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出来の良い短編集のことを「珠玉の短編集」と表現する。

この「珠玉」という言葉がこれほどまでにふさわしいライトノベルがかつてあっただろーか。帯の言葉を借りるならば、儚く、可憐で、バイオレンス。どの要素が欠けても、この魔法少女育成計画という物語は成立しない。短編集という形になっても、物語の本質は長編と同じ。可愛らしい日常も、過酷な戦いの日々も、全部ひっくるめて魔法少女の人生であり、その一つひとつが違った色で輝いている。そんな1冊でした。

もしこれからこの「episodes」を読もうという人がいたら、その前に「無印」と「restart」の33人の魔法少女たちを一人ひとり思い出してほしい。その中にたった一人でも、その生き様と死に様を思い出せない魔法少女がいるのなら……悪いことは言わない、ぜひ今一度、これまでの3冊を読み返してほしい。

これは、決して「おまけ」の短編集ではない。
散っていった魔法少女たちへ捧げる花束。これからも生きていく魔法少女たちへ送る餞。
魔法少女が生きて描いてきた軌跡そのものの物語だ。

・:*:・゜☆,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜☆,。・:*:・゜☆,。

とまあこんな感じで、気合を入れて褒めてみました。

33人が登場する短編集と聞いたときは、短編が33本?何それGJ部?とか思ってました。実際はウェブ掲載の特別短編を含めた計15編。一つの話に複数の魔法少女が登場し、また複数の物語に登場する魔法少女もいます。
全体的な傾向として、本編で出番の少なかった魔法少女を中心にスポットが当たって、本編で活躍しまくりだった魔法少女は出番少なめ、という感じです。

あとがきを読む限り、もう少しこのシリーズも続きそう。
生き残った魔法少女たちの次なる物語か、別の舞台で新たな魔法少女たちの物語が幕を開けるのか。

終わりが「次巻へ続く」じゃないのに、こんなにも次巻が楽しみなシリーズ、初めてかも知れません。

レビュー:tartarous

魔法少女育成計画 episodes (このライトノベルがすごい! 文庫)魔法少女育成計画 episodes (このライトノベルがすごい! 文庫) [文庫]
著者:遠藤 浅蜊
出版:宝島社
(2013-04-10)