです。コンバスが好きだから一生懸命練習するし、そうすれば結果は自ずとついてくる……という、「音楽家」的な子なのですが、あまりアニメではそこまで描かれていなかったなと思いました。

まあそんな感じでした。
2期頼むで京アニ様……2巻、3巻ぶっ通しの2クールでオナシャス。

記事:tartarous
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4
2015年春からアニメ化だそうで。

京アニで、しかも高校生の部活の音楽といえば「けいおん」という偉大な前例があるわけですが。けいおんが楽しい部活、楽しい音楽をモットーとしていたのに対し、本作はそういうのを否定して、辛くて苦しい努力の先にある結果(=評価されること、賞を取ること)を目指すお話です。
たまーにテレビのドキュメンタリー番組で、全国を目指す吹奏楽部と熱血教師の物語!みたいのをやっていますが、あんな感じのをイメージすると分かりやすいかも。

ストーリー自体は極めてシンプル。弱小だった吹奏楽部が、新任のスパルタ顧問の下で猛練習し全国大会を目指すお話です。途中で部内の温度差で溝が出来たり、上手い下手のパート決めでギクシャクしたり、試験だの恋愛だの部活以外の問題で悩んだり。そういう濃い時間を過ごしながら、いざ全国大会の予選へ、という王道パターンだと思います。

面白いなと思うのは、読んでいて、別の子を主人公にしたらどんな物語になるんだろうと想像してしまうところ。一応は久美子が主人公ではあるけれど、例えば楽器初心者の葉月とか、数少ない男子部員の秀一とか、それこそ指導者の滝先生とかを主人公に添えても、それはそれで面白い物語が出来そうだなーと思うわけです。

アニメ化するのでアニメを見ればいいのですが、大幅な改変の可能性もあるし、原作は原作で読む価値は十分にあります。一つの部がどう頑張るか、どのくらい頑張るかとういうのを決めるのは、顧問ではない。部長でもない。もちろん一年生の主人公でもない。全体の大きな流れ、言ってしまえば「場の空気」が決めてしまうのだ……というのが本作品の一つのテーマでして、これは文章でこそ表現できたのではないかなと思うのです。

一方で、京アニならこの原作の魅力を120%引き出してくれるだろうと期待もしているのですが。頼みますぜ!

感想:tartarous



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5
アキネ会特別企画・この『恋模様』がすごい!のトップバッターを張らせてもらいます。

そしていきなりハードカバーをチョイスするという……

この『ともだち同盟』と言う作品、僕が森田季節という作家に本格的にハマるきっかけになった作品で、いつかこの作品について語りたいな、と思っていたのでこの機会に紹介したいと思います。

まず、タイトルの『ともだち同盟』は大神弥刀と芝宮朝日、そして自称『魔女』の細川千里が結んだもので、内容は

「ひとつ。けっして、お互いの秘密をばらさないこと。
 ふたつ。けっして、ウソをつかないこと。
  もし、言ったら、とてもひどい罰が当たる。」

と言うもの。この「秘密」と「ウソ」が、物語の中で重要な意味を持ってくるんですけど、この辺はちょっと記事の趣旨と違ってくるんで割愛。

物語は、ともだち同盟を結んでいた3人のうちの1人、朝日が弥刀に告白することで始まります。
ぎこちないながらも、恋人としての生活が始まった2人、しかし、告白された弥刀自身には実感がなく、むしろ「千里と付き合う可能性のほうが高いと思っていた」と言う始末。
それでもどうにか恋人として過ごしていた時突然『魔女』が死んだ。

ずっと続くと思っていた『ともだち同盟』はあっさりと崩壊し、残された魔女の『呪い』によって、3人は、もう一度『ともだち同盟』の価値を試すことになる……

とまああんまり恋愛ものっぽくない。というか断じて恋愛ものではないんですけど、それでもこの物語の根底にあるのは間違いなく恋愛です。

千里の死後に、弥刀に突きつけられた「朝日と千里のどっちを選ぶか」という選択肢。
朝日が弥刀に抱く恋心と、千里に抱く恐怖。
千里が露わにした、『ともだち同盟』という関係性に抱く執着にも近い愛情。

普通の女の子である朝日と、異常な魔女である千里。この2人に挟まれた弥刀の選択。
その果てにたどり着く終着駅は是非ご自分で確かめていただきたい。

ビターでダークな雰囲気の作品で、決して清々しい気分になれるようなものではありませんが、たまにはこういう青春もどうでしょう?


レビュー:ぼくだ

ともだち同盟
森田 季節
角川書店(角川グループパブリッシング)
2010-06-26


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どう見てもラノベじゃないですが、せっかく読んだので感想を書きます。

当然ながらネタバレを含みます。映画の公開も控えておりますので、ご承知の上、続きにお進みください。

とはいえ。既に数多くのレビューや感想が書かれておりますので、ここはラノベのブログらしく、今流行りの「艦これ」に絡めつつ書いていこうと思います。続きを読む
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3
「サクラダリセット」の河野裕の新作。
私はサクラダリセットはもちろん、同じくスニーカー文庫から出ている「ベイビー・グッドモーニング」なんか単巻作品のベスト3に入るほど大好きです。
そんな作者の新作ということで、とても楽しみに読みました。

作者の特徴である透明感あふれる雰囲気はもちろん健在。
今回はウィットに富んだ会話やクスリとできる会話もあって、会話でさらに楽しませてくれています。
そして何よりストーリーの中心となるユキとほっしーの友情ね。
間にあったのは一つの大きな嘘。
方や嘘をつかれているということを気付きもせず。
方や嘘をつきながらも実は気付いてほしくって。
それでも、その間にはしっかりした友情があったんだな。
そんな少女たちの物語を綺麗に描いております、
やっぱこの人の物語と文章は好きだなー。


ただ。

この作品の語り手は元編集者にして喫茶店のオーナー・佐々波と作家・雨坂という二人の男。
彼らが浮かび上がってきた情報からストーリーを作っていきます。
個人的にはこの二人がダメだったなー。
あざとい描写があるわけじゃないんだけど、BLか?と思ってしまい単純に好きになれなかった。
成人男性ってなんか感情移入しづらいしね。
核となるユキたちがよかっただけに、すごく残念。
これまでとは違ったことがやりたかったんだろうけど、この作者にはサクラダやベイビーのような少年少女たちを中心とした切なくも綺麗な作品を書いてほしかったな。
男二人を脇役において終始ユキたち視点でやってくれればよかったのに。 

伏線も張っている最中だし、3巻まではすでに刊行予定があるみたい。
とりあえずもう1巻くらいは追いかけてみようか。。。


レビュー:しゅん



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5
角川文庫から出ているので個人的にはラノベ判定ではないのですが、
作者がサクラダリセットの河野裕先生ということなので取り上げた次第です。

あらすじコピペと思ったらラノベみたいに長いのが見つからないので短いですがこれで

異人館が立ち並ぶ神戸北野坂の小さなカフェ「徒然珈琲」にはいつも、背を向け合って座る二人の男がいる。一方は元編集者の探偵で、一方は小説家だ。物語を創るように議論して事件を推理するシリーズ第1弾!

作品的にはビブリアからの流行に乗って生まれたタレーランを最初に思い出しました。

作品自体の特徴としては、ミステリものだけれど二人が元編集者と小説家であること。
なので推理をするのではなく、与えられた条件でストーリーを作成していく形で話が進んでいくのが一つの面白みだと思います。
小説家の方は推理をしているわけではなく、純粋にこういう条件下であるならこういうストーリーでしょうとお話を作っていくだけなんですが、なのに妙に説得力もあり普通の探偵ものとは違った推理パートになっています。

もう一つは幽霊が登場人物として登場することですね。
登場してくる幽霊たちは皆、定番ネタの未練を残している形になります。
未練というと少し話が恨みだったりで黒くなりそうなところでもありますが、河野裕先生の作風と言ってもいいのかもしれません。
本当に綺麗なままで黒くすることなく話に落とし込んでいるんですよね。
サクラダリセットやベイビー、グッドモーニングの何が好きかと言われたら、圧倒的なまでに綺麗な世界観と登場人物たちとそこから生まれる善意なんだと思います。
その綺麗な雰囲気は損なわれることなくこの作品にも引き継がれていますので、両作が好きな方は是非。

そんな作者の代弁とも思えたセリフを本編から
「そんな結末、認められるはずがない。小説家というのはね、この世界にささやかな希望をみつけるため、物語を創るのです」


全4編の構成になっていて最初のお話から全てが繋がっているのですが伏線回収の仕方もサクラダリセット読者には懐かしい感じがするかもしれません。
雑誌連載されていたみたいですが、連載されていたのは1~3章までで解決編である4章「リリカルファイア」は文庫描き下ろしって…これ雑誌読者は少し可哀想かも、この話あってこそでしょうに。


ちなみにこの作品はすでに12月には2巻、来年3月には3巻の予定があるみたいなので今から続きが楽しみです。
続刊が決まっているって読者としてこんなに嬉しいことはないですよね。


レビュー:翹揺@毒舌タイツ姫
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4
最近は感想を書く感覚が空き気味ですごい久しぶりな感じがしますが、7月後半で1回書いてました。
そんなに空いてないよね…

このタイトルを見かけたことある人は作家自体が好きな人かちゃんとタイトルチェックをしている人だと思います。
ここでわざわざ感想を書くということはもちろんラノベ作家の作品です。
というわけで杉井光先生の新作、神曲プロデューサーです(デデン

ちなみにですが俺はこの作品が出ることを全く知りませんでしたが発売日に一般文芸の棚見てたら発見するという奇跡的な出会いです。
杉井光作品は全て購入(終わる世界のアルバムも両方買ってる)しているくらいには好きな作家なんですが、やはりというか一般文芸の方は気づきにくいです。
基本的に作家個人サイトを覗かないせいだとは思いますが(´・ω・`)
俺の行動とかはどうでもいいと思うのでそろそろ作品に入ります。

タイトルからもわかる通り杉井光先生十八番の音楽を題材…もちろん主人公はプロデューサーです。
短編5編からなる一つのお話で雑誌連載されていたこともあってか、最初の1~4章は割とどこから読んでもそれなりに楽しめるようになっていると思います。
もちろん、最初から読んだ方が時系列も並んでいますし、キャラの関係性なんかもわかりますから面白いです。
5章はまとめの話でもあるので読んでないと面白くないですね。

音楽に対する作者の熱意は相変わらず詰まっていていつもの薀蓄要素もありありです。
この辺りはさよならピアノソナタや楽聖少女を読んでいる人はわかると思います。
ただ、その2作よりも薀蓄要素が少な目で気負いしづらく読みやすくなっているし、「知らないからなー」って距離を置くのではなく「気になる」って思わせる使い方でした。
音楽ネタは洋楽メインでしたので参考にでも。

主人公も間違いなく杉井作品の主人公と思わせるキャラなのでファンならにやりとするかもしれません。
はったりもあるし嘘をついてでも自分の流れに持ち込んだりする…杉井作品の読者なら覚えがあるはずです。

一般文芸ということでラノベの杉井作品のような文章ではなく、無個性な雰囲気になるのではという懸念もありましたが、読めば間違いなく杉井光作品だなと確信できます。
ラノベで磨き上げた部分をうまくブラッシュアップして一般文芸に落とし込んだような作品でした。
単行本なので手を出しづらいとは思いますが、神メモや生徒会探偵キリカの強引な(褒め言葉)事件解決が好きな人やさよならピアノソナタや楽聖少女の音楽ネタが好きな人は楽しめるような作品なのでよろしければ是非。


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4
先日の宣言通り、森田季節作品を追ってみました。

コミック百合姫に掲載された作品に書下ろしを加えた短編集とのこと。そのコミック誌は手に取ったことはないのですが、百合作品を主に扱ったものというのは分かります。個人的には百合要素については、まあ嫌いじゃあないけど好物でもない、出されれば読むけど敢えて積極的には……という感じです。

総評。

なんというか、BLにハマる女の子の気持ちが少し分かったかも。男である私からすれば、イケメンやマッチョの絡み合いなんざ気持ち悪い以外に言いようがないのですが……なるほど、これは危険な甘さがある。なんだろうな、男同士というのは、心身の生々しい感触が想像出来てしまうからいけないんでしょうかね。女の子同士だと、究極の部分で想像が及ばない、良い意味での実感の沸かなさが、ドキドキを掻き立てる感じ?

短編が7つ収録されているので、一つひとつコメントでも。気に入った順で。

◆そこから塔は見えるか
どこにも恋愛感情を想起させる描写はない。
けれど、二人の間にある感情を表す日本語は、他にちょっと思いつかない。

◆飼い犬よ、手を噛め
こちらは百合を通り越してレズという言葉を使いたい。いけないことをしているという背徳感にゾクゾク来た。

◆少女よ、本を投げろ
女の子同士、かつ姉妹同士というダブルの禁忌。どう考えても普通じゃないことを、当たり前のようにやろうとする異常さ。なのに、それを異常なことだと思っていなかった自分に、読み終わってから気づく。

◆魔女は言葉を投げ捨てる
少しオカルトの混ざった、精神の世界みたいな感じ。
これは百合がどうこうというより、森田季節という作家の描く世界観を楽しむ一本でした。

◆ふたごごっこ
タイムマシンがどうとか、クローンがどうとか、でもそんな面倒なこと愛の前には関係ない、みたいなそんな話。
最後の2行の、すべてを放り投げた感が痛快です。

◆池姫
うーん。説明が長い割に大した話ではなかった。森田季節の書くオカルトは、説明が足りないゆえの不安定さこそ魅力なのであって、一から十まで書いてしまうと途端に興ざめのような気がします。

◆相思相愛の壊し方
これも面白くなかった。全体的に色気が足りない。

感想からお察しいただけると思いますが、「そこから塔は見えるか」~「魔女は言葉を投げ捨てる」までが当たり判定。「ふたごごっこ」がトントン。残りの二つはイマイチでした。まあ短編集なんてそんなもんでしょう。
平均して総合する分には、十分楽しめた1冊でした。

レビュー:tartarous

ノートより安い恋 (Yuri‐Hime Novel)ノートより安い恋 (Yuri‐Hime Novel) [単行本(ソフトカバー)]
著者:森田 季節
出版:一迅社
(2012-03-17)

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5
初版が平成22年と3年くらい前なのですが、本棚から発掘されたので読んでみました。

舞台は一見すると普通の現代日本。登場人物も主人公の少年とヒロインの少女が二人の計3人。
ごくありふれた設定なのに、どこか現実感が希薄で、田舎の町に一人取り残されたような不気味さがある。もしくは、真夜中に部屋に籠って本を読んでいて、ふと意識が本から離れたときみたいな。完全に無音の空間ではなく、空調だとか冷蔵庫だとかの音だけが妙に耳に響いて、逆に静かさを増長する、あの感覚。

それでも中盤まではあくまで現実を舞台にした少し不思議な青春ストーリーだった。そこから一転して、突如放り込まれる別の世界。現実そっくりなんだけど、決して現実ではない、この世とあの世の狭間。そこで語られる、現実世界で起きたことの真実だったり、彼女ら二人の心の底にある思いだったり。
何が本当で本音なのか分からないまま淡々と語られるそれらを、読者はただ追っていくことしか出来ない。この、目の前に書かれていることを受け入れるしかない無力感がまた良い。

そして最後の最後で、主人公が選んだ結末。予想していたわけではないけど、不思議と「まぁこうなるよね」と納得してしまった。そうして物語が終わった後も、残された者の現実は続いていく。続けなければならない。
現実に戻ってきても、すぐそばで、いつでも引き込もうと狙っている「あちら側」の世界があって、なんだか終わったような感じがしないのです。歯磨き粉と間違えて洗顔料を口に含んでしまった時のような、濯いでも濯いでも落ち切らない気持ち悪さがある。けれどそれが、不思議と不快ではない、そんな読後感でした。

なんだか感覚ばかりで内容に触れていないけど、作品世界を楽しむ1冊だったと思う。

この『ともだち同盟』以外では森田季節は3作品しか読んでいないのですが、今のところ1勝1敗1分けという感じです。正直、当たり外れが大きいのであまり積極的に読みたい作家とは思っていなかったのですが……他にもこういうのがあるなら読みたい。

最近は既刊シリーズの新刊を読むので精一杯ではあるのですが、久々に「作家追い」をしてみようかなと、そう思える程度にはツボにはまった1冊でした。

レビュー:tartarous


ともだち同盟ともだち同盟 [単行本]
著者:森田 季節
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
(2010-06-26)
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3
初めて肉じゃがを作らせた日本の歴史上の有名人物は誰?
アメリカ州の略号で「AL」とは、どこの州?
童謡「めだかの学校」の舞台になった神奈川県を流れる用水路の名前は?

青春を燃やすべき対象に悩むアリサや自信の無さから狭く縮こまっているドングリら7人による、クイズにかける青春の物語。


クイズ×青春という好きなジャンルということで、かなり期待して読み始めた作品。
正直、序盤~中盤は期待外れで退屈だったな。
作者の別作品「浜村渚の計算ノート」でも思ったことだけど、この作者、キャラや物語を書くのが致命的に下手なのね。
序盤に一気に7人登場しているせいで読み手としては誰が誰だかわからなかったり、
そのキャラクターも「不良少女がじつはあがり症」みたいなあざとすぎるキャラ付けされていたり。
展開もよくあるパターンで先も読め、会話も特に面白いわけではない。
そんなこんなでページを進める手がなかなか進まなかった。 
普段はあまり上から目線のレビューにはならないよう気を付けているんだけど、この作者に関しては文章力不足と言わざるを得ない。

それでも、最後まで読み終わってみれば・・・悪くはなかったかな。

高校の部活特有の悩みがしっかり書かれていたのが好印象。
大会を勝つにはクラブ創立者のリーダーを外すしかない、しかしそこまで勝ちにいくことに意味があるのか。
自分だったら・・・うーん、やるからには本気で勝ちにいきたいから、申し訳ない実力不足のリーダーに外れてもらう かと考えるかなぁ。
高校時代の自分がどう考えたかは分からないけれど。
そうした衝突を乗り越えて仲良くなっていくメンバーを見ているうちに、序盤感じたあざとさもなくなっていき、
感情移入して読むことができた。
ラストのとある真実についてはどうかと思わなくもないけど、それも等身大の高校生故か。

また、青春ものには欠かせない恋愛という視点もちょうどいい塩梅で描かれていた。
これ以上濃すぎるとテーマがぼやけちゃうし、薄すぎるとこんだけ年頃の男女が集まって何もないのかーとか思っちゃう。
アリサ頑張れ。ドングリの気持ちもよくわかる。

もう少しクイズの場面を増やしてほしかった部分はあるけれど。
特に対外戦のシーンはもっと読みたかったな。 
 

そんな感じで、浜村渚の時も思ったけど、「素人の作者がその専門知識を活かして書きたいことを素直に書いた」という気持ちのいい作品です。



…余談だけど、そう考えると至道流星ってすげーなぁ。


レビュー:しゅん

双月高校、クイズ日和 (講談社文庫)双月高校、クイズ日和 (講談社文庫) [文庫]
著者:青柳 碧人
出版: 講談社
(2013-01-16)

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