以下は、個人的に気になった箇所だけをピンポイントに抜き出して雑感を書いただけなので、審議の総括や主要箇所が抜き出されているわけではありません。(ここに書いていないことで、有意義な審議もあったということです)
議題1:政府CIO制度のグランドデザイン(案)
政府全体のIT投資の管理
IT予算要求をピン留めしようとしているようだが、そもそも、IT予算という切り出し方ができるのか要確認。
省庁内は個別行政予算申請で予算枠が確保され、その枠内で、IT支出が発生しているということはないか。
それだと、予算部分をつかまえようとしても、すり抜けられてしまう。
この点は、政府CIOの設置においてとても重要。
IT投資を管理下に置く必要があるという指摘は正しく、そのようにしないとならないが、そもそも省庁内で上記のとおりIT予算が横串ささってない可能性あり。
もしも、それがささっていれば、それをかき集めて、政府横串をさせるが、もとがささっていないとすると、本件で集約するという方法は空転する可能性あり。
企業で考えてみると、事業部予算の中で、IT投資が各事業部で実施されているところに、全社的IT予算編成をするための、移行計画に相当することをする必要がある。と思えばよい。
このとき、企業であれば、暫定的には枠内予算の支出の際に、勘定項目で制御がかけれるが、省庁内でそれに相当することができるかの実現可能性の確認が必要。それができないとすると、IT予算を行政予算から切り出すことができなければ、現実的には「IT予算」なるものは存在せず、別の大枠予算の使途としてIT支出があるだけということになる。もちろん、その大枠予算を積み上げるために、IT経費が明記されているはずだが、予算執行時に枠内予算をどう使うかは必ずしも厳密な制約がないことが想定されるということ。
これらのことを確認し、それを前提としたグランドデザインにする必要がある。
政府CIOの成功因子のひとつに、IT投資の管理があることは確実。これがなければ、現行のCIO補佐官制度以上の効果は期待できなくなると考えてよい。(なお、CIO補佐官制度は、全体最適化以外については、相当の成果を出しているというのが、個人的認識)
想定スケジュール
準備室立ち上げを早急かつ具体的に。という意見があり、正論であるが、注意が必要。
たとえば、NISC(内閣官房情報セキュリティセンター)の設置の際は、事実上休眠に近かった、内閣官房情報セキュリティ対策推進室でNISCの立案作業を行い、その後、同室を発展解消して、NISCにした。
そのテクニックを参考にしてもよいかも。
すなわち、準備室を新設するのではなく、既存の組織に役割を持たせ、かつその組織をベースに政府CIO室に発展させると労力が少ない。
ただし、これはあくまで、「早急に」するのが至上であればの話し。政府CIO室を慎重に立案するのであれば、白紙としての準備室から設置を始めるというのは、時間を要すが、それは必要な時間と思ってスケジュールを考えるのは「遅い」ことにはならない。
NISCのときのように、既存組織で使えるものがあればよいが、関連性からすると、内閣官房情報通信技術(IT)室=本タスクフォースの事務局になりそうだが、ここにその能力があるかは(未検証という意味で)不明。
情報セキュリティ対策推進室には、NIRT(National Incident Response Team)という既存機能があったが、そこを事実上封印して、空箱にした状態で過去のしがらみなく立案作業ができた。IT室は、現業を持っている組織なので、そのときのような使い方をできるとはあまり思えない。
そういえば、前回のタスクフォースで、政府CIOグランドデザインの中で、既存組織との関係を明示すべきとの意見があったが、「5 政府CIO制度の組織」で、「IT戦略本部のほか関係する行政機関との関係の整理と併せて、引き続き検討する。」と丸められているだけ。
構成員が今日、詰め寄ることができれば、ここに、「内閣官房IT室が政府CIO室の準備室としての事務を行ない、その中で、同IT室の改廃も含めて検討する。」と書かせてもよかったかもしれない。しかし、上述のとおり、IT室が適任かは要確認。
なお、政府CIOの所掌を情報システムやITに限るのではなく、本来の情報戦略とするのであれば、NISCの統廃合も検討材料の中に入れるべき。(するかは別として検討材料の中という意味)
現行案では、NISCが外付けありきの図だが、なぜそう考えているのかは説明されるべき。
建前としてNISCには、民間の情報セキュリティ対策の立案も入っているが、事実上の活動はなく、それらはセキュア・ジャパンなどで各省庁の役割として分担させているだけ。それなら、その箇所だけを残して、それ以外を政府CIO室に併合することは、考えられなくはない。ただし、長所短所の検討をちゃんとした上での話し。
議題2:電子行政推進に関する基本方針の骨子案
特になし
(冒頭に書いたとおり、雑感がないというだけで、審議が不毛だったということではない)
議題3:新たなオンライン利用計画について(中間整理)の概要(案)
この範囲が、国の行政手続き(自治体を除く)であるということが再確認された。
言われてみると、建てつけとしては、それもありかとも思うが、切り出し方法が何か不自然という印象。
構成員からも、国の手続きの受付を自治体がしている場合の責任分解点が不明確であることが指摘されたが、明確な回答はなかった(ように聞こえた)。
その意味では、これは既定作業なので、これでいったん終結させた上で、今回の電子行政で範囲拡大して追加審議とするのが妥当かもしれないが、よくわからない。
議題4:使いやすくわかりやすい電子行政の将来像(株式会社サイトフォーディー提案)
実態はユーザインターフェースの改善提案に過ぎないものだが、それはそれで必要。
ただし、これを政府ポータルサイトでやる必要性は、個人的には不同意。そうではなく、ここで提案されたようなユーザインターフェースのフロントエンド処理又はクライアントツールを構築可能なような、APIを政府の各電子行政サービスは提供すべき。(構成員からは「エージェント実現機能」という表現があったように記憶しているが、そのとおり。)
言い換えると、提案されたようなツールを、家計簿ソフトで開発したり、企業会計ソフトで開発したり、自治体のウェブサービスで開発したりできるような、APIを各省庁が提供できるようになればよい。
技術標準化のような意見も構成員からあったが、定型データ形式のものは、XMLで提供するだけで簡便にした方がよい。なぜなら、そのAPI提供のシステム構築で大きな投資をするのはやめた方がよいから。定型でないものがあれば、適宜検討の必要をすればよい程度ではないか。ほとんど、定型のような気がしている。
なお、その場合、この範囲において、国民IDは技術的に不要。
しかし、国民IDがない場合には、バックエンドアクセスのための主体認証やクリデンシャルのデータをフロント又はクライアント側でデータ隔離をする設計が必須となる。Open Authenticationに相当するものがあれば、論理階層としてはよいが、その実装レベルでの隔離には、CMW で仕様化された Trusted Windows における Trusted Path (いわゆる T アイコン)に相当する技術がクライアント端末側に必要となる。それの技術解決は必要だが、国民ID番号の導入とのトレードオフは、これになると考えるべき。
この部分は、最上位技術を知っている技術者による検証をすべき。これができるのは防衛関連など限られているが、商用技術の限界で検討するのは不十分となる可能性あり。
議題5:国民ID制度の実現による新たな電子行政サービスイメージ(NTTコミュニケーションズ株式会社提案)
こちらはワークフローの提案。
構成員からも意見があったが、提案内容は「新たな」ではなく、現行サービスを組み合わせた提案だったのだが、それはそれで必要。というか、まさにやろうとすれば、本来できる内容であるとも言える。
仮に、それができない理由があるとすれば、各行政の根拠法の問題。だとすると、その法的解決は国民ID制度でも必須となること。そして、逆にその法制化をすれば、国民IDは必須ではないということに注意が必要。
提案資料には、「国民ID基盤(仮称)の整備が必要」とあったが、これはIT室に迎合して書いたのかわからないが、上述のとおり、提案内容は国民IDなしで実現不可能ではないもの。
時間の関係で、出生時の申請のサービスイメージだけが説明されたが、これは作ろうと思えばマッシュアップの延長線と言えなくもないものだった。
構成員から、自治体ポータルを共通化して統合ポータルにすべきとの意見があり、他の構成員が否定していたが、否定は当然。
自治体には個別サービスがあるのであって、自治体間を共通化するなどあり得ない。おそらく自身が住んでいる自治体と近隣の自治体のサービスを比べたことすらなかったのだろう。
電子政府ポータルとして、国のポータルサイトを考えるのも、ちょっと違和感。
住んでいる自治体のところに、電子行政ポータルがあるというのが、国と自治体をまとめた場合のポータルの現実解ではないかと思われる。その過渡期として、自治体ポータルから、国ポータルへのリンクがあってもよい。ただし、それでは、議題4で提案されたものと異なり、カテゴリがサービス提供者分類になることを意味する。
分類は、あくまで利用場面とすべき。
むしろ、切り分けるとすると、個人向けポータルと、企業などの事業者向けポータルという分け方ならば、入り口が2箇所に分かれていてもよい。
構成員から、電子行政を開始したら、書面手続きの廃止を検討する必要があるような意見があったが、これはまさに、SoA(サービス・オリエンテッド・アーキテクチャ)なく議論する落とし穴。
現状でも書面申請手続きのバックヤードにITがあるのが常識。
問題なのは、そのITシステムと、電子行政(と言われるオンライン利用)用のITシステムが2重になること。
電子行政用のITシステムができあがったら、書面申請手続きを廃止するのではなく、書面申請手続きのバックヤードに、電子行政用ITシステムをそのまま利用すればよい。
すなわち、役所に書面で申請されたら、窓口では担当者が書面で受理して、窓口内のネット接続PCから電子行政用システムにアクセスして、書面内容を申請代行すればよい。
それならば、書面申請を廃止した場合の、受付業務担当者の雇用問題も軟着陸できる。
そのような事務サービスを先に考えた上で、ICカードが本当に利便性を高めるかも議論してゆくことが不可欠。
オンライン利用化したら、書面手続きを廃止するのではなくて、書面手続き専用ITシステムを廃止する。というサービス設計が必要ということ。
(このページについては、後日、加筆・修正する場合があります。)
以下、前回気づいたことを備忘。
本タスクフォースの枠外で、この日の議題でもないが、電子行政という範囲が不十分。
電子政府の議論もすべき。
行政だけではなく政府という意味は、司法・立法の事務についても電子化の検討をオープンにすべきということ。
すなわち、主として裁判所と国会。
日本の裁判所が判例検索やデジタルフォレンジックに耐えれていないのは事実。これまで、電子証拠を裁判で取り扱うことについての課題が指摘されている。それが実際大きな問題になっていないのは、主として民民間であれば契約などで解釈を処理できているが、電子政府が入ってきて訴訟が絡んだ場合に、現在の裁判所で一般人の常識の通じるような、電子証拠の議論がされ得ないことに問題認識が必要。司法のIT対応は、加速させるべきだし、電子行政で発生する紛争解決のためにも必要なので、本来は電子司法と電子行政議論とは必ずしも、分離しておけることでもない。
立法についても同様。そちらは説明省略。
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