むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
『いや、あるところってどこやねん!!!』
『昔話、住所の解像度が低すぎる!!! せめて村名くらい出せ!!!』
おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
『山へ柴刈り、川へ洗濯!!! スケジュール帳に書いてあったら逆に怖いわ!!!』
『しかも柴刈りって何!!! 芝刈りちゃうんか!!! 漢字が渋すぎる!!!』
おばあさんが川でじゃぶじゃぶ洗濯をしていると、川上から大きな桃が、どんぶらこ、どんぶらこ、と流れてきました。
『出た桃!!!』
『しかも、どんぶらこ!!! 桃の擬音として重すぎる!!! 冷蔵庫でも流れてきたんか!!!』
おばあさんは、その桃を見てたいそう驚きました。
「まあ、なんて大きな桃でしょう。持って帰って、おじいさんといただきましょう」
『まず調べろ!!! 川から流れてきた巨大桃を即デザート認定するな!!!』
『衛生観念どこ行った!!! 川の水に浸かった桃やぞ!!! サイズ以前の問題や!!!』
おばあさんは桃を拾い上げると、家へ持って帰りました。
『さっきまでただのおばあさんやったやろ!!! 巨大桃を持ち帰る腕力、どこに隠してた!!!』
『洗濯で鍛えたんか!!! 川辺のフィジカルモンスターか!!!』
家では、おじいさんが山から帰っていました。
「おばあさんや、今日は何を持って帰ったんじゃ」
『普段から何かしら拾ってくる前提か!!! きのこ、薪、謎の石、たまに巨大桃か!!!』
おばあさんは言いました。
「川で大きな桃を拾いました。二人で食べましょう」
おじいさんは桃を見ると、大喜びしました。
「これは立派な桃じゃ。さっそく切ってみよう」
『喜ぶ前に疑え!!!』
『人間くらいある桃やぞ!!! 品種改良の限界を超えてるやろ!!!』
『しかも夫婦そろって食べる気満々!!! 食欲が好奇心に勝ちすぎてる!!!』
おじいさんが包丁を持ち、桃を切ろうとした、その時です。
桃は、ぱっかりと二つに割れました。
『家電の自動ドアみたいに開くな!!! 果物としての自覚を持て!!!』
『出た!!!』
『どういう構造!!! 種は!? 果肉は!? 胎内環境どうなってんねん!!!』
『自分が桃から出てきた直後やぞ!!! 状況理解できてないのか、全部わかってて笑ってるのか、どっちも怖いわ!!!』
おじいさんとおばあさんはたいそう驚きましたが、子どものいなかった二人は、とても喜びました。
『切り替え早っ!!!』
『さっきまで食べようとしてたやん!!! 危うく授かりものを包丁でいくところやったぞ!!!』
二人は赤ちゃんに、桃から生まれたので「桃太郎」と名付けました。
『桃から生まれたから桃太郎!!! ネーミング会議、五秒で終わったやろ!!!』
『もし鍋から生まれてたら鍋太郎か!!! タンスならタンス太郎か!!!』
おじいさんとおばあさんは、桃太郎を大切に育てました。
桃太郎はよく食べ、よく眠り、すくすくと大きくなりました。
『出た、すくすく!!!』
『夜泣きとか離乳食とか反抗期とか全部すくすくで済ませるな!!!』
『出生がすでにパワー系やもんな!!!』
ある日のことです。
村人たちが、おじいさんとおばあさんの家へやってきました。
「鬼ヶ島の鬼たちが、村の宝物を奪っていきました」
『鬼、急に来た!!!』
『しかも村に宝物あったんかい!!! 川で洗濯してる村の財力、思ったよりすごいな!!!』
村人たちはみな困り果て、泣いていました。
「おじいさん、おばあさん。わたしは鬼ヶ島へ行き、鬼を退治してまいります」
『急に立派!!!』
『すくすくの次が鬼退治宣言!!! 間の教育課程を見せろ!!!』
「鬼は恐ろしいぞ。ひとりで行っては危ない」
おばあさんも涙を浮かべました。
「どうか気をつけてお行き」
『なぜ団子!!!』
『鬼退治に持たせるメイン装備が団子!!! 装備欄どうなってんねん!!!』
おばあさんは言いました。
『でもおばあさんの自信はすごい!!! ブランディングが強い!!!』
『腰につけるな!!!』
桃太郎はおじいさんとおばあさんに別れを告げ、鬼ヶ島へ向かって歩き出しました。
しばらく行くと、一匹の犬がやってきました。
「桃太郎さん、桃太郎さん。お腰につけたきびだんご、一つわたしにくださいな」
『犬、喋った!!!』
『そこ誰も驚かんのか!!! 桃から人が出て、犬が交渉してくる世界!!! 常識がゆるゆる!!!』
桃太郎は犬に言いました。
「鬼退治についてくるなら、一つあげましょう」
『報酬、団子一個!!! 業務内容、鬼との戦闘!!! 労災なし!!! 危険手当なし!!!』
『その団子、何が入ってるんや!!! 日本一どころか国家機密やろ!!!』
桃太郎と犬が進んでいくと、今度は猿がやってきました。
「桃太郎さん、桃太郎さん。お腰につけたきびだんご、一つわたしにくださいな」
『また来た!!!』
『しかも全員、腰の団子をピンポイントで見てる!!! 目線が低い!!!』
桃太郎は猿にも言いました。
「鬼退治についてくるなら、一つあげましょう」
『面接なし!!! 経歴確認なし!!! 団子支給で即戦力扱い!!!』
『でも猿は手先が器用そうやし、まあ戦力にはなるか!!!』
「桃太郎さん、桃太郎さん。お腰につけたきびだんご、一つわたしにくださいな」
『三匹目!!!』
『森の掲示板に「あの若者、腰に団子あり」って書かれてるやろ!!!』
「鬼退治についてくるなら、一つあげましょう」
『犬は噛む!!! 猿はひっかく!!! キジは何するんや!!! つつくんか!!! 鬼を!!!』
『でも空から偵察できるな!!! 意外と重要ポジションやん!!! ごめんキジ!!!』
こうして桃太郎は、犬、猿、キジを連れて、鬼ヶ島を目指しました。
『人間一人に犬、猿、キジ!!! 遠征隊というより即席どうぶつ班!!!』
やがて一行は海辺に着きました。
海の向こうには、鬼ヶ島が見えました。
『村人もだいたい場所わかってたやろ!!! もっと早く対策会議せえ!!!』
『急に船が出てきた!!! 誰の船!? 予約した!? レンタル!?』
犬は船のへさきに立ち、猿は櫂を持ち、キジは空を飛んで行く先を見張りました。
『犬、前方確認!!! 猿、操船!!! キジ、空中偵察!!! 意外とチームとして完成度高い!!!』
島には大きな門があり、門の向こうからは鬼たちの大きな声が聞こえてきました。
「酒だ、酒だ」
「宝だ、宝だ」
鬼たちは村から奪った宝物を前に、騒いでいました。
『悪そう!!!』
『ちゃんと悪役っぽいことしてる!!! 酒と宝で騒ぐ鬼、イメージ通りすぎる!!!』
桃太郎は門の前に立ちました。
「鬼たちよ、村から奪った宝物を返せ」
『作戦とかないんか!!! まず名乗って要求!!! 誠実ではあるけど危ないぞ!!!』
「なんだ、お前たちは」
『見たまんま!!!』
『説明ありがとう!!! でもその通りすぎて何も足されてない!!!』
桃太郎は答えました。
『名乗った!!!』
鬼たちは大笑いしました。
「ははは。そんな人数で、われわれに勝てるものか」
『人間一人と動物三匹やからな!!! 戦力だけ見たら遠足の帰り道みたいな編成や!!!』
するとキジが空へ舞い上がり、鬼たちの顔めがけて飛びかかりました。
『思ったより武闘派!!! 空中から顔を狙うな!!! 怖いわ!!!』
『犬も強い!!!』
『足元を攻める実戦派!!! 団子一個でここまでやるの、忠義がすごい!!!』
『猿、有能!!!』
『団子だけじゃなかった!!! それ最初に言って!!! だいぶ安心感変わるから!!!』
桃太郎は勇ましく戦いました。
犬は鬼に噛みつき、猿は鬼の背中に飛び乗り、キジは鬼の顔をつつきました。
『チームワークすごい!!!』
『近接の犬!!! 攪乱の猿!!! 空中攻撃のキジ!!! ちゃんとフォーメーション組めてる!!!』
鬼たちは最初こそ威張っていましたが、桃太郎たちの勢いに押され、だんだん逃げ腰になっていきました。
『あんなに笑ってたのに!!! さっきの威勢どこ行った!!!』
『犬に噛まれ、猿に乗られ、キジにつつかれるの、たしかに嫌すぎるけど!!!』
「まいりました。もう悪いことはいたしません。どうかお許しください」
『降参早い!!!』
『でも潔い!!!』
『鬼の大将、意外と話が通じるタイプ!!! 最初からその理性を使え!!!』
桃太郎は言いました。
「本当に反省しているなら、奪った宝物をすべて返しなさい」
鬼の大将は深く頭を下げました。
『桃太郎、ただ殴るだけじゃない!!! 返還手続きまで進めてる!!!』
鬼たちは、村から奪った宝物を運んできました。
金銀の財宝、米俵、美しい反物、立派な道具などが、山のように積まれました。
『多い!!!』
『というか村、そんなに持ってたんか!!! 経済規模が読めん!!!』
桃太郎たちは、その宝物を船に積みました。
犬は小さな包みをくわえ、猿は荷物を運び、キジは上から見張りました。
『ここでも働いてる!!!』
『犬、猿、キジ、最後までえらい!!! 報酬が団子一個なのに!!!』
『昔話、信じる力が強すぎる!!!』
村人たちは桃太郎の姿を見ると、大喜びで迎えました。
「桃太郎が帰ってきたぞ」
「宝物も戻ってきた」
「ありがたい、ありがたい」
『よかった!!!』
『でも犬と猿とキジにも礼を言え!!! かなり前線で戦ってたぞ!!!』
おじいさんとおばあさんも、涙を流して喜びました。
「よく無事に帰ってきたな、桃太郎」
「本当に立派になりましたね」
『えらい!!!』
犬にも、猿にも、キジにも、たくさん礼を言いました。
『言った!!!』
『ちゃんと動物チームにも感謝した!!! この村、そこはできる!!!』
それから桃太郎は、おじいさんとおばあさんと一緒に、幸せに暮らしました。
犬、猿、キジも、村のみんなに大切にされました。
鬼たちは約束を守り、二度と村を襲うことはありませんでした。
『丸く収まった!!!』
『鬼も反省!!! 村も平和!!! 動物たちも大切にされた!!!』
こうして、桃から生まれた桃太郎は、勇気と仲間の力で鬼を退治し、村に平和を取り戻したのでした。
めでたし、めでたし。
『終わった!!!』
『桃から生まれた理由とか、川に流れてきた経緯とか、きびだんごの異常な契約力とか、気になることは山ほどある!!!』
『でも昔話は、そこを追及しすぎたら負けや!!!』
『めでたいなら、それでええ!!!』
めでたし、めでたし。