2016年10月13日 (木)

苦節11年。帳簿類の電子保存(領収書スマフォ撮影等)の管理要件が概ね実用になった

ブログ「経済産業省 e文書ガイドラインの補足」を書いてから11年が経った。

未だ汎用的な決定打は出されていないが、企業にとっては、主として帳簿類の電子化が期待されるこことだと思う。
その点では、国税庁は、この3年間、電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件を毎年緩和してきた。

国税庁 電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件
 平成28年版 http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sonota/03.pdf
 平成27年版 http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sonota/02.pdf
 平成26年版 http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sonota/01.pdf
 いずれも、「国税庁パンフレット・手引き~その他」より

平成28年には、ついに、スキャナではなくスマフォなどのカメラ撮影を認めたが、そのような技術的要件は、実は重要ではなく、それらのスキャンにまつわる管理要件が、より具体的になったことが重要だと思う。

策定に参加させていただいたe文書ガイドラインからすると同一性を第三者が目視で確認する要件を緩和することはしばらく見込めないと思うので、帳簿の電子化は、このH28年版要件で開始するのがよいと思う。

これまで出された要件緩和の結果、平成28年版ではどうすればよいかをまとめた以下の記事はわかりやすい。というより、これを読まないで先入観や自分勝手解釈をすると、後で取り返しのつかないことになるので、必読だと思う。

ITmedia
領収書のスマホ撮影いよいよ解禁、電子帳簿保存法の「絶対に外せないポイント」
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1608/29/news04.html

特に、運用体制の確立については注意が必要だ。
e文書ガイドラインが指摘しているように、電子文書の真正性は文書単体では十分なものにならないため、文書そのものではないことで管理して証明できるようにする必要がある点について理解すれば、帳簿の電子保存を開始してもよい時期だと思う。
逆の言い方をすれば、その要件が緩和されることに期待して、それを待つということはしない方がよいと思う。

e文書法の制定から、十二支を一周してしまいますが、やっと実務での一歩を踏み出せそうだ。

10月 13, 2016 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年6月 7日 (月)

LZHファイルを検索して全変換しないといけない

国産の圧縮ソフトとして有名な「LZH 書庫」ファイルですが、先月に発生した脆弱性問題が一因となってか、開発中止になりそうですね。

開発者の Micco さんのホームページ

もしも、最終的にも開発中止となったら、自分のディスク内で、LZHファイルをすべて見つけ出して、いまのうちに解凍するか、別の形式に変換しておかないと、将来開けなくなるかもしれません。

今回の経緯については、いろいろネットで取り上げられていて、中止の犯人探しがされています。(笑)

開発中止の記事いくつか

Unlha32.dll等開発停止、LHA書庫の使用中止呼びかけ

国産の圧縮形式「LZH」のUNLHA32.DLLの開発中止へ、LZH形式使用中止を呼びかけ

国産のソフトが開発中止になると悲しいということはありますが、それよりも、この種の長期に提供されることが重要なソフトが打ち切られると、国産ソフトの継続性を信頼する観点でイメージダウンになることも心配です。

現在、クラウドコンピューティングにおいても、クラウドベンダーの事業継続性はひとつの観点となっていますしね。


と、国の心配をする前に、まずは、自分のハードディスクやバックアップの中に、LZH ファイルがないかを検索して、みつけたら、今のうちに解凍するか、別の形式に圧縮しなおしておかないといけませんね。

媒体の種類が経年でドライブがなくなったとき(たとえば、8インチフロッピーとか、DDSテープとか)に備えないといけない問題がありましたが、このようなアクセスソフトの継続性も注意しないといけませんね。
このことは、e文書法の検討でもふれられていますが、実際に起こり得る状況になったということですね。


PDF 形式ファイルも国際規格の仕様範囲内と、拡張仕様に違いがあるけど、国際規格が定まっていることと、それにアクセスするソフトを誰かが将来に渡って開発継続してくれるかは別問題なことに注意しないといけませんね。

6月 7, 2010 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月 6日 (木)

電子政府の利用促進が急務

財務省は、政府予算の無駄遣いや効率の悪さを点検する2006年度の予算執行調査の結果として、利用者の少ない外務省のパスポート電子申請システムなど、5省6事業の廃止を求めた。
とのこと。

詳細は:

詳細は:
YOMIURI ONLINE
予算執行調査、パスポート電子システムなど6事業廃止求める

パスポートの電子申請は、年間運用費が8億円で、利用実績が年間103件。
・・・ひどすぎる。

今回調べてみて知ったけど、「外務省のパスポなび」というのがあるんですね。

パスポくんがむなしい・・・

ちなみに、米国では・・・

ブッシュ米政権における電子政府推進の本格始動

米国の電子政府政策とその現状

米国の電子政府法


米国と同じことをする必要はないにしても、電子政府の利用促進が急務ですね。
ITベンダーが、政府を食い物にするのは、いい加減やめないと、国が滅んでしまいます。

7月 6, 2006 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年2月10日 (金)

e文書法解説完結

これまで、以下のとおり書き連ねたe文書法ですが・・・

 その1:e文書法特需はありません
 その2:e文書法解説(前編)
 その3:e文書法解説(後編1)

e文書法解説の完結編の紹介です。

後編は、通称、e文書法ガイドラインと呼ばれている「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」の報告書を2回に分けて解説しました。
その2回目となり、これで全4回の連載はおしまいです。

連載の最終回は

●#4:文書の電子化に踏み切る前に、知っておきたい電子文書の特性

です。

これまでの連載は、こちらにリンクがあります。

なお、第3回で予告した隠しページは・・・
スキャンした電子文書の見読性についてというページにあります。
これは、連載の第3回原稿を編集者に提出した際に、「改ざんの画像イメージを用意してもらえませんか?その中のいくつかを記事に挿入したいので。」と言われて、画像イメージをまとめて送るときに、編集の人への解説として用意したものでした。
ところが、編集の人曰く、「こっちのページの方が原稿よりわかりやすいじゃないですか~」とのことでした。

ぼくとしては、原稿の方が内容として濃くて、こちらは、一見わかりやすそうだけど、実はスキャナ遊びのようなもので文章そのものには内容がない。と思っていたのですがねぇ。

みなさんはどう思われますかね。

2月 10, 2006 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年1月20日 (金)

e文書法解説(後編1)

e文書法解説の後編の紹介です。

後編は、通称、e文書法ガイドラインと呼ばれている「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」の報告書の解説です。

前編につづいて後編の第3回が掲載されました。

●#3:スキャンした紙文書に改ざんはないといえる?

実は上記の第3回解説には、隠しページがあります。。。
それは、もうちょっとしたらお知らせいたします。

連載は、次回の第4回で最終回となります。
衝撃のラスト・・・んなわけないです。。が、ご期待ください。

1月 20, 2006 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年1月 6日 (金)

e文書法解説(前編)

以前、愚痴のように書いた「e文書法特需はありません」をもとに、IT media エンタープライズの連載として、まとめ始めてみました。

言いたいことは同じなのですが、解説とかもちゃんとつけて整理してみたつもりです。


IT media エンタープライズの連載としてe文章法の解説を書き始めました。

●#1:誤解から生まれるe文書法の落とし穴
●#2:e文書法は電子化のための金科玉条ではない

この後はe文書法の報告書の説明になるため、急に技術的な話になってしまいますが、参考にしてみてください。

連載回数は、上記を含めて全部で4回か5回を予定しています。

後編が仕上がったら、また紹介させていただきます。

1月 6, 2006 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2005年7月22日 (金)

e文書法特需はありません

最近社内で、e文書法で何かビジネスにできないか?と聞かれることがあります。
なんでそんなことをぼくに訊ねるのかを聞いてみると、ぼくが経済産業省 e文書ガイドラインの検討委員だからとのこと。
う~む。それなら回答してあげないといけないね。ということで、それへの定型回答を用意してみることにしました。

一言で言うと、e文書法は金科玉条(きんかぎょくじょう)ではありません。
別の言い方をすると、e文書法は必要条件ではあっても、十分条件ではありません。

e文書法ですが、これまで行政書類等については電子文書が極限定的にしか認められていなかったのに対して、「電子文書を使ってもよい」というように制限緩和をしただけの法律です。
「電子文書を使いなさい」ということではありません。
言い換えると、これまで原則として門前払いだったものを、門の中には通しますよ。ということですが、門の中にはまだ玄関があって、その玄関が開いているわけではないですし、e文書法は玄関についてを論じるものではありません。
単に「門前払いはやめました」というところまでのものです。

いままで門前払いだったものが、門の中に入れるようになったので、「役所それぞれの玄関をどうするかを決めることで、電子行政ができるようになったけど、あなたの役所は玄関もあけますか?それとも、開けませんか?どうしますか?」というだけです。
その意味では、この法律は、(正確な表現ではありませんが、)政府関係者対象のものと思うとわかりやすいものです。
「e」がついているので、IT業界が何かビジネスのネタにできないかと思っている風潮がありますが、民間に直接関係する段階のものではありません。
玄関が開いたときに備えて準備をしましょうというきっかけとしては民間に関係すると言えますが、e文書としての要件は、この後に各玄関で決められることになりますので、準備といっても、心づもり程度のことです。

「e文書を使ってもよい」ということで、必要条件の一部を示していますが、十分条件については示していません。

これについては、経済産業省 e文書ガイドラインの補足にて少し説明してあります。


すでにe文書法対応などと銘打った製品がありますが、e文書としての十分条件がまだないわけですから、「e文書法対応」というのは、嘘ではないですが十分でもない表現です。 つまり、必要条件さえ満たしていれば、どんなものでも、「e文書法対応」と言えないわけではなく、言った者勝ちということになります。

もし今後十分条件が示されることになったとしても、包括的な要件になるとは考えにくく、個々の電子行政サービスごとの要件となるため、「e文書法対応」という包括的な表現はあまり誠実なものとは言えず、たとえば、「税務申告における電子文書要件対応」など個別のことになるのであろうと考えます。
しかしながら、文書保管のことで考えれば、将来どんな課題が生じるかを予測することは技術的に困難であり、十分条件を予め示すということがどこまで行なわれるかは疑問です。
必要条件だけを示しておき、実際に、e文書について問題が生じた際には、その時点で正当性や妥当性についてを判断するということにして、十分条件については予めは示さないというのが現実的ではないかと思われます。
何らかの問題について判例が出れば、それを個々に積み重ねていくことで、十分条件に相当するものが構成されていくのではないかと思います。

したがって、「e文書法対応」として何か一括してのビジネスが見込めるものではなく、今後の電子行政のそれぞれを見据えながら順次対応していくような地道なビジネスが従来どおり求められていると考えるのが現時点ではよいと思います。

結論:

●ITベンダーのみなさんへ、

「個人情報保護法特需」のような「e文書法特需」はないと思って日々の地道な営業活動を継続してください。
「e文書法対応製品」という売り方は、どれかひとつの必要条件を満たしていれば嘘ではありませんが、十分ではないのですから十分ではないことを示して売るのが誠実なビジネスです。十分であるかのごとくの印象を与えて売るということは絶対してはいけません。だとすれば、「この製品はe文書として(必要条件を満たしていますが)十分ではありません」と言うだけですから売り文句にはなりません。他の誠実な売り文句に付録として「e文書の必要条件も満たしています」を付け加える程度がよいでしょう。
家電製品で言えば、「BS放送対応テレビ」と言った場合に、「BS放送を受信するには、この他にパラボラアンテナや追加の受信料などが必要です」を付け加えるかどうかと同じです。
お客様が「このテレビはBS対応ですか?」と言って買いに来たのなら、「はい。BS対応です。」と言って売るのは問題ありません。それでも、パラボラアンテナの説明をするのが親切でしょう。
そうでもないのに、パラボラアンテナのことを話しに出さずに、「BS放送対応」ばかりを強調して売るのは、「対応」という言葉として嘘ではないですが、BS放送の受信には十分ではないわけで、いかがわしいビジネスとあまり変わりません。
しかも、e文書の場合、実際には、十分条件を完成させるための「BS放送」自身がまだ存在しないわけです。
いま、「e文書法対応」と言うことは、BS放送が開始していない時点で、BS放送対応と言うのと変わらないという認識をすべきです。

●ITベンダー利用者のみなさんへ、

住宅では、耐震強化工事詐欺や、アスベスト診断・除去工事詐欺などがありますが、
企業におきましては、「e文書法対応詐欺」(※注)にもご注意ください。それらは必要条件を満たしているかもしれませんが、十分条件を満たしているかどうかはその時がくるまでわからないはずですから。
BS放送が始まっていない段階で、購入するテレビの機種選択をする際に、BS放送対応をどの程度重視するかについてはよく考えましょう。
BS放送は工業規格ですから、先買いしておけば、BS放送が開始したときに無駄にはなりません。
しかし、「e文書法対応」と言っているものが、どこにどう対応しているかは、BS放送対応ほど簡単なことではありません。


※注:耐震強化工事、アスベスト診断・除去工事と同じく、e文書法対応にも詐欺ではない正当な提案もあります。それを見極めるには利用者みなさんの正しい知識が必要です。

7月 22, 2005 | | コメント (1) | トラックバック (2)