「インテルXeon 5500番台の登場でIAサーバー仮想化時の性能低下はほぼ問題なくなった」。日立製作所情報・通信グループの庄山貴彦エンタープライズサーバ事業部部長は2009年4月14日、東京都内で開催中の「仮想化フォーラム2009」で仮想化技術の最新動向について講演。最新プロセサの機能を活用することで、IAサーバーを仮想化しても性能低下は5~10%程度で済むようになったと解説した。
庄山部長は仮想化をしないサーバーの性能を1としてベンチマークテストを実施した例を示した。Xeon 5500番台を搭載した同社の最新サーバー「BladeSymphony BS2000」では0.87。仮想化による性能低下は13%にとどまっていた。「ベンチマークはかなり厳しい条件で測定した。実用環境では5%程度の性能低下に抑えられる」(庄山部長)という。従来機種では同条件のベンチマークで0.7をわずかに超える値だった。
Xeonによる性能改善を庄山部長は「性能面でメインフレームやUNIXでの仮想化に肉薄した」と評価する。仮想化時の性能を向上できたのは、Xeonが搭載する新機能が貢献している。従来はソフトウエアで処理していた部分をハードウエアで処理できるようになった。
こうした新型Xeon搭載による仮想化時の処理内容の変化は信頼性向上にも役立っているという。「サーバー仮想化はハイパーバイザー層が追加されている分だけ、仮想化がない場合よりも信頼性は下がっている。しかしハイパーバイザーで処理することを減らしてシンプルにしていけば信頼性を向上できる」(庄山部長)というのがその理由だ。
ただ、依然として注意すべき点はいくつかあるという。一つは現行アプリケーションの稼働。「アプリケーションの95%は仮想化環境でもそのまま動くが、残り5%は動かないというのは事実としてある」(庄山部長)。特に研究所などで測定器とコンピュータを直結するケースや、HPC用途向けにプロセサやキャッシュサイズをチューニングしているケースには仮想化の適用が向かないとした。
もう一つはコスト面の課題。「物理サーバーの運用コストは下がるが、ソフトのライセンス料金や移行に伴う再構築費用は増える場合もある。物理サーバーは減ってもOSの数は減らないので、管理コストが思ったほど下がらないというケースも聞く」(庄山部長)。二つの課題を事前検証するため、庄山部長は仮想化ソフトベンダーやシステムインテグレータとの相談を推奨する。「仮想化はまだ過渡期。仮想化ソフトベンダーやインテグレータが蓄積したノウハウを取り入れながら検討を練り直していった方がいい」とまとめた。