ヒューマンエラーによるトラブルが無くならない業界といえば、どこですか?
こんな問いかけをされて、あなたは最初にどの業界を思い浮かべるだろうか。ITproの読者なら、「まさに自分たちの業界のことなんだろうな」と苦笑いするかもしれない。
先日、「なぜなぜ分析」に詳しいマネジメント・ダイナミクスの小倉仁志社長にお会いすると、小倉氏からは開口一番、こんな話題が飛び出した。
「2012年の年末に、またIT業界の企業からなぜなぜ分析の依頼が舞い込みました。最近は依頼のほとんどがIT関連ですよ」。
とにかくIT業界からは、小倉氏に救いを求める悲痛な声がどんどん届くようになっている。2011年以降、その傾向は顕著だという(関連記事:震災後もIT業界の「なぜなぜ」需要は減らず)。
ヒューマンエラーは何も、IT業界に限った話ではないはず。ただし、IT業界には特有の事情がある。ミスが顕在化しやすいのだ。だから顧客に怒られることも多い。プログラムミスや入力ミス、操作ミスはなくならない。
しかも、それらのミスがシステム障害や安全トラブルなどに発展しやすく、被害が大きくなりやすい怖さがある。最近は人手不足や人材の定着率の低さも常態化している。習熟が浅ければ、ヒューマンエラーはどうしても頻発する。
さあ、どうする。そこで小倉氏の出番というわけだ。
顧客から「なぜ」が足りないと突っ込まれた
小倉氏に依頼を持ち掛けるのは、IT業界の幹部が多いという。察するに、システム開発やサービスを請け負った顧客から「お宅はトラブルに対して『なぜ?』が足りないんじゃないか」と厳しい指摘を受け、にっちもさっちもいかなくなり、小倉氏のもとに駆け込んだということのようだ。
そんなとき、小倉氏は必ず最初に、こう伝えるのだという。
「まさか、トラブルの再発を『社員の意識の低さ』のせいにしていないでしょうね。『うちの社員の意識が低くて、申し訳ありませんでした』なんて、顧客に謝っている幹部がいたら、とんでもないこと。話のすり替えもいいところです」。
これこそ、問題の本質に迫ろうとする経営努力が全く足りていない証拠だ。
IT業界のマネジャーや経営者にお聞きしたい。顧客からトラブルで叱られた後、会社に戻って部下たちに「仕事に対する意識が足りないんだ」と怒鳴り散らした経験はないだろうか。