ターボリナックスは9月21日,フィリピンSpecOps Labsが開発したソフトウエア「David」の独占販売権を締結したと発表した。Davidは,Microsoft OfficeやInternet ExplorerなどのWindowsアプリケーションをLinux上で動作させるソフトウエア。オープンソースのWineをベースにしている。ターボリナックスは11月に発売するデスクトップLinuxの次期版にDavidを搭載する。
Wineは,WindowsのWin32 APIをエミュレートし,LinuxやUNIXのXウインドウ上で実行する。そのため,WindowsのバイナリがLinuxやUNIX上でそのまま実行できる。ただし,膨大なWin32を完全にエミュレートするのは容易ではなく,まだすべての機能が完成しているわけではない(Wineの開発状況)。ターボリナックスの親会社であるライブドアが販売していたLindows(現Linspire)は,当初Wineを利用してWindowsアプリケーションを動作させることを目標にしており,そのためLindowsという名称を採用した。しかし,完成度や安定性の問題から,最終的にWineをLindowsの標準機能から外したという経緯もある。
ただし,対応アプリケーションを限定しチューニングすることで,Wineはすでに製品化もされている。「一太郎 for Linux」は,Wineを使用し,WindowsバイナリをLinux上で動作させている(関連記事)。米CodeWeaverは,Microsoft OfficeやLotus Notes,iTunesなどをサポートしたWineの商用版「CrossOver Office」を販売している(関連記事)。
Davidは,Microsoft OfficeやInternet Explorer,Lotus Notes,PhotoShopなどを対象とする。SpecOps Labsによれば,Davidでは仮想マシン技術などと組み合わせることにより,Win32 APIをすべて実装することなくWindowsバイナリを動作させることができるという。
アプリケーションの不足は,ドライバの不足と並ぶLinuxデスクトップの最大の課題だ。Windowsのアプリケーションがそのまま使用できれば,Linuxユーザーにとってのメリットは大きい。しかし,ターボリナックスが同日開催した説明会のデモでは,David上で動かしたExcelで,ファイルを開こうとするとExcelが落ちる場面もあった。まだ開発段階であり,製品版では改善される見込みだが,発売までにどれだけ品質を高められるかが,「Linux上でWindowsアプリケーションを使う」という利用スタイルが普及するかどうかのカギになる。