2016年4月9日、「オープンイノベーション」をテーマにしたイベントが大阪市内で開催された。「UX」「Make」「Global」「Media」「Mobility」という5個のテーマごとに数人ずつ、合計16人の業界キーパーソンが登壇した。
各セッションでは、登壇者が実践するオープンイノベーション活動に関して議論が交わされた。例えば、UXをテーマとしたセッションでは、幅広いプロダクトやサービスのデザイン企業であるSTARRYWORKSで代表取締役社長を務める木村幸司氏が、作品のビデオ映像を披露したうえで、「技術は見せないほうが魔法感が増す」「今後は、本をめくるなどアナログな部分が重要になる」といったこだわりや、今後の商品トレンドを披露した。
同じセッションにはシャープのデザイン開発センターUXデザインスタジオ部長を務める佐藤啓一郎氏も登壇。「UX(ユーザー体験)という言葉を使わずに、一緒に考えてもらうことで、製品単体の開発にとどまらないUXの重要性を理解してもらっている」など、大きな組織の中でUXの重要性を根付かせるための工夫を報告した。
続くMaker編では、大企業から独立した人、ベンチャー企業の経営者、大企業で社内起業に取り組んでいる人が登壇。それぞれの立場で、新しい時代のものづくりの楽しさが紹介される一方、大企業内でのものづくりあるいはベンチャー企業ならではのものづくりの難しさが共有された。
Global編には、大阪イノベーションハブ(OIH)を運営する大阪市経済戦略局 理事を務める吉川正晃氏のほかに海外出身のゲスト2人が登壇。吉川氏は、「シリコンバレーでは、起業家と投資家の関係がとても近かった」という、OIHからシリコンバレーへ派遣した学生のエピソードを紹介。海外からのゲストからは、グローバル視点での市場機会や「快適さを活かせ」といった日本人へのアドバイスなどが伝えられた。
Media編は、在阪のテレビ会社である朝日放送(ABC)、毎日放送(MBS)、読売テレビ放送(ytv)の3人が顔をそろえた貴重なパネルディスカッション。コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)、ハッカソン運営、番組企画とそれぞれが取り組む活動が報告された。
Mobility編は、Make編と同様、大企業勤務者とベンチャー企業創業者が同席したセッション。「コネクテッド・カー(つながる自動車)」をテーマに市場の可能性を議論した。
今回のイベントは、大阪を拠点として各種のオープンイノベーション活動を展開する「フィラメント」の設立1周年記念として開催されたもの。同社は、4月に大阪市内にオープンしたファブリケーション(製造)施設「The DECK(ザ・デッキ)」の立ち上げにも携わっている。フィラメント代表の角勝氏は、今後も関東と関西、あるいは大企業担当者と起業家の交流イベントなどを積極的に仕掛けていきたいとしている。