1~3巻の良かったところ、良くなかったところを再認識できたような4巻でした。
これまでは一応話は繋がりつつも、短編連作という形式でしたが、今回はまるまる一冊で一つのエピソード。
いわゆる長編ってやつです。
まずは良かった点。
相変わらず、惜しげもなく披露される栞子さんの古書知識は、読んでいて楽しいですね。特に今回のネタは江戸川乱歩。読んだことのあるなしはともかく、この作家名や「少年探偵団」「怪人二十面相」なんかのキーワードを聞いたことのない人は少ないでしょう。全く知らない本を紹介してもらうのもいいですが、やはり「あの有名な作品は実は……」というのが面白いです。
また、特に1巻では作品の内容よりも「初版だから」「希少本だから」といった本の内容よりも「古物」としての値に重点を置かれがちで、あまり好感が持てなかったというのが正直な感想でした。けど巻を追うにつれて、そういった側面もキープしつつ、本の内容や作家のエピソードまで踏み込んで語ってくれるようになって、ちょっとここで出て来た本も読んでみようかなという気になってきました。
一方の良くない点。
これまた1巻から感じて来た不満の理由がわかりました。ミステリーの基本ともいえる、「作中で事件解決に必要なヒントをすべて明かさなければならない」というルール。このビブリア古書堂は、それは確かにちゃんと守られてはいるんだけど。どうにも「なるほど、そういうことか!」とはならないんですよね。
ネタバレは控えますが、例えば……
そうですか、不自然なんですか。いやー、全然気づかなかったわー(棒
謎解きに一般常識・雑学以上の知識を求めるのは、これはヒントとは言わんでしょ。まあ俺が無教養なせいでもあるし、この作品は謎解きを楽しむミステリーじゃない、という見方もあるでしょうけど。ただ、種明かしされたときの「スカッとしなさ」は、個人的には大幅な減点と言わざるを得ないです。
あと、今回はちょっと大輔と栞子さんの関係に進展がありました。いやあ……ちょっと読んでいて恥ずかしくなってしまった。何がどうダメというわけではないんですけどね。栞子さんが色恋沙汰に疎いのが、さすがに疎すぎて不自然だし、大輔は大輔で、せっかく一人称形式なんだから、もうちょっと自分の心情を書いてほしい。栞子さんのことが気になる、好きだ!というのがどうにも伝わってこないのねー。
この作者、電撃文庫で何作か書いてるけど、これといったヒット作がないというのも納得です。
これ、どういう方向に進むのかな?古書をネタにした、それにまつわる人々の物語……という、当初の路線をキープしてほしいと切に望みます。ドロドロな人間ドラマや下手なラブコメは要らんです。
レビュー:tartarous
これまでは一応話は繋がりつつも、短編連作という形式でしたが、今回はまるまる一冊で一つのエピソード。
いわゆる長編ってやつです。
まずは良かった点。
相変わらず、惜しげもなく披露される栞子さんの古書知識は、読んでいて楽しいですね。特に今回のネタは江戸川乱歩。読んだことのあるなしはともかく、この作家名や「少年探偵団」「怪人二十面相」なんかのキーワードを聞いたことのない人は少ないでしょう。全く知らない本を紹介してもらうのもいいですが、やはり「あの有名な作品は実は……」というのが面白いです。
また、特に1巻では作品の内容よりも「初版だから」「希少本だから」といった本の内容よりも「古物」としての値に重点を置かれがちで、あまり好感が持てなかったというのが正直な感想でした。けど巻を追うにつれて、そういった側面もキープしつつ、本の内容や作家のエピソードまで踏み込んで語ってくれるようになって、ちょっとここで出て来た本も読んでみようかなという気になってきました。
一方の良くない点。
これまた1巻から感じて来た不満の理由がわかりました。ミステリーの基本ともいえる、「作中で事件解決に必要なヒントをすべて明かさなければならない」というルール。このビブリア古書堂は、それは確かにちゃんと守られてはいるんだけど。どうにも「なるほど、そういうことか!」とはならないんですよね。
ネタバレは控えますが、例えば……
「『江川蘭子』『空中紳士』『殺人迷路』……どれも乱歩と他の作家の合作です。古書の詳しくない方が、そこにわざわざ本を納めるのは不自然でしょう?」
そうですか、不自然なんですか。いやー、全然気づかなかったわー(棒
謎解きに一般常識・雑学以上の知識を求めるのは、これはヒントとは言わんでしょ。まあ俺が無教養なせいでもあるし、この作品は謎解きを楽しむミステリーじゃない、という見方もあるでしょうけど。ただ、種明かしされたときの「スカッとしなさ」は、個人的には大幅な減点と言わざるを得ないです。
あと、今回はちょっと大輔と栞子さんの関係に進展がありました。いやあ……ちょっと読んでいて恥ずかしくなってしまった。何がどうダメというわけではないんですけどね。栞子さんが色恋沙汰に疎いのが、さすがに疎すぎて不自然だし、大輔は大輔で、せっかく一人称形式なんだから、もうちょっと自分の心情を書いてほしい。栞子さんのことが気になる、好きだ!というのがどうにも伝わってこないのねー。
この作者、電撃文庫で何作か書いてるけど、これといったヒット作がないというのも納得です。
これ、どういう方向に進むのかな?古書をネタにした、それにまつわる人々の物語……という、当初の路線をキープしてほしいと切に望みます。ドロドロな人間ドラマや下手なラブコメは要らんです。
レビュー:tartarous