2011年6月12日 (日)

役人が役所言葉で書く、有識者から政府への提言書の違和感

先日傍聴した政府の有識者会合で感じた違和感を、iPadからココログを書く練習として書いてみることにする。

以下のようなやりとりがあった。後述するように、やりとりの流れを見てもらうのが主なので、内容は概略にしてある。この会合個別に意見があるものではない。

構成員「前回案では『権限』と書いてあったところが『役割』を持たすとなっているが権限のような強いものが必要なので、権限に戻せないのか。」
事務局「役所では『権限』というと法的権限を連想することがあるため、それに限らないものがよいという省意見を受けて変えました。そこで広い意味の『役割』にしました」
構成員「法的権限までが必要ないものかどうかの議論はまだされておらず、それを与える可能性もあるので、やはり『権限』という強い言葉がよいと思うがダメなのか」
事務局「これは有識者提言なので、それが必要ということならば、そのようにまとめていただくことはできます」
構成員:(言及せずに沈黙)
主査「最終的な文章については主査と事務局に一任いただきたく」

その他に次のようなやりとりもあった。

構成員「『総合調整』という表現があるが『○○権』のような明確な書き方をできないのか。調整では弱い。」
事務局「役所では『総合調整』という言葉は十分に強い表現として使われているものです。たとえば、総理大臣は各大臣に対して総合調整をする。というようにも使われる言葉ですので、弱いということにはなりません。」
構成員「『○○権』とは書けないものなのか」
事務局「これは有識者提言なので、それが必要ということならば、そのようにまとめていただくことはできます」
構成員:(言及せずに沈黙)
主査「最終的な文章については主査と事務局に一任いただきたく」

主査からは、役所にとって受け入れられやすいように、役所が使う言葉を選ぶという考え方もあるというようなことが言われた。
これらについて、主査がどういう意図で、修正文案をこの場ですぐに議論せずに預かったのかは、この後、どのような提言文書が出てくるのか次第である。

しかし、それがどうなったとしても、
このやりとりそのものに覚えた違和感を喩え話しで説明する。

たとえば、佐藤から鈴木さんへの提言というのがあったとする。
佐藤は提言案というのを書いてみて、それを鈴木さんに見せて内容について、意見をもらうことにする。
意見といっても、佐藤から鈴木さんへの提言なので、内容の是非ではなく、鈴木さんが理解できる文章になっているかについてとなる。
鈴木さんが意味がよくわからないという箇所があれば、表現をわかりやすくするなどして修正をして提言を完成させる。
その意見を聞いたときに、鈴木さんが質問をして佐藤が口頭で説明をしたことで、鈴木さんが、それならば文章の趣旨はわかったので、修正をせずにこのままでもよいですよ。と言えば、修正しないで提言を完成させることもできるだろう。

上記のやりとりに違和感はあるだろうか?
ぼくにはない。これが自然な提言というものだろうと思っている。

さて、上記は、佐藤から鈴木さんへの提言の例であった。これを、佐藤を有識者に、鈴木さんを政府に置き換えると、本来は、有識者から政府への提言のとりまとめ作業になるはずではないだろうか。

ところが、事務局である役人が提言案文を執筆して、構成員である有識者がそれにコメントをして、そのコメントを受けて、事務局が文章修正をするという作業になっている。
まるで、政府が出す報告書などを有識者がレビューするときの作業のようになっている。
そもそも、佐藤と鈴木さんの喩えでは、質問して文章の趣旨を確認するのは鈴木さんが佐藤に対して行っているが、上記の有識者会議の質疑の向きは逆転しているのである。
提言者が、提言先に対して提言文章の意図を確認して、そのやりとりが議事録に記録されれば提言者として納得するという。
いったいなんなのだろうか。
なんとなくモヤモヤした感じである。


素朴な違和感を感じたので、iPadの入力の練習にブログにしてみた。
iPadのスクリーン・キーボードではブラインドタッチがまだできないので、この入力に結構時間がかかった。
とくにこういう文章を書くときにカーソルキーがないことに、まだ慣れていないので、読み直してちょっと修正するのがやっかいだった。

6月 12, 2011 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月17日 (木)

「窓口のオンライン化」ではなく「システムのインターネット対応」と考えるべき

IT戦略本部企画委員会の電子行政に関するタスクフォース第11回
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/denshigyousei/dai11/kaisai.html

傍聴した雑感を備忘のため書いておきます。
(メモを書き込んだ資料を捨てたいので 笑)

以下は、個人的に気になった箇所だけをピンポイントに抜き出して雑感を書いただけなので、審議の総括や主要箇所が抜き出されているわけではありません。(ここに書いていないことで、有意義な審議もあったということです)

「オンライン利用に関する計画について」だが、これは前回の「電子行政タスクフォース雑感」でも書いたことだが、これまでを総括して終わりにして、仕切りなおした方がよい。

構成員から、「すべての手続きをオンライン化することを考えるべき」という提案をされ、これを事務局が法的に制約があるとして否定したが、これはまったくの間違えだ。(というか、そもそも、構成員意見を事務局が否定するというのは、どういう立場での発言として許されているのだろうか)
事務局が言うには、「家にパソコンがない人が手続きできなくなると法的に難しい」であったが、前回の雑感でも書いたように、すべてオンライン化した上で、従来の役所窓口にはインターネット端末を設置して、そこで入力するための支援をする職員をおいて、窓口での手続きも継続すればよい。
こう書くと、これまでと異なる窓口のようかもしれないが、単に窓口の中で使っている端末をインターネット端末にするということでも意味は変わらない。それなら、窓口の見た目は今と同じだ。

課題とすべきなのは、窓口手続きとオンライン手続きの併存ではなく、窓口手続き用システムとオンライン手続き用システムを両存させようとすることだ。
そのようにすれば、窓口手続きは、オンライン手続きの利用度合いを見ながら、縮小や別の手続きとの統合を段階的に実施することにも支障がない。
窓口専用手続きシステムを使っている限り、それを段階的に縮小することはできない。最後のひとりがいなくなるまで、そのシステムを稼働し続けなければならない。

上記を踏まえると、「オンライン利用」という表現が適当ではない。
よって、「これまでを総括して終わりにして、仕切りなおした方がよい。」と思うのである。

すなわち、「これまでは失敗だった」と総括する。
しかし、手続きをすべてオンライン化することが失敗だったのではなく、それを実現する方策が失敗だったのであって、全手続きをオンライン化する目標は取り下げるべきではない。

したがって、
窓口手続きのオンライン化ではなく、
窓口手続き専用システムのオンライン手続き対応化とするべきだ。
技術的には、
窓口手続きシステムの機能を取り込めるようなオンライン手続きシステムの導入
となる場合もあるだろう。
既存システムに手を加えるのか、新規システムで既存機能を設けるのかの違いということだ。

かなり乱暴に、はしょって書けば、本タイトルのように
「窓口のオンライン化」ではなく「システムのインターネット対応」と考えるべき
ということになるだろう

さらに、前回のタスクフォースで構成員から意見があったが、
現行の手続きを単にオンライン化するのではなく、手続きそのものを見直すべきというのも同感だ。
住民票をコンビニやネットで取り寄せられるようにすることが目標ではなく、他の手続きへの提出のために住民票の発行をすることがないようにすることを、最終目標に置くということだ。
たとえば、住民票を取り寄せる機会は多くの人にあるだろうが、住民票を家に飾っておきたいから取り寄せる人はいないはずだ。
何らかの手続きの提出種類として、住民票が求められているだけで、役所からもらった住民票は、そのまま別の手続きに提出するだけの用途しかない。
これらは連携されるべきで、理想を言えば、住民票の発行手続きはなくなって然るべきということだろう。
もちろん、住民票を家に飾りたい人のためには、残してもよいが・・・
以前は、民間の手続きのために、企業がとりあえず提出させるということがあったが、昨今は個人情報保護の観点で、民間も住民票を見て確認することはあっても、徴収するということは減っていると思われる。
この点については、国の行政と、自治体の行政との壁があるので簡単ではないが、このタスクフォースはそれを議論すべき場であろうと思う。


その他に、構成員から、紙申請は職員による入力ミスのリスクも少なくないという意見があった。
このリスクは、紙申請した後に職員が入力したデータを、本人が見る機会がすぐにないから、問題発生に気付きにくい。という点に着目してはどうだろうか。
上記のように、窓口ではオンライン手続きシステムへの入力を職員が本人に代わって代行する。ということであれば、入力結果を印刷して、本人に控えとして渡せばよい。
渡された内容をちゃんと確認するかは本人次第であるが、それを確認する機会が担保される点で、現在の窓口手続き専用システムにどう入力されたかを、本人がその場で通知されない現状よりも、入力ミスのリスクは低減するはずだ。

また、構成員から災害時などの情報システムの可用性の点の指摘があったが、これは、現在の窓口手続き用システムでも言えることだ。それと同程度の検討があればよいはずで、オンライン化して増える課題ではない。
課題になるとすれば、紙で申請されたものを、電子化せずに、紙でだけ管理している手続きについてだろうが、それが紙である必要があるのなら、いよいよ、その手続きはオンライン化から除外してもよいかもしれない。

最後にもう1点、これまでの「オンライン利用に関する~」を、いったん終了した方がよいパラダイムシフトがある。
すべてをオンライン化する場合には、現在の約7000種類の手続きのシステムを、それぞれ上記のようにして移行するのは、確かに困難であった。
そのため、重点71手続きをまず決めて、その他は費用対効果等を評価して、取捨選択する必要があっただろう。

しかし、霞ヶ関クラウドという俗称の省庁間共有情報システム環境を平成24年度末までに運用開始することが決まっており、今年度になって、政府は政府CIOを設置することも決めた。
これによって、何が変わるかと言えば、これらすべての手続きを、ある程度の数のワークフロー・エンジン・システムに集約することができるという、環境変革が起きていることを見落としてはならない。
技術的には、省単位でもワークフロー・エンジンへの集約は可能であるが、扱う手続き件数が増えてくると、システムの特にハードウェアに柔軟なスケーラビリティが求められることになる。しかし、ハードウェアとソフトウェアを一体調達する省庁において、そのような共有情報システムを構築することは、これまでの業務縦割り型のIT構築では、予算措置が困難だったものと思われる。
しかし、業務共有、省庁共有での情報システム・ハードウェア利用に実現可能性が出てきた今は、ワークフロー・エンジン・システムに集約することは、現実味が出てきている。
(逆に言うと、霞ヶ関クラウドは、そのようなことができるようなシステムにしないと、単なる共用ハウジングセンターにしかならない。)

このとき、経験のない者は、ワークフロー・エンジンでの手続き集約と言っても、数千は無理だろうと思うかもしれないが、保険業界では、大手になれば数千の商品を持っており、それを単一のワークフロー・エンジンに集約した例は国内にもある。
保険業界と接点がないと知られていないだろうが、保険商品というのは、普段われわれが接する保険会社の営業担当が紹介してくれる数点だけではない。
これは、100円均一ショップなどの小売店チェーンが本部に数万点の商品登録をしていて、その中から、各店舗が自店舗の購買層に合わせて数百品を選んで店舗陳列しているのと同じ関係だ。
そして、保険商品の品数と行政手続きの種類の数の多さには、共通点がある。
保険商品は、さまざまな条件で保険加入者の料率が変わるわけだが、どの条件の組み合わせの保険商品であるかによって、必要な書類が異なり、また、保険会社内での、それら書類の審査部署や順序も異なり、それが複雑であるために、手続きの種類が増えていくのである。
まさに、行政の手続きが7000種類もあるといっている種類数の数え方と同じだ。
ワークフローの類型の数は、ある程度の種類しかないのに、それを処理する部署が異なれば、部署ごとに数を数えていくからだ。
おわかりのように、類型が同じで、部署が異なるだけ。というのは、ワークフロー・エンジンで処理すれば、単にインスタンスが異なるだけで済ませられる。

「オンライン利用に関する~」で事務局は、IT戦略本部設置以来の数年間で検討したことだと胸を張るが、
むしろ、これだけ技術革新が速い時代に、動的なパラダイムシフトを踏まえずに、初年度の環境を礎に検討し続けていることが、周囲の状況を見失うのではないかとさえ思った。


個別に解決策の例示をしたが、この種の議論をするときには、ビジョナリーが必要なのだと思う。
決めようとしている方針は、100年後をも思い描いたものなのか?が問われる。
この件であれば、100年後にも紙の申請とネット申請を別のシステムでやるの?ということに疑問を持たなければならない。
そこで、本当に100年後の遠い未来のことなのか?というとそう思ってはいない。
100年後くらいを思い描いても、それで想定する技術革新は、おそらく10年後には到来するだろう。という気がするので、いっそのこと、「100年後」くらいを思い描いても、結局10年くらいしか耐えられないだろうということだ。
ましてや、最初から数年後を想定するようなビジョナリーでは、来年には期限切れになりかねない。
インターネットが家庭に入り始めてから、まだ15年しかたっていないという速度の中で、モメンタムが大きく、すぐには舵をきれない電子行政の数年後の政策を考えるには、必要なビジョナリーのスパンだと思う。

2月 17, 2011 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年1月 7日 (金)

電子行政タスクフォース雑感

IT戦略本部企画委員会の電子行政に関するタスクフォース第9回
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/denshigyousei/dai9/kaisai.html

傍聴した雑感を備忘のため書いておきます。
(メモを書き込んだ資料を捨てたいので 笑)

以下は、個人的に気になった箇所だけをピンポイントに抜き出して雑感を書いただけなので、審議の総括や主要箇所が抜き出されているわけではありません。(ここに書いていないことで、有意義な審議もあったということです)

議題1:政府CIO制度のグランドデザイン(案)

政府全体のIT投資の管理

IT予算要求をピン留めしようとしているようだが、そもそも、IT予算という切り出し方ができるのか要確認。
省庁内は個別行政予算申請で予算枠が確保され、その枠内で、IT支出が発生しているということはないか。
それだと、予算部分をつかまえようとしても、すり抜けられてしまう。
この点は、政府CIOの設置においてとても重要。
IT投資を管理下に置く必要があるという指摘は正しく、そのようにしないとならないが、そもそも省庁内で上記のとおりIT予算が横串ささってない可能性あり。
もしも、それがささっていれば、それをかき集めて、政府横串をさせるが、もとがささっていないとすると、本件で集約するという方法は空転する可能性あり。
企業で考えてみると、事業部予算の中で、IT投資が各事業部で実施されているところに、全社的IT予算編成をするための、移行計画に相当することをする必要がある。と思えばよい。
このとき、企業であれば、暫定的には枠内予算の支出の際に、勘定項目で制御がかけれるが、省庁内でそれに相当することができるかの実現可能性の確認が必要。それができないとすると、IT予算を行政予算から切り出すことができなければ、現実的には「IT予算」なるものは存在せず、別の大枠予算の使途としてIT支出があるだけということになる。もちろん、その大枠予算を積み上げるために、IT経費が明記されているはずだが、予算執行時に枠内予算をどう使うかは必ずしも厳密な制約がないことが想定されるということ。
これらのことを確認し、それを前提としたグランドデザインにする必要がある。
政府CIOの成功因子のひとつに、IT投資の管理があることは確実。これがなければ、現行のCIO補佐官制度以上の効果は期待できなくなると考えてよい。(なお、CIO補佐官制度は、全体最適化以外については、相当の成果を出しているというのが、個人的認識)

想定スケジュール

準備室立ち上げを早急かつ具体的に。という意見があり、正論であるが、注意が必要。
たとえば、NISC(内閣官房情報セキュリティセンター)の設置の際は、事実上休眠に近かった、内閣官房情報セキュリティ対策推進室でNISCの立案作業を行い、その後、同室を発展解消して、NISCにした。
そのテクニックを参考にしてもよいかも。
すなわち、準備室を新設するのではなく、既存の組織に役割を持たせ、かつその組織をベースに政府CIO室に発展させると労力が少ない。
ただし、これはあくまで、「早急に」するのが至上であればの話し。政府CIO室を慎重に立案するのであれば、白紙としての準備室から設置を始めるというのは、時間を要すが、それは必要な時間と思ってスケジュールを考えるのは「遅い」ことにはならない。
NISCのときのように、既存組織で使えるものがあればよいが、関連性からすると、内閣官房情報通信技術(IT)室=本タスクフォースの事務局になりそうだが、ここにその能力があるかは(未検証という意味で)不明。
情報セキュリティ対策推進室には、NIRT(National Incident Response Team)という既存機能があったが、そこを事実上封印して、空箱にした状態で過去のしがらみなく立案作業ができた。IT室は、現業を持っている組織なので、そのときのような使い方をできるとはあまり思えない。
そういえば、前回のタスクフォースで、政府CIOグランドデザインの中で、既存組織との関係を明示すべきとの意見があったが、「5 政府CIO制度の組織」で、「IT戦略本部のほか関係する行政機関との関係の整理と併せて、引き続き検討する。」と丸められているだけ。
構成員が今日、詰め寄ることができれば、ここに、「内閣官房IT室が政府CIO室の準備室としての事務を行ない、その中で、同IT室の改廃も含めて検討する。」と書かせてもよかったかもしれない。しかし、上述のとおり、IT室が適任かは要確認。

なお、政府CIOの所掌を情報システムやITに限るのではなく、本来の情報戦略とするのであれば、NISCの統廃合も検討材料の中に入れるべき。(するかは別として検討材料の中という意味)
現行案では、NISCが外付けありきの図だが、なぜそう考えているのかは説明されるべき。
建前としてNISCには、民間の情報セキュリティ対策の立案も入っているが、事実上の活動はなく、それらはセキュア・ジャパンなどで各省庁の役割として分担させているだけ。それなら、その箇所だけを残して、それ以外を政府CIO室に併合することは、考えられなくはない。ただし、長所短所の検討をちゃんとした上での話し。

議題2:電子行政推進に関する基本方針の骨子案

特になし
(冒頭に書いたとおり、雑感がないというだけで、審議が不毛だったということではない)

議題3:新たなオンライン利用計画について(中間整理)の概要(案)

この範囲が、国の行政手続き(自治体を除く)であるということが再確認された。
言われてみると、建てつけとしては、それもありかとも思うが、切り出し方法が何か不自然という印象。
構成員からも、国の手続きの受付を自治体がしている場合の責任分解点が不明確であることが指摘されたが、明確な回答はなかった(ように聞こえた)。
その意味では、これは既定作業なので、これでいったん終結させた上で、今回の電子行政で範囲拡大して追加審議とするのが妥当かもしれないが、よくわからない。

議題4:使いやすくわかりやすい電子行政の将来像(株式会社サイトフォーディー提案)

実態はユーザインターフェースの改善提案に過ぎないものだが、それはそれで必要。
ただし、これを政府ポータルサイトでやる必要性は、個人的には不同意。そうではなく、ここで提案されたようなユーザインターフェースのフロントエンド処理又はクライアントツールを構築可能なような、APIを政府の各電子行政サービスは提供すべき。(構成員からは「エージェント実現機能」という表現があったように記憶しているが、そのとおり。)
言い換えると、提案されたようなツールを、家計簿ソフトで開発したり、企業会計ソフトで開発したり、自治体のウェブサービスで開発したりできるような、APIを各省庁が提供できるようになればよい。
技術標準化のような意見も構成員からあったが、定型データ形式のものは、XMLで提供するだけで簡便にした方がよい。なぜなら、そのAPI提供のシステム構築で大きな投資をするのはやめた方がよいから。定型でないものがあれば、適宜検討の必要をすればよい程度ではないか。ほとんど、定型のような気がしている。
なお、その場合、この範囲において、国民IDは技術的に不要。

しかし、国民IDがない場合には、バックエンドアクセスのための主体認証やクリデンシャルのデータをフロント又はクライアント側でデータ隔離をする設計が必須となる。Open Authenticationに相当するものがあれば、論理階層としてはよいが、その実装レベルでの隔離には、CMW で仕様化された Trusted Windows における Trusted Path (いわゆる T アイコン)に相当する技術がクライアント端末側に必要となる。それの技術解決は必要だが、国民ID番号の導入とのトレードオフは、これになると考えるべき。
この部分は、最上位技術を知っている技術者による検証をすべき。これができるのは防衛関連など限られているが、商用技術の限界で検討するのは不十分となる可能性あり。

議題5:国民ID制度の実現による新たな電子行政サービスイメージ(NTTコミュニケーションズ株式会社提案)

こちらはワークフローの提案。
構成員からも意見があったが、提案内容は「新たな」ではなく、現行サービスを組み合わせた提案だったのだが、それはそれで必要。というか、まさにやろうとすれば、本来できる内容であるとも言える。
仮に、それができない理由があるとすれば、各行政の根拠法の問題。だとすると、その法的解決は国民ID制度でも必須となること。そして、逆にその法制化をすれば、国民IDは必須ではないということに注意が必要。

提案資料には、「国民ID基盤(仮称)の整備が必要」とあったが、これはIT室に迎合して書いたのかわからないが、上述のとおり、提案内容は国民IDなしで実現不可能ではないもの。
時間の関係で、出生時の申請のサービスイメージだけが説明されたが、これは作ろうと思えばマッシュアップの延長線と言えなくもないものだった。

構成員から、自治体ポータルを共通化して統合ポータルにすべきとの意見があり、他の構成員が否定していたが、否定は当然。
自治体には個別サービスがあるのであって、自治体間を共通化するなどあり得ない。おそらく自身が住んでいる自治体と近隣の自治体のサービスを比べたことすらなかったのだろう。
電子政府ポータルとして、国のポータルサイトを考えるのも、ちょっと違和感。
住んでいる自治体のところに、電子行政ポータルがあるというのが、国と自治体をまとめた場合のポータルの現実解ではないかと思われる。その過渡期として、自治体ポータルから、国ポータルへのリンクがあってもよい。ただし、それでは、議題4で提案されたものと異なり、カテゴリがサービス提供者分類になることを意味する。
分類は、あくまで利用場面とすべき。
むしろ、切り分けるとすると、個人向けポータルと、企業などの事業者向けポータルという分け方ならば、入り口が2箇所に分かれていてもよい。

構成員から、電子行政を開始したら、書面手続きの廃止を検討する必要があるような意見があったが、これはまさに、SoA(サービス・オリエンテッド・アーキテクチャ)なく議論する落とし穴。
現状でも書面申請手続きのバックヤードにITがあるのが常識。
問題なのは、そのITシステムと、電子行政(と言われるオンライン利用)用のITシステムが2重になること。
電子行政用のITシステムができあがったら、書面申請手続きを廃止するのではなく、書面申請手続きのバックヤードに、電子行政用ITシステムをそのまま利用すればよい。
すなわち、役所に書面で申請されたら、窓口では担当者が書面で受理して、窓口内のネット接続PCから電子行政用システムにアクセスして、書面内容を申請代行すればよい。
それならば、書面申請を廃止した場合の、受付業務担当者の雇用問題も軟着陸できる。
そのような事務サービスを先に考えた上で、ICカードが本当に利便性を高めるかも議論してゆくことが不可欠。
オンライン利用化したら、書面手続きを廃止するのではなくて、書面手続き専用ITシステムを廃止する。というサービス設計が必要ということ。

(このページについては、後日、加筆・修正する場合があります。)

以下、前回気づいたことを備忘。

本タスクフォースの枠外で、この日の議題でもないが、電子行政という範囲が不十分。
電子政府の議論もすべき。
行政だけではなく政府という意味は、司法・立法の事務についても電子化の検討をオープンにすべきということ。
すなわち、主として裁判所と国会。
日本の裁判所が判例検索やデジタルフォレンジックに耐えれていないのは事実。これまで、電子証拠を裁判で取り扱うことについての課題が指摘されている。それが実際大きな問題になっていないのは、主として民民間であれば契約などで解釈を処理できているが、電子政府が入ってきて訴訟が絡んだ場合に、現在の裁判所で一般人の常識の通じるような、電子証拠の議論がされ得ないことに問題認識が必要。司法のIT対応は、加速させるべきだし、電子行政で発生する紛争解決のためにも必要なので、本来は電子司法と電子行政議論とは必ずしも、分離しておけることでもない。
立法についても同様。そちらは説明省略。

1月 7, 2011 | | コメント (0) | トラックバック (0)