「次世代」と銘打ったデータセンターが増えている。ソリューションプロバイダは、上手にデータセンターを利用し、提案活動を強化するべきだ。データセンターを賢く売るためのキーワードは「9×4」である。九つの項目でデータセンターの先進性を把握し、四つのソリューションに生かそう。

 災害対策やグリーンIT、障害対策などさまざまな観点から最新の設備を導入している次世代データセンターに、注目が集まっている。今年だけでも、15社以上が、次世代データセンターを建設する。

 今年10月には、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が、11月にはNTTコムウェアが次世代データセンターを稼働させる。富士通やNEC、大塚商会なども既に次世代データセンターを動かしている。

 データセンター事業者の多くが次世代データセンターを、今後のビジネスの“中核基地”と位置付けている。「次世代データセンターのような先進的な技術が詰まったものを、ユーザー企業に提案できないITベンダーは、生き残ることが難しいだろう」。IDCジャパンの伊藤未明ITサービスリサーチマネージャーはこう指摘する。

特性を9項目でチェック

 ソリューションプロバイダの営業担当者がデータセンターを顧客に提案するには、その特性をきっちりと把握しておかなければならない。次世代データセンターと呼ばれるものは、九つの項目のいずれかについて、先進的な試みが見られることが分かった(図1)。

図1●データセンターの先進性や特性を押さえるための9項目
図1●データセンターの先進性や特性を押さえるための9項目
[画像のクリックで拡大表示]

 9項目とは、「災害対策」「グリーンIT」「セキュリティ」「システム管理」「内部統制」「ユーティリティサービス」「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)プラットフォーム」「立地」「敷地面積」である。

 災害対策については、そのレベルを測るための尺度がある。米国電気通信工業会が定めたデータセンター品質基準「Tier」だ。4段階でデータセンターの災害対策のレベルを判定するものである。

 最高のTier4を満たすための条件には、「72時間稼働できる自家発電装置を用意している」「電源の供給ラインを二系統以上持つ」「1平方メートル当たり750キログラム以上の荷物を置ける」などがある。

 国内にはTier4のデータセンターがある。日立製作所の「横浜新データセンター」や富士通の「館林データセンター」、野村総合研究所(NRI)の「横浜第2データセンター」、シーイーシーの「川崎データセンター」などだ。

直流方式とブレードサーバーを採用

 グリーンITに関しては、電源供給の効率を高めた電源設備や、ITを使って空調を自動制御する排熱システムなどを導入していることがカギになる。

 この項目で先進的なのは、CTCの「目白坂データセンター」やNTTコムウェアの「東京データセンター」である。いずれも、電源供給に直流方式を採用。交流方式に比べて消費電力量や発熱量を抑えられるようにしている。

 日立が2009年7月に稼働させる横浜新データセンターもグリーンIT化に余念がない。空冷式よりも放熱効率が高い水冷式のサーバーを大量に導入。サーバー室内の温度を最適化するためのシミュレーションシステムも導入するという。

 さらに、グリーンITへの取り組みの熱心さを示すのが、省電力化に有力とされるブレードサーバーを大量に導入していることである。データセンターで採用しているサーバーに占めるブレードサーバーの比率が高いほど、グリーンITを意識したデータセンターとして、顧客に売り込みやすい。